よう実×呪術廻戦   作:青春 零

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1章 入学編
1話 最強からの依頼


「は? 一般校に入学しろ?」

 

「うん、そう」

 

 昼下がりのカフェテラスにて、向かい合って座る二人の青年が居た。

 一人は黒い服に身を包み、白い髪を大きなアイマスクで逆立たせるという、なんとも特徴的な風貌の青年。

 もう一人はこちらも同様に上下黒で統一された衣服を纏い、整った顔立ちが少々人目を引くが、それ以外はいたって普通の黒髪黒目の青年だ。

 

 片方こそ奇抜な格好をしているが、それに目を瞑れば両者ともに高身長でルックスが良い。コーヒーでも片手にしていれば絵になりそうなものだが、しかしそんな二人の前にあるのは大盛りのパフェであった。

 

 周りにどう見られているのかなど気にした様子も無く、パフェをつつきながら会話する二人。

 

「なんだって今更一般校? 進学するなら別に高専でよくない?」

 

 高専といえば、一般的には高等専門学校。主に工業系等、特定の分野に関して学ぶための学校を指すが、今二人が話している学校はそれとは異なる。

 

 正式名称『東京都立呪術高等専門学校』

 

 その名が示すとおりに呪術を学ぶ学校である。但し行っていることは呪術師の育成のみならず日本の怪事件、変死事件、呪いが関わる事件の解決を一挙に担う、日本呪術界の総本山である。

 

 黒髪の青年の疑問に対し、白髪の青年は飄々とした口調で言葉を返す。

 

「いや~、高専に入っちゃったら、保守派の年寄り連中に目を付けられかねないでしょ?

 かわいい弟があんな老害達にこき使われるなんて考えたら、お兄ちゃんショックのあまり――あいつら殺しかねないからさぁ」

 

 ヘラヘラと笑いながら語る様子は、冗談でも口にしているかのようであったが、最後の部分だけは僅かに声のトーンが下がり、不思議な迫力がにじみ出ていた。

 

「……そういうこと、あんまり外で言わないでよ。冗談でも冷やっとする」

 

「またまたぁ~。この程度で肝を冷やすような、(やわ)な子に育てた覚えはありませんことよ」

 

 今度はどこの貴婦人だよと言いたくなるような高飛車な口調。何ともふざけた態度に、対面する青年は呆れたようにため息を漏らした。

 

「……で、実際のとこ理由は何なの?」

 

「そっけないなぁ。偶の兄弟水入らずなんだから、もっと会話を楽しもうぜぃ。あ、バナナとイチゴ交換しない?」

 

「いや、聞きながら持ってかないでよ。別にいいけどさ」

 

 どこまで行ってもマイペースな様子。こうも自分勝手な態度を目の当たりにすれば、大抵の人間は多少なり苛立ちを感じそうなものだが、黒髪の青年は慣れているのか落ち着いた様子でそれを眺めていた。

 

 勝手に取っていったイチゴを口に放り込み、味わうように咀嚼し終わると、そこで落ち着いたようにホッと息を吐き一言。

 

「まぁ真面目な話、さっき言った理由も本当だけど他にも理由はあるんだよね」

 

「……理由ねぇ」

 

 なまじふざけた態度が続いているだけに、その理由もどこまで真剣な内容なのかと黒髪の青年も胡散臭げな表情だ。

 そんな視線に気づいているのか、あえて無視しているのか言葉を続ける白髪の青年。

 

「そうだね。その話をする前に、まずは(まもる)に行ってもらう学校について説明しようか」

 

「もう行くって決定事項なのな」

 

 護と呼ばれた青年は面倒臭そうな視線を向けるが、白髪の青年はまたもスルーした。

 

「護は高度育成高等学校って知ってる?」

 

「ああ、名前くらいなら聞いたことあるよ。確か希望の進路に100パーセント応えるとか言ってる、日本一の名門校だっけ?」

 

「そ、今世界で活躍する政治家、スポーツ選手、学者、様々な分野で著名人を輩出している、まさしくエリートの育成校だ。

 どうせならお笑い芸人とかも育ててくれたら面白いのに、残念ながらそっちは全然なんだよね」

 

「いや、そういうのいいから」

 

 なんだってこの人は話を一歩進めるたびに、脇道に逸れるどころか違う方向に舵を切ろうとするのか。

 そんなことを考えながら、糖分で気を落ち着けようとパフェを口に運ぶ護。

 

