よう実×呪術廻戦   作:青春 零

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47話 毒蛇の甘言

 

 葛城達から離れる事数分。三人は、森の中で見つけた一本の道を歩いていた。

 木々が切り倒され、地面が固く踏み締められたその道は、明らかに人の手が入っていると分かるもの。

 それでも傾斜になった山道は決して歩きやすいとは言えず、まして一人の少女を背負っているというのに、護の足は淀みなかった。

 

 疲れを知らないこともそうだが、迷いのない足取りは明らかにどこか目的地を定めた上で進んでいるようで、神室もそれが気になったのだろう。ふと歩きながら声を掛けてきた。

 

「ねぇ、スポットの場所に心当たりがあるみたいだけど、本当にこの先にあるの?」

 

「ん、多分ね。ここ明らかに人の手が入った道だし、船に乗ってるときチラッと洞窟みたいのが見えたから」

 

「付け加えると、少し離れた場所には塔のような建造物が見えました。

 付近の様子を見渡すこともできますし、最初に目指すポイントとしては最適でしょう」

 

 歩いてる最中、目指す場所に関して欠片も言及が無かった有栖だが、どうやら彼女もどこを目指しているのか分かっていたらしい。

 

 さも当然のことのように語っているが、この二人ここに来るまで打ち合わせをするような素振りは無かった。

 船に居た時点からいち早く情報を得ていたこともそうだが、言葉も無く互いの意図を察する頭の回転の速さと息の合いように、神室から驚きの視線が向けられる。

 

 そうして歩くこと程なく、護が言ったとおり洞窟が見えてきた。

 

「本当にあったし……」

 

 洞窟自体はそれほど規模の大きいものではないが、都会育ちの若者には珍しく見えるのか、呟く神室の声には、どこか感嘆とした響きが混じっていた。

 

 そんな神室の横で、護は淡々と洞窟の周囲を観察する。

 

(崩れないよう補強されてるみたいだし、スポットで間違いなさそうだな)

 

 一通りの観察も済んだところで、そのまま薄暗い洞窟の中に足を踏み入れようとする三人。

 しかし足を踏み出そうとした瞬間、一瞬首に回された有栖の腕に僅かな力が籠り、護はその足を止めた。

 

「どうしたの?」

 

「いや……」

 

 急に立ち止まった護に対し、疑問気に問いかける神室。

 それに対し護は何でもないと軽く片手を挙げると、改めて目の前の洞窟を見る。

 

 別に呪霊の気配がある訳ではない。なんてことの無いただの洞窟だ。

 山肌にぽっかりと空いた大穴は、まるで口を開けた生物のようで少々不気味さはあるのだろうが、言ってしまえばそれだけ。危険なことなど何一つとしてない。

 

 護は挙げた手をそのまま有栖の手に置くと、彼女にだけ聞こえるようポツリと呟いた。

 

「大丈夫だ」

 

 その言葉を聞いた瞬間、強張っていた有栖の腕からフッと力が抜けるのを感じた。

 もう大丈夫だと判断した護は、そのまま歩を進めて洞窟の中へと入っていく。

 

 そして歩くことほんの数メートル。入り口からほど近い位置に、一つの端末が壁に埋め込まれているのを発見した。

 

「これがスポットを占有する機械みたいだな」

 

 洞窟はまだ続いているようだが、幸い端末がある位置は入り口から差し込む光でそれ程暗くない。

 護はそっと屈んで有栖を降ろすと、観察するべく端末へと近づいた。

 

「この画面の上に、カードをかざせばいいようですね」

 

 そう言いながら、早速スポットを占有すべくポケットからカードを取り出す有栖。

 しかしそこで、護は待ったをかけた。

 

「ちょっと待って。少し試したいことが有るから、カード貸してくれる?」

 

「はい? 構いませんが……」

 

 何をするつもりかと疑問符を浮かべながらも、大人しくカードを渡す有栖。

 護は受け取ったカードをしげしげと観察したかと思うと、そのまま端末の画面にカードをかざした。

 

「ちょっ……」

 

 学校側が決めたルールではリーダー以外のカード使用は出来ない決まりである。そんな突然の禁止行為に驚いた声を上げる神室。有栖も声に出さずとも驚いた様子で目を見開いた。

 そんな驚く二人をよそに、素知らぬ顔で端末の上でサッサッとカードを動かす護。暫く試し、何の反応も無いと分かったところでようやく動きを止めた。

 

「……何の反応も無しか」

 

「当たり前でしょ? カードはリーダーしか使えない決まりなんだから」

 

「うん、それは分かってるんだけどさ。だからそこが気になったんだよ」

 

「は?」

 

 護の言葉の意味が分からない様子の神室だが、有栖の方は思案気な素振りを見せたかと思うと、一つの呟きを口にした。

 

「……どうやって個人を識別しているのか、ということですね?」

 

 その言葉に護は頷きを返す。

 

「そ、こんなちゃちなカードで指紋認証なんかできる訳もないだろ?

