「メタリア!メタルシールドッッ!!!」
30階層ゲート解放戦。私はこの時、死を覚悟した。
30階層を護るガーディアンは強大で、
アレと平気で戦える清水と檜山は、凄いと思う。
そうこうしてガーディアンとの戦いが続く中、
ガーディアンの攻撃が、槍の雨が降り注いだ。
あっこれは死んだな?と、私は悟ってしまった。
これを防げる手段を、私は知らない。
逃げるのも無理。もう間に合わない。何でこんな事だけ、直ぐに解るんだろう?
「清水?」
「園部。動くな、じっとしてろ」
だけど私は死な無かった。まだ生きてる。
清水が、
いつの間にか身長よりも大きな盾を構えた清水が、私を護って盾になっていた。
ガンガン盾に槍が当たる金属音が、酷く現実的だった。
隣りでは南雲が土の壁で、同じく妙子と奈々を護っているのも見える。
「範囲攻撃か、面倒だな」
清水はこんな状況でも臆する事無く前を、ガーディアンを見ていた。
あの時の宣言通り、清水は前に出ている。
私にはそんな清水が、とても大きく頼りに見えていた。
「うっひゃぁぁっっ、ナグモ君やっるうぅぅっっ!!!」
「助かったよ南雲君!ありがとうネ☆」
「それは良いから、大人しくして!?」
うん、隣りが騒がしくて色々と台無しだった。
でもそれから、どうにかしてガーディアンの討伐は成功する。
問題のゲートを解放すると、プレートの一番下に備考が追加されていた。
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備考
オルクス大迷宮踏破記録★☆☆☆☆
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オルクス大迷宮の踏破記録!
この★が30階層のゲート解放の印なのかな?
残りの☆は、未開放のゲート?
この先60階層とか90階層にも、ゲートが在るとか?
なら四つ目と五つめの☆はナニ?
オルクス大迷宮って、100階層じゃないの!?
「結局、何処まで続くの!?」
解放したゲートで、今日は一旦ホルアドに戻る事になる。
これからはこのゲートで、30階層から探索出来る。
無理をする必要は無い。と言う判断らしい。
「清水。どうかしたの?」
「園部か」
宿泊先の、騎士団御用達の宿屋に戻る。
休暇の過ごし方は人其々だ。宿屋で休む子や、元気に町に繰り出す子も居る。
私は前者だった。まず身体を休めたい。
宿泊先は騎士団御用達の高級な宿だった。お風呂が在る。
異世界ではお風呂が在る宿屋は高級扱い!
でもメルドさんに頼んで、クラスの女子で団結してお風呂付きの宿屋を選んだ。
探索の後は、入浴しない何て在り得ない。
「上手く行かないモノだと思ってな?」
「綺麗―――」
入浴を終えて、風に当たろうとサロンに顔を出す。
するとサロンには清水が佇んで居て、何か難しい顔をしていた。
何が有ったのか訊ねると、清水は懐からそれを取り出した。
それは蒼い光りを宿した貴石だった。蒼い宝石の指輪。
綺麗なコバルトブルーの指輪で、意識していなくても目を奪われてしまう。
「それで、その指輪は?」
「例のコバルト。そのまま鉱石として売るより、
宝石としてカットした方が、高く売れそうだろう?ブリリアントカットとか」
「宝石のカット何て出来るの!?」
「南雲に頼んだ。アイツは錬成師だから、得意分野だろう?
でも流石に、手間と集中力の消費が半端無かったらしい。
とても財テクには使えない非効率的結果だ」
そして残ったのが、試作品となる目の前の指輪らしい。
残念だと思う。財テクの話では無くて、
こんなに綺麗な指輪が、日の目を見る事無く死蔵されてしまう事が。
「南雲は将来、宝飾デザイナーに成れるかもしれない。
園部?」
「あっ聞いて無かった。何?」
すると清水は、コバルトブルーの指輪を握らせて来る。
えっこれってどう言う事!?と放心している内に、私を置いて話しは進む。
「それは園部に渡そう。
園部はパーティーの仲間。戦果の分配を受け取る権利が有る」
「でも、私は―――」
「受け取り辛いか?それならお約束で」
今日は本当に、こんな事ばかり。
清水は私の掌から指輪を一度受け取って、
躊躇う事無く、私の左手の薬指に嵌めた。何を?指輪をだ。
「それはプレゼントって事で☆」
ちょっ!?これはやり過ぎでしょうぉぉぉっっっ!!!!!!
でも私は余りの展開に脳がフリーズして、指輪を返し損ねてしまう。
未だにコバルトブルーの指輪は、私の指で輝いている。
流石に南雲もアーティファクトは作れないから、
アミュレットやタリスマン的な効果は何も無い。それが残念だ。とか、
清水は呟いていた気がしたけど、私の耳に届く事は無かった。
†
「指輪をプレゼントして、指に嵌めた?
