トレセン学園での奇妙な日常   作:ボンゴレパスタ

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I Never Goof Up2

 

数年前に殺人鬼の吉良吉影がメジロマックイーンたちにそのどす黒い正体を勘付かれそうになった際、それを危惧した写真の親父が矢を用いてスタンド使いを意図的に増やしたという事実がSPW財団の内偵調査によって明らかとなった。そしてその調査の際に明らかになった事項であったが、仮にウマ娘が人為的にスタンド能力を引き出された場合、元来生物として「勝ちたい」という想いや意思が強く、加えて精神的に未熟な彼女たちが強制的にスタンド使いとなるとその能力を持て余し、暴走してしまうことが報告された。

 

 

 

そしてトレセン学園が雇用した警備員の及川の話によれば、とある人物が学園内で矢を用いることによってスタンド使いを増やしているというーー恐らく目の前のドトウが正気を失い、スタンドを無差別に繰り出しているのは、その人物によって矢を射られたとみてほぼ間違いないだろう。

 

 

――何はともあれ、目の前の少女を止める必要がある。仗助はドトウのスタンドの攻撃をクレイジー・Dで懸命に受け止めながら、目の前で白目を剥きながらうわ言をつぶやく少女に言葉を投げかけた。

 

「――おいドトウ!いいから早くスタンドを引っ込めろ!」

 

人は目の前に解決しなければならない問題が生じた際に、取るべき複数の手段から無意識のうちに最善と思われる手段を選択する。目の前で正気を逸したドトウに対し仗助は、彼女を正気に戻すためにこのような言葉をかける選択をしたーーもっとも普通の状況、引いては普通のスタンド使いであれば、仗助の取った行動は概ね最適解であったと言うべきだろう。杜王町やトレセン学園で、多くのスタンド使いと戦いを繰り広げる中で培われたその豊富な経験、戦闘センスが、ドトウを傷つけられないという制約の中で自然とこの場でとるべき行動を選択したのである…しかし、こと彼女の能力の特質を鑑みた時、その行動は結果としてむしろ火に油を注ぐこととなった。

 

 

「また、私のせいで!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃぃぃぃぃぃ!!!!」

 

 

 

先ほどから取り乱し様から、さらに拍車がかかったように彼女は両手で頭を掻きむしり、白目を剥きながら口から泡を吹き出していくーーすると、クレイジー・Dの腕を掴んでいたスタンドの身体が巨大化し、その腕は筋骨隆々なものとなったのだった。

 

 

―――――なっ

 

 

 

本能的に危機を察知した仗助は、クレイジー・Dがつかんでいた手を離し防御姿勢を取るーードトウのスタンドは、掴まれていた方とは逆の手で拳を握ると、クレイジー・Dの防御するためにクロスした腕に強烈な一撃を食らわせ、仗助を遥か後方に吹っ飛ばしたのだった。

 

 

「――――仗助!!!」

 

 

 

キングの視線が、吹っ飛んでいった仗助に向けられる。本来であれば、衝撃を受けたように吹っ飛んだ仗助のもとに駆け寄りたかったキングだが、その願いはドトウの言葉によってかき消されることとなった。

 

 

 

 

「~~私~~キングさんにも迷惑をかけてしまいましたぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~!!!!!ごめんなさいごめんなさいぃいい!!!!!」

 

 

「逃げろ!キング!」

 

 

 

 

 

鋭く掛けられた言葉に、弾かれたようにキングは走り出す。走り去っていくキングの背中を、壁にめり込んだ仗助は只々見つめることしかできなかった。そもそもウマ娘であるキングが全力で走っている時点で、人間である仗助が一緒についていくことなどできない。すると仗助に攻撃を行ったドトウは、走り去っていくキングの方向へ首を曲げ、彼女目掛けて走っていったのだった。あっという間に小さくなった背中を見つめ、仗助は成すすべなく背中をずり落とした。

 

 

 

 

―――ドトウの能力は、彼女自身の罪悪感で強化されるスタンドとみて間違いないだろう。

現に俺が彼女にスタンドを引っ込めさせるために声を掛けた結果、余計に彼女は取り乱してそのスタンドの力は大幅に増した。恐らく元来彼女が持っているドジっ子気質、またそれに伴うネガティブ思考からみれば、彼女とそのスタンドは恐ろしく相性がいいものであると言わざるを得ない。

