「早朝から毎朝トレーニング!
檜山。お前がこんなに真面目なヤツだとは知らなかったぜ」
「だあぁぁっっ!!!
付いて来るんじゃねぇっっ!!!」
背後から坂上が追走して来る。この脳筋がぁぁっっ!!!
どうしてこうなった!?
異世界トータスに召喚されて、
勇者とその仲間としての活動が始った。
まずは実戦前の訓練期間と言う事で、
メルドさんや騎士団に、色々と指導を受けている最中だ。
と言っても俺は二度目で、何故かステータスも前回より高いスタート。
何かと余裕は有る。其処で俺は、早朝に自主トレを追加した。
毎朝神山の神殿までのランニングコース。勿論ただのトレーニングじゃない。
ノイントとエンカウントする事を狙っての行動だった。
ノイントは聖教教会のシスターだ。
しかも神山の神殿から、殆ど出歩く事が無いらしい。
俺達は麓のハイリヒ王国に滞在しているのに、接点が無い。
神山は聖教教会の総本山で、一般解放何てしていない。
だが修行や巡礼目的なら、入山出来るらしい。
「是非ともエヒト様の御許で修行させて下さいっ!!」
勇者の仲間の修行!って事でゴリ押しした。
神様万歳の低姿勢で行けば、大抵何とかなる。
ノイントを口説く為なら、何て事無い。
だが早朝のトレーニングは、脳筋の坂上に気付かれた。
坂上も早朝からトレーニングをしていたのかもしれない。
くっ俺のステータスを舐めるなよ?
脳筋如き振り切って、俺はノイントに逢う!
「素晴らしい心掛けですな」
全力で脳筋を振り切って、神山を登りきる。
頂上の神殿で、御参りするのもいつものパターン。
しっかし今朝はハズレ!
上機嫌な面でニコニコと俺を出迎えたのは、イシュタルの爺さんだ。
爺は要らんから、ノイントを出せノイントを!
と言いたい処だが、この爺さんは聖教教会のトップ。
教会所属のノイントと仲良くなるのに、媚びを売って損が無いのは解っている。
「感心です。
今朝も来ていたのですか?」
「修行だからな、当然だろう?」
今朝はハズレかと思ったが、爺さんの後ろから本命降臨☆
よっしゃあぁぁぁっっ!!!ノイントに逢えたっっ!!!
今朝はガチの、御参りが出来そうだ。
俺は神山への早朝ランニングが終ったら、
毎回神殿で御参りをしている。その内容は、
【ノイントと仲良くなれますように】
【五体満足で居られますように】【日本に帰れますように】とかだ。
特に最初のが叶うなら、
相手が神様だろうが悪魔だろうが、諸悪の根源だろうが構わない。
「フラグメント。
もう実戦が近いのでしたね?」
「あぁ、オルクス大迷宮って処で魔物退治だ。
冒険者の真似事をするらしい」
ノイントが口にする俺の渾名。
フラグメントと呼ばれる理由は、未だに解らないままだった。
だがノイントに渾名で呼ばれるのは俺だけ!
今はそれで良しとして置く事にした。
女が意味不明の渾名で呼ぶのは、日常風景である。
「教皇猊下。
フラグメントに託そうと思います」
†
「これってレアモノじゃね?」
ノイントがイシュタルの爺さんと何か話を進めて、奥の部屋に案内される。
其処は見る限り武器庫だったが、
天之河の聖剣がサーガの如く鎮座していた武器庫とは違って、
博物館の骨董品でも眺めている気分になる。
だけどそれは違った。
絶対に只者じゃネェェェッッッ!!!!!!と解る代物!
「はい、聖遺物です。
銘は【祈りの剣】」
それは一振りの剣だった。
ジャンル的には【処刑剣】と言うヤツだろう。
剣先が平たくて、突きが出来無い。
不良品でも模造刀でも無い。斬撃特化の剣!と言う事になる。
ひたすら斬撃で罪人の首を狩り続けた。
処刑剣とは、そう言う武器だ。
しかも聖遺物!どんだけ生き血を吸って来たんだよっ!?
もう魔剣だろ!?ヤヴいオーラを放ってる気がするしっっ!!?
「何でこんな(ヤヴァそうな)代物を?」
「餞別です。
神官戦士のフラグメントなら、使い熟せるでしょう」
本気でこんなヤヴァそうな代物を?
