天羽組VS死穢八斎會   作:アニアス

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第二話 突入

死穢八斎會の組員が天羽組と抗争を繰り広げている地下通路。

蛍光灯が薄く照らす通路を若者のオーバーホールと側近の『クロノ』が歩いており、クロノの腕には壊理の姿もあった。

 

正式な許可を出していないこの通路はオーバーホールが個性を消す弾丸を造るための研究所でありながらも脱出経路でもある。

ヒーローが襲撃を仕掛けてくる情報があり準備は済ませていたが天羽組がカチコミをしてきたため予定よりも早く使うことになってしまい今に至る。

 

「まさかヒーローよりも先に天羽組が来るとは、少しだけ予想外でしたね」

「どのみちヤツらとは衝突する。ここに辿り着いたとしても寧ろ好都合だ。コイツさえあれば天羽組もただでは済まない」

 

そう言いながらオーバーホールは持っている完成品の弾丸が入ったケースを見せつける。

狂人揃いとはいえ個性を消してしまえば天羽組の戦力は著しく落ちるため特に慌てている様子もなかった。

 

そんなオーバーホールに対してクロノは前から思っていたことを聞いた。

 

「それにしても天羽組の連中を手にかけた時は流石に肝が冷えやしたよ。天羽組の組長とウチの組長は長年の茶飲み友達じゃないですか」

 

死穢八斎會と天羽組は決して対立しているわけでもなく、お互いの組長同士で極道が生き延びる術を共に模索しあった仲でもあった。

クロノやオーバーホールも天羽組の組長とは交流があったため違法な武器で相手のシマを荒らした挙げ句手を出したのは流石に不味いのではとクロノは思っていたが、オーバーホールは淡々と答える。

 

「天羽組もオヤジと同じようにやり方が温すぎる。昔ながらの仁義を貫くやり方じゃこの社会は生きてはいけない…だから俺が新しい極道の社会を作るんだ」

 

組長と対立しベッドで寝たきりにさせただけでなく、他の組にまでも手をかけてしまったオーバーホール。

後先考えず死穢八斎會の復権の未来しか見えてない彼はその歩みを決して止めることはなかった。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

場所は変わり庭園では、カチコミを仕掛けた天羽組が一通り組員たちを再起不能にさせ終えていた。

 

「雑魚は片付いた。残すは悪逆無道に堕ちた諸悪の根源のみ」

 

血に濡れた日本刀を和紙で拭きながら和中は事務所を見上げる。

今回は和中がメインでカチコミを行っており、それに狂人たちも続いていく。

 

「可愛い子分のタマ取ったオーバーホールくんは1億万回刺しまーす!」

「取り敢えず両目玉グリングリンは確定な」

 

特に野田と小林の怒りは凄まじく速水も冷や汗を流してしまう程だった。

そしていざ乗り込もうとした時だった。

 

「あーあー派手にやってくれたじゃないですかぁ」

 

『!!』

 

不意に後ろから声をかけられて振り返ると、見上げてしまう程の大柄な体格にペストマスクを着けた男がいた。

 

鉄砲玉八衆の1人『活瓶 力也』

オーバーホールが独断で集めた側近にして使い捨ての駒の内の1人である。

 

「取り敢えず天羽組の皆さん、これ以上先に進むのは遠慮してくださいよ」

 

これまでの雑魚とは違う雰囲気を漂わせている活瓶に天羽組は身を引き締める中、小峠が前に出る。

 

「コイツは俺が引き受けます!兄貴たちは先に行って下さい!」

 

オーバーホールと渡り合える兄貴たちを先に行かせるために小峠は活瓶を足止めを自ら買って出たのだった。

 

「待てや華太ォ」

 

しかしそれに待ったをかけたのは須永。

血に濡れたチタン製の歯を見せながら小峠の前に出て活瓶と向かい合う。

 

「今日の星占い、後輩を手助けすると運気が上がるんだよぉ…だからここは俺に譲れぇ」

「須永の兄貴…」

 

星占いの信者である須永は小峠を下がらせると懐からドスを抜いて活瓶に向ける。

実際のところ後輩想いというワケではなく単純に暴れ足りないのが本音である。

 

「行雲流水。ならばここは任せるぞ」

 

須永の様子を見た和中は小峠たちを連れて事務所へと乗り込んでいく。

そして残された須永はドスを構えて活瓶と対峙する。

 

「ったく、1人で挑むなんて…俺を舐めすぎだろぉ!!」

「ひゃはぁー!お前の肉を食わせてくれぇ!」

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「もうすぐで現場に到着します!」

 

警察署から最短ルートで死穢八斎會の事務所へと向かっているヒーローと警察たち。

天羽組の襲撃の知らせを受けてほとんどが神妙な顔つきになってしまう。

 

そしてついに死穢八斎會の事務所へと到着したのだが、門は開けられており構成員たちも致命傷を負って倒れている悲惨な光景が広がっていた。

 

「な、なんだよこれ…!?」

「これ全部、天羽組がやったん…!?」

「噂通り、とんでもない連中ね」

 

