「此処の壁、色が蒼い」
「鉱脈だ。稀少金属コバルトの。
ファンタジー風に言うと、腐食銀【コバルト】」
フェリエルの案内で発見したのは、やはりコバルトの鉱脈だった。
コボルトの設定は、トータスでも有効らしい。
「腐食銀【コバルト】?」
「名前の通り、腐食した銀だと言われている」
コボルトは穴倉に棲息する魔物だが、
コボルトが出たら、銀脈が近くに在る!と言われる程。
それだけコボルトは、銀脈に棲息している確率が高いらしい。
そしてコボルトが棲息する銀脈で、コバルトは採掘される。
コボルトには銀を腐食させる能力が有る。そう信じられた。
と言うのがコボルトとコバルトの設定だ。
僕達は異世界に来て居る訳だけど、こうも設定通りの展開になるとは!
「と言う訳で臨時収入だ。
採れるだけ採って行こう☆」
「採掘するの!?」
と言っても素人の僕達が採掘する訳じゃない。
経験は勿論、道具も無い。これは如何にも無謀な挑戦だろう。
まさか武器で掘る訳にも行かない。工夫を雇うのも無い。
実戦訓練の必要経費以外の、プライベートで動かせる資金が無い。
必要な資金は、随伴する騎士団が管理している。正にお子様扱いである。
「フェリエル!」
「あぁそっか、フェリエルに」
採掘はフェリエルに任せる事にする。
後は待つだけで、稀少金属が手に入る。一財産ゲットだ。
「呑気に採掘していて大丈夫なの?
他の皆は、大迷宮を探索中なのに」
「少し道に迷った事にすれば問題無い」
「清水。
お金に目が眩んで無い?」
「金は大事だろう。金=行動力。
金が有れば出来る事が増える。選択肢が増える!と言う事だ。
今は探索の費用も生活費も王国持ち。
これでは国からの依頼を断り辛いし、
断って費用を取り上げられたら、干上がって死ぬ。
金は、活動資金は絶対に必要だ」
「うぅ、社会常識が重いっっ!!!」
結局は召喚当初の問題に戻ってしまう。
だが!もう僕達は無力な異邦人では無い。戦う力が有る。
自分で身を護れるし、恐らく自分で働いて金も稼げる。
行動を自分で選べる!
必ずしもハイリヒ王国に、聖教教会に従う義理は無い!と言う事だ。
「その為の採掘?」
「そう!この手に自由を掴む。
職業選択の自由って事」
勇者の仲間とか言うブラック企業は退職して、
冒険者でも始めよう!ファンタジーの弩定番である。
何よりあの教皇はアウト。信用出来無い。
上司にしたくない人間の見本Lvだと思う。
「フェリエル?」
「そう全てが上手く行かないか」
命令通り採掘を続けていたフェリエルが、警戒モードに入る。
命令終了前の行動変更。警戒モードへの移行。これは襲撃の兆しだ。
「中ボスのお出ましか、それともエクストラクラスか?」
「大きい」
鉱脈の奥から現れたのは、大型のコボルトだ。
主人公とヒロインの相乗りが出来る程の巨体だった。
当然ながら乗れる事と、乗せてくれるかどうかは別問題である。
コボルトロード(仮)は、既にテリトリーを侵した僕達に殺気を放っている。
敵対認定確定!と言った処だ。
或いは同族のコボルトを使役しているのが、気に入らないのかもしれない。
フェリエルにも同様の殺気を放っていた。
「悪いけど、コバルトは頂いて行く。
気に入らないなら、戦うだけ」
†
「何かテンション↑↑だな?清水」
「すっかり置いて行かれた感が有るよね?」
と言う割には、檜山も南雲も文句一つ無く戦闘態勢に入る。
既に文句を言って、どうにかなる状況では無い事を悟っているからだ。
「奥から、また」
園部の悲痛な声。
眷属と言った処だろう。奥から通常サイズのコボルトが、次々と姿を現す。
取り巻き付きのボス戦!と言う事か。
「錬成→【ダウンフォール】」
取り巻き付きのボス戦では、
大抵の場合、素早く取り巻きを処理してボスに挑む事になる。
南雲はそれを良く解っている。南雲の錬成で、即席の落し穴が出来る。
取り巻きのコボルトが面白い位に嵌って、行動が阻害される。
「曲がって!」
動かない的に園部と、菅原と宮崎の攻撃が突き刺さる。
特に園部の攻撃は、ホーミングシュートと言う投擲術だ。
文字通り投擲したナイフが、側面からホーミングしてコボルトの耳辺りに刺さる。
骨の薄い側面を、正面から狙った攻撃。ナイフは脳まで達している筈。
「ボス戦に手加減は要らねえっ!!
