ありふれた和平で世界平定(ディストピア)   作:LW

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今回はホルアドの休日回です。


08 少しだけ周りにも目を向ければ、答えは見つかるんじゃないかな?

「メタリア!メタルシールドッッ!!!」

 

30階層ゲート解放戦。私はこの時、死を覚悟した。

30階層を護るガーディアンは強大で、

アレと平気で戦える清水と檜山は、凄いと思う。

 

そうこうしてガーディアンとの戦いが続く中、

ガーディアンの攻撃が、槍の雨が降り注いだ。

 

あっこれは死んだな?と、私は悟ってしまった。

これを防げる手段を、私は知らない。

逃げるのも無理。もう間に合わない。何でこんな事だけ、直ぐに解るんだろう?

 

「清水?」

 

「園部。動くな、じっとしてろ」

 

だけど私は死な無かった。まだ生きてる。

清水が、

いつの間にか身長よりも大きな盾を構えた清水が、私を護って盾になっていた。

ガンガン盾に槍が当たる金属音が、酷く現実的だった。

隣りでは南雲が土の壁で、同じく妙子と奈々を護っているのも見える。

 

「範囲攻撃か、面倒だな」

 

清水はこんな状況でも臆する事無く前を、ガーディアンを見ていた。

あの時の宣言通り、清水は前に出ている。

私にはそんな清水が、とても大きく頼りに見えていた。

 

「うっひゃぁぁっっ、ナグモ君やっるうぅぅっっ!!!」

 

「助かったよ南雲君!ありがとうネ☆」

 

「それは良いから、大人しくして!?」

 

うん、隣りが騒がしくて色々と台無しだった。

でもそれから、どうにかしてガーディアンの討伐は成功する。

問題のゲートを解放すると、プレートの一番下に備考が追加されていた。

 

====================================

備考

オルクス大迷宮踏破記録★☆☆☆☆

====================================

 

オルクス大迷宮の踏破記録!

この★が30階層のゲート解放の印なのかな?

残りの☆は、未開放のゲート?

この先60階層とか90階層にも、ゲートが在るとか?

なら四つ目と五つめの☆はナニ?

オルクス大迷宮って、100階層じゃないの!?

 

「結局、何処まで続くの!?」

 

解放したゲートで、今日は一旦ホルアドに戻る事になる。

これからはこのゲートで、30階層から探索出来る。

無理をする必要は無い。と言う判断らしい。

 

「清水。どうかしたの?」

 

「園部か」

 

宿泊先の、騎士団御用達の宿屋に戻る。

休暇の過ごし方は人其々だ。宿屋で休む子や、元気に町に繰り出す子も居る。

 

私は前者だった。まず身体を休めたい。

宿泊先は騎士団御用達の高級な宿だった。お風呂が在る。

異世界ではお風呂が在る宿屋は高級扱い!

でもメルドさんに頼んで、クラスの女子で団結してお風呂付きの宿屋を選んだ。

探索の後は、入浴しない何て在り得ない。

 

「上手く行かないモノだと思ってな?」

 

「綺麗―――」

 

入浴を終えて、風に当たろうとサロンに顔を出す。

するとサロンには清水が佇んで居て、何か難しい顔をしていた。

何が有ったのか訊ねると、清水は懐からそれを取り出した。

 

それは蒼い光りを宿した貴石だった。蒼い宝石の指輪。

綺麗なコバルトブルーの指輪で、意識していなくても目を奪われてしまう。

 

「それで、その指輪は?」

 

「例のコバルト。そのまま鉱石として売るより、

 宝石としてカットした方が、高く売れそうだろう?ブリリアントカットとか」

 

「宝石のカット何て出来るの!?」

 

「南雲に頼んだ。アイツは錬成師だから、得意分野だろう?

 でも流石に、手間と集中力の消費が半端無かったらしい。

 とても財テクには使えない非効率的結果だ」

 

そして残ったのが、試作品となる目の前の指輪らしい。

残念だと思う。財テクの話では無くて、

こんなに綺麗な指輪が、日の目を見る事無く死蔵されてしまう事が。

 

「南雲は将来、宝飾デザイナーに成れるかもしれない。

 園部?」

 

「あっ聞いて無かった。何?」

 

すると清水は、コバルトブルーの指輪を握らせて来る。

えっこれってどう言う事!?と放心している内に、私を置いて話しは進む。

 

「それは園部に渡そう。

 園部はパーティーの仲間。戦果の分配を受け取る権利が有る」

 

「でも、私は―――」

 

「受け取り辛いか?それならお約束で」

 

今日は本当に、こんな事ばかり。

清水は私の掌から指輪を一度受け取って、

躊躇う事無く、私の左手の薬指に嵌めた。何を?指輪をだ。

 

「それはプレゼントって事で☆」

 

ちょっ!?これはやり過ぎでしょうぉぉぉっっっ!!!!!!

でも私は余りの展開に脳がフリーズして、指輪を返し損ねてしまう。

未だにコバルトブルーの指輪は、私の指で輝いている。

 

流石に南雲もアーティファクトは作れないから、

アミュレットやタリスマン的な効果は何も無い。それが残念だ。とか、

清水は呟いていた気がしたけど、私の耳に届く事は無かった。

 

 

「指輪をプレゼントして、指に嵌めた?