「ま、名門ってところは間違いないんだけど、この学校は少し特殊でね。一度入学したら、退学するか卒業するまで外部との連絡が取れなくなる」

 

「あー、そういえばそんな話も聞いたような気がする」

 

「なんでも特殊なカリキュラムを行っているから機密保持のためらしいけど、厄介なのが高専関係者でも入るのにいちいち面倒な手続きが必要ってことだね」

 

「は、中で事件が起こったりしても?」

 

 その点に関しては初耳であったのか、護は呆気にとられたように問い返した。

 基本的に呪術高専は、日本各地の怪事件を受け持つため政府や警察などの関係各所に太いパイプがある。

 仮に事件が起これば、それが高専関係者であるなら子供であっても無条件で事件の事細かな情報が開示される。それ程に権力のある組織なのだ。

 

「どうもこの学校、国はよほど大事にしたいのか文科省の中でも選りすぐりの人間で管理しているらしくてね。こっちの関係者がなかなか入りこめないんだよ」

 

「……つまりは学生として入り込んで、中で呪霊関係の事件が起きたら解決しろと?」

 

「ピンポンピンポーン。だーい正解! 正解したあなたには、景品としてこちらのサクランボをプレゼント」

 

 そう言って、トッピングのサクランボを渡そうとしているが、護は手を前に出して断る。

 

「いや、いらないし。

 けどわかんないな。呪霊事件なんて基本的に犠牲者が出てから動くのが当たり前だろ? 確実に起こるなんて確証もないのに、わざわざ入学して3年間も拘束される必要ある?」

 

「いやー、実のところもう起こってるんだよね。ここ数年、体調不良で入院する生徒が増えてるらしくてさ。僕も試しにこっそり入ってみたんだけど、歴史の浅い学校にしては、やけに呪霊の数が多かったんだよ。

 まぁ、4級以下の雑魚ばっかだったけど。よっぽどストレス抱えてる子が多いのかな?」

 

 呪霊の等級は基本、強さによって5段階に分けられる。

 同じ等級でも強さはピンキリであるが、4級というのはその中でも最低のレベル。それ以下ということは害虫に毛が生えた程度の存在だ。

 存在していると少し気分が悪くなるというレベルの危険度しかないが、だからと言って放置していいというものでもない。

 

 というのも呪霊が一度発生すると、憑かれたものは余計に負の感情を抱えやすくなり、更に大きな呪いを呼び込むことに繋がるからだ。 

 

「今回の件はその学校のお偉いさんからの依頼でもある。国が多額の資金を掛けた学校だけに、悪評がつくのは怖いらしい。

 だから、ことが大きくなる前に対処できる人材を派遣してほしいってね」

 

「そういうことなら、警備員として高専関係者を常駐させればいいじゃん」

 

「いやぁ、無理無理。ただでさえ高専は人手不足なのに、小物呪霊しかいない場所に長期間も派遣してられないって。

 上の連中も無駄にプライド高いからね。敷地に入るのに制限かけられてるだけでも不満なのに、そんなこと頼まれたら怒って断っちゃった」

 

「断ったって、これ高専経由の依頼じゃないの?」

 

「そーだよ~。高専が断った依頼を僕が個人的に引っ張って来たの」

 

「なんだってそんなこと……言っちゃなんだけど、今回に関しちゃ上が怒るのも無理ないでしょ。

 学園の警備をして下さい。けどそれに関して特別扱いはできません。出入りするのに制限がかかるので敷地内に常駐してください。

 要はそう言ってるってことでしょ?」

 

 依頼している立場でありながら、自分たちのほうは譲歩しないでこちらに無茶を強いているのだから、なかなかにふざけた話である。

 このような状況になっているということは、この学校の運営を担っている連中は、呪いという存在について甘く見ているということが察せられる。

 

 一方で、基本的に呪術師は非術師を見下す傾向のある者が多く、高専上層部の古参であればそれも顕著。

 まさしく水と油。相容れる筈がない。

 

「けれどメリットはある。護も僕の夢は知ってるでしょ?」

 

「……日本呪術界の改革」

 

「そのとぉーり!