 

 

 

不意を突かれたとはいえ、この身体の状態ではキングとドトウを追うことは困難だろう。仗助は顔をしかめると、悪態をつきながらポケットから慎重に携帯電話を取りだした。本当は他人を巻き込むなんてことはしたくなかったが、ドトウとの相性を鑑みれば、この窮状を打開するのに最善の人物がいる。

 

 

 

 

「―――もしもし。俺だぜ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――私はお世辞にも、運動神経が良いとは言えない。

 

 

 

 

担当のウマ娘を教える際、最もそれで難儀するのはウイニングライブにおけるダンスの指導だった。ウマ娘たちがレースでその夢を賭して戦い、その順位に応じたポジションでダンスをすることが求められる。レースだけでいいのではないかと考える人物もいそうではあるが、ウマ娘たちがその日ターフの上に立つのに沢山の関係者、ファンの人たちの支えがある以上、その感謝を示す場があってしかるべきである。

 

 

そういった事情が存在する以上、ダンスの指導もトレーナー業の一環としてそつなくこなすことが求められる。樫本理子はその日、来週に控えた担当へのダンス指導に備え、少しでも体裁を整えておくためにゲームセンターに赴いていた。

 

 

 

ダンスゲームの台の前で、彼女は肩で息をしながらボードに表示された得点を見つめてため息をついた。再度挑戦しようと財布を開いたが、既に小銭は使い切ってしまっていた。両替をするために一度ゲーム台から離れようとすると、突然背後から声をかけられたのだった。

 

 

「――――こんにちは」

 

 

 

「ーー貴方は、確か…」

 

 

 

 

 

 

その人物は樫本を警戒させないように笑顔を浮かべながら、アメリカ映画の俳優よろしく両手を広げて、ゆっくりと彼女に近づいていったのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

キングは懸命に足を繰り出しながら、背後に迫るドトウに目をやった。夕暮れ時の校舎には人はほとんどおらず、自身の息遣いがあたりにこだましている。しばらく走り続けていたキングだったが、徐々に視界がチカチカと点滅し、息から血の味がにじみ出てくる。

 

 

 

ーークラシック期でまだまだ成長の余地があるにせよ、私のスタミナは…

 

 

 

皐月賞の敗因。セイウンスカイの背中に一歩届かなかった原因が、今キングヘイローの背中に重くのしかかっていた。

 

 

 

 

やがて足をとられて地面に頭を突っ込み、息も絶え絶えになりながら後ろを振り向くと、ドトウは既に背後まで迫っていたのだった。

 

 

「キングさん~~~~~~~~!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!!!!!私のせいでそんなに苦しんでいるんですねぇ~~~~~~~~~!!!!」

 

 

 

 

 

 

白目をむき、狂人と化したドトウがゆらゆらと、夢遊病患者のような足取りでこちらに迫ってくる。最早完全にスタミナが身体から抜けきって、逃げることもかなわないキングはここに来るはずもない自身の相棒の名前を呼んだ。

 

 

 

 

「助けて!!仗助!!」

 

 

 

 

ドトウの背後からスタンドが出現し、その拳がキングの元に迫ってくるーーー彼女の身体が拳に貫かれる直前、そのスタンドの動きはぴたりと制止した…正確にはその動きを止められていた。

 

 

 

「――仗助から連絡があって急いで来ましたが…正に危機一髪って状態でしたわね。ドトウさんの罪悪感は能力によって取り除いたので、もう安心ですわ…」

 

 

 

 

キングとドトウの対角線上にたつその少女は、葦毛のロングヘアーに気品にあふれた立ち姿。その少女はかつて仗助と殺人鬼、吉良吉影からトレセン学園を救ったウマ娘・メジロマックイーンその人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

I Never Goof Up

能力者 メイショウドトウ

【破壊力 - C〜A / スピード - C〜A/ 射程距離 - D / 持続力 - D / 精密動作性 - E/ 成長性 - A】

 

 

ドトウ自身が感じる罪悪感に応じて力が増すスタンド。彼女が感じた罪悪感の強さ次第では、クレイジーDの攻撃力を凌駕するほどのパワーを得る。しかし、その力の反動はそれに応じてドトウの肉体的・精神的に悪影響を及ぼすため、まさに諸刃の刃の能力と言える。

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