トレセン学園での奇妙な日常   作:ボンゴレパスタ

2 / 39
東方仗助、トレーナーになる2

トレセン学園に到着した仗助は校門から一歩中に入ろうとするーーその時ふと目に飛び込んできた見覚えのある風景に、仗助は思わず顔をしかめるのだった。

 

 

 

 

 

「――やっぱしよ~…良いことばかり思い出すわけじゃあね~よな~…」

 

 

 

 

 

 

 

仗助の脳裏には、かつてここで繰り広げられた激戦――杜王町に産み落とされた殺人鬼、吉良吉影との死闘を思い出していたーー校門から校舎内を覗き込んでみると、吉良との戦いを繰り広げた旧校舎は姿を消し、新築の校舎が建てられていたのだった。

 

 

 

 

 

「まぁ、あんだけ古い校舎が吹っ飛べば、流石に建て替えるよな~…」

 

 

 

 

 

気持ちを切り替えると、仗助は期待で胸を弾ませながら門を潜る。すると校門の向こうから緑色の制服と帽子に身をまとった女性がやってくるのが見え、あっという間に仗助の目の前にやってくると、その人は満面の笑みで声をかけてきた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トレセン学園へようこそ!理事長秘書をしている駿川たづなと申します!新人トレーナーがいらっしゃるとのことでしたので、お迎えに上がりました!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「よろしくお願いします──東方仗助って言います」

 

 

 

 

たづなに先導されながら、仗助は食堂やプール、練習場といった広大なトレセン学園の施設の案内を受ける──そして最後に挨拶をしてほしい人物がいると理事長室へと案内されるのだった。

 

 

 

 

たづなが扉を二度小気味よい音で叩くと室内からは快活な入室を許可する声が聞こえ、二人はその厳かな扉を開き、入室するのだった。

 

 

 

豪華な装飾が施された室内には、帽子を被った年端も行かぬ少女が仗助を得意満面に仗助のことを見上げていた。そして壁際の棚には見覚えのある生物の姿があったーー仗助は視界にその生物が映りこむと、思わず後ろに飛びのくのだった。

 

 

 

「―――ゲッ!」

 

 

 

その生物は、数年前吉良吉影との戦いで仗助のことを存分に苦しめた生物――植木鉢からその身体を動かすことはできずまるで植物のようであるが、その生物には動物のように目や口があるーーおよそ動物と植物の中間の生物と呼べるこの存在、猫草は仗助の姿を見ても興味がなさそうにそっぽを向くのだった。

 

 

 

「安心っ!少し奇妙な生き物だが、私が飼っている生物だ!数年前に旧校舎で発見されたもので、私が保護という名目で飼っている!滅多に人を襲わないから安心してほしい!!」

 

 

 

 

少女の言葉に仗助は訝し気に元の位置に戻ってくると、少女は再び口を開くのだった。

 

 

 

 

「――歓迎ッ!!ようこそトレセン学園へ!」

 

 

 

仗助は首を傾げながら辺りを見回すと、隣にいるたづなに声をかけた。

 

 

「たづなさんよ~理事長さんってどこにいるんですか?ここで待てばいいってことっすか~?―――それに嬢ちゃん?こんなとこに居ちゃあだめっすよ…もしかして理事長のお子さん?」

 

 

 

 

 

 

――その瞬間に室内の空気は氷点下にまで下がった。

 

 

 

 

たづなは顔面が蒼白し、目の前の少女は仗助に声をかけた表情で固まり、わなわなと震えながら声を上げるのだった。

 

 

 

 

「――憤怒っ…!!私が理事長だ…」

 

 

 

 

 

 

―――マズイことを言ってしまった。

 

 

 

 

勢いとはいえ社会人としてあるまじき言動をしてしまった仗助は、自身の失態に顔が青ざめた。仗助は直ぐに地面に膝と手をつくと、頭を地面にこすりつけるのだった。

 

