よう実×呪術廻戦   作:青春 零

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72話 ドリームタッグ 前編

 煌めく太陽。青い空。そして飛び散る水飛沫。

 大勢の生徒達で賑わう様子を、有栖は感慨深そうな目で眺めていた。

 

 普段、水泳の授業では遠巻きに眺めるしか出来なかったその光景。

 自らその場に立つことができた今、彼女は果たしてどのような心情を抱いているのか。

 

 護がそっと見守る横で、有栖はポツリと呟いた。

  

「……サメ映画なら、10分後には阿鼻叫喚の渦に包まれそうな光景ですね」

 

「初めてのプールの感想がそれでいいのか?」

 

 なんだか自分のせいで余計な知識をつけてしまったなぁと、護は誰に向けていいかもわからぬ謝罪を心の中で呟いた。

 

 

 

…………

 

 

 

 さて、何はさておきプールである。

 適当な空いてるスペースも見つかり、護達は軽くストレッチをして体をほぐしていた。

 

「それにしても……改めて見ると凄い体ですね」

 

 ストレッチをする護の傍ら、ふと有栖がその体を見ながら呟く。

 

「そうか? 近接張れる術師ならこの程度は割と普通だぞ。

 東堂なんかの方がよっぽどガタイ良かったろ?」

 

「あの方は霊長目としての区分が違いますから」

 

「同じヒト科だよ」

 

「確かに、アレはイロモノ過ぎて見惚れる気にはならんな」

 

 そう言って護の肩に手を置く楓花。

 どうやら二人にとって、東堂の存在は珍獣として位置づけられたらしい。

 唯一直接の被害を被った護をして、その扱いには一抹程の同情の念を抱いた。

 

「その点、お前の体は素直に見事と言える。筋肉は有るがゴツ過ぎず、引き締まった肉体。

 昔の武人は筋トレより実践を多く積むことで無駄な筋肉を付けなかったと聞くが、お前の体はまさにそれだな。

 これまでに積んだ研鑽の跡が見える、美しい肉体だ」

 

「そりゃどうも」

 

 ペタペタとラッシュガードの上から伝わる手の感触と、惜しみない賞賛の言葉が何ともこそばゆくて、護は素っ気なく返事を返した。

 

 すると、それを見ていた有栖も興味が湧いたのか護の体に触れて来た。

 

「確かに。無人島で負ぶって頂いた時も思いましたが、こうして触れると逞しさを実感しますね」

 

 護としては筋肉ひとつで何をこんなに喜んでいるんだろうというのが正直な感想だったが、別段拒む理由も無いので二人の好きにさせる。

 

 そうしていると、ふと背中に二人の手の感触とは別に、指でツンツンと突くような感触が増えた。

 首だけ動かし振り返ってみると、そこには神室が控えめに手を伸ばしている姿が。

 

(…………何だこの状況)

 

 よもや神室まで加わってくるとは思わず、護はこの珍妙な状況に虚ろな瞳で空を仰いだ。

 

「……なぁ、筋肉なんか触って面白いか?」

 

「そうだな……男だって、好みの女性の胸や尻を見たら触りたくなるものなのだろう? それと同じようなものだ」

 

「メチャクチャ最低な例えが出て来たな!?」

 

 あまりに身も蓋も無い楓花の例えに、それを聞いていた有栖と神室はパッと手を放した。

 まぁ、その理屈で言うなら今の護は『無遠慮に体を撫でまわされている女性と痴漢』と同じ状況ということになる。二人もそれに気付いたのだろう。

 

 しかし楓花だけは、それでも尚お構いなしにペタペタと体を触って来る。

 

「ていうか、その理屈で言うなら今の俺は、現在進行形でお前にセクハラされてることになるんだけど?」

 

「ふむ……」

 

 すると何を思ったか、楓花は護の腕から手を放し自らの胸元に手を当てた。

 

「触るか?」

 

「触らねぇよ」

 

 何でそこで、自分も触らせたらイーブンみたいな理屈を持ち出すのか。

 ここでそれをやったら確実に変態扱いされるのは護の方だけである。

 

「少しくらい迷って欲しいな。

 こうも即答されると、流石に女として自信がなくなってしまうぞ」

 

「女として云々言うなら、お前はもう少し慎み持てよ」

 

「安心しろ。こんなことを言うのはお前にだけだ」

 

「何を安心しろと?」

 

 前向きに考えるなら信用されていると捉えられる発言だが、護からすれば普段が普段なだけに完全に玩具にされているようにしか聞こえない。

 

 と、そこで有栖がふいに二人の会話に割って入った。

 

「雑談はこれくらいにして、そろそろプールに入りませんか?」

 

「……それもそうだな」

 

 そもそも君が発端となって始まった会話だが? というツッコミはさておき、確かに折角のプールを前に雑談ばかりしているのもなんである。

 

 というか、有栖が楓花の胸にチラチラ悩まし気な視線を送っていたのが見えて、護としてはこれ以上この会話を続けないほうがいいような気がした。

 

「とりあえず、有栖は泳ぐの初めてだし軽く練習するか」

 

