護がコーチ役に任命されて翌日。
体育の時間。護は目の前で走る生徒達を眺めながら、カリカリとペンを走らせていた。
(葛城君は踏み込む方に意識が行き過ぎて足の回転が遅い。鳥羽君は出だしが崩れ気味。真田君は吹部だからか割と肺活あるな。もうちょい筋肉をつければ結構変わりそうだけど…………)
今、護がやっているのはクラスメイト各々の課題の洗い出しだ。
順番に走って記録を測る。やってること自体は先日の体力測定と同じだが、今回護は見学。
走っている姿を横から眺め、個々の問題点を浮き彫りにするのが今日の目的だった。
(女子の方はやっぱ全体的に男子より体力は落ちるか……まぁ
汗を掻きたくないのか、全力でやってない娘もチラホラいるし……やっぱ一番の問題は――)
ガラスのような無機質な瞳で観察しながら黙々と思考を巡らせる護。
視線は走っているクラスメイトに固定したまま、ペンを持った手は絶えまなく動く。
しばらくして全員が走り終え、そこでようやく手が止まった。
そして一言。
「……ダメだこれ。効率悪いわ」
「何か問題でもありましたか?」
ポツリと漏らした感想に、隣で見学していた有栖が疑問の声を上げた。
「問題って言うか、課題が多すぎ。一人一人改善点を挙げてったらキリが無いし、やっぱ俺一人で全員を見るのは無理があるわ」
徒競走だけなら適当に練習メニューを割り振って適宜フォームチェックをすれば済むだろう。だがそれ以外にハードル走や二人三脚、加えて団体競技もとなるとチェックすべき項目が多すぎて全部は見きれない。
「何も完璧に仕上げる必要は無いのでは? わざわざ小まめに指摘しなくても、個々に大まかな改善点を指摘するだけでも十分かと思いますが」
「それで皆が勝手に練習して結果を出してくれるならいいけどさ。それが期待できないから問題なんだよ。
はっきり言って、今の皆からはそこまでのモチベーションが感じられない」
「モチベーションですか」
「別にやる気が無いとまでは言わないよ? ただ何て言うかさ……危機感が無い?
自分の成績が勝敗に影響するって意識が足りてない。自分がダメでも他が居る。悪い意味で甘えが出てるってのが俺の印象」
「甘えですか……言われてみればそうかもしれませんね。特に現状、Aクラスはクラス争いでも独走していますから。そういった部分で慢心があるのは否めません」
おそらくAクラスの皆は、指示さえすればその通りに動いてはくれるだろう。その辺りの真面目さに関しては信用している。けれどそれだけ。
「当たり前のことを言うようだけど、人が成長するのに一番必要な物って本人のやる気だと思うんだよね。
我武者羅に努力すれば結果が出ると思ってる人間もそれはそれで論外だけど……まぁ根は同じだな。
そういう人間は、懸けた時間に満足して自分と向き合うことをしていない」
「随分と含蓄の籠った言葉ですね」
「そうか? 割と当たり前のことを言ったつもりだけど」
「そのような言葉が当たり前に出るくらい、護君の人生は重厚ということでしょう。
護君からすれば、無為な努力をしている人間は見ていて苛々するのではありませんか?」
「どんだけ心狭いと思われてんだよ。
別にさ、やる気の有る無しを責める気は無いんだよ。そんなの個人の勝手だし、それに関しては俺も他人のこととやかく言えないからな。
けど今の俺って一応コーチ役だし? 最初から効果が薄いと分かってる練習をさせる訳にもいかんでしょ」
