「アアアアアアァァァァァァッッッッッッ!!!!!!」
「悲鳴!?」
誰かの悲鳴が聞こえる。断末魔の声。
酷い拷問でも受け続けているかのような、悲痛な声だ。
その上聞き覚えが有る気もしたけど、ピックアップは閃かない。
他人の不幸に構う余裕が無いからだと思う。
僕は南雲に撃たれた。撃たれて死んだ筈。
ゼロ距離で額を撃ち抜かれた。脳に風穴が!ってヤツ。
クリティカル回避で、ブレインスルーショットとか?無い無い☆
「それに此処は、日本の僕の部屋?
幻覚オチ?それとも最期の走馬燈!?」
それでも僕は冷静に、自分の部屋らしき場所を探索した。
PCを起動させて、
動画サイトで初見の推しアニメを堪能し終えた辺りで、
これがリアルだと認識する。此処は日本の自宅だ。
「日本に帰って来た?
それとも逆行展開!?」
日本に帰って来ただけなら、僕が生きて居るのはオカシイ。
南雲に撃たれた傷が無い。
奇跡的にブレインスルーショットだったとしても、これは無い。
死がトリガーになって、日本に帰って来た?
デスルーラでリスポーン?だけど試す気にはなれない。
「これから、どうする?」
今日が平日なのは把握している。
いつもなら、もう登校を始めている時間だ。
異世界召喚何て言う非日常を経験した後から、呑気に登校しろと?
「情報収集って事で、仕方無い」
他に出来る事も無い気がして、結局登校する事にした。
もう見慣れた筈の高校には、異様な光景が広がっていた。
だけど異様だと認識しているのは、僕一人なのが濃厚。
教室は始業前の喧騒で満ちていた。
何事も無い平和な朝。争いの無い平和な日常。
魔物何て居ないし、戦争に強制参加させられる事も無い。
平和な日本の高校。見厭きた筈の、懐かしい光景だった。
「帰って、来たのか?」
自分の席に着席する。
正気を保つ為に、無意識に日常を演じていた。
押しのラノベを取り出す。だけどラノベのページが進む事は無かった。
「おはよう、清水。
珍しい。清水ってラノベ、読むんだ?」
あぁ、そうだった。僕は教室でラノベは読まない。
同じ愛読者の南雲が、クラスでイジメられているのを知っているからだ。
南雲はオタクだの、根暗だの言われてイジメられている。
ラノベの読書がイジメのトリガーになる事を恐れて、
僕は教室で読書を控えていた。だけど、
「ありふれた趣味だよ。
好きな事を隠すのがバカらしくなった。それだけの事」
「ふぅん。
良いんじゃないかな、ソレ」
隣りの席の園部に声を掛けられるのも、話しをするのも珍しい。
まして園部の笑顔を目撃するのは、更に珍しい。
しかもその笑顔が僕に向けられるのは、
経験値の高いメタルなレアモンスターが、逃走しない程珍しい。
たった今教室でラノベを読んでいるのは、
イジメグループの檜山達が、怖くなくなったからだ。
原因は言うまでも無い。魔王南雲!アイツに殺されたから。
魔王と比べれば、檜山達はザコモンスターに過ぎない。
極度の恐怖で、耐性が出来た感じだ。
此処がトータスなら、
きっとステータスプレートに【恐怖耐性】とかが生えていると思う。
†
「ちょっ何なの!?」
「園部っっ!!!」
異世界召喚前の、平和な光景が広がっていたから油断した。
油断して、まんまと異世界召喚の魔法陣に捕まった。
次に広がったのは見覚えの有る神山の神殿と、勇者を迎える神官。
僕達は、またトータスに召喚された。
「清水?」
「あぁ、ゴメン」
「謝らないで、
私を助けようとしてくれたんでしょう?」
僕は咄嗟に、隣りの席の園部を助けようとした。
園部の手を取って、突然教室に展開した魔法陣から脱出しようとした。
だけど間に合わ無かった。園部の手を離す。
その後は僕も知っている光景が続いた。
教皇イシュタルの詭弁と、天之河の偽善者トーク。
でも僕が口を挟める事は何も無い。
現状日本に帰る手段が無い以上、勇者とその仲間!と言う手札を捨てるのは厳しい。
結局戦うしか無い。何の準備も無く、
魔物が闊歩する異世界に、放り出されるよりマシだと思う。
「これから、どうなるのかな?」
「戦争に参加するフリをして、戦闘訓練を積むしか無いんじゃないかな?
手に職って事。日本より格段に危険なトータスで、身を護る力は必須になる」
「清水はこんな時でも、しっかり考えているんだね?
