それはもはや本能だった。
それはもはや、破滅的に間違っていたかもしれない反射的行為だった。
「ねぇ、なんでよ!? どうしてわたしから何もかもを奪っていこうとするの!?」
狭い地下シェルターの中、
「わたしはただ平穏に暮らして生きていきたかっただけだったのに!! 普通の幸せが欲しかっただけなのに!!」
一人称、
……黙れ。
「ラ、ナ、逃げ……うっ?」
「……死なさない、/死んじゃダメ」
まずは高さ二メートル弱、広さ六畳ほどしかない地下シェルターの、その狭い空間を、
一瞬、地下世界は七色の光にあふれ、その後、黒い線でびっしりと覆われた。
「やめてよ! わたしの魔法を奪わないで!
けど、顔と左手と肩だけの、ジュベミューワとやらの部分だけが、私の
「……ジュベミューワ様、
ツグミから、なにかしらの解説が入っているようだが、その声も私の中を素通りしていく。
「自分自身を分割して世界に散在させる、その部分が強く
私はレオの胸に開いた穴、それ以外の空間を結合し、その後、穴が開いてしまったレオの胸部、その中央部辺りの空間を操作する。
これは一度行った処置。
私が殺した、片耳の一部が欠けていた男性、既にアレで一度
狂気に片足を突っ込んだ頭で、あの時よりももっと丁寧に、あらゆる可能性を考えて「通過させるモノ」の取捨選択を行う。
「ラナ……これ、は……」
丁寧に丁寧に。
「はぁ!? なにそれ!?」
針の穴に糸を通すように。
薄い布に、クローバーの花を刺繍でもするかのように。
小さな小さな人形の服を、人間用の服と変わらぬデザインで精緻に造り上げるかのように。
「痛み、を止めて」
その結界を、創り上げる。
「血流、血に含まれる/酸素……レオの心臓の代わり/を、私がして……ぐっ……」
脳が焼け付くように動いている。
だけど心は氷のよう。
「生かす……絶対に死なさない……」
血に酸素を与えて循環させろ。命を繋ぎとめろ。自身を
「ジュベミューワ様……あなたは、ナガオナオ様の
「その声……そのわけのわからない言い回し……まさか、あの時の女の子なの?」
語る、ツグミの声を背景にして、私は応急処置を終える。
「はぁ……/はぁ……/はぁ……」
「痛みが、無くなった……ラナ?」
「でも、ここか/らどうすれば……」
だけどこれだけではダメだ。
ダメなんだ。
あの男は、肺か
「あははははははは! なにその姿! やっぱり美少女の姿は偽りだったのね!」
レオは、肺や横隔膜もそうだが、心臓という循環器系の中心部、そのものが駄目になっている……食道も途切れているし、かろうじて背骨は残っているが、そこにも少なくはないダメージが入っている。
「どうするどうするどうすればいいの……/きゃう……駄目……痛みを取るだけじゃ駄目……/とりあえず生きてるというだけではダメ/どうしようどうしようどうしよう」
レオは、胸部全体をひとつの空間に固定されてしまっているから、動けなくなってしまっている。
これではダメだ、駄目なんだ。
「どうして犬? どうしてお腹に大きな穴が開いているのに普通に喋っているの? あははははははは!! やっぱり悪魔だったんじゃない! あなたは悪魔だったんだ!!」
「……うるさいな、お前」
……が、ここは六畳程度の閉鎖空間で、地上の空間から光……今は大炎上をする街の光を「通過」させているから、それなりには明るい。
「ぎゃっ!?」
それにレオは、遠隔攻撃も可能だ。
「ひ、ひとでなし! 人の腕を! どうしてくれるのよ!?」
私が、その先の処置をどうすればいいか、悩んでいるその間に、レオは空間に浮かんだままだったジュベミューワの左手を、二の腕の辺りから斬り落としていた。
「女の人の顔を斬るよりは良心的と思ったからそうしただけだけど? 自分は攻撃するけどやり返すのは許さないって話?」
「悪魔!!」
が……斬られた腕はどこかへと消え失せる。そしてその切断面からの血も、すぐに止まった。ああ……つまりこいつは、スキルハンターな能力者ってことか。私が使えなくなっているわけじゃないから、強奪系ではなくコピー系のようだけど。
「被害者ぶらないで! 悪いのはあなた達じゃない!!」
左手を斬られたにも関わらず、ジュベとやらはまだ執拗に
まぁ……私と同じように、斬られた腕の血流を自分で繋げ直したのだろう。魔法が持続してる間はそれでどうとでもなる。どうとでもなるんだけど……。
「なにもかもあなたのせいよ! 英雄レオポルド! いいえ! 悪魔!!」
「ラナ、あの肉体が途切れている面の黒い部分、あれも、僕の斬撃で斬ったら駄目な気がするんだけど……ラナ?」
「だいたい……どうしてまだ生きているのよ!? やっぱり悪魔なんじゃない!! 悪魔! 悪魔! 悪魔! バケモノォォォ!!」
だから、このままでは駄目なんだ。
「うるさい」
「ぎゃっ!?」
「レオ様!?」
どうすればレオを助けられる?
