1話の文字数を減らして回転数を上げました。
それでも足りないストック……
「ない! ない!? ないないないないなぁ〜いッ!?」
コンビニから帰ってきてトレーナー室のドアを開けようとした蓮はポケットに入れていたはずの鍵がなくなっていることに気づく。
微塵も予想もしていなかった状況に、慌てて飛び跳ねたり、レジ袋や財布、挙句の果てにはパンツの中までくまなく探したが、鍵はどこからも出てこなかった。
絶望して膝から崩れ落ちる蓮だったが、鍵を閉めていないワンチャンにかけてドアの取っ手を掴んでおもいっきり引く。
しかし案の定、鍵はかかっていたためドアはびくともせず、もうワンチャンで外に出て窓の施錠を確認するが、こちらにもしっかりと鍵がかかっていた。
(こうなったら……)
蓮は最後の手段として近くに落ちていた石を拾うと、その石を投げつけるように窓に向かって勢いよく腕を振り下ろした。
一瞬の静寂。
普通、石がぶつかれば耳に突き刺さるような音を立てて窓は割れるはずだが、目の前の窓は割れるどころかひびひとつ入っていないきれいな状態であった。
「アホらしい……」
さすがに思いとどまった蓮は冷静さを取り戻し石を捨てる。
そして、どこで鍵を落としたか、学園を出てから帰ってくるまでの記憶を呼び起こした。
「……鶏そぼろ」
忘れたくても忘れられない事件。
間違いなくあの時に落としたと確信し、コンビニに戻ろうと思った瞬間、
「……ナニヲシテイルノデスカ?」
「○▼※△☆▲※◎★●!?!」
突然耳元で冷たく囁かれ、全身から血の気が引いた。
恐怖で腰を抜かし壁際まで後ずさりする蓮。
恐る恐る開いた視線の先には、トレセン学園の理事長秘書兼事実上トップである
「もしかして……黒崎トレーナーですか!?」
「はい……」
たづなの話では夜の見回りをしていたところ、トレーナー室の前で怪しく動く人影を見かけたため、泥棒だと勘違いし後ろから声をかけたらしい。
謝るたづなに大丈夫だと返す反面、連の心臓は破裂するんじゃないかという勢いで鼓動していた。
「ところで……ここでなにをしていたのですか?」
たづなからの当然の質問に蓮は肩をビクッと震わせる。
「あっ……いや……えっと〜……」
素直に鍵を落としたことを報告するか、コンビニに落ちていることにかけてこの場はごまかすか、2択で迷う蓮は視線をそらして口籠るが、そんな見るからに怪しい様子をたづなが見逃すはずがなく、顔を覗き込ませて泳ぐ蓮の目をじっと見つめてくる。
しかし、蓮は意地でも視線を合わせようとしなかったため、互いに見つめ見つめずの状態が2、3分続いた。
「……わかりました。全部話します……」
最終的には蓮が折れ、鍵をなくしたことを素直に明かした。
すると、
「そうですか……それでは代わりの鍵をお渡しします。ついてきてください」
たづなはそれだけ言って学園のほうに歩き出した。
てっきり怒られると身構えていた蓮だったが、何も言われなかったことにホッと胸を撫で下ろし、たづなの後ろをついていった。
道中、2人は仕事の進行具合や担当ウマ娘のスカウトについて話していた。
蓮はほとんど笑ってごまかすことしかできなかったが、話をしているうちに気がつけば理事長室の前まで来ていた。
中に入ったたづなは鍵のかかった引き出しから、1本の鍵を取り出す。
その様子を見て鍵を受け取ろうと蓮は両手を広げるが、たづなの手から鍵を渡されることはなかった。
「あ、あの〜たづなさん……?」
「どうやら、トレーナーさんはセキュリティ意識が不足しているようなので、重点的に鍛えてみましょう」
「ヒィ……!」
新人トレーナーと理事長秘書、理事長室、一晩。
何も起きないはずがなく夜が明けるまでこってり絞られるのであった。
やよい
「疑問ッ! たづな、なぜそんなに肌がツヤツヤなのだ!?」
たづな
「ふふっ、どうしてでしょ〜♪」