 なのに使用してはいけないではなく使用できないって断言してるのが気になってね」

 

 厳密にいえばリーダー以外のカード使用は規則によって制限されている訳ではない。正しくマニュアルに記された文言はこうだ。

 

 ・キーカードを使用することが出来るのはリーダーとなった人物に限定される

 

 ペナルティが設定されている訳でも無く、使ってはいけないではなく出来ないと断言してしまっていること。護はそれが気になった。

 

 普通に考えて、この島に個人認証ができる大掛かりな装置など設置できる筈がない。仮に持ち込めたとして、個人データの登録にはそれなりの時間もかかるだろう。

 リーダーの申請をしてから、カードの発行にかかった時間はほんの僅か。故にカード自体に認証機能が付いている可能性は限りなくゼロに近い。

 

 ではどうやって認証しているのか。

 

「試しに有栖もやってみてくれる?」

 

「はい」

 

 返されたカードを今度は有栖が端末の上にかざす。

 するとその瞬間、画面上にはAクラスの文字と、時間を示すカウントダウンが表示された。

 

「どうやら認証されたようですね」

 

「となると、やっぱどっかで見られてるとみるべきか……」

 

「そうですね。真嶋先生は学校側は常に監視をしていると仰っていました。おそらくこの装置自体にカメラの類が仕掛けられているのでしょう」

 

「そうなるか……」

 

 考えられる手段としてはそれが一番現実的だろう。

 あるいは、装置自体ではなく他の場所にカメラが隠されている可能性もあるが、生徒のプライベートまで映しかねない位置には流石に配置していないだろう。

 

「……ねぇ、この確認って何か意味あるわけ?」 

 

「さて、どうかな……」

 

 少なくとも監視カメラの存在が現実味を帯びたことで、護にとって面白くないことになったのは確かだ。

 島全域が監視されてる訳ではないだろうが、少なくともスポット周辺では迂闊な行動が出来なくなった。

 

「まぁいいや。次行こう」

 

 考えることは歩きながらでもできる。

 護は気を取り直すと、有栖を背負い直し、そのまま洞窟の出口へと歩き出す。

 

「さっき話した塔の方を確認したら一旦戻ろうか」

 

「ええ、帰還にかかる時間を考えれば丁度いいかと思います」

 

 そして洞窟を出て、進路を島の外側へ続く道へと足を向けようとしたところで――動きを止めた。

 

「護君?」

 

「今度はどうしたのよ?」

 

 またも突然の硬直に対し、疑問気な視線を向けてくる二人。

 護はその問い掛けにすぐには答えず、黙ったまま軽く首だけを動かして、先ほど来た道の方へチラリと視線を送る。そして一言、呟いた。

 

「…………誰か見てるな」

 

「「え?」」

 

「行こう」 

 

 呟きに対し、珍しくハモった驚きの声を上げる二人だが、護はそれに構わず歩を進めようとする。

 

「え、ちょっ……いいの?」

 

 戸惑い、チラチラと洞窟の方を振り返りながら問い掛けてくる神室。

 

「いいもなにも、こっちに出来ることなんて何もないだろ?

 別に隠れて様子を見てたってルール違反じゃない。捕まえたって何の得にもなんないよ」

 

 むしろ下手に捕まえようとしたら、それこそ暴力行為と判定されこちらに不利益が生じかねない。とはいえ一方的に言われても納得しかねるのか、神室は隣に並びながらどこか半信半疑な様子で小声で問いかけた。

 

「それはそうだけど……ていうか、本当に見てるやつなんていたの? それもあんたの変な術?」

 

「いや、特に術は使ってないよ。どうしてわかるかって言われると……なんとなくとしか言えない」

 

「なんとなくって……」

 

「普段から奇襲なんかを警戒してるとね、誰かが隠れてるとか、そういう気配にも敏感になるんだよ」

 

 そもそも、本来実戦においては向かい合った状態からよーいドンで始まるケースこそ稀だ。

 不意討ち騙し討ちは当たり前。先に相手を発見し、気配を殺し隙を伺うことからまず戦闘は始まる。

 それは対人に限らず呪霊も変わらない。いや、むしろ狡猾な呪霊の方こそよく心得ているとすら言えるだろう。

 

 呪力の満ちた空間においては個々の呪霊の気配が判別し難いこともあり、呪詛師であれば呪力を抑えて行動することもできる。

 そういった場合に重要となるのが、周囲の変化を敏感に察知する情報力。

 そんな命懸けのかくれんぼに幼少期から身を置いていれば、自然と気配を察知する能力も高まるというものである。

 

「真澄さん、護君の技能に関してはそういうものだと納得しておいた方が良いですよ?