 よっと、軽い調子でプールに飛び込み、有栖達に向かってそう切り出す護。

 何をするにしても有栖の場合、まずは水に慣れるところから。割と当たり前の提案を言ったつもりだったが、そこで神室が有栖に向かって口を開いた。

 

「あんた、ちゃんと泳ぐ気はあったのね」

 

「当然ではありませんか。真澄さんは、私が何をしにプールに来たと思ったのですか?」

 

「何って……」

 

 と、そこで神室の視線が何故か護に向く。

 

「……何?」

 

「別に」

 

 なんだろう。確証は無いがとても不本意な視線を向けられた気がする。

 しかし護が重ねて問いかける前に、神室は言葉を続けた。 

 

「練習は別にいいけど、ちょっとやそっと練習したってそんなすぐ泳げるもんじゃないでしょ。

 まさか今日一日、ずっとバタ足でもするつもり?」

 

 そう言って問いかける神室はどこかうんざりした様子。

 まぁ彼女にしてみれば、折角の休みに半ば強引に連れ出され、その上退屈な練習に付き合わされるとなれば辟易と感じるのも無理はない。

 

「いえ、私も流石に一日で泳げるようになろうとは考えてませんよ。

 あくまで今日は水に慣れる程度。多少なり潜って動けるようになれれば十分と思っています」

 

 簡単に言っているが、その潜るだけのことも出来ない人間だって結構多いということを分かっているのだろうか。

 有栖の運動能力に関しては真逆の方向に信頼を抱いている護としては、その台詞が盛大なフラグにしか聞こえない。

 神室も同じことを思っているのか、ジトッとした目を向けていた。

 

「何か?」

 

「いや……」

 

「別に……」

 

 相変わらずの察しの良さを発揮する有栖に対し、揃って目を逸らす護と神室。

 

 とはいえどうしたものか。

 言っちゃなんだか、このままいきなり潜る練習をしても失敗する未来しか見えない。

 そしてこういった水泳の場合、最初の失敗が尾を引いて苦手意識を持つパターンというのも結構多い話だ。

 特に有栖みたいなプライドが高いタイプは猶更。

 

 心配しすぎ、甘やかしすぎではないかとも思うが、元々今日は思い出作りに来たようなもの。

 先程神室が危惧したように、護自身もバタ足だけで一日を終えるのは勘弁してほしいという気持ちはある。

 

 となれば、多少のショートカットは許されるのではなかろうか。

 

(ま、ちょっとくらいはいいか)

 

 そう思いながら、護は有栖に向かって口を開いた。

 

「んじゃ、練習の前にちょっとしたおまじないでもしとくか」

 

「おまじない、ですか?」

 

「そ」

 

 護は軽く頷きながら、さりげなく水の中に手をやり印を組む。

 そうして首を傾げる有栖に対し、一つの術を発動させた。

 

「どう?」

 

「どうと言われましても……ん……?」

 

 外見的には何の変化も無く、しかし直後、有栖は異変を感じ取ったのか訝し気な声を上げながら口元を覆うように手を当てた。

 

「あの……なんだか鼻が詰まったような感じがするのですが……何をしたんですか?」

 

 その言葉に、傍で見ていた楓花は護が何をしたか気付いたのか「ほぅ」と小さく呟いた。

 

「有栖の目と鼻の辺りに、水が入らないように小さな結界を張った。ま、要はちょっとしたゴーグル代わりだな」

 

 潜るのが苦手と言う人間の主たる原因は大きく二つ。

 一つは水中で目を開けることの恐怖。

 もう一つが鼻に水が入らぬよう、息を止めることを意識するあまりの緊張によるものだ。

 

 ちょっとしたとは言ったが、護の結界は普通にゴーグルを装備するよりも隙間なく完全に水を遮断できる。

 最初は違和感もあるかもしれないが、これなら初めてでも潜る事への恐怖は大分薄れるだろう。

 

 それを見ていた楓花が感心半分、呆れ半分といった感じの呟きを漏らす。

 

「常々思うが……お前の術式便利過ぎないか?」

 

「実戦じゃあんま使えない技術だけどな」

 

 彼女は便利と言うが、これだって結構複雑な演算を要しているのだ。

 こうして気軽に使えるのも日頃の研鑽があってこそ。

 それに日常でどれだけ使えようとも、刹那の判断を要する実戦ではその機能の大半が碌に使えないのだから、護としては使い勝手が悪いことこの上なかった。

 

 閑話休題。

 

「とりあえず、これで大分潜りやすくなったろ。鼻が詰まった感じになるのは我慢してくれ」

 

「ン、んっ……はい、多少違和感がありますがそれは何とか」

 

 気を付けないと鼻声になってしまいそうで話し難そうだが、それ以外特に違和感は無いようだ。

 

「んじゃ、とりあえず潜ってみるか」

 

「はい」

 

 深く深呼吸をする有栖。やがて意を決したように、一気に水中へ身を沈めた。

 同時に、それを見た護も水の中へと潜る。

 

