「どうでも良いが、意外だ。
実戦前の約束。主人公キャラか!?」
「それは違う。まして主人公でも無い」
実戦前夜。
何と無く宿泊先を徘徊していたら、サロンに清水と園部が居た。
二人は何かシリアス顔で話していて、
暫くして園部が微かに笑顔を浮かべながら退室。
どうやら清水は、上手くやったらしい☆(憶測)
「まぁ丁度良い。
確認させて貰うけど、【戻って】来たのか?」
戻って、か。間違い無くこのループだか逆行だかの件だろう。
それを認識していると言う事は、清水も!
「まぁな?」
「なら、檜山が黒幕?」
「自分も信じて無い事を、態々訊くなよ。
んな事が出来るなら、もっと盛大にやり直してる」
もうその気は失せたがもっと前なら、
香織を手に入れようとして、派手に逆行したかもしれない。
まぁ何にしても、この件の首謀者は俺じゃない。
好き勝手にやり直し何て、都合の良い事は出来無い。
「それなら何を?
檜山は、明らかに前回と違う行動を取っている」
「同じ行動を取って、同じ失敗を繰り返せってのか?
それはただのマヌケだろ!
まずは魔王の誕生を阻止する。これは絶対だ」
「あぁうん。それは解る」
清水も魔王に殺されてるからな、此処はあっさり同意して来る。
利害の一致ってヤツだ。考える事は同じらしい。
「なら、まずはオルクスだ。俺達で南雲を護衛する。
それで良いな?」
清水が無言で頷く。
良し良し。一人より二人の方が、出来る事が増える。幸先が良い。
「逆行の記憶は大きなアドバンテージになる。
他にも何か目的が?」
「他の目的?
【凄い美人を口説く】だな」
「【日本に帰りたい】ではなくて?」
「日本でやり残した事でも有るのか?
俺は無い。美人を口説く方が重要だろ」
「思い切りが良過ぎる。
確かに僕も、無いと言えば無いけど」
「それでも帰りたい。か?」
「言葉にするなら、故郷だから。
日本の方が平和だから、過ごし易いからって事になる」
ふと邪推が胸を過る。
他に目的は無い。と清水は言うが、
確かに目撃した園部の微笑みが、邪推を象って零れた。
「【園部を日本に帰してやりたい】。とかは無いのか?」
†
「本気何だな。
闇術師ってのは、後衛職だろう?」
「園部にも言われた。だけど立派な戦闘職だ。
南雲は生産職で、女子も後衛職。
此処は男の戦闘職が、前に出るシーンだろう」
「まぁ否定はしない」
オルクスの探索が始った。
六人づつのパーティーで大迷宮を探索して、地下に続く順路を開拓する。
上層だけでも100層だ。分担した方が早い。
「当然の結果だ」
「確実に掘り出し物だな?」
と言っても、こんな浅い階層で苦戦する筈も無い。
充分に訓練は積んだし、
65層までは人類の踏破階層で、事前に見取り図も手に入る。
何より俺達に取って、オルクスの攻略は二度目だ。
更に祈りの剣の性能がヤヴァイ。ノイントは流石である。
「凄いよ!檜山君っ!!」
「まさか檜山が、意外だわ」
後方メンバーの視線が熱い。
しかし園部は、清水の活躍が見たいだけでは?
「清水!」
「任せろ」
次の魔物が早々に姿を現す。コボルトの群だ。
祈りの剣の高性能さに調子に乗って、一人で戦い過ぎたか?
息を整える時間が欲しい。此処は少し、清水に任せるか。
「棘舞【サイレントソーン】」
清水が前に出て何か魔法を放つと、コボルトの群が崩れ落ちた。
崩れ落ちてそのまま悶え苦しみ出して、やがて静かになる。
「エゲツネェなぁ、ヲイ」
「この魔法は効果の割に、コスパが良い。
毒耐性の無いザコ相手なら、効果が望める」
名前からして、棘だか針だかを飛ばす魔法だろうとは思う。
だが俺は視認出来無かった。清水の解説では、
影のような黒い棘の魔法らしい。それを薄暗い迷宮内で使った事になる。
魔物相手に情けも容赦も要らないが、何とも殺意マシマシである。
清水は戦闘方針に付いて回避盾がどうこう言っていたが、
防御無用の無双風景を披露していた。清水もまだ、苦戦何てしないって事だ。
「毒耐性って言うと―――」
「ゴーレムとかアンデットには、確定で効かない。
フレッシュゴーレムなら、行けるかもしれない」
「フレッシュって、殆どアンデット扱いじゃないのかな?」
「だからかもだよ。
後は金属製の、ロボットとかだ」
「トータスで、ロボット何て居るの?」
「ならオートマタで、これなら居るかもしれない」
「オートマタか、ロマンだよネ☆」
清水と南雲が、オタクトークで盛り上がっている。
ヲオイ清水!蚊帳の外の園部が、ヤヴァイ感じだぞ?