【信仰】!力を貸せっっ!!!」
沈黙した取り巻きを突破して、檜山が斬り込む。
技能を使用したらしい檜山の動きが、いつもとは違った。
自己ブーストなのか、巨体のコボルトロードをズバズバ斬り裂いている。
そしてあの祈りの剣の性能も、相変わらず規格外だ。
ゲーム基準で言うなら、明らかに登場時期が早い。
「極天蝕【エクリプス・ゼロ】」
檜山が前線でヘイトを稼いでいる内に、いきなり大技を放つ。
危険を察したコボルトロードが、
檜山から強引に離れて退避しようとしたが、それは悪手だった。
檜山を下がらせる手間が省けた。
闇で光を遮断して、偽りの蝕を生み出す冷凍魔法。
コボルトロードの退避は間に合わず、片足が蝕に囚われて砕け散った。
片足で済んだのは称賛に価する。だけど足の部位欠損は致命的だった。
「おらあっっ!!!」
片足を喪った激痛に怯むコボルトロードに、檜山が追い打ちを掛ける。
勝敗は殆ど決したと言って良いだろう。後一太刀で、コボルトロードは沈む。
「ナンノマネダ、ニンゲン」
「喋った!?」
僕は檜山の、最後の一撃を止めた。
そして片言ながら口を開くコボルトロード。
園部は驚いていたが、そう言う事も有るだろう。その方が都合が良い。
「ナサケヲカケルツモリカ、コロスマデモナイトデモ?」
「此処で殺すより、
これからもコバルトを作り続けてくれた方が、都合が良い。
採り尽くすのはアウト!と言う事だ」
「流石は清水。エゲツネェ」
エコだと言って欲しい。
森の木を全て伐採するのは、アウトなのと同じだ。
コボルトロードはこちらの理屈を理解出来無かったようだが、
今回は退き下がった。勝者の特権である。
「危な気無く圧倒出来た。良い塩梅」
†
「清水?」
「どうやら伏兵らしい。何か居る」
大量のコバルトを手に入れて、上機嫌で探索に復帰する。
だが斥候を務めるフェリエルから、警告の報告が上がる。
どうやら伏兵が居るらしい。伏兵!待ち伏せを仕掛ける新しい魔物。
「コイツはっっ!!?」
「うわっグロッ!?何なのコレ!!?」
フェリエルが看破した伏兵は、ゲル状の魔物だった。
金属を思わせるメタルカラーで、ウネウネと蠢いている。
園部はアウトらしく、顔色が悪い。
「うおおおぉぉぉっっっキタ――(゚∀゚)――!!
ファンタジーの超弩定番のスライム!しかもコイツ、はぐれなメタルか!?」
「えっ本物!?」
「えっどうしてそんなに盛り上がってるの!?」
何かはぐれなメタルっぽいスライムなので、そのまま呼称する。
だがはぐれなメタルの割には、逃げる気配がしない。
異世界のメタルは逃げないのか!?何て素晴らしい展開!
と思っていたら、はぐれなメタルが襲い掛って来た。
何と言うレア行動!あのはぐれなメタルが、である。
「狙いはコバルトか!?」
はぐれなメタルの狙いは、どうやらコバルトらしい。
コバルトを納めた道具袋を、必要に狙って来る。
はぐれなメタルと言う位だから、稀少金属が好物なのかもしれない。
何と言うグルメ!コバルトを食べる心算か!?
「だがこれはチャンス!」
コバルトを文字通り餌にして、はぐれなメタルを踏み留まらせる。
使うのは当然【魔獣使役】の技能だ。リアルで1/256だろうと成功させる!
「良し!手応え有ったあああぁぁぁっっっ!!!!!!」
「おめでとう!清水君☆」
「何なの?この盛り上がり!?」
見事1/256を釣り上げた。
魔獣使役は確率技能では無いが、気分的に1/256である。
「良し!名前は【メタリア】だ☆」
結局コバルト(一欠片)を食べているらしいメタリア。
随分御機嫌に食事中らしく、こちらのリアクションに応えは無かった。
†
補足&解説枠。
採掘とメタル回になりました☆
コボルトとコバルト
コバルトに関する設定は、作中の通り。
清水の知っていた別作品の設定が、
トータスでそのまま有効化されていた設定です。
VSコボルトロード
資金を手に入れて自由を手にする。
自由の為に戦う!お約束です。英雄願望持ちの清水は、テンションが↑います。
はぐれなメタル
得られる経験値が高い事で有名なメタルモンスター。
似のメタリックカラーのゲル状のスライム。
原作の可愛い系では無く、リアルスライム系。
はぐれなメタルが推しなので、
似た感じのスライムをそう呼んでいるだけ。と言う設定。
捕獲率が1/256なのは超有名☆
幸運か時間を使い果たさないと、仲間には出来無い。
本作では運要素の確率捕獲では無いので、鬼畜度は温い。
後は出現率の問題。こちらの方がレア設定。
原作では最弱モンスターとして登場したスライム。
しかし他作品のリアルスライムは、
奇襲が怖い。酸がヤヴァイ。物理がアウト!と中々の難敵として描かれています。
元は普通のスライムを出す心算でした。
しかしいつの間にか、メタルなアイツが出ていました。
あの原作で、一番の推しモンスターなのです☆
次回は30階層ゲート解放戦。レイド戦です。