 水の中で、有栖はしばらくの間ギュッと目を瞑っていた。

 いくら護が大丈夫といっても、やはり初めての水中。不安はあるのだろう。

 自らの指でそっと目元をなぞり、結界で水が遮られているのが確認できたところで、ようやく恐る恐る瞼を開いた。

 

 しばし焦点が合わぬようにパチパチと瞬きしていた彼女の目は、しかし程なくしてしっかりと見開かれ、水の中で向かい合う護とまっすぐに目線が合った。

 

 ジェスチャーで「大丈夫か?」の意を籠めて、OKサインを作り軽く首を傾げてみせる。

 それを見た有栖はコクリと頷きを返した。

 

 どうやら大丈夫そうだ。

 ここで一旦水上に上がってもいいが、折角なのでこのまま少し泳ぐ感覚を味わってもらうかと有栖に向かって手を差し出した。

 

 差し出された手を有栖が掴んだところで、護はそっとプールの床を蹴る。

 二人の体はスゥ~っと流れるようにゆっくり進んでいく。

 重力などまるで感じぬ浮遊感。全身から伝わる、撫でるような水の感触。

 

 時間にしてほんの数秒ほど、その感覚を味わったところで二人は水上に顔を出した。

 

「――プハァ」

 

「ふぅ……どうだった? 初めての水の中を進んだ感想は?」

 

 有栖の息が整うのを待って問いかけると、彼女は言葉を選ぶようにしながらゆっくりと感想を紡ぎ出した。

 

「不思議な感覚でしたが……悪くありませんでした」

 

「そりゃよかった」

 

 控えめな感想であるが、しかし護は有栖の瞳に浮かぶ高揚の色を見逃さなかった。

 元々水中には人をリラックスさせる効果があるが、特に水の中から見る景色や全身で感じる浮遊感に魅了される者は多い。

 どうやら有栖も、その魅力を感じ取れたらしい。

 

「んじゃ、この調子でしばらく練習するか」

 

 この分なら、割と本当に泳げるようになるのも早いかもしれない。

 そう思いながら、護はそっと有栖の手を引いた。

 

 

◆◇◆

 

 

(あいつも、あんな風にはしゃぐのね)

 

 二人の様子をボーっと眺めながら、神室はそんなことを思った。

 まぁ、はしゃぐと言ってもそこまで分かりやすいリアクションをしている訳では無いが。

 傍から見れば潜っては顔を出し、潜っては顔を出しと、ただ潜水の練習をしているようにしか見えない。

 だが普段から有栖と接している神室には、ただそれだけの行動なのに有栖がどことなく楽しんでいるように見えた。

 

 なんだかこちらの存在すら忘れられているような気もするが、まぁそれはいいだろう。神室としても放っておいてくれた方が気が楽である。

 

 しいて問題があるとすれば――

 

「……鬼龍院先輩は、泳がないんですか?」

 

 ――隣に居る鬼龍院の存在が気まずいことぐらいだろう。

 

 神室の横で、プールサイドに腰を掛けて有栖達の様子を眺める楓花。

 自分が言えたことでは無いが、ただ眺めているだけで退屈ではないのだろうか――と思うと同時に、言外に気まずいから独りにしてくれないかなぁと、神室は期待を込めて問いかけた。

 

「なに、私としてはのんびり過ごす方が性に合っているのでな。

 初めてのプールに舞い上がってる坂柳に水を差すのも悪い。しばらくは、ここでゆっくり眺めさせてもらうさ」

 

「はぁ……」

 

 自分が言えた義理ではないが、この人はそれで楽しいのだろうかと、神室は気のない返事を返しながら思った。

 

 改めて思えば、この人もよくわからない。

 掴みどころのない性格。接した時間もあまり長くないので判然としないが、てっきり今日は護と過ごしたくて付いてきたのだと思っていた。

 

 なのに今、彼女はその時間を有栖に譲っているという違和感。

 

「先輩って……五条のことどう思ってるんですか?」

 

 気付けば、自然とそんな疑問を投げかけていた。

 

「どう……か。それはつまり、異性としてどう思っているか、ということか?」

 

「まぁ……はい」

 

 他人の恋愛に首を突っ込む趣味などないが、ただこの人の場合、そもそも本当に恋愛感情と言っていいのかすら分からなかった。

 アプローチを掛けているんだか揶揄っているんだか。

 別に知ってどうこうしようという気も無いが、傍から見ている身として純粋に気になった。

 

 果たして、その回答はあっさりと告げられた。

 

「惚れている。勿論、異性としての意味でな」

 

 恥じらうでもなく、まるで当たり前の事実を告げるかのような告白。

 あまりにも平然としたその様子に、神室は一瞬理解が遅れた。

 

「……その割には、坂柳に嫉妬とかしないんですね」

 

「そうでもないさ。正直、坂柳を見ていると偶に羨ましいと思う時がある。あいつと同じクラスで学生生活を過ごせる事にな。

 だが、それは向こうも同じことだ。坂柳の立場でしか出来ないことがあるように、私には私の立場でしか出来ないことがあるからな。そこはある程度割り切っている」

 