どうすればレオを元通りにできる?
「斬撃で斬るのは危険でも、この片刃の剣には、叩きつけるという使い方があるんだよ? 本来、その方が正しい使い方だからね」
「あ、あ、あ、あなた! 女の子の顔を!? 鼻血が出たじゃない! 鼻の骨が折れたわ!!」
「折れてないよ。罅が入っただけだ。治療院にかかれば元通りになる程度の、ね……おっと、魔法を使うようなら、今度こそその顔面、叩き壊す」
治療院……。
「悪魔!!」
あそこに、完全に失われてしまった器官を復元させるような魔法はない。
「最初の
「……う」
「ならっ……う!?」
「おっと」
そうでなければ、ユーフォミーのように……あれは生まれつきだから、厳密に言えば失ったとは言わないが……両足のない人間が、そのままに生きているはずがない。人身売買を行った重罪人へ、鼻削ぎ刑などという刑罰が(簡単に治せるのであれば罰の意義が薄くなるから)科されるはずもない。
「身体のどの部位を出現させるかは自由自在、みたいだけど……次に魔法を使う気配を見せたら……今、ラナの後ろに出現させたその
「くっ……」
治療院にできるのは病魔の撃退、つまりは病原菌やウィルスなどの撃退と、多少の傷の回復だけだ。刺されるなどして内臓にダメージが入った場合、そのタイムリミットは臓器が死んでしまうまでとなる。前世の世界における臓器移植手術には、
「ラナ、ここからどうする?」
「どうしよう/どうしよう/わぉん……どうしよう……」
でも、治療院で、治癒魔法で治せるのはその程度の範囲までだ。
王宮に囚われ……囲われている治癒魔法使いでさえ、燃え尽きた臓器を復元させることなどできないだろう。できないと聞いてる。
「ラナ?」
いや……。
だけどもしかしたら……治癒魔法の上位互換な魔法は、どこかにはあるのかもしれない。
復元魔法とでもいえばいいか……そういう魔法を使える術者が、どこかには……貴族や王族に秘密裏に囚われ……囲われて……いるのかもしれない。
ならそれが希望か? 私が
……いや、重要人物の手足でももいでいけば、いずれそれを治しに、目的の魔法使いが現れてくれるか?
それしかないか?