 私自身、理解の追いつかないことが多々ありますから」

 

「あんたが理解を放棄するって、どんだけよ」

 

「んな、人を非常識の塊みたいに……」

 

 護としては、普段常識的な振る舞いを心掛けていただけに、そのような言われた方をするのは少々遺憾である。

 自分程度でそんな評価を貰うのであれば、兄は(おろ)か純粋な身体能力に限って言えば、禪院真希という護よりよほど非常識な存在がいるというのに。

 

 と、そんなことを考えている内に、三人はいつの間にか海の見える崖近くまで来ていた。

 

「ここだな」

 

 立ち止まると、そこには少々見えにくい位置に、一本の梯子が掛けられていた。

 

「……これどうやって降りるの?」

 

「あー……そうだな」

 

 たしかに、有栖を背負ったままでは少々梯子は降りにくい。

 登る時ならそのまま背中にしがみついてもらっていればいいが、降りるとなると崖に背中を向けて体勢を変えなくてはいけない為、バランスが崩れかねない。別に出来ない訳ではないが、少々手間である。

 どこに監視の目が有るかも分からない手前、術を使う訳にもいかないし、有栖一人で降りてもらうのも、なんだか危なっかしい。

 

 悩みながら、崖の下をしげしげと観察する。

 高さとしては大体3メートルも無いだろう程度。一般家屋の2階より少し低い程度と言えばイメージしやすいか。大体の高さが測れたところで、護はうんと頷いた。

 

「よし、跳ぶか」

 

 この程度であれば、少し運動神経の良い人間なら問題なく着地できるだろう高さ。仮に見られたとしても、そこまで非常識な行動ではないと判断した(なお人一人背負ってることは考慮していない)。

 

「は?」

 

「はい?」

 

 またも困惑の声を上げる神室と有栖。

 

「しっかり掴まってろよ」

 

「え、あの……ま……」

 

 有栖の返事を待たず、護は跳んだ。

 「キャッ」という短い悲鳴と共に、有栖は咄嗟に力強く背中に抱き着く。

 ギュッと目を閉じ感じる一瞬の浮遊感。そしてトンッという予想より軽い着地音と共に、体に伝わった僅かな振動で、地面に降りたことを確認した有栖は恐る恐ると目を見開いた。

 

「うん、やっぱ大した高さじゃなかったな」

 

 着地した姿勢からムクリと立ち上がりながら、あっけらかんと呟く護。

 その態度を見て、有栖はフッと笑みを浮かべると、ゆっくりと握り締めた手をほどき、その位置を上へと持って行く。

 

「……そういうところですよ。護君」

 

 そして、有栖は再び護の両頬を引っ張った。 

 

 

 

 そんなやり取りを経て崖の下へと降りた三人だったが、周囲を探索すること程なくして、そこで釣り具の置いてある小屋と、見晴らしの良い塔を見つけた。

 

 案の定、スポットであったそれらを占有し帰路へと就く護達。

 その道すがら、ふと神室が有栖へと問いを発した。

 

「ねぇ、スポットを独占するって作戦は分かったけど、ポイントの節約の方はどうするの?

 私トイレもシャワーも無い生活は御免なんだけど。あんただってそんな生活無理でしょ?」

 

「フフ、ご安心ください真澄さん。ポイントの使用を躊躇して生活水準を落とすなど愚の骨頂。

 葛城君もそれは分かっているでしょうし、極端な話をしてしまえば私は初期ポイントは全て使って構わないと思ってますから」

 

「全部って……そんなことしたら、いくらスポットで稼いでも他クラスに勝てないんじゃないの?」

 

 有栖の言葉に意外そうに言葉を返す神室だが、護の方は然程意外には思わなかった。初期のポイントに固執する必要が無いという点に関しては、護としても同意見だ。

 

「そうでもありません。そうですね……護君は今回のスポット占有でどれほどのポイントが得られると思いますか?」

 

「ん、そうだな……」

 

 意見を求められ、ざっと脳内で計算をする。

 現在の日時が8月1日の昼前。終了が8月7日正午なので、試験の期間は144時間ちょっと。

 スポットの捜索にかかる時間、加えて有栖の場合はリーダー変更をするため最後のスポット更新を行う前にリタイアする必要がある。

 以上踏まえると、1か所あたりの占有で得られるポイントは16ポイント前後と言ったところか。

 

 問題はスポットの数だが、これに関しても少なくとも10か所以上はある筈である。

 各クラス最低一つのベースキャンプを設定することが前提となっている以上、それ以下では出遅れたクラスがスポットを確保できなくなる可能性もある。

 

 この島の広さを踏まえれば、妥当な数としては大体15前後。多くとも25は超えないだろうというのが護の見積もりだ。

 

 それら踏まえた上での計算を述べる。

 

「大体200前後、多ければ300ちょいってところか?」

 

「はい、私もそれが妥当な数字だと思います。言い換えてしまえば、その数字こそ今回私達が最低限確保できるだろうポイントでもあります。

 次に他のクラスがどれだけのポイントを残せるかですが、こちらでスポットをほぼ独占できる以上その分をポイントに頼らざるを得ないのは必然。

 どれだけ上手く切り詰めたとしても150ポイント前後。200を超えることはまずありません」

 

 有栖がマニュアルを確認したのはほんの僅かな時間だというのに、ここまで明確な数字がでてくるのは流石である。

 

「現在のAクラスには余裕があります。クラスポイントの争いではトップを走り、スポット占有のポイントも約束されているこの状況。

 むしろポイントを節制し、生活レベルを落としてしまえばかえって不満が溜まりかねません」

 

「だからって、ポイント全部は使いすぎでしょ」

 