「そういうもの、ですか……?」

 

 神室自身、大した恋愛経験も無いのであまり知った風なことは言えないが、普通は恋をしたなら相手を独占したいと思うものではなかろうか。

 特にこのプライドが高い二人ならば猶更。

 そんな神室の視線に気づいたのか、楓花はフッと笑みを浮かべる。

 

「無論、私も年頃の女としてもっと触れ合いたいと、独占したいという気持ちはある。

 なんなら、先程体を触ってみるかと言った時も、少しばかり期待したくらいだ」

 

「そういう態度を取ってるから、本気にされないんじゃないんですか?」

 

「むしろ本気にされないくらいが丁度いいのさ。

 私自身、今のあいつとどうこうなれるとは思っていない。仮に私が本気で告白などしようものなら、あいつは全力で私から距離を取るだろう」

 

「……ヘタレですね」

 

「臆病なだけなら可愛げもあるのだがな。

 あいつの場合、それ以前の問題と言うべきか……」

 

 そう言って、フッと笑みを浮かべる楓花。

 既に何度も見た飄々とした仕草。しかし何故か、神室にはその笑みがどこか自嘲気な雰囲気を含んでいるように見えた。

 

 そして彼女は言葉を続ける。

 

「あいつはおそらく……恋愛というもの自体、自分には無縁のものだと切り捨てている。

 誰かと付き合ったところで自分には相手を幸せにすることは出来ない。そんな自分には恋愛をする資格など無い。

 あいつが考えているのは、おそらくこんなところだろう」

 

「それはまた……拗らせてるわね」

 

 だが実際、神室も言われて納得してしまった。

 確かに、そんなことを考えてそうではあると。

 

「拗らせるか……確かに、あいつは人として少しばかりズレている。

 突き詰めてしまえば、そもそも恋愛なんていうものは自分の為にするものだ。愛したい、愛されたい、幸せに成りたい――とな。

 だが、護はその辺りの感情が欠けている。人なら当たり前にあるはずの、幸せに成りたいという欲求が奴には無いんだ」

 

 そう言われて神室の中によぎったのは、無人島で護が自身の手を枝で貫いた光景。

 その事例一つとってもそうだが、確かに護は普段から自身の事をぞんざいに扱っているところがある。

 

(別に、だからどうしたって話だけど……)

 

 神室のスタンスはあくまで部外者。

 護達の呪術師がどうたらという問題に首を突っ込むつもりも無いし、突っ込みたいとも思わない。どうせ自分が何か知ったところで、出来ることなど無いのだから。

 

 所詮は他人事。深入りした所で碌なことなどありはしない。

 それが分かっていて、しかしこの時神室は自身の中に妙な不快感を感じた。

 それはほんの極々僅かな、胸の奥で小さなしこりがつかえるような感覚。

 

(……なんか、ムカつくわね)

 

 その感情がどこから来るものなのか、何に対しての者なのかもわからず、神室はただ漠然とした不快感に小さく眉を顰めた。

 

「……少し長話が過ぎたか。まぁ、要はだからこそこういう時間は大切なのさ。

 呪術師であることを忘れる――とまではいかなくても、ただの学生として気楽に遊べる時間がな」

 

 だからこそ楓花は有栖の邪魔をしないのだろう。

 護の事情を知っていて、それでいて一般人側の立場に居る有栖の存在は、護にとっては唯一気兼ねなく素を曝け出せるクラスメイト。

 もし彼女の存在がなければ、護は人当たりの良い仮面をかぶり、ただただ淡々と学生という役割(ロール)をこなすように振舞っていたことだろう。

 

 しかしそういうことであれば――

 

「なら、猶更あそこに混ざってきた方がいいんじゃないですか?」

 

「む?」

 

「いや、だって……気楽に遊ぶって言うならあれ……」

 

 言いながら、神室は護と有栖の方を指し示す。

 そこから見えるのは護に手を引かれ泳ぐ有栖の姿。

 

「あれ、完全に保護者の目ですよ?」

 

「クッ……」

 

 思わぬ一言に笑いを零す楓花だが、神室は別にウケを狙ったつもりはない。

 

 今の護から漂うのは、夏を満喫しようという学生の熱量ではなく、やれやれ仕方がないなぁと子供を見守る親のそれである。

 まぁ、それでも別に本人たちが楽しめているならそれでもいいのだろうが。

 

 ただなんというか今の護、神室の目には如何にプールを楽しむかというより如何に時間を潰すかという風な見方をしているような気がした。

 もっとも、これに関しては神室自身も同じような見方をしているから思った事なので、あまり人の事は言えないのだが。

 

「……確かにな。相手に変化を求めるなら、私自身も少しは()()()()()振る舞いをするべきというものか」

 

 そう言って、プールの中に入り護達に近づこうとする楓花。

 一体何をするつもりかと、神室は問いかける。

 

「どうするんですか?」

 

「何、私も友人と遊んだ経験など皆無だからな。とりあえず、他の連中がしているような遊び方でも試してみるさ」

 

