で、次回なんですが……よう実側のキャラで呪霊が見えるキャラを一人登場させるつもりです。
当初は原作キャラで呪霊を見えるようにする予定は、あまり考えてなかったんですが、ふとした思い付きで、この人が見えていたら割と面白いんじゃないかなと。
ただこの人物に関しては私自身キャラが掴みきれていないのと、出したとして今後の絡みを考えるのが面倒臭いということで、書きたい気持ちと怖い気持ちが半々。
覚悟を固めようと、こうして予告をしているわけですが、ちょっと揺らぎそうになるくらい書くのが怖い。
できれば三日以内に投稿したいけど少し遅れるかもしれません。
ちなみに登場予定人物のヒント。
うちの主人公、五条先生や坂柳のような割と優秀な問題児に好かれます。つまりその人物も……。
クラス内抗争の開催が決定して1週間が過ぎた。
当初、クラスの誰もが有栖の陣営に属すと思われていた護だったが、それらの予想に反して選択したのは事態の静観。
これに関して、クラスでは戸惑いを見せる者も少なくなかったが、肝心の有栖当人から護に対して何か言ってくることはなかった。
彼女自身、護がこのような抗争に対して関心が無いことは理解している。完全に自陣に引き込むことはできなくとも、葛城派に流れる心配もないため放置する構えとなっていた。
そして現在。
「なんか、一気に暇になったな……」
護は学内のカフェにて一人でパフェをパクついていた。
抗争開催以降、周囲は非参加者も含めて中間テストの対策で多少なりとピリついている訳だが、そんな空気に反して護の方は逆に余裕が生まれていた。
というのも、最近では有栖は自グループで話し合いをすることが多く、校内で護との行動が減ったのが一点。
加えて、学内における呪霊の数も減り、巡回経路も確立したため見回りに余裕が生まれたことが一点。
(今のところ兄さんからの仕事もないし、どうするかな)
現在やるべきことと考えて思いつくのは、中間テストの対策くらいであるが、わざわざ勉強時間を増やす必要性も感じていなかった。
元々、勉強に関しては日頃から最低限の積み重ねはしている。
普通にやっても8割以上。仮に小テストのようなイレギュラーな問題が混ざっていたとしても、少なくともそれで赤点になることはないだろうという自信が護にはあった。
(鍛錬の時間を増やす……いや、仕事か鍛錬しか思いつかないとか、ワーカホリックか)
なまじ最近まで忙しかっただけに、いざ急に空いた時間ができると何も思いつかない。
学内で遊ぼうとすればポイントがかかるし、かといってほんの暇つぶしのために学外に出るのも大げさすぎる。
責務からの解放感で、つい以前から気になっていたメニューを注文してしまったが、これ以上ポイントを無駄遣いする気にもなれない。
(やるべきこと……ないわけでもないんだけど……)
そう思いながら、チラリとカフェの前を通り過ぎる何人かの生徒に目をやる。
浮かない顔をしながら、カフェの中で談笑をする他の客に向けて、どこか嫉妬のこもった視線を向けながら通り過ぎる生徒達。
(多分Dクラスの生徒だな)
ここ数日、学内においては同様に塞ぎこんだ様子の生徒が多く見られるようになっており、それらの生徒に共通するのは1年Dクラスの生徒であること。
「……あんまり良くない状況だよな」
誰に言うでもなくポツリと独り言つ。
負の感情は呪霊が発生する温床となる。現在護は学内の呪霊を祓っているわけだが、それで蓄積した呪力が根本から無くなるわけでもない。
何が契機になって呪霊が発生するかもわからない現状、あまりにも大勢の負の念が蓄積することは望ましくない状況である。
(0ポイントは流石になぁ……)
護としても、この学校がそういう環境であることは理解しているし、格差が生じること自体は仕方がないと受け入れている。故に、自らはその競争にあまり関わるつもりはなかった。
しかしながら、ここまで差が生じる結果になるのは予想外。
(とはいえ、何ができるよ)
仮に勉強会などを開くとして、Aクラスの護がDクラスの生徒から信用されるとも思えない。