「ヲイ!園部ッッ!!!」
「ッッ!!?」
楽勝ムードで、気を緩め過ぎた。
後方から別のコボルトが襲い掛って来る。奇襲だった。
ターゲットは園部だ。
後衛組は突然の出来事に硬直していたし、南雲は間に合わない。
俺は信仰を使ってブーストダッシュで決めようとした訳だが、
「操影【シャドウサーヴァント】」
清水の魔法の方が速い!そして今回は、俺の目でも見えた。
影が伸びる。清水の影が意志が在るかのように伸びて、
園部に奇襲を仕掛けたコボルトの、影を斬り裂いた。
影を斬り裂かれたコボルトは、影と同じ末路を辿って柘榴になった。
「無事か?
だから後方警戒を頼んだ訳だが」
「ごめんなさい。私が―――」
「いや、園部が無事で良かった」
「清水」
うん、今度の蚊帳の外は俺達である。
空気を読んで、他の連中と周囲の警戒に入る。
「うん。これが、
【お前等!結婚しちゃえよ☆】ってヤツなのかな?」
「知らん」
†
「清水。何をしているの?」
「技能検証。試したい事が有る」
オルクスの探索は続く。
最も優先すべき身を護る戦闘技能は、充分検証したと思う。
少なくとも次の30層のゲートまでは、戦闘で後れを取る事は無いだろう。
なので特殊技能の検証に入りたい。
「それって、さっき倒したコボルトでしょう?」
「あぁ、威力を調整して瀕死に止めている」
「えっまだ生きてるの?」
「検証だから」
今目の前に倒れているのは、探索中に撃破したコボルト。
そのコボルトを一体だけ、棘舞で瀕死に止めた。
【魔獣使役】の技能を検証しようと思う。
この技能は、文字通り魔物を従える事が出来る。
前回はウルの町で、スタンピードを起こした要因にもなった技能だ。
「良し、手応え有り」
上手くコボルトを使役出来た。
前回と変わりは無いらしい。問題無く【格下】の魔物を従えられる。
確率の幸運では無く、実力を問われる技能だ。
「暗黒回帰【ネガティブヒール】」
「清水って、回復魔法も使えるんだ?」
使役したコボルトを運用する為、回復魔法を施す。
因みにこの魔法は、闇属性の回復魔法だ。
確かにHPは回復するが、回復だけなら光属性の方が効率が良い。
暗黒回帰【ネガティブヒール】は、
アンデットのダメージも癒す事が出来る負のヒールである。
そもそも通常のヒールは、
アンデットを始めたとした負の存在を傷付けてしまう。
暗黒回帰【ネガティブヒール】は、そんな負の存在を癒す特殊なヒールだ。
と言っても今回癒すのは、通常のコボルト。
特に問題無く、コボルトは復帰を果たした。
「凄い。これで頼もしい味方が!って事?」
「いや、それは無い。
知っての通り、僕達は充分に強い。
肉壁になる機会は有っても、通常のコボルトが戦力になる事は無い」
「それならどうして?」
園部の疑問は当然だろう。
だけどコボルトの使い道は他に有る。
まずコボルトは獣系の魔物で、嗅覚が優れている。
戦闘より索敵向きだろう。斥候役と言う訳だ。
「清水の言う通りだったな?
まさかザコのコボルトにこんな長所が」
「言っただろう?斥候向きだと」
それ以来、コボルトを先頭に立たせた。
自慢の嗅覚で、コボルトは真っ先に襲撃に気付いた。
「これってトラップ?」
「罠にも気付いたの?」
「良し良し、良い調子だ」
その上このコボルトは、仕掛けられたトラップも看破した。
迷宮内の違和感を感知出来るらしい。これは素晴らしい誤算。
「何だか随分頼りになった気がする。
名前。付けてあげたら?」
「名前か」
園部からの提案。
短い間に、随分と仲間意識が芽生えたらしい。
それにしても名前か。
実は僕は、名前を付けるのが好きだったりする。
と言ってもペットに付ける名前では無い。
名無しのヒロインに付ける名前だ。
そう!これは趣味のゲームの話。
多くのゲームをプレイすれば、名前の無いヒロインと出逢う事も有る。
そして、プレイヤーに選択が委ねられる事も!
大抵のヒロインは名前を付けると、とても喜んでくれる。
僕は、そんな名付けイベントが大好物だった。
「なら【フェリエル】だ」
【フェンリル】だと有名過ぎるから、適当に弄った結果だ。
同じ狼系でも遙かに格下のコボルトには、過ぎた名前だろう。これで良い。
「フェリエル?」
「何か嗅ぎ付けたな?
これはアレかもしれないな」
名付けが終った後も探索は続く。
斥候を務めるフェリエルが、鼻をヒクヒクさせていた。
これは何かを嗅ぎ付けた合図だ。僕はそれに心当たりが有る。
「行こう。臨時収入の時間だ」
†
補足&解説枠。
オルクス大迷宮探索パート。まだ低層です☆
フレッシュゴーレム
数多く存在する○○製ゴーレムの、バリエーションの一つ。
フレッシュとは、死肉製ゴーレムの事。殆どアンデット。
製法がゴーレム系統なだけ。アンデットにしか見えない。
オートマタ
自動人形の事。オートマトンと言う場合も有。
オートマタは個人的な押しヒロイン種族☆大好物です。
コボルト
最近のファンタジーでは、定番ザコモンスターはゴブリンですが?
私の推しザコモンスターはコボルトです。
次回は資金調達の採掘です。
何を採掘するのか?解る人は中々のファンタジー通と見ました☆