「あくまで、可能であればそれも一つの手というだけの話ですよ。

 今回の試験で試されるのは、どのようにしてクラスの方達を取りまとめるかです。しかし私達のクラスはグループが二分化されている為、意見をまとめることも難しい」

 

((クラスをぶった切ったの、君だけどな/あんただけどね))

 

 護と神室、二人の心の声が重なった。

 有栖ならその心のツッコミにも気づいていそうなものだが、しかし彼女は素知らぬ顔で言葉を続ける。

 

「ならばいっそのこと、ポイントを全て物資に交換した上で、片方のグループがリタイアするのも一つの手です。真嶋先生の説明から察するに、300ポイントは40人の生徒がこの島で過不足なく生活できる最低限度の数字。

 人数が半分ほどになれば、十分すぎるほど余裕のある生活が送れます」

 

「まぁ、葛城君は納得しないだろうけど」

 

「ええ、彼はおそらくできるだけポイントを抑えようと考えているでしょう。

 しかし先程も言った通り下手な節制は不満の種。自分に反意を抱えた者達が居る中で、そのバランスをとるのは容易な事ではありません」

 

 葛城の手腕であれば、スポットを活用すれば最終的に100ポイント程度の消費で抑えられるかもしれない。しかし、それは同時にクラスメイト達にある程度の不自由を強いることにもなってしまう。

 そうなった時に、不満を一身に受けるのはポイントを管理する立場の人間だ。この無人島で不満なく過ごせる人間などまず居ない。

 

 加えて、既に有栖がリーダーの役目に付いたのが何より大きい。

 元より、ポイントの管理なんて誰がやっても大きな差が出ることは無い。初期ポイントを上手く残せたとして、それはスポットを安全に確保した有栖の功績が大きいと判断されるだろう。

 

 今回の試験、クラス内のパワーバランスが葛城派に傾く可能性は限りなく低い。

 

「私としてはどちらでも構いません。あくまで最低限、こちらも必要な物が有れば申請させて頂きますが、葛城君がポイントを管理するというのであればお任せするつもりです」

 

 そして自分がポイントの管理を任されたならば、先程言った作戦を実行に移すと。

 確かに、それが一番生徒達に不満を与えない方法だろう。勿論反感も出てくるだろうが、そう言った生徒達も最終的にAクラスが1位という結果さえ示せば黙るほかない。

 

「なんにせよ、まずは様子見と言ったところですね。

 葛城君自身は特に警戒する必要はありませんが、彼に付いている毒蛇が何もしないとも思えませんから。

 ――あるいはもうすでに……」

 

 そう言って、何が楽しいのかフフッと笑みを零す有栖。

 

「毒蛇って……」

 

 一瞬、毒蛇とは何のことかと思った護だが、すぐさま思い当たる人物の姿が頭の中に浮かびあがる。

 しかしそれについて尋ねる前に、視界に他のAクラスの生徒達の姿が映り、口を噤んだ。

 どうやら、話している間に集合場所の近くへと着いてしまったらしい。

 

「……話はまたあとだな」

 

「ええ」

 

 そう言って、集合場所へと近づく三人。

 すると、こちらに気付いた葛城が声を掛けてきた。

 

「戻ったか」

 

「お待たせ、俺達が最後……だったかな?」

 

 正確に数えたわけではないが、ざっと見渡した限りほとんどの生徒が揃っている様子だった。

 最初に言われた時間通りではあるが、一応申し訳なさ気な表情を作りつつ葛城に問いかける。

 

「ああ。何人かここに居ない者もいるが、彼らには見つけたスポットに見張りに立ってもらっている」

 

「そっか。悪いね、待たせちゃったみたいで」

 

「気にすることは無い。時間通りだ。むしろ、そちらこそ問題は無かったのか?」

 

 その問題と言うのは、主に護の体力面を指しての心配だろう。

 

「見ての通り問題無いよ。スポットの方も――」

 

「待ってくれ」

 

 早速、探索結果を報告しようとした護だが、しかしその瞬間、続けようとした言葉は葛城によって遮られた。

 一際強い語気で言葉を遮った葛城に対し、訝し気な表情を浮かべる護達三人。

 

「……すまん。こちらから話を振っておいてなんだが、報告を聞く前に一つ相談したいことがある」

 

「相談?」

 

「ああ……おい、こっちへ来てくれ!」

 

 そう言って、後ろを振り返りながら大声で呼びかける葛城。

 すると生徒達は道を空けるように脇へとどき、そこから一人の男子生徒が顔を出した。

 

「よぉ、久しぶりだな。メルヘン野郎」

 

 その男――龍園翔は、まさしく蛇を思わせる狡猾な笑みを浮かべながら口を開いた。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 時は少し遡り、護達が洞窟を去った後の事。

 

「……行ったか」

 

 去っていく三人の人影が見えなくなってしばらくしたところで、ようやく木陰に隠れていた男子生徒、綾小路清隆は安堵の呟きを漏らした。

 同時に、自分が咄嗟に同行していた女子生徒、佐倉愛里を抱き寄せていたことに気づきそれを手放す。

 