 そう言って彼女が指し示したのは、遠くで水を掛け合い遊ぶカップル。

 それを見た神室は、「え、あれをやるの?」とマジマジとそのカップルと楓花と、視線を右往左往させた。

 

「お前も一緒に行くか?」

 

「……遠慮します」

 

 すると楓花は「そうか」と返し、護達の方へと進んでいく。

 果たしてあんないかにもな陽キャな振る舞い、大人ぶってるあの人が本当にやるのだろうか、と眺めていると、楓花は唐突に護達に向かって水飛沫を掛けた。

 

 神室の位置からは細かいやり取りは聞こえなかったが、おそらく「何をすんだよ」とでも言っているのだろう。

 そんな感じのやり取りが始まり、そこで楓花は追い打ちをかけるように水を巻き上げた。

 

 再び護に掛かる水飛沫。しばし、護は滴る水滴を拭いもせずジッとしていたかと思うと、おもむろにちゃぶ台でもひっくり返すかのように楓花に向かって水を巻き上げた。

  

「ほんとにやってるし……」

 

 そこから先は、互いに水を掛けては掛け返しての繰り返し。

 途中から有栖も加わって、楓花と組んで2対1になり。そうして掛け合う三人の姿は、傍から見る分には他のプールではしゃぐ生徒達と大差ないように見えた。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 あの後、ひとしきり水を掛け合った後は、神室も交えてビーチボールを借りて打ち合ったり、他の生徒がやっているような遊びを一通り試してみた。

 そんな感じで過ごす内に、いつの間にやら昼を回って現在。

 護達はプールサイドに設けられた休憩スペースで、昼食をとるべくテーブルを囲んでいた。

 

 バッグから弁当を取り出す護。

 すると、その弁当を見て有栖が軽く目を瞠った。

 

「……どうかした?」

 

「いえ……随分と立派なお弁当だなと思いまして」

 

 護が取り出したのは、少しばかり大振りな三段の重箱。

 確かに一人分にしてはあまりに大きなサイズの弁当だ。

 

「ああ、楓花の分も纏めて作らなきゃいけなかったからな。どうせなら皆で摘まめるようにと思って、重箱にしたんだ」

 

「鬼龍院先輩の分も……というのは?」

 

 どうして護が楓花の分の弁当まで作る必要があるのかと、怪訝な表情を浮かべる有栖。

 それに対し、そう言えば言ってなかったかと思いながら護は説明を口にした。

 

「いや、夏休みの間楓花にマンションの部屋を間貸ししてたのは話したろ?

 けど楓花って料理とかしないから、その間俺が自分の分と一緒に楓花の食事も作ってたんだよ。今日も、自分の分を作るついでにな」

 

 勿論毎日作っていたという訳では無いが。

 元々、護は時間がある時は割と自炊をするタイプ。どうせ食事を作るなら、一人分作るのも二人分作るのも手間は変わらない。というか、なんなら二人分作る方が量の調整がしやすかったりする訳で。 

 そんなこんなで、料理をする時は楓花の分も作るのが半ば習慣になっていた訳である。

 

「私としては、夏休みだけと言わず今後も寮まで作りに来て欲しいくらいだがな。

 これのおかげで、すっかりコンビニ弁当が味気なく感じるようになってしまった」

 

「褒めてくれるのは嬉しいけど、流石にそこまでする気はねぇよ。美味い食事が食べたいなら自分で作れ」

 

「私とて、最近は少し料理の勉強を始めたのだぞ?

 それでも、やはりお前に作って貰った物の方が舌に馴染む」

 

 美味いと言われて悪い気はしないが、流石に学校に居る間まで毎食作ってやる気にはならない。

 まぁ、今後も任務やら鍛錬で泊まり込みが必要な時、機会があれば作るくらいはするが。

 

 と、そんな会話をしていると、何やら有栖の顔がムゥと悩まし気なものに変わった。

 

「あ、男の手料理とか無理だった? 別に無理に食べなくても大丈夫だぞ?」 

 

「いえ、そういう訳では無いのですが……すみません。あまりに立派なお弁当だったので、これでは私の作ったお弁当が見劣りしてしまいそうだったので」

 

 なんだかそれだけでは無いような気がするが、その言葉に護は有栖の弁当に視線を落とす。

 

「そうか? 随分綺麗に出来てると思うけどな」

 

 綺麗に敷き詰められた彩り豊かな肉や野菜の数々。

 おそらく、日頃から随分練習したのだろう。以前護にご馳走してくれた弁当と比較しても、目覚ましい進歩が見て取れた。

 

「そう言って頂けるとありがたいですが……私も、一応皆さんで摘まめるようにと思い多めに作ってきたんです。良ければどうぞ」

 

「そう? んじゃありがたく」

 

 護の言葉で少し機嫌を良くしたのか、微笑みながら弁当を差し出してくる有栖。

 ちなみに、神室はそこいらの屋台で適当に済ませるつもりで、弁当は用意してこなかったらしい。

 実際それで丁度良かったのだろう。結果的に有栖と護の用意した弁当を合わせれば、四人で食べるに十分そうな量になった。

 