他人が勝手に意味の無い練習をして時間を浪費しようと何も思わないが、今の護は仮にもコーチ役。
自分の指示で行った練習で結果碌な成果が得られませんでしたでは、それに費やした自分の時間すら無駄にするようなもの。
しいて護に苛つくポイントがあるとするならそこだろう。
(なんにせよ、問題なのはクラス全体に蔓延した緩んだ空気。それを払拭してどうやって競争心を引き出すか。
そのためには練習メニューどうこうってより、抜本的な部分で工夫が必要だな。となると……)
「……割るか」
「割る?」
疑問符を浮かべる有栖には答えず、護は新たにノートに書きこみ始める。
その様子を見てそっと横から覗き込む有栖。
ノートに書かれていくのはクラスメイト達の名前と数本の線。書き始めてすぐ、有栖は護がしようとしていることを理解したらしい。納得したように小さく「成程」と呟いた。
「今更だけど、俺の好きにやっていいんだよな? 有栖の役割も勝手に振り分けさせてもらうけど」
「構いませんよ。私も練習時間中は手持無沙汰でしたから」
「そ、んじゃ遠慮なく……葛城くーん、ちょっと来てくれるー?」
一応の確認も済んだところで、護はノートを書き終えるとグラウンドへ向かって呼びかけた。
振り向く葛城。葛城はすぐにこちらに気付くと、周りに断りをいれ近づいてくる。
「どうした?」
「ん、とりあえず方針は決まったからその報告。詳しくはノートに書いたから見てくれる?」
言いながら、護は葛城にノートを手渡す。
書いてある内容自体は別段複雑なものではない。
葛城は開かれたページに目を通すと、そこに書かれた内容を呟く。
「これは……少人数でのグループ分け?」
「そ、男女それぞれ2、3人ずつ混ぜた5人編成。今後練習時間はそのグループで練習してもらう」
「……少数のグループに分けることの意義は理解できる。全員で同じ練習をするより、グループ単位で個別に練習をした方が効率は良いからな。
だが、男女混成にする理由はなんだ?」
「効率化ってのもあるけど、それ以上に競争心を煽るのが狙いだからかな」
「競争心?」
そこで護は、先程有栖にも語った内容を葛城に聞かせる。
現状のAクラスに欠けている向上心。
葛城自身、皆に混じって練習に参加していたからこそ感じ取れる空気もあったのだろう。思い当たる節があったのか、話を聞いている途中で渋面を浮かべた。
「ここに書いた組み分けは、主に二つのパターンで振り分けてある。
一つは単純に成績が近い者で纏めたグループ。シンプルに実力が近い者同士で競わせるのが狙いだね。特に男子としては女の子の前で情けない姿は見せたくないだろうし、まして記録で負けるなんてプライドが傷つくだろ? それを加味した上での男女混成」
「ふむ……もう一つのパターンは?」
「二つ目は今言ったパターンで分けきれなかった生徒。男子の成績上位者と女子の成績下位者での組み合わせだね」
身も蓋も無い言い方をするならあぶれ者を纏めたグループ。
男子と女子では身体能力に差がある以上、成績が近い者を纏めたらどうしたってそれぞれ余る生徒が出てくる。
「余り者のグループって言ったら悪いけど、一応ちゃんとした狙いもある。
今の時点である程度記録を出せてる男子って、要は普段から自主練や部活で鍛えてるタイプだからさ。
そういう人達には運動が苦手な子の面倒を見てもらった方がいいだろ?」
「成程、理屈は分かった。グループ分けに関しては異論は無い。無いが……具体的にどういう練習メニューを組むつもりだ?