「悪い佐倉……佐倉?」

 

「きゅうっ……!?」

 

 謝罪の言葉を述べる綾小路だが、そんな声など聞こえていない様子で、真っ赤な顔で動揺する佐倉。

 

「だ、大丈夫か?」

 

「だだだ、だい、だいじょうぶ、ぶぶ……」

 

 まるで壊れたレコーダーのような声。地面にへたり込んだその様子を見て、落ち着くのには少し時間が掛かりそうだなと思いながら、綾小路は今しがた見た光景について考えを巡らせていた。

 

「……五条が居たってことは、あれはAクラスの生徒で間違いなさそうだな。

 一人背負われていたのは、怪我でもしたのか?」 

 

「あ……た、多分だけど、おんぶされてたのはAクラスの坂柳さんじゃないかな?」

 

「知ってるのか?」

 

 佐倉も、自分同様クラスではそれほど人脈の多い人間ではない。

 まさか答えが返ってくるとは思わず、驚き交じりに聞き返した。

 

「う、うん。他の子が話してるのが聞こえたの。えっと……足が不自由で、お人形みたいな女の子がいるって」

 

「足が不自由……なのに探索に出たのか?」

 

「変……だよね?」

 

 佐倉から見ても、やはりおかしな話に見えるらしい。

 それもそうだろう。普通に考えて、何が有るかもわからない密林の探索に出すような人材ではない。しかし事実としてそれが行われている以上、そこには何かそうするだけの理由があるということ。

 瞬間、綾小路の中に一つの可能性が脳裏に浮かんだ。

 

「行ってみよう」

 

 洞窟の中へと入ると、そこにはAクラスの文字が表示された端末装置。 

 それを見て、綾小路は自分の想像が正しかったことに確信を抱いた。

 

(……なるほど)

 

「ね、ねぇ綾小路君。もしかしてさっきの三人の中に……リーダーが居るってこと……?」

 

 興奮した様子で問いかけてくる佐倉。

 状況から見て、先程の三人の中にリーダーが居たことは間違いない。リーダーを当てる確率が40分の1から3分の1まで絞り込めたのだ。彼女にとっては重大な情報に見えるだろう。

 

 しかし綾小路としては、そんな佐倉に同調することは出来なかった。

 Aクラスがとっている作戦、それが理解できてしまったが故に。

 

(やられたな)

 

 この時点で、Aクラスのリーダーを当てられる可能性は9割方無くなった。

 

「このことは、後で俺から平田に報告しておくよ」

 

 人見知りの佐倉のこと。こう言っておけば、自ら進んで誰かにこのことを話すことは無いだろう。

 佐倉に口止めをしつつ、綾小路は脳内で新たにプランを練り直していく。

 

(さて、どうするか……)

 

 単純にリーダー当ての部分で大きなアドバンテージを取られた事もそうだが、何より厄介なのはAクラスがただ漠然と試験を受けているのではなく、明確に戦略という物を練ってきている事。

 この短時間でトリッキーな策を思い付き、それをクラス全員に納得させた上で実行に移すなど、よほど優秀なリーダーが居て、統率が取れてなければできることではない。

 

 一方で自分達Dクラスを見れば、トイレにポイントを使うかどうかですら言い争いを始めてしまう程の纏まりの無さ。

 

(やはり、一人での戦いには限界があるか……)

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

「なんだ、坂柳。まだリタイアしてなかったのか? 温室育ちのお嬢様はクーラーも無い部屋じゃ寝れねぇだろ。抱き枕が恋しくなる前にさっさと帰った方が良いんじゃないのか?」

 

 開口一番、ニヤリと笑みを浮かべながら煽ってくる龍園。

 

「フフ、ご心配には及びません。愛用の枕が無くても、こうして抱き心地の良い枕がありますから」

 

 対し、護の背に乗ったまま余裕のある笑みで龍園の皮肉を受け流す有栖。

 しかし、Aクラス一同は思った。

 

(((抱き枕を使ってることは否定しないんだ)))

 

「いや、誰が枕だ」

 

 なお、有栖の可愛い物好きな趣味を知っている護は一人自分が枕扱いされていることにツッコミを入れる。

 

「ククッ、おいおい。まさかお前ら本当にできてんのかよ。さっきもどっかでしっぽりやってましたってか?」

 

「さて、どうでしょう。ご想像にお任せしますが、ただそうですね……しいて言うならば……」

 

 すると有栖は思わせぶりに顔を背けると、口元に手を当て恥ずかし気な表情を作り――言った。

 

「……護君は、凄かったです」

 

「待てやコラ」

 

 ポカンと、龍園含めて呆気にとられた反応をする一同。

 しいて例外が居るとすれば神室。彼女だけはただ一人、護の後ろで呆れたように首を横に振っていた。

 

「おや、何かおかしなことを言ったでしょうか」

 

「わざとか? わざとだよな!? 何でお前()こうも悪意に満ちた言い回しすんの!?」

 

 声を荒げてツッコミを入れる護。

 これは先程、崖で驚かされたことに対する有栖なりの意趣返しなのだろうか。それにしたって性質が悪い。

 

 というか、そもそも有栖はこのような状況でこのような冗談を言うタイプだっただろうかと、護は訝しんだ。

 元々、人を揶揄うのが好きな性格ではあったが、このような大勢の前でふざけるタイプではなかった筈だ。

 

(これ、あいつらに毒されてない……?)

