ありふれた和平で世界平定(ディストピア)   作:LW

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清水回想、ダイジェスト版です。


04 ちっぽけ何かじゃ無い

「アアアアアアァァァァァァッッッッッッ!!!!!!」

 

「悲鳴!?」

 

誰かの悲鳴が聞こえる。断末魔の声。

酷い拷問でも受け続けているかのような、悲痛な声だ。

その上聞き覚えが有る気もしたけど、ピックアップは閃かない。

他人の不幸に構う余裕が無いからだと思う。

 

僕は南雲に撃たれた。撃たれて死んだ筈。

ゼロ距離で額を撃ち抜かれた。脳に風穴が!ってヤツ。

クリティカル回避で、ブレインスルーショットとか?無い無い☆

 

「それに此処は、日本の僕の部屋?

 幻覚オチ?それとも最期の走馬燈!?」

 

それでも僕は冷静に、自分の部屋らしき場所を探索した。

PCを起動させて、

動画サイトで初見の推しアニメを堪能し終えた辺りで、

これがリアルだと認識する。此処は日本の自宅だ。

 

「日本に帰って来た?

 それとも逆行展開!?」

 

日本に帰って来ただけなら、僕が生きて居るのはオカシイ。

南雲に撃たれた傷が無い。

奇跡的にブレインスルーショットだったとしても、これは無い。

死がトリガーになって、日本に帰って来た?

デスルーラでリスポーン?だけど試す気にはなれない。

 

「これから、どうする?」

 

今日が平日なのは把握している。

いつもなら、もう登校を始めている時間だ。

異世界召喚何て言う非日常を経験した後から、呑気に登校しろと?

 

「情報収集って事で、仕方無い」

 

他に出来る事も無い気がして、結局登校する事にした。

もう見慣れた筈の高校には、異様な光景が広がっていた。

だけど異様だと認識しているのは、僕一人なのが濃厚。

 

教室は始業前の喧騒で満ちていた。

何事も無い平和な朝。争いの無い平和な日常。

魔物何て居ないし、戦争に強制参加させられる事も無い。

平和な日本の高校。見厭きた筈の、懐かしい光景だった。

 

「帰って、来たのか?」

 

自分の席に着席する。

正気を保つ為に、無意識に日常を演じていた。

押しのラノベを取り出す。だけどラノベのページが進む事は無かった。

 

「おはよう、清水。

 珍しい。清水ってラノベ、読むんだ?」

 

あぁ、そうだった。僕は教室でラノベは読まない。

同じ愛読者の南雲が、クラスでイジメられているのを知っているからだ。

南雲はオタクだの、根暗だの言われてイジメられている。

ラノベの読書がイジメのトリガーになる事を恐れて、

僕は教室で読書を控えていた。だけど、

 

「ありふれた趣味だよ。

 好きな事を隠すのがバカらしくなった。それだけの事」

 

「ふぅん。

 良いんじゃないかな、ソレ」

 

隣りの席の園部に声を掛けられるのも、話しをするのも珍しい。

まして園部の笑顔を目撃するのは、更に珍しい。

しかもその笑顔が僕に向けられるのは、

経験値の高いメタルなレアモンスターが、逃走しない程珍しい。

 

たった今教室でラノベを読んでいるのは、

イジメグループの檜山達が、怖くなくなったからだ。

原因は言うまでも無い。魔王南雲!アイツに殺されたから。

 

魔王と比べれば、檜山達はザコモンスターに過ぎない。

極度の恐怖で、耐性が出来た感じだ。

此処がトータスなら、

きっとステータスプレートに【恐怖耐性】とかが生えていると思う。

 

 

「ちょっ何なの!?」

 

「園部っっ!!!」

 

異世界召喚前の、平和な光景が広がっていたから油断した。

油断して、まんまと異世界召喚の魔法陣に捕まった。

次に広がったのは見覚えの有る神山の神殿と、勇者を迎える神官。

僕達は、またトータスに召喚された。

 

「清水?」

 

「あぁ、ゴメン」

 

「謝らないで、

 私を助けようとしてくれたんでしょう?」

 

僕は咄嗟に、隣りの席の園部を助けようとした。

園部の手を取って、突然教室に展開した魔法陣から脱出しようとした。

だけど間に合わ無かった。園部の手を離す。

 

その後は僕も知っている光景が続いた。

教皇イシュタルの詭弁と、天之河の偽善者トーク。

でも僕が口を挟める事は何も無い。

現状日本に帰る手段が無い以上、勇者とその仲間!と言う手札を捨てるのは厳しい。

結局戦うしか無い。何の準備も無く、

魔物が闊歩する異世界に、放り出されるよりマシだと思う。

 

「これから、どうなるのかな?」

 

「戦争に参加するフリをして、戦闘訓練を積むしか無いんじゃないかな?

 手に職って事。日本より格段に危険なトータスで、身を護る力は必須になる」

 

「清水はこんな時でも、しっかり考えているんだね?

