トレセン学園での奇妙な日常   作:ボンゴレパスタ

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一流の資格2

 

 

 

キングと担当トレーナー契約を結んだ次の日、仗助とキングは他の生徒やトレーナーたちと共に全校集会の招集で体育館に会していた。キャットウォークにバスケットゴールなど、自身がぶどうヶ丘高校に通っていた時の体育館とそう変わらない様子に仗助が郷愁の念を抱いてると(最も仗助は体育の授業は専らサボっていたが)、檀上へ一人の女性が上がっていった。カールされた長髪に、強い意志を反映したかのように吊り上がった眉、そしてボディラインが強調されるピチッとしたスーツをその女性は着こなしていた…その女性は眼下の生徒たちを見渡すと、低くも体育館の隅々まで通る声で演説を始めた。

 

 

 

 

「どうも、URA本部から秋川理事長にその任の代理を委任された樫本理子と申します。早速ですが、私がこの学園にきて感じた第一印象ですが…」

 

 

「―――――それは緩さです」

 

 

 

その言葉に、その場に居た一同にざわざわと動揺が広がり始める。その様子を意にも介せず、理事長代理は言葉を続けた。

 

 

 

「指定されたトレーニング時間外での練習、トレーナーたちとの情報共有不足、課題点を上げ始めるとキリがありません。状況の改善のため、私は徹底管理教育プログラムを推進することを、ここに宣言します。プログラムは準備が整い次第始まりますので、各々を心積もりを」

 

 

 

演説を終えると、理事長代理は颯爽とその場を後にした。突如落とされた爆弾に、体育館に取り残されたウマ娘たちの集会は紛糾したままお開きとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日仕事が終わった仗助は一人考え事をしながら家路についていた

 

 

 

 

―――キングの練習プラン練ってたら、遅くなっちまったなぁ~

 

 

 

そんなことも、理事長代理のプログラムが始まれば禁止されるのだろう。昨今の時流を鑑みれば、彼女の考えは正しいのだろう。時間外労働に振り回されるトレセン学園の労働環境は、トレーナーの人手不足の大きな要因の一つであることは自明の理だった。

 

 

 

―――それでも

 

 

 

本当に盲目的にすべてを切り捨ててしまっていいのだろうか?

彼女の檀上でのあの演説には何か私念のようなものを感じた。彼女をあそこまでプログラムに妄執させる理由は一体何なのだろうか。

 

 

 

仗助が考え込みながら歩いていると、何やら奇妙な音が聞こえた。最初は気のせいかとも思ったが、やはり微かだが音が聞こえる。

 

 

 

―――ブーン

 

 

何だか嫌な予感がした仗助は小走りで音のする方へと足を繰り出した…すると、目の前で一人のウマ娘が力なく倒れているのが目に入ったーーそしてその隣には、フードを目深く被った男の姿が目に入った。

 

 

 

「おい!!てめ~~~!何してんだこら!!」

 

 

仗助は自身の背後から、中世のグラディエーターのような筋骨隆々の容姿をしたヴィジョンを出すと、距離を取ろうとする男めがけて殴りかかった。

 

 

 

「クレイジー・ダイヤモンド!!」

 

 

 

男とは少し距離があったためかクレイジー・Dの攻撃は一撃しか入らず、腹部にその打撃を受けた男は後方へ吹っ飛んでいった。

 

 

 

 

仗助は目の前で倒れている少女に駆け寄り、その様子を確認する…目の前で意識を失っているウマ娘には仗助は見覚えがあった。

 

 

 

 

―――この娘。キングの取り巻きの一人じゃあねーか…

 

 

 

 

クレイジー・Dで彼女の身体に触れ、傷を治そうと試みるーーするとどこからともなく声が響き渡るのだった。

 

 

 

「俺の他にぃ!!スタンド使いがいるとはな~~~~!!もぉう少しで!!この小娘で遊ぶことができたのによぉ~~~~~!!!」

 

 

 

「―――陰湿なヤローだな。てめ~…その声からもその下衆さがよ~くわかるってもんだ」

 

 

 

仗助が返した言葉に、声の主は怒りをあらわにした。

 

 

 