……いや。
……魔法……魔法か。
「わぅん……ツグミ……/
「ラナンキュロア様、それは……」
「私が死ねば/わぉん……いいんでしょ?/死者であれば/
「何を言っているの? ラナ」
「できますが……それは
「……え?」
「やり直せるのは私と、ラナンキュロア様だけです。
「……そん、な」
「機能の調整と改造ができるのはナガオナオ様だけです。つまり今、この時この場所の座標においては、レオ様をラナンキュロア様と同様に扱うというのは、不可能なのです」
断腸の想いで
「もちろん、やり直したラナンキュロア様が、また別のレオ様に出会うというのは可能です。それこそ、レオ様がもっと幼いうちに、スラム街へ捨てられたばかりの頃に拾って保護するということも可能です」
「そん、な……/ことって……」
「ですが逆行可能な地点は、ある程度以上、ラナンキュロア様の意識が希薄だった時間に限られます。頭を打って昏倒しているなどの時があれば最も良いのですが……直近であれば……およそ四年前ですね。引き籠って、不規則な生活の中、十時間ほど夢も見ずに爆睡していたその日の、その地点であれば戻れます」
そういえば。
「直近のセーブポイント/が四年前って……/わんっ……レオと出会う前じゃない」
三年前の騒動の際にも、私が長時間人事不省になるような事態は起きていない。
起きなかった。
「レオ様と出会ってよりのラナンキュロア様は、ある意味健康に過ごされていましたから……引き籠っていた辺りであれば、それなりに逆行可能な地点があるのですが」
「……つまり」
「ラナンキュロア様が三年間を共に過ごした、こちらのレオ様を助けることは、不可能です」
「なんて/こと」
それはつまりアレか。
私が、
……ふざけるな。
「私は……自分が/幸せになりたいんじゃない」
「存じてます」
私はいい。私は、幸せなんか無くっても生きていける。
「はぁ? 何を言っているの? 綺麗事? 悪魔の仲間のクセに!」
「……お前は黙れ」「ひっ」
私はレオを幸せにしたいんだ。
私がレオを幸せにしたいんだ。
私は、幸せな自分になるよりも、レオを幸せにできる自分になりたいんだ。
『“親しき者の死に何もできなかった”』
私の魂には黒い黒い部分がある。
大事な人を救うことができなかったという黒い黒い真っ黒な部分が。
『“世界に愛されなかった者を愛したい”』
だから愛したい。
愛して、自分が誰かを幸せにできる人間であると証明したい。
「どうしてみんな、わたしを虐めるの!?」
「おい、黙っていろと……」
「みんなみんな! 自分勝手に奪っていく! 自分の幸せのために! わたしの幸せを奪っていく!!」
あるいは、それこそが私の幸せなのだ。
私は自分勝手に、レオを私の運命に巻き込んだ。
私と関わらないでいれば、手に入れられたかもしれない幸せの代わりに、私と関わらせることを選ばせた。私の幸せのために、レオの
「みんなみんな大っ嫌い!!」
「……嫌い、嫌いって……嫌いな相手なら、傷付けてもいいってこと?」
「そうよ! みんなみんなわたしを傷付けるんだもん! そんなことしちゃいけないんだもん! わたしの幸せを奪っていくんだもん!! だからみんな死んじゃえ!!」
私が自分勝手に、私の幸せのために、レオを奪ったのだ。
「でも、だからこそ/レオ/を見捨てるなんてできないっ」
「わかっています。ですから確認しました。
「いいわけな/いでしょ!?」
「ラナ……」
「みんなみんな嫌い! みんなみんな死んでよ! 消えてなくなっちゃってよ!!」
「……っるさい/な」
さっきからなんなんだコイツは。
「……殺しておく? 僕もラナも、コイツのことは嫌いだよね? コイツの論法に従うなら、僕やラナがコイツを傷つけるのも、殺すのも自由ってことだ」
「ひっ」
「……できるの?」
「左手は斬れたし、同じように、黒い面に触れないよう、額の辺りを削ぎ落とせば、さすがに死ぬんじゃないかな」
「ひぃぃ!? なんてこというの!? やっぱり悪魔だ! お前達は悪魔なんだ!!」
こんなのはどうでもいい。今は他に考えることがある。
「そ、じゃ、おねがい」
「ちょっ……まっ、やめっ!?」「了解」「ひっ!?」
一瞬で、ジュベミューワの額が、皿のように削ぎ落とされる。
「ぎゃ……が」