具体策など思いつかない以上、少々歯がゆくはあるが、Dクラスが自力で何とかすることを期待するしかないだろう。
結局、実りの無い考えに時間を費やしてしまったと、陰鬱な気分を押し流すようにコーヒーを口に運び、一息つく。すると目の前の席に一人の男性が腰を掛けた。
「少し、いいだろうか?」
「……葛城君か。構わないけど、何の用かな?」
その人物は、現在有栖と抗争中の葛城康平。
護としても、このタイミングで彼から接触があるのは少々意外な事である。
何の用かと問い返すと、葛城はテーブルの上で手を組み、改まった様子で口を開いた。
「単刀直入に言おう。今度の点数競争、第三グループを擁立して参加してほしい」
その言葉を聞いた瞬間、護は僅かに目を瞠った。
(そうきたか)
抗争自体には興味の無かった護であるが、ゲームのルールを聞いた時点で葛城と有栖、両者が選択しうる戦略のパターンは幾つか予想していた。
これは、その中でも取る可能性は低いと思った選択肢の一つである。
「……とりあえず、そんな考えに至った経緯を聞こうか」
「まず、先に誤解しているかもしれないので言っておくが、俺はリーダーという座に拘りはない。
他にクラスを率いてくれる指導者がいるなら、俺は喜んでそれを支える役目に殉ずるつもりだ」
「有栖さんでは指導者として不足だと?」
「能力に関しては認めている。だが、奴は危険だ。前回の会議でそれがよく分かった」
「その口振りからして、一杯食わされたのはわかってるんだ?」
どうやら前回の会議の流れのほとんどが、有栖の仕込みによるものだとは気付いているらしい。
護の問いかけに対し、葛城は悔しそうに顔を顰めた。
「俺とて、そこまで愚鈍じゃない。
あそこまで状況を整えられてしまえば、嫌でも気が付く」
「事前に手を回しておく手腕も、指導者としては評価できることだと思うけど?」
「そこは問題ではない。問題なのはクラスに対する認識だ。
こんな無茶なゲームを提案されてわかった。あいつはこのクラスを自分の遊び道具と勘違いしている」
(言い返せないなぁ……)
その点に関しては、護としても同様の認識を抱いているため、葛城の言葉に全く言い返すことができなかった。
「俺が負けるのはまだいい。だが坂柳の一人勝ちだけは避けなくてはならん」
「まるで、勝つのは諦めてるような口ぶりだね」
「……正直、分が悪いとしか言えん。少なくとも小テストにおける成績上位者の比率は、坂柳の方が勝っている」
今回のゲーム、はっきり言ってまともにやり合っては葛城側の勝ち目は薄い。
まず有栖には小テストトップというブランド力がある。この時点で、本来中立派であった成績優秀者も、勝ち馬に乗ろうと有栖側に流れる傾向にある。
この辺りに関しては葛城も重々理解しているのだろう。
だが、実のところ葛城が不利な点はこれだけではない。
(……この口振りからして、多分気付いてないっぽいな)
護はこのゲームを聞いた時点で、有栖が純粋な学力勝負に走るとは思っていなかった。
まず間違いなく、確実に自分が勝てる一手をどこかに潜ませた上でこのゲームを提案している筈だと。
「ちなみに今、有栖さんと葛城君で何人くらい参加者が集まってるの?」
「俺のところに14人。坂柳に7人だ」
(思ったより人数が偏ってる。ってことは確定か?)
証拠がない以上、完全に護の推測となってしまうが、おそらく有栖は自分の手勢を何人か、葛城の陣営に潜りこませている。
相手の平均点を意図的に下げる。
考えれば誰でも思いつく手ではあるが、葛城自身はそれを選択肢の外に置いているだろう。
次の中間テストの結果はクラスポイントにも直結している。
情報収集としてスパイがいる可能性までなら、あるいは思い至るかもしれないが、この条件下で実際に点数を下げるまではしないと思っている筈だ。
(とはいえ、助言する義理もないか)
抗争に関わらないと決めた以上、ここで葛城にそれを教えるのはアンフェアである。
騙し騙されが当たり前の呪術師としては、この程度の策略はそこまで悪辣とも思わない。
「とりあえず、言い分はわかったけど、何で俺?