 そんなこんなで、少しばかり遅めのランチタイムを始める四人。

 

「あ、前に食べた時より美味い。有栖、腕上げた?」

 

「そう言われても、今は皮肉にしか感じないのですが。このローストビーフ、もしかしてこれも手作りですか?」 

 

「ああ、俺火加減が難しい料理は割と得意なんだよ」

 

 だって術式で温度調整ができるから。

 

 五条護――この男、実は料理の時なんかもトレーニングの一環ということで割と術式を多用していたりする。

 結界内の気圧を操作して圧力鍋代わりにしたり、常に一定の温度で360度全方位から火入れをしたり、術式を使えばできることに際限がない。

 

 そんな感じで、術式で何ができるか探究している内に凝り性な気質が育まれ、結果的に料理の腕まで磨かれてしまったというのが、護の料理遍歴である。

 

 護の弁当を一口食べた神室も、声には出さずとも目を見開き驚いた反応をしていた。

 

「……護君、本当に私のお弁当、美味しいですか?」

 

「ん、美味いよ?」

 

 改めて自身の弁当と比較して自信を失ったのだろう。

 不安気に問いかけてくる有栖に対し、護は嘘やお世辞でも無く、素直な気持ちで頷いた。

 

 護の凝り性な気質はあくまで技術的な再現性に対して向けられるものであって、味はあくまでそれを指し示す為の指標というような扱いだ。

 分かり難いかもしれないが、要は味を高めるために技術を高めるのではなく、高めた技術を確認するために味があるということ。

 

 護としては、そんな精密機械みたいなロジックで構築された自分の味より、他人が作ってくれた意外性のある味の方が好きだった。

 

 表情を読むのに長けている有栖は、護が本心から言っているのを感じ取り、そこでようやくホッとしたように息を吐いた。

 

 そんな風に、のんびり食事を取る四人。

 ふと、そこに一人の生徒が近づいてきた。

 

「よう、珍しいところで会ったな」

 

 声を掛けられ振り返ると、そこに居たのは護も見覚えのある一人の金髪の男子。

 生徒会副会長、南雲雅がそこに立っていた。

 

 声を掛けて来た彼に対し、楓花が会話に応じる。

 

「珍しいという程でもないだろう。学生であれば、今日このプールを利用するのは自由なのだからな」

 

「そりゃそうだ。けど、お前が1年とつるんでこんなところに来てるのは、充分珍しい光景って言えるんじゃないか? 鬼龍院」

 

「わざわざそんなことを言いに来たのか? いくら副会長様といえど、私の交友関係に口を出される筋合いはないな」

 

「別にケチをつけたい訳じゃないさ。単なる好奇心だ。

 さっきチラッと見えたが、2年じゃボッチを貫いてるお前が、そこの連中とは随分楽しそうに遊んでいたじゃないか。どういう心境の変化かと思ってな」

 

「意外か? 私とて健全な学生。遊びたい盛りだ。偶にはああして羽目を外したくなる時だってある」

 

「羽目をねぇ……」

 

 そう言って探るような視線を向ける南雲。

 護としては、相変わらず仲悪いなこの二人、と他人事のように眺めていたが、そこでふと南雲の視線が護の方へと向く。

 

「五条も久しぶりだな。そこの二人はお前のツレか?」

 

「はぁ、どうも。ツレっていうか、まぁ友人です」

 

「どうも初めまして。1年Aクラス、坂柳有栖です」

 

「……神室真澄、です」

 

 護の声に合わせて、自己紹介する有栖と神室。

 

「ああ、坂柳の名は知ってるぜ。

 俺の方も知られているとは思うが、生徒会副会長の南雲雅だ」

 

「そうですか、お噂はかねがね」

 

 社交辞令的に挨拶を済ませる有栖。

 そうして自己紹介も済ませた所で、南雲は護に向かって問いかけた。

 

「お前達、午後から予定はあるのか?」

 

「予定ですか? いえ、特には……」

 

 質問の意図は分からないが、ここで変に嘘をついたところでどうせプールに居たらバレるのだから意味は無い。そう思い護は素直に答えた。

 

「そうか。それじゃあ、午後から俺らとバレー勝負でもどうだ?」

 

「バレー勝負ですか?」

 

 突然の申し出に、怪訝な顔を浮かべる護。

 見た所、プール内には他にも上級生は居るし、この南雲という男は他生徒からの人気も厚い副会長。

 遊び相手に不自由などしないだろうに、何故にわざわざほとんど交流の無い1年を誘うのか。

 そう思っていると、南雲が言葉を続けた。

 

「ああ、まさかその体つきで運動が苦手って訳じゃないだろ? こっちも歯ごたえのあるやつが中々いなくて退屈してたんでな。

 交流も兼ねて、ちょっとばかし相手になってくれよ」

 

「いや、俺バレーってやったことないですよ?」

 

「そう硬く考えるなよ。俺だって体育の授業以外じゃまともに習ったことも無いからな。

 言ったろ。交流も兼ねた遊びだ。仮にお前が見掛け倒しのヘボだったとしても、別に責めやしないさ」

 