ノイントが言っているのは、神官戦士の【信仰】の技能の事だろう。
信仰の技能は、神官系の天職の基礎技能。
信仰心を集めて、ステータスに自己ブーストする技能だ。
オタクの南雲が愛読しているだろうラノベなら、
中盤辺りで敵に回った神官系のキャラが、
信者の信仰心を集めて中ボス化するアレである。
そんなに強いなら、勇者何て要らないだろ!?自分で戦えよ!ってヤツ。
ノイントが言うには、この剣自体が聖遺物!信仰の対象となる。
詰り、後ろにゾロゾロと生贄用の信者を連れ歩く必要は無い!と言う事だ。
「確かにステータスが、ブーストしてる感じだ」
「問題は無いようですね?」
ステータスは確かにブーストしている。
俺が知っているオルクスの魔物相手なら、遅れは取らないだろう。
と言っても、文字通り俺が知っている範囲の話だ。
オルクスの攻略者。魔王南雲の情報では、
上層100層。下層100層の、全200層で構成されているらしい。
特に南雲が墜ちた下層からが本番!ナイトメアルート☆
奈落の捕食者共に、俺の力が通用する保証は無い。
それにそもそも!この程度の力で、
あの魔王に届く事は絶対に無い。絶対にだ。
「なぁノイント。
オルクスから戻ったら、出られ無いか?」
例え魔王に届かなくても、大幅な生存率UPには違い無い。
気付いた頃には調子に乗って、ノイントにデートのお誘いを実行!
凄い微妙な顔をされた。まだデートのお誘いは早かったか!?
それともシスターはデート禁止!とか言うパターンか!?
「宜しいのですか?
フラグメントの故郷では、死亡フラグと呼ばれているのでは?」
†
「今まで済まない。ワビを入れさせてくれるか?
南雲は、俺が護るっっ!!!」
「檜山君っっ!!!」
オタクな南雲は、やはりチョロかった。チョロインレベルである。
俺が今までのイジメの件で謝ると、あっさり謝罪を受け入れた。
報復も無い。実に平和的だった。
これが魔王なら、確実にチート武装の報復が来るだろう。
現代無駄知識の武装をしていたノイントの誤解も解いて、
無事!デートの約束をした後日。遂に実戦訓練が始った。
前回同様ホルアドへ向かう。其処にオルクス大迷宮が在る。
大きなターニングポイント!俺に取っても、南雲に取ってもだ。
ホルアドに着いたら、パーティーを組む事になる。
まだ初見だから、天職を意識した構成の指示は無い。
まずは自分達で考えて、自分達で苦労しろ!って言う騎士団の方針らしい。
と言う訳で俺は南雲に謝罪して、パーティーを組む事にした。
辺りではクラスメイトが、
香織や八重樫辺りが、俺の謝罪を聞いて特に驚いている。
と言うか驚いているのは、クラスメイトの殆ど全員だった。
勿論この謝罪は、純粋な代物じゃない。
これは、魔王南雲の誕生を阻止する策略だ。
魔王南雲が生まれたのは、俺が南雲をオルクスの奈落に墜とした事が原因!
なら俺が、南雲を奈落に墜とさなければ済む話だが?
代わりに何か、アクシデントが起きる可能性も有るだろう。
だから俺は、直ぐ近くで南雲を護る事にした。
オタクの南雲はチョロイから、上手く行くと思った。
問題無く南雲とパーティーを組む事に成功する。
「僕も、混ぜて貰えるかな?」
「清水君!
勿論構わないよ?檜山君は ――― 」
「あぁ、俺も構わない」
計画通りの好スタート!
だが此処でどう言う訳か、清水がパーティーに名乗り出て来る。
清水は南雲と仲が良かったか?
清水は南雲と同じくボッチ系だったが、特に仲が良かった印象は無い。
前回清水は、魔王南雲に殺されている。
銃殺。魔王自慢の銃でズドン!
魔王南雲相手に、全力で逆らった結果だ。
魔物に生きたまま喰い殺された俺より、まだ楽な死に様である。
「あら、それなら私達も行くわ。
構わないでしょう?」
「どうして俺に訊く?」
清水の参戦を聞いて園部と、取り巻きの菅原と宮崎も名乗りを上げる。
これで六人!パーティーメンバーは揃った。
今のは明らかに清水狙い。
園部は清水と、何か接点が有ったか?
確か高校で席が隣りだった気はするが、それだけだ。
やはり仲が良かった印象は無い。
前回の話なら、一応接点は有る。
確か清水と園部は、パーティーを組んでいた筈だ。
だが前回の話を出しても、やはり意味は無い。
それに重要なのは、南雲の護衛だ。
清水が誰と仲が良くても、別にどうでも良い。
†
補足&解説枠。
檜山強化回。現地Lvの強化です。
神山の修行
神山には例のエレベーターが有りますが、
アレは王国の高官と、緊急用!と言う本作設定。
勇者は王国のVIPです。
祈りの剣
形状の採用で迷った一品。
大型の魔物相手なら、貫通効果の有る槍にしようかと迷いましたが?
檜山は元軽戦士なので、使用経験の有る剣に決定。
因みに槍の名前は【裁きの槍】と言う予定でした。
死亡フラグ
帰ったら○○しよう!と言うお約束。
ノイントが死亡フラグを知っていたのは、
使徒として、地球(日本)にも降臨した経験が有るから。と言う設定。
次回は清水の回想回。
ルーザーコンビ始動です☆