私は不安で、これからどうしたらって思ってるだけなのに」
「それで、普通のLvだと思うけど」
異世界召喚された夜。
割り当てられた個室に、園部が訊ねて来る。
高校では女子の一グループを作る程の、コミュ力の園部が力無げだった。
流石の園部も異世界に来て、これからが不安何だと思う。
二度目の僕が随分頼りに見えるらしい。前回は、誰かに頼られる事何て無かった。
「清水!どう?」
「まぁ、問題無いんじゃないかな?」
それから、園部と過ごす事が増えた。
一人で過ごす事が通常運営の僕に取って、それは新鮮なルートだった。
翌日になって配られたステータスプレートにも、異常は無い。無い筈だ。
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清水幸利 17歳 男 レベル:1
天職:闇術師
筋力:40
体力:50
耐性:40
敏捷:120
魔力:200
魔耐:150
技能:
闇属性適正・闇属性耐性・魔封結界・サクリファイス・魔獣使役
毒耐性・疾病耐性・恐怖耐性・言語理解
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前回と比べて、明らかにステータスが高くなっていた。
技能も前回より多くなっている。周回プレイだから?
その割には、Lvは1に戻っていた。
「清水」
「園部。眠れないの?」
「うん、
明日からとうとう実戦だと思うと、ちょっとね?」
戦闘訓練を積む日々を過ごして、遂に明日から実戦!
ホルアドのオルクス大迷宮に潜る。
ホルアドで一泊してから、と言う流れだ。
ホルアドでパーティー編成もする事になったけど、
僕は南雲が居るパーティーに入った。
動機は決まっている。魔王誕生を阻止するのが目的だ。
あのベヒモスやトラウムソルジャーの襲撃。
殿に残った南雲を援護すれば、撤退が間に合うかもしれない。
そうすれば南雲が奈落に墜ちる事もなくなって、魔王も生まれない筈。
不用意にドロップアイテムに手を出した檜山も気になるけど、
異世界に来てから、檜山は大人しくなった。
少なくとも、南雲をイジメている様子が無い。
隠すのが上手くなった。と言う事も無いらしい。
リーダー格の檜山が大人しいから、他の三人も大人しいモノだった。
だから檜山が公衆の面前で、南雲に謝罪したのは驚いた。
クラスメイトの誰もが驚いたと思う。
この檜山の改心に付いて、僕はとある予想を立てた訳だけど?
今は良いだろう。宿泊先のサロンで佇む園部に近づく。
「心配は要らない。
大迷宮では、僕が前に出る。園部は後方警戒と援護に徹してくれれば良い」
「清水!本気なの!?
闇術師って、後衛向きの天職でしょう!?
それで前に出る何て!正気!?」
確かに闇術師は後衛職。だけど、僕は敏捷が高い方だ。
俗に言う【回避盾】が行けると思っている。
「僕は英雄願望持ちの身の程知らずだからね?
前に出る。
勇者じゃ無いから世界を、人類を護るとは言わない。
だけどパーティーの一人や二人なら、護れると思う」
†
「護って、くれるの?」
結局、そう言う事何だと思う。
明日から私達は、命懸けの探索を始める。
ついこの間まで平和な日本で過ごしていたのに、魔物とだって戦う。
戦い。実戦。命の奪い合い。死ぬかもしれない現実。
そんな明日が待っているのに、
清水は私を、仲間を護ると言っている。
「身の程知らずだから、勇者じゃないから。
ちっぽけだから、やれると思う」
そう言った清水は寂し気で、挫折感を強く滲ませていて―――
だけど私には、酷く届いた。
「ちっぽけ何かじゃない。
清水は、ちっぽけ何かじゃ無いよ」
†
補足&解説枠。
清水逆行のダイジェスト回になります。
ブレインスルーショット
人間の脳には右脳と左脳の間に隙間が有って、丁度其処が額の位置。
運良くその隙間に弾丸が貫通すると、額に風穴が開いても生還するらしい。
しかしハジメのドンナーでブレインスルーショットが起きたら、
その威力で脳が、容易くミンチになりそうです☆
デスルーラ
ゲームオーバー(全滅)時にセーブポイントに戻る仕様を、
移動手段として活用する最終手段。
全滅時にセーブポイントからやり直す仕様の場合は、実行不可。
実行可能な場合もアイテムロストやレベルダウンなど、
厳しいペナルティが課せられる事が多く、多用は厳禁となる。
清水逆行
エヒトが檜山を逆行させた際に、
同じ【日本人】と言う枠組みで巻き込まれて逆行。
本作では清水が、正しく【イレギュラー】と言う立場になる。
回避盾
通常の盾役(タンク)とは異なり、
ヘイトを稼ぎながらも、攻撃を回避し続けるタンク。
基本的に紙装甲。回避に失敗したら即死!と言うパターンも多い。
園部優花
清水の、最後の良心的ポジション。
英雄願望持ちだった清水は、ハジメに敗れて挫折!
分相応に小さく纏って、小康状態を保っています。
次回は、野郎同士で月下の語らい☆
オルクス突入です。