確かに練習効率は上がるかもしれないが、全てのグループを個別に監督するとなればお前の負担が跳ね上がるだろう」
「んな全部のグループを俺一人で見る訳ないでしょうよ。そこは葛城君にも協力してもらうよ」
「俺に?」
「5人グループで分割する都合上、俺と有栖を抜いたら3人はグループ分けからあぶれることになるからね。葛城君には、有栖と他二人と一緒に監督側の立場に回ってもらう」
「それは構わないが……監督役と言われても、俺自身あまり記録が良い方ではないぞ?」
葛城はガタイが良い割には体育の成績自体はあまり良くは無い。
筋力自体はそれなりにあるし、決して悪い成績でも無いのだが、運動センスという点においては少々パッとしないところがあった。
だが護としては別にそれで問題無い。
「別に問題無いよ。監督役と言っても、やってもらうことはそこまで難しく無い。
大まかな練習メニュー自体は俺が組むし、葛城君達にやってほしいのはそのメニューの消化作業。
練習中の記録を録ったり、フォームチェック用の動画撮影をしたりとかだね」
「それなら、別に俺である必要も無いと思うが……」
「だって君、どうせ言われなくても自主練するタイプでしょ?」
「む……」
「授業中の練習時間が多少削られたって大して影響無いだろうし、纏め役としても適任だからね」
勿論葛城自身にも時間を見つけてアドバイスはするつもりではあるが。
真面目さに定評のある葛城ならこまめに見てなくても勝手に練習するだろうし、時折助言するだけで十分だろうという判断である。
「分かった。そう言ってもらえるなら引き受けよう。それで、残りの監督役には誰を選ぶつもりだ?」
「一人は鬼頭君。成績はクラスでも頭一つ抜けてるからね。運動神経が良い彼には、皆のアドバイザー役に立ってもらおうと思ってる」
「鬼頭か。確かに能力的な面では妥当かもしれんが……」
そう言いながらも、なんとも芳しくない反応の葛城。
言いたいことは分かる。普段の鬼頭は寡黙で他者との交流を持とうとしない生徒。
特徴的な風貌から周りに威圧感を与えることも多く、その辺り周りと馴染めるか不安なのだろう。
「まぁ、彼も口が上手いタイプじゃないけど、そこはもう一人の監督役にサポートしてもらうつもり。
その辺りを考慮した上で、あとの一人は女子から――
――白石さんに頼もうと思ってる」
「白石に?」
言いながらグラウンドへと視線を向ける護。
そこに居たのは、鮮やかな長い金髪を携え左目の泣きボクロが特徴的な一人の女子。
Aクラス内においての成績は中の上。身体能力は低めで成績面に関しては決して目立つ生徒じゃないが、物静かな性格と儚げな美貌で密かに男子達から人気を集めている生徒である。
何故彼女に? と疑問気な様子を浮かべる葛城。
いや、彼だけではない。白石の名を出した瞬間、表面上は素知らぬ振りをしながら有栖もまた小さく目を見開くのが見えた。
その反応を横目で流し見ながら、護は言葉を続ける。
「白石さんって結構周りのことよく見ているからね。
男子だけだと練習中女子側とコミュニケーションが取りにくいだろうし、彼女ならサポート役として問題無いでしょ」
まぁ、白石を選んだ理由はそれだけでは無いが。
今この場で葛城にそこまで言う必要は無いだろうと思った護は重ねて言葉を続ける。
「今回鬼頭君には白石さんと、葛城君には有栖とペアを組んだ上で、監督役に当たってもらう」
「俺が坂柳と?」
「よろしくお願いします。葛城君」
意外そうな様子を隠しきれない葛城。
当然の反応だろう。最初の頃に比べたら軟化したとはいえ、未だ葛城と有栖の関係は良好とは言い難い。本人の気質的にも相性が良いとは言えない二人だ。
とはいえ、護も別に意地悪でこの組み合わせにした訳では無い。
「有栖にも鬼頭君にも、それぞれ頼みたい役割がある。ペアで当たってもらう都合上二人は分けておきたいんだよ」
