トレセン学園での奇妙な日常   作:ボンゴレパスタ

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ヴィットーリアに捧ぐ舞踏2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――私は決してあの人を意識していた、というわけではない。

 

 

 

 

 

 

担当のリトルココンに対しウイニングライブの際に披露する歌の指導していた樫本だったが、その指導に少々難航していた。歌というものはその歌う人物の息遣い、細かい語尾の処理やまた感情の込め方といった様々な要素によって構成されている。彼女の担当、リトルココンは非常に聡明なウマ娘であり私の教えたことを、まるで水を吸収するスポンジのようにすぐに呑み込む彼女だったが、不器用な節があり、こと感情の込め方に関して言えば中々合格と呼べるラインに達することができなかった。

 

 

 

 

 

 

その日のレッスンが無事終わりダンスの練習場から後にしようとすると、入り口にとある人物が立っていた。

 

 

 

 

 

 

―――あの人だ。

 

 

 

 

 

 

 

「―――お待たせしました。貴方が立っているのは見えたのですが、私にも優先順位というものが…」

 

 

 

 

 

 

 

何故か自身の口から矢継ぎ早に口に出される言い訳に内心驚きつつ、その人物の方に歩み寄っていくと、肩をすくめながらそんなことは気にしなくていいと樫本に声を掛けた。

 

 

 

 

 

 

―――ウマ娘のことを優先するのは当然ですよ

 

 

 

 

掛けられた私を労う言葉に安心しつつここにやってきた用件を聞くと、どうやら一緒に食事をしたいと言う。

 

 

 

 

 

 

 

「―――いいでしょう。ご一緒します」

 

 

 

 

 

 

 

逸る気持ちを抑えつつ、樫本はその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自身の置かれた窮状に、シャカールは目の前が真っ暗になるほどの絶望感に包まれていた。どうやってもオペラオーのスタンドを倒す方法が思い浮かばない。いくら何でも強力すぎやしないだろうか。仗助の方へと目をやると、彼の顔には絶望や苦しみといった感情はまったく感じ取ることができず、寧ろ堂々と率先して役としての演技に没頭していたのだった。台詞を歌にのせるたびに手を広げたり、地面や壁を乱雑に叩くことによってその場の臨場感を演出しているとさえ見られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――この男…

 

 

 

 

 

 

 

仗助という男、既に戦うということを放棄したというのか。

かつて殺人鬼からトレセン学園を救ったという男に内心失望しながら、シャカールは涙ながらに演技を続行せざるを得ないのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ!この劇を盛り上げてくれるアドリブは大歓迎だよ!臨場感にあふれるその所作!あぁ素晴らしい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

トトトツーツーツートトト…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

軽快なリズムを足で刻みながら、仗助は口から絞り出される台詞と共に役に徹していく。シャカールも役になりきる以外に最早できることがなかったので、半ばやけくそになりながらその役として演じていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

劇も佳境に差し掛かり、オペラオーはその笑みを崩すことなく口を開いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、本当に素晴らしい歌劇だった。本当はもっとこの3人で物語を織りなしていきたいが、そろそろ幕引きの時間だーーー仗助、君の役どころはエジプトの王トローメオ。その最期は剣に刺されてしまうというものだ…つくづく本当に残念だ。君の最期をもってこの歌劇を感動のフィナーレで締めくくってくれ!」

 

 

 

 

 

 

 

何処からともなく刃渡りが50センチほどのグラディウスが出現し、刃先がゆっくりと仗助のもとへと向いていき、空気を切り裂く音を立てながら仗助の元へと向かっていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――仗助!!

 

 

 

 

 

 

 

シャカールは仗助のもとへと駆け寄ろうとするが、その足はまったく動かない。剣が仗助の喉元に突き刺さる直前、教室のドアが音を立てて吹っ飛び、何かが室内に飛び込んでくる…その物体はその勢いのままに突っ込むと、オペラオーに飛び膝蹴りを繰り出し、彼女の身体は壁に向かって吹っ飛んでいくのだった。

 

 

 

 

 

 

「――――ど、どういうことだ……?」

 

 

 

 

 

 

 

壁に強かに頭を打ち付けたオペラオーは、そのまま意識を手放すのだった。仗助は剣が目の前で消えたことを確認すると、教室に飛び込んだその救世主に声を掛けた

 

 

 

 

 

 

 

「――ありがとな、ゴルシ」

 

 

 

 

 

 

 

 

その人物は、先ほど密会に参加していた奇人ウマ娘、ゴールドシップその人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――おいゴルシ!なんでテメーはこの場所でアタシたちがスタンド使いから攻撃を受けているってわかったんだ!」

 

 

 

 

 

「何でって…そりゃあゴルゴルレーダーにSOSを受信したからに決まってんだろ?」

 