 

 原因として思い当たるのは、週に一度の治療に行くようになってから時たま顔を合わせるようになった高専の連中。より具体的に述べるなら白黒ツートンカラーの馬鹿二名(片方は狗巻にあらず)。

 あの年中ハッチャケた連中に毒されたせいで、悪ノリっぷりに磨きがかかったのではないかと、割と笑えない可能性が護の頭をよぎった。

 

「クッ、ハハハ。ゲテモノ趣味極まれりだなぁ五条。女の好みも悪けりゃ外でしけこむなんざ、随分とマニアックな趣味じゃねぇか」

 

「何もやってねぇわ!」

 

 そもそも神室だって同伴していたのだ。本気で護達がいかがわしいことをしていたと思う者もいないだろうが、一応強く否定しておく。

 

 と、場が混迷としてきたところで、流石に見かねた葛城が割って入ってきた。

 

「いい加減にしろ、龍園。お前も無駄話をしに来た訳ではないだろう。早く本題に入れ」

 

「ハッ、確かにな。こいつらの股の事情なんざ俺も興味はねぇ」

 

 何とも下品な言葉づかいに、何人かが顔を顰めるが龍園は構うことなく言葉を続ける。

 

「葛城にはもう話したことだが、こっちも何度も説明する気はねぇからな。簡潔に言ってやる。

 取引だ。お前らにウチのクラスのポイントを買い取らせてやる」

 

 瞬間、ザワリと周囲にどよめきが広がる。

 葛城には話したと言ったが、どうやら彼個人に話したというだけで、全員の前で話したわけではないらしい。

 

 クラスの面々がその言葉の意味を測りかねている中、有栖と護の二人はその目をスッと細めた。

 

「ポイントを買い取るですか……つまりそちらで購入した物資を、こちらに引き渡すと?」

 

「流石にこの程度の話にはついてくるか。

 200ポイント分、お前らが望む物資をこっちで調達してそれを丸ごとくれてやる。

 対価はそれに相当するだけのプライベートポイントを卒業までの間支払うことだ」

 

「……つまり一人に付き2万ポイントの支払いですか」

 

 思案気な呟きを漏らす有栖。まぁ、護の背中に乗っかったままの為、あまり様にはなっていないのだが。

 護は龍園の提案について考えながら、この娘はいつまで背中に乗ってるつもりだろうかと、割とどうでもいい思考が頭をよぎった。

 

 ともあれ、言葉を続ける龍園。

 

「悪い話じゃねぇだろ。そっちは温存した分クラスポイントが手に入る。こっちはその分プライベートポイントが手に入る。どっちにとっても旨味のある話だ」

 

「……なるほど、そしてCクラスは数名を残してリタイア。残り100ポイント分の物資を元手に他クラスのリーダーを探る、といったところでしょうか?」

 

 途端、龍園と葛城の目が見開かれる。

 

「チッ……今の話からそこまで読みやがるか。あぁ、ここまで含めての取引だ。

 この試験、リーダーを当てるには敵の中に深く潜り込む必要があるからな。他クラスには俺たちは試験を降りたと油断させる。

 そうなりゃBクラスの連中は仲良しごっこのお人好し集団。Dクラスの連中は馬鹿の集まりだ。スパイを送ることは難しくない。

 あとはAとCで突き止めたリーダーを狙い撃ちにするっつーわけだ」

 

 そこまで聞き、護は内心で舌を巻いた。

 ポイントを全て使ってしまうというのは護達も考えていたことだが、それを他のクラスに渡すという発想は無かった。リタイアしたと見せかけるのも望外な一手。

 真面目な人間が揃ったAクラスでは怪しまれてまず使えない。普段から周囲に不真面目な印象を持たれたCクラスだからこそ使える手だろう。

 

 まだ試験を開始してからほんの僅か。この短時間でここまでの策を練り上げたという事実に、護は龍園翔という男に対する警戒を引き上げた。

 

 そこで葛城が龍園の言葉に追随するように口を開く。

 

「俺としてもこれは悪くない取引だと思う。この試験どうあがいてもある程度のポイント使用は避けられない。

 リーダー当てに関してこの男を信用できるかは別だが、少なくともポイントの取引に限って言えばこちらにとっても悪い話じゃない」

 

 たしかに葛城の意見はもっともだ。実質この取引が成立すれば、こちらは初期ポイントを丸ごと温存した状態で試験を乗り切れる。

 プライベートポイントという対価を支払う必要はあるが、それだって結局はクラスポイントが無ければ得られないポイント。ならば成績評価に関わるcpだけでも得られるなら儲けものだろう。

 

 他の生徒達に関しても、一部警戒心や龍園の態度に不満を抱えている者が居るようだが、概ね肯定的なようだった。

 

(……まずいな)

 