「坂柳と鬼頭にしか出来ない役割があるということか?」
「有栖の場合、運動神経はともかく、トレーニングに関する知識と分析力はある。
有栖にはそれを活かして、主に筋トレとか体力づくりの基礎トレーニングをメインに見てもらいたい」
「運動神経はともかく、は余計です」
「事実でしょうよ」
別に本気で気にしてる訳でも無いだろうに、護の肩に顎を乗せ拗ねたポーズをとる有栖。
そんな有栖を適当にあしらいながら護は説明を続ける。
「んで、鬼頭君に期待してるのは主に感覚的な部分でのアドバイス。
フォームが崩れないかとか、動きにくい部分がないかとか、技術的な部分の修正作業」
大まかな流れを整理するならばこんな感じだ。
まずは5人編成の7グループを作る。
それを毎時間、護と他二組のコーチ役で2、3グループずつ分担して受け持つ。
護が行うのは個々の改善点と課題の洗い出し。
有栖・葛城にやってもらうのは基礎トレーニングをメイン。護が洗い出した課題の内、体力・筋力面を重点的に改善を目指す。
一方で鬼頭・白石にやってもらうのは技術面における課題。護のアドバイスを元に、走るフォームなど効率化させ定着させていく作業。
「――とまぁ、ザックリ説明するとこんな感じかな。何か質問ある?」
「いや、質問というか……この短時間でそこまで考えたのか?」
「そうだけど」
なにやら呆気に取られた様子の葛城だが、護にしてみれば単に効率性を考えて振り分けただけである。
そもそも、与えられた期間が1カ月。しかも使える時間が体育やホーム―ルームの時間だけというのが嘗めているのだ。
限られた時間、限られた手札で効率を求めれば、どうすればいいか取れる手段も必然的に限られてくる。
「…………わかった。俺からは異論は無い。団体競技や二人三脚はどうする?」
「それは後回しかな。今の内からあれこれ手を付けたって中途半端になるし、まずは基礎固め。
ああ、あと場所なんだけど、学校のトレーニング室って使ってよかったんだっけ?」
「ッ、トレーニング室。そうか、それもあったか」
この学校は設備に関しては潤沢に金を掛けているだけあって、校内にはスポーツジムさながらのトレーニングルームも設けられている。
普段授業ではトレーニングマシンの数にも限りがあるため使われず、もっぱら利用するのは運動部ばかりの設備。
そういった設備を効率よく運用できるのも、グループ分けする利点の一つ。
葛城も言われて気付いたのか、ハッとした表情を浮かべた。
「おそらく問題無いとは思う。後で先生にも確認を取って置こう」
「よろしく。もし使えるようなら基礎トレはそこを使って。
体育の時間ならそうそう他クラスとブッキングもしないだろうけど、もし他クラスとかち合ったら校舎の外周とか階段とかを使って走り込みかな」
「了解した」
「そんじゃ、しばらくはこの流れでやって様子を見ようか」
◆◇◆
「――って訳で、白石さんには鬼頭君のサポートをお願いしたい」
「なるほど……」
昼休みになると、護は食堂にて白石へ監督役の件を願い出ていた。
食堂の隅、人気の少ない一角に陣取る二人。普段共に行動している有栖は今この場にはおらず、一対一で対面していた。
「幾つか質問してもいいでしょうか?」
「どうぞ」
「ありがとうございます。色々と聞きたいことはあるのですが、まず――何故私なのでしょうか?
坂柳さんや葛城君、鬼頭君は選ばれる理由も何となく分かるのですが、私の場合は何を見込まれたのでしょう?」
「ん~……しいて言うなら人気かな」
「人気、ですか?」
護の端的な返答に対し、首を傾げる白石。
これから語るのは葛城には話さなかった本当の理由。真面目な葛城にはあまり良い印象を持たれないだろうと口にはしなかったが、白石本人であれば問題無いだろうと思いながら口を開く。
「そ、白石さんって男子からの人気高いでしょ?