インターン生はその光景を見て唖然となってしまい、プロヒーローの『リューキュウ』も顔をしかめてしまう。

抗争は始まってしまったが本来の目的を果たすべく警部が乗り込むように号令をかける。

 

「とにかく我々も乗り込むぞ!天羽組も見つけ次第速やかに確保を!」

 

その時、警部の横を何かが高速で通りすぎるとプロヒーローの『ファットガム』の腹へと吸い込まれるようにぶつかった。

 

「な、なんや!?」

 

突然のことに理解が追い付かなくなるもファットガムの腹を見てみると、緑色の髪の男が頭から血を流してぐったりとしていた。

それを見た警部は驚きの声を上げる。

 

「コイツは!天羽組の須永だ!」

「あ、天羽組!?」

 

男が天羽組の須永だと知ったヒーローたちは驚いてしまう。

狂人揃いの1人が何故ここまでボロボロになっているのか疑問に思っているのも束の間、その理由が明らかとなる。

 

「オイオイ。天羽組の次はヒーローと警察ですか?」

 

姿を現したのは活瓶。

先ほどまで須永と交戦しており殴り飛ばしたのだった。

 

「くそっ!次から次へと!」

「けど天羽組が兵隊のしてくれたんは好都合や!力ずくで乗り込むで!」

 

活瓶を見たヒーローたちはやむを得ずという具合で強行突破しようとしたその時だった。

 

 

 

「ベロベロバァ~!ザオリクで復活!」 

 

 

「なっ!?テメェッ!?」

 

 

 

ファットガムの腹で気を失っていた筈の須永が目にも止まらぬ早さで活瓶に迫っていく。

呆気に取られてしまっている活瓶の首に須永は噛みついた。

 

「ぐぉぉぉ!?離れろ!」

 

首元に噛みつく須永を引き剥がそうとする活瓶だが、須永は口を一度離すと首元から落ちるように離れて

 

「狂気のヒールキック!!」

「ガァッ!?」

 

そのまま活瓶の右膝目掛け踵落としをして膝の関節を砕いた。

それにより活瓶は膝をついてしまい動きが制限される。

百戦錬磨の死地を潜り抜けてきた須永にとってこの程度のことは大したことないのである。

 

それを見てヒーローたちは唖然となってしまうものの、リューキュウが前に出た。

 

「あの敵と須永は我々リューキュウ事務所で対処します!皆さんは先に!」

「リューキュウをサポートするよ!」

『はいっ!!』

 

ここで人員を割くワケにはいくまいと自身の個性を発動させてドラゴンになると須永と活瓶の前に立ち塞がる。

それに続いてインターン生の『波動ねじれ』『麗日お茶子』『蛙水梅雨』もサポートに回る。

 

「今のうちや!行け行け行けぇ!」

 

リューキュウたちが足止めをしてくれている隙に他のヒーローと警察は流れるように事務所へと乗り込んでいく。

一方須永は血塗れの口をリューキュウたちへと開いた。

 

「俺らの抗争を邪魔すんなよヒーロー」

「そうはいかないわ!これ以上暴れると民間に被害が及んでしまうもの!」

「そうかぁ…邪魔立てするなら遠慮しねぇぞ」

 

組同士の問題を妨害するリューキュウを敵と見なした須永はまとめて捻り潰そうと交戦体勢に入る。

 

「気をつけて!須永の個性は狂血吸!他人の血を飲むことで身体能力が向上するわ!」

『はいっ!!』

 

そしてリューキュウたちは須永と交戦を始めるのだった。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

一方他の天羽組のメンバーは構成員の1人を尋問して隠し通路を見つけて奥へと進んでいた。

薄暗い通路を進みながら速水は周囲を警戒する。

 

「なんか気味悪い場所ですね…それにこれ、まるで迷路ですよ。これじゃあオーバーホールがどこに行ったのかまったく分かりませんよ」

「俺らがカチコミを仕掛けてから時間はそれまで経ってはいない。少なくとも遠くへはいない筈だ」

 

このままオーバーホールを見失ってしまうのではと弱気になる速水に小峠は冷静に返した。

この奥にオーバーホールがいると考えただけで怒りのオーラを漏らす小峠に速水は少し距離を置いてしまう。

 

今のところ妨害もなく着実に進んでいた時だった。

 

「……ちょっと止まれ」

 

何かに気づいた工藤が進行を止めようと声を発して、思わず全員止まってしまう。

 

「工藤の兄貴、どうかしましたか?」

「なんか、騒がしくないか?」

「えっ?」

 

工藤につられて冨樫も来た道を振り返ると確かに奥からざわめきが反響して聞こえていた。

全員が何の音か注目していると、徐々に音は大きくなりその正体が明らかとなった。

 

「ヒーローと警察だ!お前たち天羽組だな!大人しくしてもらうぞ!」

 

事務所へと乗り込んだヒーローと警察が天羽組を見つけて駆けつけたのだった。

それを見た速水は目を見開いてしまう。

 

「な、何でヒーローとサツがここに!?」

「まさか、フダ持って家捜に来たのか…!?」

 