 そんな中、護は一人静かに歯噛みした。

 龍園翔という男が、どこまで見据えているのかは分からない。だが、もし護が想定する最悪のパターンを考えているならば、この取引を受けた時点で下手をしたらAクラスは()()()()()()

 

 ただこの試験で敗北を喫するだけならいい。この試験でポイントがマイナスになることは無いのだから。

 しかし今後卒業までの間、恒久的に2万ポイントもの負債を背負わされるというのは、明らかな痛手だ。

 

「…………」

 

 有栖の方も沈黙して考え込んでいる様子。

 すぐに返答しないところを察するに、おおかた龍園が何か企んでいることは察しつつ、敢えてそれに乗って勝負するのも面白いとでも考えているのだろう。

 

 おそらく、護が危惧する所までは有栖も察していない。

 

(少し、探りを入れてみるか)

 

 あまり気乗りしないが、この懸念を取り払うには自分が自ら動くしかないだろうと、意を決して口を開いた。

 

「ちょっといいかな?」

 

「あぁ、馬車馬が主人に代わって質問か?」

 

 誰が馬車馬だと内心でツッコミつつ、しかし話が進まないのでスルーして言葉を続ける。

 

「……質問と言うより、提案かな。

 俺としてもそのポイント譲渡の協力自体は悪くないと思う。ただ、一つだけ変えてほしい部分がある」

 

「聞くだけ聞いてやる」

 

「変えてほしいのはそっちに渡すポイントの部分」

 

「値引き交渉は聞く気はねぇ。200ポイント分のクラスポイントになるものを値切ろうなんざ、馬鹿な事を言うんじゃねぇぞ」

 

「まさか、むしろその逆だよ」

 

「逆だと?」

 

 挑発的な笑みを浮かべていた龍園の表情が、怪訝なものに変わる。

 

「そちらに渡すポイントの部分をこう変えてほしい。

 Aクラスがこの試験で300ポイント以上残した時、その超過分に相当するポイントをそちらに渡すと」

 

 その言葉を聞いた瞬間、周囲の生徒達が驚きに目を見開く。

 そしてそれは、龍園も例外ではない。

 

「待て五条、何を勝手に――」

 

 突然の発言に慌てたように葛城が口を開くが、護は彼に止められる前に言葉を続ける。

 

「悪いけど、俺としてはこの条件でない限り彼の提案を呑む気は無い。

 彼が共闘を望むと言うなら、最低限この条件でないと対等な関係とは言えないからね」

 

「ハッ、対等だと? 笑わせんな。その条件じゃ、500ポイント以上稼がない限り払ったポイント分の回収は出来ねぇ。

 確実に稼げる保証もねぇのに、そんな条件が呑めるか」

 

「君たちが協力関係を結ぶって言うのなら、それ自体は難しくないさ。

 今の時間、他のクラスは生活基盤を固めるために時間を割いているだろうけど、リタイア前提の君たちならそれを無視して人海戦術でスポットの捜索ができるからね。

 今日の夜までにスポットを12か13程度押さえられれば、200ポイント以上は確保できる。

 そっちがBとDのリーダーを突き止めたなら更に100ポイント。リターンは大きいと思うけど?」

 

 厳密には有栖をリタイアさせる分も考えればもう少し計算はシビアになるが、それを含めても実際500ポイント以上の確保は難しくないだろう。その点に関しては正直な見積もりだ。

 

「そいつはお前らがリーダーを隠し通せる前提だろうが。

 スポットの占有に動く場合、その分リーダーがバレる可能性も高くなる。そうなりゃそっちは多少のポイントは残るが、こっちは全ておじゃんだ。とても対等な条件とは言えねぇな」

 

「なら、仮にこっちが300ポイント以下で通過した場合、獲得ポイントは折半するって条件でも付け加えようか」

 

「ふざけんな。こっちは200ポイント分のクラスポイントを渡すも同然だ。なのにそれが半分以下になるかもしれない条件を呑めってか?」

 

「その分見込めるリターンも大きいだろ?

 共闘関係を結ぶのなら、ある程度の目標の擦り合わせとリスクの共有は必須だ。ただ対価として2万を渡すって条件じゃ、そこで取引はお終い。裏切られたって文句は言えないからね」

 

「ハッ、裏切りが怖ぇってか? その図体で随分と肝の小せぇことだなオイ」

 

 挑発的に見下した笑みを浮かべながら問いかける龍園。

 しかし護はそれに対して表情一つ変えることなく平然と返した。

 

「ああ、怖いね。特に君みたいなキレるタイプ、何の保険も無しに()()()()()()()()()()()()()()

 

 言葉の意図が分からないのか、クラスの面々に疑問符が浮かび上がる。

 多くの者がそんな反応をする中、しかし挑発的な笑みを浮かべていた龍園の顔には愉快気な喜悦の色が混じった。

 

「ククッ……なるほどな。

 だがいいのか? さもクラスの代表のように話しちゃいるが、納得してねぇ連中だっているだろ。

 お前らにとっちゃ、勝手にベットする賭け金吊り上げてるようなもんだ。本来なら2万で済む所をそれ以上搾り取られるかもしれねぇってこと、分かってんのか?」

 