 ダウトだろう」

 

ホルアドに滞在中のクラスメイトの中で、既に噂になっていた。

【園部が指輪を贈られた】と。

堂々と指輪を嵌めて居たら、それは目立つ。

園部がクラスで、目立つ奴だと言うのも大きかった。

端的に言って、クラスカーストの上位者!と言うヤツだ。

直ぐに好奇心旺盛な、クラスメイトの餌食になった。

 

しかも指輪を贈ったのは、同じクラスメイトだ。

カップル成立などとはLvが違う。プロポーズか!?と騒ぎになっている。

 

園部の様子は俺も確認した。

余りの展開に脳がフリーズしているのか、反応が悪い。

この反応の悪さを、周囲が勝手に補填してしまっている。

クラスメイトは花畑を耕している。と言う状況だった。

 

「アレは、本当に何の効果も無い指輪何だ。

 ただの売却用でしか無い。そんな指輪を相手に、園部は目を輝かしてた。

 プレゼント位!したくなるだろう?」

 

「このゲーム脳が!それはゲーム内の話だ。

 指輪をプレゼントと言ったら、日本ではプロポーズがデフォルトだろ!

 正気に戻れ。此処は異世界だが、俺達は日本人だ」

 

「ぐっなら、回収した方が?」

 

「色々行き違いが遭ったが、指輪を受け取ったのは園部だ。

 此処で指輪を回収するのは、園部を疵付ける」

 

 

「って、何を上から目線で☆」

 

項垂れる清水を置いて、宿屋を出る。

清水は明らかにしくじった。だがそれで気付いた事も有る。

俺は、ノイントに土産物の一つも用意していない!と言う事実にだ。

 

あの清水が、ワンオフの指輪をプレゼントだと!?

対する俺はホルアドまで来て、何もしてネェッッ!!?

これはマズイ!そう悟って、清水に対抗してホルアドの宝飾店に突入した。

 

「ぐはっハルマゲドンクラス!?」

 

初めて見る宝石は、最終戦争的に高額だった。

俺が出せる支給金では、まず買えない。

清水が金を稼ぐ話をしていたが、状況を理解した。

 

「あっ檜山君?」

 

「白崎!さん」

 

厳しい現実を理解した処で、香織と遭遇する。

咄嗟に【香織】と呼ば無かった自分を、誉めても良い。

 

「ちょっと驚いたかな?檜山君はどうして此処に?」

 

「そ、それは―――」

 

香織は女だから!と言う免罪符でクリア出来る問題だが、俺は違う。

男の身で一人!宝飾店に行くのは目立ち過ぎる。

だが浮気がバレたかのように慌てるのも、何か違う。

 

「今、噂になってるだろう?清水と園部が。

 だから俺も、土産物の一つも用意しようかと」

 

「あぁ、優花ちゃんと清水君のあの噂かぁ」

 

咄嗟に何のフォローも浮かば無い。

もう殆どノンフィクションである。別に隠し事じゃネェ死☆と開き直る。

 

「それで、檜山君もプレゼントを贈りたい人が居るの?

 どんな人?良ければ相談に乗るよ!?」

 

「いやでも、宝石はアホらしく高いし!

 俺じゃ手ェ出せネェよ」

 

「あぁ確かに宝石は値が張るよね?でも―――」

 

と言って香織は手を広げる。広がった先に在るのは、

宝石が収まるショーケースでは無く、観光客向けの土産物コーナーだった。

 

「少しだけ周りにも目を向ければ、答えは見つかるんじゃないかな?

 それでも本物の宝石をプレゼントしたかったら、もう頑張るしか無いと思う」

 

観光客向けのアクセサリーなら、俺の財布でも対応出来る。

ガチの宝石は残念だが、今は手が出せない。

上から目線で語った後でアレだが、清水に相談しよう。

 

「そうか、そうだな?」

 

その後は香織と、土産物コーナーを物色した。

何とかノイントに似合いそうな土産物を、ゲットしたと思う。

だが清水のコバルトの指輪には、敵わない。何か負けた気がする。

 

「白崎さん。もうとっくにバレてるかもしれないけど、

 ついこの間まで、俺は白崎さんの事が好きだった」

 

「檜山君!?」

 

「でもまぁ、色々遭って諦めたよ。

 南雲が羨ましかった。本当に」

 

「えっと、態度に出てた。とか?」

 

「バレバレだから。まぁ早い処上手くやると良い。

 遅れると、ハーレムが出来た後になるから。

 今日は助かった。ありがとう」

 

「ちょっ!?檜山く~~んっっ!!?」

 

今日の礼を伝えてから、香織に背を向ける。

ポロッと本音が零れたが、まぁ良いだろう。きっと大差は無い。

俺が魔王を仕留めるからだ。魔王南雲!俺はお前の誕生を許さない。

 

 

補足&解説枠。

ホルアドの休日回でした☆

 

ブリリアントカット

ダイヤを最も美しく魅せる。と謳われたカット。58面体。

錬成でカットするのも、理論上は可能!と言う設定。但し高難易度。

 

クラスカースト

教室内の発言力や、影響力を身分制度に例えたピラミッド。

友人の多いイケメンや、コミュ力の高い美少女が頂点を担い易い。

元ネタで一番偉いのは【神官】。ハイリヒ王国と同じ穴である。

 

ゲーム脳

ゲームのプレイ、クリア、最速最適最強など、

ゲームに適応した判断/行動を下せる脳の事。または人物。

リアルでゲーム脳判断を下すのは、基本的にNG!マナー違反になり易い。




異世界は娯楽が少ないので、
買い物帰りに宝飾店に道草する敷居の低さ!と言う設定。

次回は転移トラップ回です。
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