流石の小峠もヒーローが乗り込んで来たのは想定外であったようだった。

そして天羽組とヒーローたちがあいまみえて均衡状態となってしまった。

 

「天羽組!アンタらの目的は分かっとる!報復なんてマネはよさんかい!」

 

ファットガムが天羽組との争いを避けようと説得を試みるものの応じる様子はまったくなかった。

 

「そう言われて大人しく下がるとでも?こっちは若いの1人殺されてんだ…落とし前はきっちりつけさせるのが道理ってもんでしょうが…!」

 

額に血管を浮かばせながらドスを効かせた声で小峠を含めて兄貴分たちは圧をかけていく。

その圧に気圧されて警官たちは身震いして一歩後退してしまう。

 

もはややむ無しとナイトアイが前に出ようとしたその時だった。

 

「なっ!?」

「これは!?」

「何が起きてんだぁ!?」

 

突如壁や床、天井が波のようにうねり出して道が変わり始めた。

ヒーローや警察、天羽組もうねる床に足元を取られて立つので精一杯の状態となってしまう。

 

「こ、これはまさか、オーバーホールの破壊と修復の個性か!?」

「いや違う!多分コイツは本部長の入中の個性だ!」

 

工藤の推理通りこの状況を作り出しているのは死穢八斎會本部長『入中常衣』

無機物に入り込み自由自在に操る擬態の個性で地下迷宮を更に変化させようとしていた。

 

「イレイザー!消せないか!?」

「本体が見つからないとどうにも!」

 

視界に捉えた人物の個性を封じるヒーロー『イレイザーヘッド』でも入中本人を見つけないと現状を打開することはできない。

 

「これは面白いアトラクションだなぁ!」

「波乗りしてるみたいで楽しい!」

 

対照的に野田と小林はこの状況を楽しんでおり余裕の貫禄を見せている。

流石は狂人と言うべきか。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

そんな様子を壁の割れ目から覗いているのは入中。

オーバーホールが逃げられるようにここで足止めをしておく役目をまっとうしている。

 

(ヒーローだけでなく、よもや天羽組まで来てしまうとは…ヒーローの1人は壁をすり抜けてしまったがそれは捨て置こう)

 

例えオーバーホールの元に辿り着けたとしても数は1人。

若頭の強さを信じているからこそ多数の足止めに集中できる。

 

(とにかく私の役目はコイツらの足止めに専念して)

 

「冨樫の兄貴!左の壁です!」

 

(ん?)

 

その時、冨樫がハンマーを入中がいる壁目掛けて振り下ろした。

 

「本部長さん見ぃーつけたぁ!」

「なっ!?」

 

壁が破壊されると、そこから入中の姿が現れた。

まさか見つかるとは思わなかったため入中は固まってしまうもその隙を突かれてしまう。

 

「往生せいや!」

「ぐっ!?」

 

小峠がチャカを発砲して入中の肩に命中させる。

弾を受けてしまった入中は再び壁の中へと潜り天井へ移動して事なきを得るが、頭の理解は追いつかずにいた。

 

(な、何故私の位置が分かった!?割れ目から覗いているのがバレた!?いくらなんでもそれはあり得ない!だとすると考えられるのは………)

 

頭を冷静にさせると先ほど起きたことを思い返して1人の男を見る。

 

声を上げた天羽組の速水を見ると、速水と視線が合った。

 

(間違いない!あの小僧、"私の位置が見えている!")

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「天井に移動してます!あ、次は壁!いや床です!」

 

入中が地下のどこに移動しているのかを速水は位置を答える。

 

速水の個性は『透視』

無機物をサーモグラフィーカメラのように透視することができる。

それ故に入中の位置が正確に分かるのである。

 

しかし、入中に速水の個性を見破られてしまい次々に移動を続けている。

 

「ものを透視する個性。正に今この状況に最適な個性だ」

「入中のヤツ、移動に必死になって通路の操作どころじゃねぇって感じだ…!」

 

先ほどまでうねっていた道も収まっていき元の歩ける状態へと戻りつつあった。

天羽組は速水の透視で入中の位置を掴もうとするものの必死に移動しているため速水も目で追うのに必死だった。

 

「お前いつまで時間かかってんの?取り敢えず額に無能って入れとくわ」

「ひぃぃ!?画数多いのは勘弁してくださぁい!」

 

一向に入中の動きが読めないことにイラついた小林は自前のアーミーナイフで速水の額に漢字を書き入れようとする。

 

「小林の兄貴。じゃれ合うのもその辺りにしといて下さい。今はオーバーホールを追いましょう」

「千載一遇。この好機を逃すわけにはいくまい」

 

これをじゃれ合いで済ますのもどうかと思うが小峠は小林を止めると、再び和中を先頭に奥へと進んでいく。

 

「天羽組が移動を始めたぞ!」

「ワイらも後を追うで!」

 

逃がすまいとヒーローたちも天羽組に続いて奥へと進もうとした時だった。

 

『なっ!!??』

 

突然床に大きな穴が開いてヒーローと警官、天羽組も落とし穴と同じように下のフロアへと落下してしまうのだった。

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