監督役として君が見ててくれれば、それだけでやる気を出す男子は一定数居るだろうからね。そうやって士気を上げようってのが、一番の理由」
言われたことが意外だったのか、パチリと目を瞬かせる白石。
「……まさか面と向かってそのような事を言われるとは思いませんでした」
「白石さんだって自覚してんでしょ?」
「確かに少々好意的な視線を向けられているという自覚はありますが、正面からそれを利用しようと言う人は居ないと思いますよ?」
「俺も無自覚な相手だったらこんなこと言わないよ。変に人間関係が拗れても困るし。
けど君の場合そういったバランス取るのも上手そうだから。その辺りも踏まえて適任だと思った訳」
護とて、単に男子から人気があるという理由だけで白石を推した訳では無い。
恋心というのは、扱い方を間違えれば容易く人間関係が拗れ得るもの。
異性から好かれる人間は同性からは疎まれるし、行き過ぎた好意は暴走を招くこともある。
それを踏まえた上で、白石飛鳥という少女は正しく自身に向けられる好意を自覚して振舞える人間だった。
「ふふっ、褒め言葉として受け取らせて頂きます。
まさか五条君が私の事をそこまで見ていたとは知りませんでした」
「そりゃ半年近く同じクラスに居たら色々分かるさ。ていうか、むしろ
そう言った瞬間、これまで一定のリズムで返答のあった会話に、僅かな沈黙が落ちた。
離れた席に座る生徒達の喧騒がやけに遠く聞こえる中、白石は手元の紅茶に口を付けると、落ち着いた態度で口を開いた。
「……そこまで気付かれていましたか」
「昔っから値踏みするような視線には慣れてるんでね。そのくせ君、俺や有栖とは明らかに距離取ってたし、なんかあると思うのは当然でしょ」
この学校に入学して、護は割と早い段階から彼女が自分に好奇心の籠った視線を向けて来ることに気付いていた。
入学当初から周囲の注目を集めていた護にとって、そういった視線を向けられる事自体は然程珍しい事でもなかった。気になったのは、彼女がそんな視線を向けておきながら明らかに自身と距離を取っていたこと。
ほんの些細な違和感ではあるが、護が彼女に意識を向ける材料としては十分であった。
「なるほど、この場に坂柳さんがいないのも、こちらに気を遣って頂けたということでしょうか?」
「まぁね。有栖が居たら色々話しにくいこともあるかと思ってね」
ついでに言うなら、こうして踏み込んだ話に発展する可能性を見越した上で他の同行者を断ったと言うのもある。
「……少し意外です。坂柳さんが素直にそれを許すとは思いませんでした」
何故か、ここで初めて素直に驚いたような表情を浮かべる白石。
有栖が素直に護を送り出したのが、そんなに意外なのだろうか。
護が怪訝な表情を浮かべていると、そんな疑問を察したのか白石が口を開く。
「どうやら、坂柳さんから私の事は聞いていらっしゃらないようですね」
「そっちが俺に関わろうとしなかった以上、こっちが詮索するのも良くないと思ってね。逆に聞くけど、君は俺の事をどこまで知ってるの」
「詳しいことは何も存じません。
私はただ、この学校へ入学を薦めてくれた方から忠告を受けただけですから」
「忠告?」
「はい。今年度、五条護という生徒が入学する。その人物に出会ったら決して自分から関わろうとはしないこと。もし向こうから関わってくる場合は、最大限その要望に応える事。
私が言われたのはそれだけです」
「あぁ……成程。誰かは知らないけど、それを君に言った人は良く分かってる」
「そう、なのですか?」
そこまで聞けば、護にもなんとなく大体の背景は見えて来た。
察するに、白石のバックに居る存在はそれなりの地位を持つ人物なのだろう。『入学を薦めてくれた』という言い回しからして単なる保護者ではない。
下手に関わりを持つな。関わらざるを得なくなった時は余計なことはせず機嫌を損ねるな。
その人物が言ったのは、要はそういうこと。
もしその人物が御三家という存在を知っていて言ったのなら、正しいアドバイスだ。
「もし今後同じような忠告をされる相手がいたら、気を付けた方がいい。
俺みたいのはむしろ例外。見られてるのに気づいた時点で、もっと荒っぽい対処を取る奴だって居るからね」
「つまり五条君であれば、積極的に関わっても問題無いということでしょうか?」
「学友として関わる分にはね。だからって、変にこっちの事情を詮索するのは止めときな。
深入りしたって碌な事にはならないからね。実際有栖もそれで痛い目見たし」
まぁ有栖の場合は本人の意思に関わらず巻き込まれた結果なので、どうしようも無かったと言えばそうなのだが。
「痛い目ですか。それは中々好奇心がそそられますね」
「……君、そういうとこ有栖に似てるわ」
どうやら、警告の意味も兼ねて有栖の名前を出したつもりが却って好奇心を刺激してしまったらしい。
護は軽く溜息を吐きながら、少々視線に力を籠める。
「言っとくけど、俺は人の忠告を無視する馬鹿が馬鹿やって痛い目を見ても、自業自得だって思ってるから」
「……少々口が過ぎましたね。ですが許してください。これでも精一杯湧き上がる衝動を我慢しているんですよ?