 そのためにはさ、今上層部が持っているのとは別のパイプを作っておく必要があると思うわけ」

 

「理屈はわかるけど、3年かぁ……面倒くさいな」

 

「そう言わないで。今回の件は護くらいにしか頼めないんだよ。

 護の術式ならバレずに敷地の外に出るなんて簡単だし、御三家の人間だから呪術高専の入学義務もない」

 

 基本的に呪術師が正式に呪術師としての活動を認められるには、呪術高専を卒業しなくてはならない。

 しかし例外として、古い歴史を持つ呪術界御三家『禪院』『加茂』そして『五条』の三家は入学せずとも呪術師としての立場が保障される。

 

「それにもう一つ、上層部の目を護から遠ざけられるってのが大きな理由かな。

 現状、上の連中は護に対してノーマークだ。五条家はこのグレートティーチャー五条悟のワンマンチームと、そう思っている」

 

「ま、そうだろうね」

 

 聞きようによっては、周りは自分のことを嘗めているともとれる言葉であるが、護は特に不快感を表すこともなくあっさりと頷いた。

 それはひとえに目の前にいる白髪の青年、五条悟の強さを知っているが故だ。

 

「上の連中は、護のことを少し便利な術式を持っている3級相当の術師程度にしか思っていない。

 実際には特級相当の力があるにも関わらず、ね」

 

 特級術師、それは呪術師として最高位を示す等級であり、戦略兵器並みの力を持った存在である。

 しかし当の特級相当と言われた本人は、まるで他人事のように白けた表情を浮かべていた。

 

「特級とか言われてもさ、俺兄さんの足下にも及ばないんだけど」

 

「やぁ、そこはほら――僕、最強だから」

 

 最強、普通の人が使えば自惚れが過ぎる言葉であるが、彼が言うそれは純然たる事実を口にしているに過ぎない。

 五条悟、当代最強の術師と自他ともに認め、呪術師であれば知らない者はいないと言うほどの存在。

 それが彼、五条護の兄である。

 

「それに、足下に及ばないとか言っちゃってるけど、僕としては護とは戦いたくないね。

 正直、確実に勝てるって保証はない」

 

「その代わり負けることもないでしょ。俺なんて単に逃げるのが得意なだけだよ。誇れることじゃない」

 

「そもそも僕から逃げられる術師だってそうはいないんだけどね。まぁいいや。話を戻そう。

 僕的には、素直に高専に入って、4人目の特級術師出現に慌てる爺どもも見てみたい気はあるけど、そうなると余計な縛りも多くなる。

 未登録の特級ってアドバンテージを捨てたくはないんだよ。僕に何かがあったとき、動けるようにね」

 

「は? 兄さんに何かがあるとかないでしょ。明日隕石が降ってくるとか言われた方が、まだ信じられるよ」

 

「うんうん、実の弟にそこまで信頼されてるなんて嬉しいよ。

 けど、何かってのは別に身の危険だけを言ってる訳じゃない。僕にも立場ってものがあるからね。そう好き勝手動き回ったりできない時もあるさ」

 

(どの口で言ってんだ)

 

 目の前でへらへらと(うそぶ)くその姿を見ながら、護は内心で力いっぱい突っ込みをいれた。

 自分だけでなく五条悟という人間を知る者ならば、誰もが同じことを思うだろう。

  

 話の区切りがついたところで丁度パフェも食べ終わり、空の器にカラーンとスプーンの甲高い音が響く。

 

「と、いうわけで、護には来年から高度育成高等学校に入学してもらいまーす」

 

「……わかったよ」

 

 護としては、兄からの頼みであれば元から断るつもりなどなかったが、長々とこのテンションに付き合って無駄に疲れてしまった。

 ようやく終わったと、ホッと息を吐いた護であったが、しかし話はそこで終わらなかった。

 

「あ、ちなみに試験日は3日後だから、ヨロシクゥー」

 

「は?」

 

 それだけ言い残すと、兄の姿はバシュンと消えてしまった。

 テーブルの上には、1万円札と1枚の紙。紙にはデフォルメされた兄の絵が描いてあり、『ここだよー!』と試験会場らしき住所を指していた。

 

「……え? 依頼で入るのに、試験とかあるの?」

 

 その疑問に、答えてくれる者は居なかった。

 

 




 主人公を入学に持っていくために、割と強引に話を持って行った自覚はあります。
 現在の時系列は、呪術廻戦側は乙骨さんが入学する前となっています。

 しばらくはよう実パートをメインに進めていくつもりですが、今後の展開に関しては、まだ未定。
 特に死滅回遊を回避するかどうか。回避してよう実ルートへ行くべきか、回避せずに呪術廻戦ルートで行くべきか。

 まぁ、そもそもそこまで書き進められる自信もないので、仮に1年生編終了まで書けたら考えます。
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