トレセン学園での奇妙な日常   作:ボンゴレパスタ

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不屈の心 〜I Never Goof Up1

 

 

 

 

――――ゴール!!一着は第4コーナーで先頭に躍り出たセイウンスカイです!!キングヘイローは惜しくも2着に敗れました。

 

 

 

 

―――彼女には期待する声も大きかったんですが、残念な結果に終わりましたね。天才ウマ娘を母に持つ彼女ですが、今後は果たしてどうでしょうか…?

 

 

 

辺りはすっかりと暗くなった学園の一室で、仗助は必死に今日のレースの映像を見返していた。 

 

 

 

 

 

一体何が悪かったのか。何が彼女の勝利を妨げたのか。

 

 

 

 

「――もうこんな時間か」

 

 

仗助は壁に掛かっている時計を確認するとすっかり温くなってしまったコーヒーをすすった後に、腕を組んで上に伸ばし、凝り切った背中を子気味よく鳴らすと再びパソコンとにらめっこをするのだった。中央ではおよそ2000名ものウマ娘が在籍しているが、そこからトレーナーを見つけ、さらにデビューして成績を残し、名前を世間に知らしめることができるウマ娘など上澄みも上澄み、一握りしか存在しない厳しい世界である。そんなウマ娘たちが一生に一度、わずか1年の期間という限られた中で挑戦することができるクラシック路線――4月に行われる皐月賞、5月の日本ダービー、10月の菊花賞で構成され、その3冠を征したものは「3冠ウマ娘」としてその偉業を名に遺すことになる。そして今日はその三冠の登竜門である皐月賞が行われ、懸命な走りを見せたがキングは2着という結果だった。今回の3冠の初戦を1着で飾ったのはキングの同世代のウマ娘の一人であるセイウンスカイであり、彼女がいつものようにノホホンとした表情でウイナーズサークルに向かう背中を見つめる彼女の顔に浮かんだ表情は、その悔しさがありありと刻まれていたのだった。

 

 

 

 

 

 

―――コンコン

 

 

 

 

トレーナー室のドアを叩く音が聞こえる…室内の仗助が入室の許可を促すと、そこにいたのは自身の担当ウマ娘、キングヘイローだった。

 

 

 

 

「―――キング」

 

 

 

普通のウマ娘であれば、G1である今日のレースで2着を取ったことは大変な偉業であり、今日は祝勝会となっていただろうーーーしかし、彼女は一体何者か。一流を目指す・あり続けることを掲げる彼女にとっては、クラシック路線の初戦で躓くようであってはならないということは自明の理であった。

 

 

 

 

「ターフの上で順位が決まった時。掲示板にそれが表示された時…スカイさんがウイナーズサークルに向かう背中を只々見ていることしかできなかった時に思ったわ。何で私がこんなところにいるのかって。なんで私は結果を残すことができていないのかって」

 

 

 

 

 

 

 

此方にまで聞こえてきそうなほどその手を強く握りしめるキングの姿を正面から見据えながら、仗助は自分が何も出来なかったという無力感に苛まれていた。キングを一流にすると約束したのに。その約束を守ることができなかった。生まれてこの方自分の無力感に打ちひしがれることが殆どなかった仗助は、なんとも言えない表情でキングのことをじっと見つめた。

 

 

 

 

――果たして俺はキングのトレーナーとしてふさわしいのだろうか

 

 

 

 

仗助の考えていることがその表情から伝わってしまったのだろうか。キングは顔を真っ赤にすると、仗助の胸元を掴んでそのまま地面に押し倒してしまう。がしゃんと大きな音を立てて、机の上にあったプリントが手に触れて宙に舞うーー背を地面に強かに打ち付けると馬乗りになったキングの顔の覗き込むことができるーー彼女の顔の顔には、色濃く失望と怒り…そして深い悲しみが浮かんでいたのだった。

 

 

 

 

「――そんな顔をすることは許さないわ。私は貴方を信じて一緒に歩むって決めたの…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……だからそんな顔しないで…!」

 

 

 

 

 