今も、こんなに通る声で会話しているのに、誰もこちらに意識を向けない現状が不思議で仕方ないのですから」
「そういうとこ、わかっていても触れんなよって言ってんの」
「五条君がそう望むのであればそうしましょう」
聞き分けが良いのか悪いのか。
ひとまず、白石の方にこれ以上踏み込む気は無さそうなので良しとしよう。
白石のバックに居る人物が誰かとは敢えて聞くまい。
こちらに対し卑屈とも取れるような助言をしているような人間だ。
名前を認知されること自体望む所では無いだろうし、何よりこちらを詮索するなと言っておいてこちらが詮索するのは不公平というものだろう。
「なんか大分話が逸れたけど、話を戻すよ。練習の監督役、引き受けてくれる?
ああ、一応言っておくけど俺の要望に応えろって君の……上司? の言いつけは気にしなくていいから。
嫌なら嫌で断ってくれて構わない」
「その件でしたら、お受けします。
個人的にも五条君とは良好な関係を築いていきたいので、私にできる事であれば何でもお手伝いさせて頂きます」
「そう、んじゃよろしく」
何でもを強調しながら微笑む白石。
護はなんだか余計な借りを作っちまったかなぁ、と思いながら気の無い返事を返した。
正直、原作における情報が不透明な状態で白石を出すのも抵抗があったのですが、男子達のやる気を出すという点で彼女以上の適任も居ねぇだろうなと今回コーチ役に抜擢しました。
個人的に悩ましいのが、果たして彼女という『観察者』が綾小路個人に対して用意されたものなのか、それとも別の役割を持って入学した彼女の元に偶然綾小路が舞い込んだのか。
個人的には後者だと思いたい。というか切実にそうであってほしい。
仮に前者だとしたら、入学前かなり前の段階から綾小路が入学するという情報をキャッチしていたことになるし。
仮に綾小路の入学が計画されていた事だったとしても、それが決定したのは割かし直近の筈。
白石と似たような配役の生徒が複数存在するらしき発言から考えても、綾小路一人の為に複数の席を急遽用意したというのは色々と無理がある気がする。
それと、なんだかストーリーがほとんど進まなくて申し訳ないです。
今回の体育祭、どういう手順で進めて行くべきかストーリーラインが定まらなくて、現在書くべきシーンをバラバラに書き進めてる状態でして。
一応、次回の予定としては綾小路視点からDクラスとの作戦会議を載せる予定です。
この辺りはある程度書き進められてるので、何とか1週間くらいを目標に頑張りたいと思います。まぁ、そう言って毎回ちょっと時間オーバーしてる訳ですが。
――5月10日追記――
申し訳ありません。1週間目標とか言って2週間も経った現在ですが、思った以上に苦戦しており未だ仕上げ切れておりません。
どうしてもキャラクター同士の話し合いの流れがしっくりこず、書いては消してを繰り返し現在ようやく9千字。
読者の皆様には毎度お待たせして申し訳ありませんが、もう少しばかりお待ち頂きたければ幸いです。
夏休みの締めくくりの水着回、開催するならどっちがいい?
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よう実4.5巻準拠。学内プールに行こう
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高専メンバー参加型。学外で皆と楽しもう