おびただしい量の血とか、脳漿とか?……そういうのがあふれ出すが、空間を分割していたままだったので辺り一面が汚れるということもない。重力へ従うようになった死体ごと、適当に外の空間へ「通過」させ、放り捨てた。
「……レオ様がお手を汚さなくとも、おそらくジュベミューワ様は
それは、まぁ。
彼女には彼女の物語が、理由が、悲劇があったのかもしれない。
同情を禁じえない事情が、理解してあげなければならない背景が、あったのかもしれない。
「ああ、それで逃げて再チャレンジ、とはいかなかったってことだね?」
けどもう、そんなものはもう、彼女がレオの胸を貫いた時点で、私には何の価値もないものとなってしまった。
「はい。ジュベミューワ様はおそらくラナンキュロア様の
私は……本当に、心の底から、人殺しになってしまったのだなと思う。
「ジュベミューワ様は身体の大部分を失い、死の間際で、原典であるラナンキュロア様の、
……『死ね、元凶』、か。
「そうであるなら、彼女の寿命は、ここへ現れた時点で
元凶、元凶ね。
私は、燃え続けている街を観ながら、今も黒化した死体を吸収しながら拡張を続けている……既に三年前に見た
おそらくはジュベミューワの死体をも飲み込んで、まだまだまだまだ膨張を続けているそれを見ながら考える。
これはもう、このどうしようもない悲劇はもう、元凶が何かなんて、特定困難なことじゃないか。
確かに、一因は私達にあったのだろう。
「……どうしてレオは、/あの攻撃を回避できなかったの?」
「それは……言いたく、ない」
「え?」
英雄レオポルドの存在を秘匿して、ジュベミューワに不信感を抱かれ、灼熱のフリードを間違った方向へと動かした、その一因は、確かに私達にある。その意味で私達は、私とレオは「元凶」だ。
「……ツグミ、解説して」
「ちょっ」「……いいのですか?」
「レオを助けるためにも、情報は多い方がいい」
「ラナ……それは卑怯だよ……」
でも、この悲劇の全てが自分のせいだなんて……思えるはずもない。
私は、そこまで傲慢ではないつもりだ。
「では……レオ様の“回避”は、おそらく剣を握っていることが絶対の発動条件ではないのだと思われます」
「……ふぅん?」
「意識が、臨戦態勢にある状態であれば発動するのではないかと」
「臨戦/状態?」
強いて言うなら、これは巡り合わせが悪かった、その結果だ。
ジュベという少女が予知夢を見た。
それを灼熱のフリードが問題視した。
ノアという直情的な少女も、深く考えず私達に敵対してしまった。
「はい。……ラナンキュロア様が、レオ様を押し倒すコンラディン様に対し、魔法を使われたことがありましたよね?」
「……コイツ、そんなことも知っているのか。あそこにマイラはいなかったのに」
そうしてたった一日で全ては動き、変貌して、ボユの港は地獄に
「ああ……あの時、/わぅ……レオは」
「はい、あの時、その直前でレオ様は、
私の選択が悪かったことも、あるのだろう。
「レオが素で/避けたんだと/わん……思ってた」
「……コンラディン叔父さんの槍は、鋭いモノだったよ。素で避けられるはず、ない」
私の決断が間違っていた部分も、そりゃああるのだろう。
「実は似た
けど、現実の人生なんて、選択を間違えながら、後悔しながら進んでいくことの連続だ。
だからこそ人は、ゲームの世界に、あるいは物語に、SFに、ファンタジーに、人生をやり直すという夢を見るのだから。
「ナガオナオ様はアゥレィナ……地球風の言葉にするならイデア派でしょうか……そう呼ばれる魔法学の派閥に属されていたのですが、それとは別に、
今回の事態においては、誰も彼もが間違っていた。
「この
誰も彼もが間違い、セーフティネットは機能せず、それぞれが自分勝手に、自分自身の事情と背景を元に行動して……この世に地獄を
「元々は飛び道具、石や矢などを“回避”する
やり直せるなら、やり直したい。
「実を言えば、ラナンキュロア様の
だけど私は、やり直せるけど、やり直さない。
この悲劇を回避するために、このレオを見捨てるなんてことは、できないのだから。
「ところでこのシ・エァヴィリェですが、ラナンキュロア様の
私は、私が立っている今、この時、この場所へは、選択を間違い、間違い続け、後悔まみれになって辿り着いた。
「レオ様の“回避”のメカニズムは、おそらくこれと同じです。レオ様は剣を握るなどして意識が臨戦態勢に入ると、無意識に