 私は不安で、これからどうしたらって思ってるだけなのに」

 

「それで、普通のLvだと思うけど」

 

異世界召喚された夜。

割り当てられた個室に、園部が訊ねて来る。

高校では女子の一グループを作る程の、コミュ力の園部が力無げだった。

流石の園部も異世界に来て、これからが不安何だと思う。

二度目の僕が随分頼りに見えるらしい。前回は、誰かに頼られる事何て無かった。

 

「清水!どう?」

 

「まぁ、問題無いんじゃないかな?」

 

それから、園部と過ごす事が増えた。

一人で過ごす事が通常運営の僕に取って、それは新鮮なルートだった。

翌日になって配られたステータスプレートにも、異常は無い。無い筈だ。

 

====================================

清水幸利 17歳 男 レベル:1

天職:闇術師

筋力:40

体力:50

耐性:40

敏捷:120

魔力:200

魔耐:150

技能:

闇属性適正・闇属性耐性・魔封結界・サクリファイス・魔獣使役

毒耐性・疾病耐性・恐怖耐性・言語理解

====================================

 

前回と比べて、明らかにステータスが高くなっていた。

技能も前回より多くなっている。周回プレイだから?

その割には、Lvは1に戻っていた。

 

「清水」

 

「園部。眠れないの?」

 

「うん、

 明日からとうとう実戦だと思うと、ちょっとね?」

 

戦闘訓練を積む日々を過ごして、遂に明日から実戦!

ホルアドのオルクス大迷宮に潜る。

ホルアドで一泊してから、と言う流れだ。

 

ホルアドでパーティー編成もする事になったけど、

僕は南雲が居るパーティーに入った。

動機は決まっている。魔王誕生を阻止するのが目的だ。

 

あのベヒモスやトラウムソルジャーの襲撃。

殿に残った南雲を援護すれば、撤退が間に合うかもしれない。

そうすれば南雲が奈落に墜ちる事もなくなって、魔王も生まれない筈。

 

不用意にドロップアイテムに手を出した檜山も気になるけど、

異世界に来てから、檜山は大人しくなった。

少なくとも、南雲をイジメている様子が無い。

隠すのが上手くなった。と言う事も無いらしい。

リーダー格の檜山が大人しいから、他の三人も大人しいモノだった。

 

だから檜山が公衆の面前で、南雲に謝罪したのは驚いた。

クラスメイトの誰もが驚いたと思う。

この檜山の改心に付いて、僕はとある予想を立てた訳だけど?

今は良いだろう。宿泊先のサロンで佇む園部に近づく。

 

「心配は要らない。

 大迷宮では、僕が前に出る。園部は後方警戒と援護に徹してくれれば良い」

 

「清水!本気なの!?

 闇術師って、後衛向きの天職でしょう!?

 それで前に出る何て!正気!?」

 

確かに闇術師は後衛職。だけど、僕は敏捷が高い方だ。

俗に言う【回避盾】が行けると思っている。

 

「僕は英雄願望持ちの身の程知らずだからね?

 前に出る。

 勇者じゃ無いから世界を、人類を護るとは言わない。

 だけどパーティーの一人や二人なら、護れると思う」

 

 

「護って、くれるの?」

 

結局、そう言う事何だと思う。

明日から私達は、命懸けの探索を始める。

ついこの間まで平和な日本で過ごしていたのに、魔物とだって戦う。

戦い。実戦。命の奪い合い。死ぬかもしれない現実。

 

そんな明日が待っているのに、

清水は私を、仲間を護ると言っている。

 

「身の程知らずだから、勇者じゃないから。

 ちっぽけだから、やれると思う」

 

そう言った清水は寂し気で、挫折感を強く滲ませていて―――

だけど私には、酷く届いた。

 

「ちっぽけ何かじゃない。

 清水は、ちっぽけ何かじゃ無いよ」

 

 

補足&解説枠。

清水逆行のダイジェスト回になります。

 

ブレインスルーショット

人間の脳には右脳と左脳の間に隙間が有って、丁度其処が額の位置。

運良くその隙間に弾丸が貫通すると、額に風穴が開いても生還するらしい。

しかしハジメのドンナーでブレインスルーショットが起きたら、

その威力で脳が、容易くミンチになりそうです☆

 

デスルーラ

ゲームオーバー(全滅)時にセーブポイントに戻る仕様を、

移動手段として活用する最終手段。

全滅時にセーブポイントからやり直す仕様の場合は、実行不可。

実行可能な場合もアイテムロストやレベルダウンなど、

厳しいペナルティが課せられる事が多く、多用は厳禁となる。

 

清水逆行

エヒトが檜山を逆行させた際に、

同じ【日本人】と言う枠組みで巻き込まれて逆行。

本作では清水が、正しく【イレギュラー】と言う立場になる。

 

回避盾

通常の盾役(タンク)とは異なり、

ヘイトを稼ぎながらも、攻撃を回避し続けるタンク。

基本的に紙装甲。回避に失敗したら即死!と言うパターンも多い。

 

園部優花

清水の、最後の良心的ポジション。

英雄願望持ちだった清水は、ハジメに敗れて挫折!

分相応に小さく纏って、小康状態を保っています。




次回は、野郎同士で月下の語らい☆
オルクス突入です。
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