 そう言ってニヤリと笑みを浮かべる南雲。

 これはもしかして挑発のつもりなのだろうか。

 生憎護としては、良く知りもしない相手に侮られた所で別に一向に構わないのだが。

 

 まぁ、それはそれとしてどうしようかと考える。

 正直護としてはどっちでもいいというか、元々予定も無かったし少し付き合うくらいまぁ別に、という感じである。

 とはいえ、それも他のメンバーが良いと言えばの話。あくまで今日は、楓花や有栖達が楽しめなければ意味が無いのだから。

 

 そう思っていると、楓花が口を開いた。

 

「まったく、私の事は置いてけぼりか? 南雲」

 

「別に無視してやいないぜ。お前も参加したいんなら歓迎してやるさ」

 

「君に歓迎と言われると逆に遠慮したくなるが、まぁそれはいいだろう。

 勝負というなら、まずは具体的なルールを明確にするべきではないか?」

 

「ルールか……そうだな、基本的にはそっちに合わせてやるよ。チームの人数、セット数、水中バレーかビーチバレーか、好きな条件を設定すりゃいい」

 

 なんともこちらに有利なルール――でもないか。

 何せこちらは楓花を入れて四人。内一人は体力に不安のある有栖。

 対し向こうは声を掛ければ幾らでも人を募れるだろう副会長。向こうの方がこちらに合わせるのは当たり前なのだから。

 

「なんなら、加えて景品の一つでもつけてやろうか?

 そっちが勝ったら、先輩からちょっとした小遣いをやるよ」

 

「小遣い、ですか?」

 

「ああ……五条お前、1学期の間はしょっちゅうポイントを払って休んでたんだって?

 何が理由か知らないが、んなことしてたらポイントも大して余裕はないんじゃないか?」

 

 その言葉に、護は眉を顰めた。

 護が学校を休んでいたこと。これ自体は1年の間でもそこそこ知られていることだから、2年に広まっていても然程驚きは無い。

 

 だが、ポイントに余裕が無いとまで言ったこと。

 考えすぎかもしれないが、この台詞はまるで自分がこれまで自分が休んできた日数を把握されているようだと護は感じた。 

 

「そっちが勝ったら、それなりのポイントをくれてやるよ」

 

「……逆に、負けたらどうするんですか?」

 

 何のリスクも無く、メリットだけ得られるなんて考えは護の中に無い。

 加えて護は、この先輩からにじみ出る性格の悪さを感じ取っていた。

 

「話が早いな。確かに、メリットだけ合ってデメリットが無いのは不公平だものな」

 

 案の定、意地の悪そうな笑みを浮かべる南雲。

 

「そうだな……ポイント、と言ってもお前の方は大して払えないだろ。

 よし、そっちが負けたら生徒会に入ってもらおうか」

 

「お断りします」

 

 瞬間、護は即座に断った。

 

「なんだ、自信が無いのか?」

 

「そうですね。さっきも言ったけど、バレーってやったことないんで。

 初めてやる競技で、絶対勝てると豪語できるほど自惚れちゃいないです」

 

 護としても、正直ポイントが貰えるなら欲しいというのは本心だ。

 まだある程度の余裕はあるが、今後も突然の任務が入る可能性、試験など学校生活の中でポイントが必要に駆られる可能性を考えたら、正直今の手持ちは心許ない。

 

 それでも万が一負けた時のリスク、仕事に支障が出る可能性を考えるなら、これは最早負けられない勝負。遊びの域では済まなくなってしまう。

 

 と、そこで有栖が口を開いた。

 

「失礼、少しいいでしょうか?」

 

「坂柳か、何だ?」

 

「その勝負、私が護君の代わりに賭け金をベットしてもよろしいでしょうか?」

 

「は?」

 

 突然の有栖の発言に呆けた声を上げる護。

 一方南雲は興味深そうな視線を有栖に向けた。

 

「もしも護君が負けた場合、私から50万ポイントお支払いしましょう。その代わりこちらが勝利した場合、そちらが同額の50万ポイントお支払い下さい」

 

 50万ポイント。それは船上試験で有栖が優待者を当てた報酬と同額。

 支払いは彼女にとって不可能ではない。

 その提案に、南雲は楽しそうに声を上げて笑った。

 

「ハハッ、いいぜ。そっちが勝ったらしっかり50万ポイント払ってやるよ」

 

「では、そういうことで」

 

 護が口を挟む間もなく、勝手に合意を進めて行く二人。

 

 いや、まぁ元々護は賭けの内容さえなければ暇潰しに勝負は受けてもいいかと思っていた訳で、賭けそのものに関しては、受けたのは有栖の自由意思。

 果たしてこの責任の所在はどこへあるのやら。

 無駄に入り組んだ状況に、護は掛ける言葉を失った。

 

 そこで更に楓花が会話に加わる。

 

「それでは、私は護と組ませてもらおうか」

 

「あ? お前本気で参加する気なのか?」

 

「何か問題か? 先程、君も歓迎すると言っていた筈だがな」

 