悔やんでも、悔やんでも悔やんでも、捨てられないものはある。
「ということは、/レオはあの時、/わぅ……剣を握ってもいないのに/臨戦態勢だったってこと?」
「……あの時はまだ、僕はラナを、信じきれていなかったんだ」
「え?」
もう一度レオと出会い直し、やり直し、幸せなハッピーエンドへ向かうよりも、大事なことが……私にはある。
「おそらくですが……あの時、ラナンキュロア様はレオ様の姿をじっと見つめていました。ヒュドラの血で汚れた、あまり人には見られたくはないであろう姿へ、ラナンキュロア様は執拗に視線を送っていました」
「……そんなこと/してた?」
「うん」「はい」
私は、レオを愛している。
「レオ様はそれへ、無意識下で、
「あ……ああ」
一度、生まれ直そうとも、それでも未熟でどうしようもなかったこの私と出会い、愛してくれたこのレオのことが、なによりも大事だ。
「……だから言いたくなかったのに」
レオは、本当にどうしようもないこの私を、愛してくれたのだ。
「つまり、その時のレオ様は、ラナンキュロア様が自分を見つめる、その視線を鬱陶しく思っていた、そのおかげで、コンラディン様の槍を回避することができたと……そういうことです」
レオはスラム街で、本当にどうしようもない人間を、沢山看取ってきたのだろう。
そうした生活の中で、あるいはレオも『“世界に愛されなかった者を愛したい”』と思ってしまったのかもしれない。
私達は、そうして共鳴していたのかもしれない。
共に、鳴いていたのかもしれない。
「だからずっと、ラナには誤解していてもらいたかったのに。僕は剣を持てば“回避”できるようになるって」
あなたを幸せにしてあげるから、どうかこのどうしようもない自分を愛してくださいと相互に祈りあって、欲深に、お互いの人生に歯を立て、噛み付きあって、繋がりあって……醜悪な塊となり……そうして結ばれていただけなのかもしれない。
「私は……最初の頃の私は、/レオに嫌われても/くぅん……仕方無いと思っていた」
恋人は、恋人であっても互いが別個の人格であることを認めあうべき……そんな良識を私達は蹴っ飛ばした、投げ捨てた。正しいだなんて、これっぽっちも思ってなんかいなかった。初めて身体で繋がりあった時から、ずっとそう思っている。
「嫌いでは無かったよ。変な人だなって、思っていただけ」
でも、けど、だけど。
私達はそうするしかなかった。
そういう風にしか、なれなかった。
「どうしてこの人はこんなにしてくれるんだろうか……って思ってた。僕はね……別に、ラナが
「……ごめんなさい」
「ううん。僕が好きなラナは、そういうラナなんだ」
もし……。
私がやり直して、二周目(三周目?)に突入して……。
少しだけ賢くなって、大人の対応がもう少しできるようになって……私が色々と……上手くやれるようになったら……その私を、レオは愛してくれるだろうか?
『いいんだ。だから僕はやっとラナを、ほんの少しだけ理解した気になったんだ。この人は大人じゃない。子供でもないけど大人でもない。そのラナが僕を助けてくれた。だから僕もラナを助けなくちゃいけない……世界は、大人達の世界は、いつだってそんな、大人でも子供でもない、中途半端な僕達のことを嫌っているから』
私がただ、レオに色々としてあげていた、その間。
レオは私の視線を、「してあげたい」と思うその視線を、鬱陶しいと思っていた。
嫌ってはいなかったのかもしれなかったけど、それは好きでもなかったということだ。
そうじゃなくなったのは……私が頭のネジの飛んだ、おかしな人だとわかったから。
レオが……
「あれ、でも待って。なら……」
この私が大事に思っている今のレオと、今の私は。
「はい、つまりレオ様は、ラナンキュロア様の
恋人というにはあまりにも歪な今の私とレオは。
「つまり僕は、ラナに頼りすぎていたってことだよ。甘えすぎていたんだ。ラナが悪いんじゃない。僕が、僕自身が油断していたのが悪かったんだ。頼り、甘えることを気持いいと思い、寄りかかり過ぎてしまったんだ。これは僕の自業自得、なんだよ」
やり直してしまったら、きっともう二度とその形を取り戻せないんだ。
絶対にもう、取り返せない。
私はレオを愛している。
この世界の全てよりも。