有栖さんの方に味方するとは思わなかったわけ?」
「普段の生活を見ていると、お前と坂柳の間には上下関係が無いと感じた。むしろ坂柳の方が付き纏っている印象すら受ける。
実際、お前は今も坂柳の陣営には属してはいない。それはお前自身が今回のゲームには否定的であり、坂柳も無理強いできる立場ではないということだろう?」
護は素直に感心した。
ほとんどのクラスメイトが護と有栖を親密と見る中で、葛城は正確に二人の距離感を把握している。
有栖にいいようにされていたから目立った印象はなかったが、葛城の観察力も大したものだと。
「けど、それは俺じゃなきゃいけない理由にはならないよね?」
「……半端な人選では、坂柳に潰されかねん。
一時の勝利を得たとしても、敵として認識されればその後どうなるかわからんからな。
その点、坂柳に気に入られているお前であれば、本気で敵意を向けられることはないとふんだ」
(まるで猛獣を相手してるような言い草だな。否定はしないけど)
「先ほど、14名が俺のところに集まっているといったが、実は成績が優秀な何名かには、事情を話して参加を保留にしてもらっている。
お前には彼らと共に第三のグループとなり、俺と坂柳両方を痛み分けという形にもっていってもらいたい。
リーダーに興味がないというならその点は無理強いできないが、せめて今回のゲームに関しては協力してほしい」
葛城が取れる選択肢の中で、これが一番被害の少ない方法だろう。
このゲーム、仮に葛城が勝ったとしても、坂柳の陣営から悪感情を向けられクラスを二分するという結果は避けられない。
ならば派閥争いに関係ない第三者を立ち上げて、勝利を搔っ攫ってもらえばクラスの分裂は最小限に抑えられる。
もっとも、それは護が了承すればという話だが。
「申し訳ないけど、俺は力になれない」
その返答を聞き、渋面を浮かべる葛城。
「……理由を、聞いてもいいか?」
「この辺りは、有栖さんにも言ったことがあるんだけど、俺はクラス間の争いには興味が無いんだ。
最低限、クラスの和を乱さないよう協力はするつもりだけど、正直Dクラスで卒業しようとAクラスで卒業しようと、どうでもいいっていうのが本心」
どうでもいいという言葉に面食らった様子の葛城だが、すぐに切り替えて反論を述べる。
「和を乱さないようにと言うなら、協力してもいいんじゃないのか?」
「俺はクラス間の争いにはできるだけ関わりたくはないし、そのためのクラスの方向性を決める争いにも関わりたくはない。
ここで俺が協力したら、葛城君が目指すクラスの方向性に賛同するということになる」
護は、自分がこの学校においては異物であるという自覚がある。
それでもクラスに属する以上、多少は協力する義理があると思っているが、自分の意思で集団の在り方までも変えるのは、行き過ぎた行為と感じてしまう。
「坂柳が統治するクラスで、自分が不利益を被ったとしてもか?」
「そこは上手く立ち回るよう、頑張るとしか言えない。
自分は関わらない。そう選択した結果で出来た環境なら、不平不満を言う権利はないからね。
どうしても我慢できなければ、その時になってから考えるよ」
もしも護が積極的に動く時があるとするなら、それは自身の呪術師としての活動に支障が出る時だ。
それ以外であれば、多少の面倒事は甘んじて受け入れる所存である。
真っすぐと見つめてくる葛城に対し、護も譲らないという意思を込めて見つめ返す。
しばらくして、ようやく葛城は諦めたようにため息を吐いた。
「……わかった。俺にはお前の決意を変えられそうもない。残念だが諦めよう」
「頼ってくれたのに悪いね。その代わりと言っては何だけど、約束するよ。
俺は今回の争い、有栖さんの方にも手を貸すつもりはない」
「そうしてくれると助かる。
本音を言うと、俺はお前がリーダーになってくれたらと思ったんだ。坂柳も、お前が相手ならば軽んじることはないだろうからな」
「そうかな? あの娘に関しては、俺も何を考えているのか分かんないから」
護としては、自分がリーダーになる姿など思い浮かばないし、それを補佐する有栖というのも想像できない。
ともあれ、話はもう終わりである。
パフェも既に食べ終わっているため、護は伝票を持って立ち上がった、
「じゃあ、俺はもう行くよ」
「ああ」
背を向けながら手を振って、護は考える。これから葛城はどうするのだろうかと。
他の誰かを代表にグループを擁立するのか、諦めて自分達で戦うことを選ぶのか。
(どっちにしろ勝ち目は低いな)
第三グループの立ち上げは悪くない手だが、それは残された選択肢の中ではマシという話。
内通者が紛れている以上、仮にその策を取ろうとも有栖の方には筒抜けになる。
あるいは、参加を保留にしてもらっているという人物の中に、内通者が紛れている可能性すらあるのだ。
有栖のことを非道とは思うまい。それに気づいて黙っている護自身も、人のことは言えないのだから。
ちなみに、内通者の一人は蝙蝠野郎こと橋本君。
実際、坂柳さんは内通者を送ってはいるものの、露骨な点数調整は避けます。
さすがに全教科51点とかギリギリのラインにしてしまうとバレるので、特定の教科に絞って10~20点落とすとかそれくらい。
内通者が2~3人として、それで下げられる平均点はせいぜい3~4点程度ですが、自分達に不利そうな教科で狙い撃ちされれば、割と致命的。
中立派の成績優秀者が坂柳さんの方に流れているので、まともにやっても6~7割方坂柳さん有利。
そこに裏工作絡めてしまえば9割方勝ち目はなし。
勝機があるとするなら、内通者を見破って誤情報を与えるか、同様にスパイを送り込むか。どっちにしろ坂柳さんには見破られる可能性のが高い。
ちなみに調整なしでも勝てると判断すれば普通に勝負します。坂柳さんもクラスポイントがあるに越したことはないので。
……ゲームに関しちゃ死に設定になると思ったけど、意外と掘り下げてるな私。