 

 

 

 

 

やはりこのウマ娘、頓智気であったか。自身とは全く異なる次元で会話を繰り広げようとするゴルシに目を回すのを懸命に抑えるシャカールだったが、そこに仗助が横から補足で説明するように2人の会話に加わったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーオペラオーのスタンドは、劇に関係ないと判断された行動はすることは出来ない…つまり、関係あると判断された行動は咎められないし、行動できるってことだ。」

 

 

 

 

 

 

「オペラオーは劇を盛り上げるアドリブして判断したみたいだが、俺が地面を地団駄したり、壁を叩きつけていたのはよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

トトトツーツーツートトト…

 

 

 

 

 

 

 

----- まさか

 

 

 

 

 

 

 

 

真意に気づいたシャカールが顔を上げると、仗助は不敵な笑みで口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーそう。モールス信号だ…そしてこのリズムが示す意味はーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーSOSってわけか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「学園内にこの意味を理解してくれるやつがいるか賭けだったが、ゴルシが来てくれて助かったってとこだな………」

 

 

 

 

 

 

「おう!ゴルシちゃんの手にかかればこんなもんよ!」

 

 

 

 

 

ゴルシと仗助の会話を聞いたシャカールは、口をあんぐりと開けて呆れながらにク鳥羽を投げかけた。

 

 

 

 

 

 

「――そんな僅かな可能性…誰かがモールス信号を理解して、助けに来ることに賭けたのか…?」

 

 

 

 

 

 

「―――確かに可能性で言えば、俺がやったことは大間抜けって言われてもしかね~よな~…だが」

 

 

 

 

 

 

「その可能性に当たる当事者になったんだったら、最善を尽くすってもんだろうがよ~~」

 

 

 

 

 

 

どうやらこの男、ただのテキトーな男というわけではなかったようだ。冷静な状況分析能力、そして僅かな勝機にかけて行動を起こすという豪胆さ。そして誰かを信じることができるというその強さ。それらをこの男は兼ねそろえている。

 

 

 

 

 

 

 

――――この男を信じてみよう

 

 

 

 

 

 

シャカールは目の前の仗助に向き直ると、静かにスタンドを繰り出す。そして彼に向かって言葉を投げかけるのだった。

 

 

 

 

 

 

「アタシのスタンドだったら、この事件の犯人…黒幕の手がかりを追うことができるかもしれねー…」

 

 

 

 

 

 

「……本当か!?」

 

 

 

 

 

 

「アタシのスタンドの名前は『レディオヘッド』。その場所の無機物から情報を引き出したり、書き加えたりできる能力だ…つまり」

 

 

 

 

 

 

レディオヘッドが近くに転がっている台本に触れると、そこからタブレット端末から表示されるように情報が表示されていく。

 

 

 

 

 

 

「どうやらこの台本は今日作られたようだな…残念ながら、黒幕に繋がるような手がかりになる情報は何もない」

 

 

 

 

 

 

 

「―――いや。気にすんなってシャカール。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ~それ?ゴルシちゃんにも見せろよ~~」

 

 

 

 

 

 

 

「うっせーんだよ、てめ~はあっち行けよゴルシ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――というように私はこれ以上、ケガをして未来を断たれるようなウマ娘が出て欲しくない。その一心なんです。そのための徹底管理教育プログラムなんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――私は本来、自身の心の内や抱えている傷を無闇やたらと他人に見せるような人間ではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

それでも、この人の前では自然と自身の心の内を、その弱さを告白してしまっていたーーそうさせられてしまう何かがこの人にはあった。樫本が俯きながら自身の過去を話すと、その人物は静かに彼女の肩に手を置きながら言葉を投げかけるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「――――貴方の理想、深く感銘しました。確かにそのプログラムが実現されれば、多くのウマ娘の将来を救うことができる」

 

 

 

 

 

 

 

 

―――この人は私のことを肯定してくれる。この人の隣が、なんだかとても居心地がいい…

 

 

 

 

 

 

 

樫本がはにかむように笑みを浮かべると、その人物はその様子を一瞥して彼女に声を掛けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――その理想、ぜひとも実現しましょう…私に考えがあります」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レディオヘッド(モデル:バンド レディオヘッド)

 

 

 

 

能力者:エアシャカール

 

 

 

 

【破壊力 - C/ スピード - D / 射程距離 - B / 持続力 - B / 精密動作性 - B / 成長性 - A】

 

 

 

 

 

 

人や動物以外の無機物の情報を読み取り、また情報を書き込むことができるスタンド。岸辺露伴のスタンド、「ヘブンズ・ドアー」の対極の位置にあるスタンドの解釈して良いが、戦闘向きのスタンドであるとは言えない。

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