キングの目から零れ落ちた熱い感情の発露が、仗助の頬に流れ落ちてくる。まさかトレーナーとしてあるべき姿を、キングに教えられるとは。彼女は競技者としてライバルであるセイウンスカイに後れを取り、仗助はトレーナーとして自身の担当のウマ娘を勝利に導くことができなかったという挫折を味わった。それでも尚、ここで立ち止まることは決して許されない。キングの本音を窺い知ることができた仗助は、自身の短慮を恥じながらキングに話しかけた。

 

 

 

 

「―――すまなかったなキングーー本当はこのまま解散するつもりだったが、今日の反省点を踏まえて少しだけ走ろうぜ」

 

 

 

 

「……と、当然よ!!仗助、貴方にはこの後私の練習に付き合う権利をあげるわ!」

 

 

 

旅路にトラブルはつきものだ。

突然の嵐に見舞われた二人の船は、再び航路に沿って舵を切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皐月賞の次の日、キングとの練習を終えた仗助は彼女と二人でトレーナー室に戻ろうとしていたーーその表情には既に迷いがなく、次のレースに向けて既に新たな決意を胸にしていた。。

 

 

 

 

 

彼女もすっかりと立ち直れたようで、今日の練習も非常に充実したものとなった。

 

 

 

 

 

トレーナー室がある上の階に上ろうとすると、仗助の目の前に突然本の束が降ってくるのだった。

 

 

 

 

「――――なっ!!」

 

 

 

 

 

咄嗟のことで反応しきることができず、また隣にいるキングを守るのに注力してしまい、本の束は仗助にモロに降りかかってくる。そのうちの1冊の角が仗助の頭にぶつかると、仗助は頭を抱えその場にうずくまったのだった。

 

 

 

 

 

 

「痛って~~~~~~~!!」

 

 

 

 

 

 

 

仗助達の目の前には、一人のウマ娘がいた。鹿毛のヘアーに白毛の前髪が特徴的な、常に耳を垂れ下げながら、その渦巻き状の光彩をさらに急速回転させながら仗助達のもとへと駆け寄った。

 

 

 

 

 

 

 

「ご、ごめんなさい~~~~!!また私のせいで~~!!」

 

 

 

 

 

 

 

「…えーと、貴方は…?」

 

 

 

 

 

「メイショウドトウです~~。私のせいでまた人を傷つけてしまいました…ほんとうにごめんなさい…また私のドジのせいで…」

 

 

 

 

 

 

自身の名前を名乗った少女は、二人の前で自身行いを悔いるような発言をつぶやきながら、仗助たちの元に駆け寄ろうと階段を降りようとするーーするとその途中で躓いてしまい、今度は自身の身体をその落下物として仗助達のもとに降り注ぐのだった。

 

 

 

 

 

「はわわわわぁぁぁぁ~~~!!またやってしまいました~~!本当にごめんなさい。ごめんなさい…」

 

 

 

 

 

 

 

仗助は何とか体制を立て直すと、キングにケガがないか確認するーー無論クレイジー・Dで治すことはできるが、彼女の身に何もないことが一番だ。

 

 

 

 

 

「私は大丈夫よ、仗助…」

 

 

 

 

キングの言葉にほっと胸をなでおろした仗助だったが、そこで起きている異常にようやく気が付くのだった。

 

 

 

 

 

 

「――ごめんなさい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!私がドジだからぁ!また人に迷惑を!!あぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

自戒の念をひたすらに言い続けるドトウだったが、その様子は正常とはいい難く、まるで何者かに取り憑かれたかのような様子だった。

 

 

 

 

 

 

「――おい、おめ~!大丈夫か!!!急にどうしたんだ!!」

 

 

 

 

 

 

 

仗助はすっかり正気を失ったドトウに近寄ろうとするーーするとドトウの身体から何かが飛び出し、仗助の腕を力強く掴む…およそその掴んだ物体は人間のものであるとはいい難く、仗助にとってそれは見慣れたものだった。

 

 

 

 

 

「こ、これはスタンド…!!?」

 

 

 

 

 

 

新たな危機が、仗助のもとに降りかかろうとしていた。

 

 

 

 

 

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