 

 

「――――すんませんでした…‼まさか理事長だったなんて…!!本当に失礼なこと言ってすんませんでした‼」

 

 

 

地面に懸命に頭をこすりつける仗助を冷え切った目つきで眺めていた少女だったが、やがてため息をつくと少女は静かに口を開くのだった。

 

 

 

 

「―――許す…君のことは聞いている、東方仗助トレーナー…。改めて私の名前は秋川やよい、正真正銘トレセン学園理事長だ!!」

 

 

 

見た目は明らかに自身より年下の姿をした少女に許しを乞うために大の男が土下座をするという、情けない構図――仗助はおずおずと顔を上げると、目の前の少女は歓迎と達筆な字で書かれた扇子を片手に満面の笑みを浮かべていたのだった。

 

 

 

 

何とも寛大な沙汰を下した理事長に対して、仗助は将軍に頭を下げる大名よろしく再び深々と頭を下げると、理事長は言葉を続けた。

 

 

 

「君は一発でトレーナー試験をクリアした優秀な人材だと聞き及んでいるッ!君のような前途多望な人材が人手不s…いや、即戦力が求められるトレセン学園に来てくれたこと、心嬉しく思う所存だ!!――そしてたづな!!急なのだが、私は今からアメリカ長期の出張へいかねばならない!しばらく学園には帰ってこれないと思うから、そのつもりで!」

 

 

 

 

「――わかりました。アメリカに出張ですか…ってアメリカ!?それも長期!?学園の運営は一体どうするんですか理事長!?」

 

 

 

 

たづなの声を尻目に理事長はてきぱきと身支度を整え、部屋を後にする直前にたづなの尋ねに応えるために口を開くのだった。

 

 

 

「安心ツ!既に理事長の代理をURA本部から派遣するように要請、その人材も既に選定済みだ!!君はその人物を秘書として、いつものように助けてほしい!!」

 

 

 

 

嵐のように去っていった仗助はぽかんとしたまま、そろそろと立ち上がるーー理事長が出ていった扉を見やりながらたづなは目頭を押さえため息をつくと、仗助に向き直り先ほどのような変わらぬ笑顔で話しかけた。

 

 

 

「――それでは仗助トレーナーには、トレーナーとしてまずはじめに大切なイベントに参加してもらいます!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――選抜レースか

 

 

 

 

トレーナーがウマ娘を自身の担当に着けるために、そしてその逆も然り、ウマ娘が自身を担当してくれるトレーナーにアピールする機会する場である、デビュー前のウマ娘たちが出走する選抜レース。そのレースで早速自身のトレーナーとしてのキャリアをスタートするようにたづなから伝えられたのだった。

「―――とは言っても、俺まだ新人だからな~…すぐには見つからね~だろうな~…」

仗助はたづなから伝えられた事を頭の中で反駁し、家路に着こうと寮に向かう…すると仗助の耳にはおよそその場面には似つかわしくない声量の言葉が仗助の耳に飛び込んでくるのだった。

「――だから言っているじゃあない!!」

 

 

 

 

 

 

――誰もいないと思われた校舎裏

そこから突然ピシャリと響く声に思わず仗助は立ち止まり、何事かと校舎の角から頭を覗かせると、そこには鹿毛の長髪に右耳に緑のリボン、そして青いメンコを付けているウマ娘の少女がいた…その少女は電話の相手に対して、その忘れ去られた場所でまるで自身の存在を懸命に主張するかのように張り詰めた声を上げていた。

 

 

 

 

「私は家に戻るつもりはないって…!!今度の選抜レース、必ず私は勝って一流のトレーナーをつけてみせるわ…さようなら!!」

 

 

 

 

少女は電話を乱暴に切ると、顔をしかめたままその場にとどまっている。運命の悪戯か、それとも三女神によって引き合わされた偶然か…その日仗助は1人のウマ娘と運命的な出会いを果たすのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。