ゲートの中でこれまでの事を振り返る。
「君を次のオープンリーグに出す事を決めた」
レースの前だというのにトレーナーが発したそのひとことを再び思い出し喜びに浸る。
アタシはきっと一生忘れないだろう。
夢にまで見てたトレーナーが私を選んでくれたこの日の事。
この日の為にトレーナーが来なくても毎日練習していたし、イメージトレーニングも欠かさずやった。
ずっとトレーナーの力になりたくて。
喜んでる顔が見たくて。
なんて、アタシらしくないね。はは..
でもそのぐらい本気なんだ。
[晴れわたる空のもと行われる、東京レース場ダート___」
ふと耳に流れてきたその言葉に耳を疑った。ダート?
私ダートなんて走った事ないんだけど...
ガタッ
「ちょっ!ちょっと!」
勢いよく開かれたゲート。
少し出遅れちゃったけれど、トレーナーのチームの足手纏いにはなりたくない!
前との差はどんどんひらいていく。
どうしてこんな事に?
トレーナーが私の苦手なダートを選んだわけないし...。
トレーナーはアタシがダート得意ではないの知らないのかな?せっかく良い機会もらったのに台無しだな...。
[差し切ってアグネスデジタルゴール!
2着はー・・]
他のウマ娘はどんどんゴールしていき、遂にはレース場私だけになってしまった。
あーあ。トレーナーの笑顔を見たいのにこんな最下位って合わせる顔ないじゃん...。
「はぁ...はぁ...9着かぁ...頑張ったんだけどなぁ...」
ダメじゃんアタシ...。
本当にこんなに頑張ってきたのに何やってるんだろう。
トレーナーに気に入られる為に必死に頑張ったけれど全然ダメだった。
今はトレーナーに会いたくない。どんな言い訳をすれば...。
すると背後から大好きな声がする。
「おつかれ」
「トレーナーさん!おっ...おつかれさまでしたー!最下位なんて取っちゃって。あはは...」
「そうか」
「言い訳じゃないんですけど、アタシ実はダートの耐性ないんですよねー。だから次からは_」
「知ってるよ。」
「え?」
もしかしてダート耐性なくても君なら行ける!って期待してくれてるのかな...。ちょっと嬉しいな。
少し喜んだアタシにすかさずトレーナーは口を開く。
「勘違いしているようだけど、君が勝つ期待はしてない。君は元々勝たせる気はないし」
「でもっ!トレーナーさんの力にはなれるようこれからダートも練習す...」
「君はデバフ用だから」
「デバフ用?」
「でもアタシこう見えて勝ちたいっていうか_」
「チーム戦なんだ。君はその為に育てたんだ。変な事は言わないでくれ」
「あー・・そうなんですね...」
「じゃ他の2人の所行ってくるから。」
「あっ...」
走り去ったトレーナーを見ながら
これまで抱いてきたレースに対する気持ちとトレーナーに対する信頼の行く末がここだったとは思いもしなかった。
URAファイナルズで優勝したあの時に一緒に喜んでくれたのも一緒に温泉行ったのも、全部全部トレーナーからしたら小さい出来事で。
結局私は捨て駒でしかないという事に気付かされる。
ほんとアタシってダメだなぁ。
トレーナーの1番にもなれないんだ。