「マジか……ハハッ、今日は本当に珍しいことがあったもんだ。

 ああ、いいぜ。ルールはどうする?」

 

 そこで護はようやく意識を復帰させる。

 流石にルールまで勝手に決められたら溜まったもんじゃない。

 この際、勝負するのは仕方ないとしてちゃんと勝つ気でやってやると、護は口を開く。

 

「やるなら水中バレーじゃなくビーチバレーで。二対二のペアでお願いします」

 

 水中では運動能力も上手く発揮できないうえ、人数が増えればそれだけイレギュラーな動きも多くなる。

 護としてはここだけは譲る訳にはいかないと、真っ先に挙げた。

 

「ああ、いいぜ。ルールは公式ルールでいいか?」

 

「いえ、ビーチバレーの公式ルールを知らないんで。これからチェックするんでセット数とか細かい部分は後で決めさせてください」

 

「よし、昼食ってすぐ動くのは辛いだろ。開始は今から1時間後でどうだ?」

 

「……じゃあ、それで」

 

 トントン拍子に決まったところで、去っていく南雲。

 彼の背中が見えなくなったところで、護はガックリと肩を落とした。

 

「ホント、何やってくれてんのさ」

 

「ダメでしたか? ポイントを得られるいい機会だと思ったのですが。

 勿論得られたポイントは護君と折半させて頂きますよ?」

 

「そりゃ俺が勝てばの話だろ」

 

「別に負けたとしてもそれは私の見積もりが甘かったと割り切ります。

 それになにより、護君のことを信じてますから」

 

「可愛く笑えば何でも許されると思うなよ?

 言っとくけど、呪力を使ってまで勝つ気はねぇからな」

 

 そう言って深々と溜め息を吐く護。

 一方で、そんな護とは対照的に楓花は楽しそうに口を開いた。

 

「フッ、中々楽しい展開になってきたな」

 

「お前、ノリノリだな。こういうゲーム好きだったっけ?」

 

「なに、こんな時でも無ければ、お前と肩を並べる機会などそうそう無いからな。

 たとえ遊びでも、一度くらい隣に立ってみたかったのさ」

 

「ムゥ……」

 

 それを言われると護は辛い。

 誰かの隣に立って戦いたい。そういう気持ちは護自身もよく理解できるからだ。

 まぁ、それがこんな勝負でいいのかよ、という気持ちはあるが。

 

 ともあれ、既に決まってしまった以上、あまり愚痴愚痴言っても仕方ないだろう。

 前向きに捉えるなら、護自身はリスクを負わずポイントを得るチャンス。

 本来自身が負うべきリスクを有栖が肩代わりしているという情けない点に目を瞑れば、悪い話ではない。

 

 なんだかんだ言って、護もそこいらの生徒に運動能力で負けない自信はある。

 相手が余程の相手でもない限り、負ける心配は無いだろう。

  

 

 

 ~1時間後~

 

 

 

 ビーチバレーのコートには、大勢の生徒が観客として詰めかけていた。

 多額のポイントを賭けた異例の一戦とは言え、あまりに異常な観客の数。

 彼らの注目の中心に居るのは、コートの中に立つ二人の生徒。

 

 一人は生徒会副会長、南雲雅。そしてもう一人は、彼の隣に立つ黒髪の男子。

 

 その姿を見て、対面のコートに居る楓花も珍しく驚いたような呟きを漏らした。

 

「これはまた、意外な人物を連れて来たものだな」

 

 その生徒の姿には、護も見覚えがあった。

 直近で見た機会と言えば、1学期の終業式。

 全校集会などの場で、度々壇上に上がるその生徒の名は――

 

 ――生徒会長 堀北学(ほりきたまなぶ)

 

 おそらくこの学校で最も知名度の高い男子生徒が、そこに居た。

 

 

 

 

 

 

 





 きっとプールで遊ぶことの何が楽しいか、なんて考えるのは無粋な思考なのだろう。
 一々起こした行動に対し意味を問うなど、ゲームをしている人間に対し「それって何が楽しいの?」と問いかけるようなもの。

 例えば子供の頃の遠足。例えばお祭りでやる金魚すくい。
 それらは個人に対し具体的な利益をもたらすものではないけれど、やっている人間からすればそんなことを考えようとも思わない。
 結局、何かを楽しむ上で大切なのは、そう言った童心を忘れないことではないだろうか。

 なんて言いつつ、作者はプールで楽しく遊んだ思い出とか全く無いんですけどね!
 いや、水着回を甘く見てた。禄にプールを楽しんだこともない人間が、プールで楽しく遊ぶ様を描けると思ったのが思い上がりでした。

 そしてビーチバレー編。
 これも一気に仕上げて一緒に投稿したかったんですが、ちょっと間に合いませんでした。
 今回も長くなりすぎた結果分割。次回の仕上げにもう少し掛かりそうです。申し訳ありません!

夏休みの締めくくりの水着回、開催するならどっちがいい?

  • よう実4.5巻準拠。学内プールに行こう
  • 高専メンバー参加型。学外で皆と楽しもう
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