ダウトだろう」
ホルアドに滞在中のクラスメイトの中で、既に噂になっていた。
【園部が指輪を贈られた】と。
堂々と指輪を嵌めて居たら、それは目立つ。
園部がクラスで、目立つ奴だと言うのも大きかった。
端的に言って、クラスカーストの上位者!と言うヤツだ。
直ぐに好奇心旺盛な、クラスメイトの餌食になった。
しかも指輪を贈ったのは、同じクラスメイトだ。
カップル成立などとはLvが違う。プロポーズか!?と騒ぎになっている。
園部の様子は俺も確認した。
余りの展開に脳がフリーズしているのか、反応が悪い。
この反応の悪さを、周囲が勝手に補填してしまっている。
クラスメイトは花畑を耕している。と言う状況だった。
「アレは、本当に何の効果も無い指輪何だ。
ただの売却用でしか無い。そんな指輪を相手に、園部は目を輝かしてた。
プレゼント位!したくなるだろう?」
「このゲーム脳が!それはゲーム内の話だ。
指輪をプレゼントと言ったら、日本ではプロポーズがデフォルトだろ!
正気に戻れ。此処は異世界だが、俺達は日本人だ」
「ぐっなら、回収した方が?」
「色々行き違いが遭ったが、指輪を受け取ったのは園部だ。
此処で指輪を回収するのは、園部を疵付ける」
†
「って、何を上から目線で☆」
項垂れる清水を置いて、宿屋を出る。
清水は明らかにしくじった。だがそれで気付いた事も有る。
俺は、ノイントに土産物の一つも用意していない!と言う事実にだ。
あの清水が、ワンオフの指輪をプレゼントだと!?
対する俺はホルアドまで来て、何もしてネェッッ!!?
これはマズイ!そう悟って、清水に対抗してホルアドの宝飾店に突入した。
「ぐはっハルマゲドンクラス!?」
初めて見る宝石は、最終戦争的に高額だった。
俺が出せる支給金では、まず買えない。
清水が金を稼ぐ話をしていたが、状況を理解した。
「あっ檜山君?」
「白崎!さん」
厳しい現実を理解した処で、香織と遭遇する。
咄嗟に【香織】と呼ば無かった自分を、誉めても良い。
「ちょっと驚いたかな?檜山君はどうして此処に?」
「そ、それは―――」
香織は女だから!と言う免罪符でクリア出来る問題だが、俺は違う。
男の身で一人!宝飾店に行くのは目立ち過ぎる。
だが浮気がバレたかのように慌てるのも、何か違う。
「今、噂になってるだろう?清水と園部が。
だから俺も、土産物の一つも用意しようかと」
「あぁ、優花ちゃんと清水君のあの噂かぁ」
咄嗟に何のフォローも浮かば無い。
もう殆どノンフィクションである。別に隠し事じゃネェ死☆と開き直る。
「それで、檜山君もプレゼントを贈りたい人が居るの?
どんな人?良ければ相談に乗るよ!?」
「いやでも、宝石はアホらしく高いし!
俺じゃ手ェ出せネェよ」
「あぁ確かに宝石は値が張るよね?でも―――」
と言って香織は手を広げる。広がった先に在るのは、
宝石が収まるショーケースでは無く、観光客向けの土産物コーナーだった。
「少しだけ周りにも目を向ければ、答えは見つかるんじゃないかな?
それでも本物の宝石をプレゼントしたかったら、もう頑張るしか無いと思う」
観光客向けのアクセサリーなら、俺の財布でも対応出来る。
ガチの宝石は残念だが、今は手が出せない。
上から目線で語った後でアレだが、清水に相談しよう。
「そうか、そうだな?」
その後は香織と、土産物コーナーを物色した。
何とかノイントに似合いそうな土産物を、ゲットしたと思う。
だが清水のコバルトの指輪には、敵わない。何か負けた気がする。
「白崎さん。もうとっくにバレてるかもしれないけど、
ついこの間まで、俺は白崎さんの事が好きだった」
「檜山君!?」
「でもまぁ、色々遭って諦めたよ。
南雲が羨ましかった。本当に」
「えっと、態度に出てた。とか?」
「バレバレだから。まぁ早い処上手くやると良い。
遅れると、ハーレムが出来た後になるから。
今日は助かった。ありがとう」
「ちょっ!?檜山く~~んっっ!!?」
今日の礼を伝えてから、香織に背を向ける。
ポロッと本音が零れたが、まぁ良いだろう。きっと大差は無い。
俺が魔王を仕留めるからだ。魔王南雲!俺はお前の誕生を許さない。
†
補足&解説枠。
ホルアドの休日回でした☆
ブリリアントカット
ダイヤを最も美しく魅せる。と謳われたカット。58面体。
錬成でカットするのも、理論上は可能!と言う設定。但し高難易度。
クラスカースト
教室内の発言力や、影響力を身分制度に例えたピラミッド。
友人の多いイケメンや、コミュ力の高い美少女が頂点を担い易い。
元ネタで一番偉いのは【神官】。ハイリヒ王国と同じ穴である。
ゲーム脳
ゲームのプレイ、クリア、最速最適最強など、
ゲームに適応した判断/行動を下せる脳の事。または人物。
リアルでゲーム脳判断を下すのは、基本的にNG!マナー違反になり易い。
異世界は娯楽が少ないので、
買い物帰りに宝飾店に道草する敷居の低さ!と言う設定。
次回は転移トラップ回です。