「てめ~~~、トレーナーだな~~!?バッジをつけている~~~~覚えておけよ~~テメーも、テメーの担当も、狩りつくしてやるぜ~~~~~!!!!」

 

 

怒りに震えている声は、それっきり聞こえなくなった。何事かと様子を見に来たであろう警備員の懐中電灯が近づいてくるなか、仗助は男が消えた方向をじっと見つめていた。

 

 

 

医務室のベッドで眠る少女の横で仗助が見守るように座っていると、後方の扉が開くーー仗助が振り向くと、そこには今朝演説を繰り広げた樫本理事長代理が立っていた。

 

 

「――赴任早々、問題ごとですか…えーとあなたは」

 

 

 

「―――仗助。東方仗助っす」

 

 

 

「――――東方トレーナー。あなたがそこの少女を介抱したようですね…いずれにせよ、問題が解決するまでは警察と連携、そして警備員を増員します」

 

 

 

「―――何の解決にもならねーな…」

 

 

 

 

相手がスタンド使いであると判明した以上、もはや一般人である警察の介入や警備員の介入は無意味と言っていいだろう…寧ろ徒に犠牲者を増やす恐れもある。

 

 

 

ぼそっと呟いた仗助の一言に、理事長代理の顔はますます険しくなった。

 

 

 

「―――あなたは一体…」

 

 

 

すると医務室の扉が荒々しく開かれるーー何事かと振り向くと、そこには息を切らし、顔が青ざめたキングの姿があった。

 

 

 

「……」

 

 

 

夢遊病者のようにフラフラとベッドに近づいていくキングの身体を支えながら仗助は状況を端的に説明した。

「―――ケガはね~よ、今は疲れて眠っているだけだ…」

 

 

 

その言葉で緊張の糸が切れたのか、キングはその場に座り込むと堰を切るように泣き出した…大切な友人の身に何かあったと聞いてなりふり構わず飛び出してきたのだろう…その姿は普段のような優雅な制服の着こなしではなく、正に着の身着のままという状態だった。

 

 

 

 

―――こいつは結構、熱い奴なのかもしれないな…

 

 

 

 

 

仗助が見守るように彼女の背中をさすっていると、水を差すように理事長代理が口を開いた。

 

 

 

 

「―――貴方はキングヘイローですね…門限はとっくに過ぎているはずですが、貴方は一体何をやっているのですか?早く自室に戻りなさい」

 

 

 

 

注意を促すために理事長代理がキングの肩に触れようとするーーしかしその直前、彼女の手を仗助が引き留めるのだった。

 

 

 

「―――大切な友達がぶっ倒れたって聞いて駆けつけてんだからよ~~、水を差すような真似しないで欲しいっすね~~それに」

 

 

 

「あんたのプログラム、俺はどうにも気に食わね~な~…ウマ娘たちはトレーナーの所有物じゃあね~んだよ…共により良い方向へ切磋琢磨する、その過程で回り道することも必要なんじゃあねーのかよ!!」

 

 

 

 

「―――貴方は上司である私の意見に反対するということですか?」

 

 

 

 

理事長代理が死刑執行人かのように冷たい表情で返すと、徐に声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

「―――私も同意見です」

 

 

 

 

 

 

――それは目の前で泣き崩れていた少女――キングの声だった。彼女は既にいつものように力強い表情を取り戻すと、理事長代理に話しかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――私も仗助と同じ意見です。貴方の画一的な教育方針は、個性が重視されるウマ娘の鍛錬には、正に水と油…とてもじゃあありませんが、相容れるものではありません。トレーナーではなく、実際にターフを駆けるウマ娘の一人として声を大にしてプログラムに反対します」

 

 

 

 

 

 

 

「――そうですか。このトレーナーにしてこのウマ娘あり、ということでしょうか…いいでしょう。そうしましたら私と一つ賭けをしましょう」

 

 

 

 

 

 

 

「―――賭け…?」

 

 

 

 

 

 

 

「そうですね…私の推進するプログラムの下で鍛錬したウマ娘とレースをしてもらいます…それで私に勝てたのならプログラムは廃止しましょう…勿論負ければ、従ってもらいます」

 

 

 

 

 

 

 

学園の未来を賭けた勝負が、静かに幕を開けたのだった。

 

 

 

 

 

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