 その言葉に、二人の雰囲気に呑まれていた生徒達がハッとしたように我に返り、即座に戸塚が声高に声を上げた。

 

「そ、そうだ! 何を勝手なことしてるんだ五条。元々この取引は葛城さんが取り次いだものだぞ!」

 

 その反応は確かに正しい。現在Aクラスにおいて、護は色んな意味で一目置かれてはいるが、代表者として矢面(やおもて)に立てるほどの発言力を有しては居ない。

 あくまで、クラス内においてリーダーとして支持を集めているのは有栖と葛城の二人。そんな二人を差し置いて、勝手に話を進められて面白い顔をする者は居ないだろう。

 

 だが――

 

「別に構わないのではありませんか? 私としても護君のご意見には賛成です」

 

 ここで、有栖が護の擁護に回る。

 勘の良い有栖の事、流石にここまで話を進めれば護が意図することに関しても察しがついたのだろう。

 そして有栖が護の意見に賛同したことで、彼女の派閥に属する面々も肯定的な反応を示し始める。

 

「ッ、待て。その条件ならば300ポイント以上で通過した時、2万ポイントを支払うという条件でも十分な筈だ。余剰分全てを渡すなど、何故わざわざこちらの負担を増やす必要がある」

 

 葛城から異論の声が飛ぶ。いや、異論と言うよりは疑問か。

 葛城の視点からしてみれば、有栖をダミーのリーダーに据える作戦をとる以上、200ポイント以上は余裕で獲得できるという見積もりになる。

 ここでわざわざ2万と言う固定金額ではなく、それ以上の金額を提示することが疑問なのだろう。

 

「まぁ、しいて言うなら保険かな」

 

「保険だと?」

 

「龍園君は他クラスのリーダーを当てると言っているけど、確実に当てられる保証はないだろ?

 なら、仮に当てられなかった時は最後Cクラスのリーダーをこちらに教えてもらう。

 ポイントがマイナスにならないってルール上、Cクラスのポイントは0より下にならないからね。

 逆にリーダーを当てたらプラス50ポイント。取引で渡すポイントも5000円分増えるんだからCクラスにだってメリットはある」

 

「む……それは、確かに……」

 

 これを聞き、なるほどと納得の表情を浮かべるクラスメイト達。

 葛城も同様の反応を示したことで、徐々に賛同者の数も増え始める。ここまでくればあとは時間の問題だろう。既にリーダー二人が同調的な姿勢を示し始めた今、表立って反対する者は居ない。

 

 残る問題は、肝心の龍園がどうするか。

 

(さぁ、どうくる?)

 

 実の所、葛城に言った理由はオマケのようなものだ。

 一見すると護の提案はCクラスの裏切りを制限し、確実に利益を得るための抑止力的な意味合いに見えるだろう。

 

 だが、本来の狙いはそこではない。

 護が確認したかったのは、龍園翔と言う男が何を目的として動いているか。

 

 対価のポイント額を吊り上げたのもそのため。

 ただ我欲の為にポイントを求めているだけの人間ならば、それで構わない。

 だが、もしもそうでないのであれば――

 

(場合によっては、少し面倒なことになるな……)

 

 護は静かに、龍園を見据え続けた。

 

 

 

 

 





 Q.さぁ、どうくる?
 A.さぁ? どうしよう by作者


 ちなみに原作では洞窟に向かっていた葛城君ですが、今作では護君たちが洞窟に向かう姿を見ていた為、違う進路を取りました。


 いやはや、よう実二次界隈では無人島編でルールの隙を突いた奇抜な事をやってる印象なのですが、私の雑頭じゃ既出のネタ以外になかなかいいものが思い浮かばない。

 とりあえず龍園君の取引に対して、カウンター気味な提案を出してはみたものの、無駄に凝ろうとしてしまって、なんだかややこしくなってしまい。
 やっぱインテリぶった会話って苦手。やり取りが分かり難かったら申し訳ありません。


 あと、本編でスポットの数について言及していますが、一応現状の想定としてはスポットの数は20~25くらいで考えてます。
 根拠としてはアニメ版の描写から、最低20か所以上ある事は確認できているので、それを参考にしました。

 一応以下、アニメにおけるスポット情報。
 まずAクラスが確保したスポットの数に関して、1期アニメ12話、葛城のポイント集計表から。

 スポット占有(A-P)合計274と書かれていた事から、おそらく占有したスポットにA~Pのアルファベットを振って管理してたんだろうなということで、まずAクラスが16か所。

 次、同じくアニメ12話から龍園の脳内集計で、スポット占有で26ポイントと見積もっていたことから、少なくともCクラスで得ていたスポットは2か所以上。

 残りのBとDは少なくともベースキャンプで1か所は占有。なお、他に占有していたかどうかは原作含めて描写が無いため不明。

 ついでに言うと、アニメでは描かれてませんが原作では今話で述べた塔のように、敢えてAクラスが占有を見送ったスポットも存在しており、それも含めるなら21以上。
 
 ただ、島の広さ的に30は流石に無いだろうと思ったので、多くて25が良いとこかなと。


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