・セックスじゃないけどセックスみたいなこと似合うカップリングだと思ってます。
・少しでも楽しんでいただければ幸いです。
・某所の同胞たちへの感謝を込めて!ありがとう!
自分も彼も二人で眠るには狭いと全身のあちこちで痛感しているにも関わらず不思議と買い換え話にはならない棺桶の中。頭を半ば抱いてくるような腕枕は逞しく、張りも弾力も申し分ない。
棺桶の中に漂う香りは名前こそわからないが、いかにもノースディンの趣味らしい微かな甘さを秘めた大人っぽい香りは、鼻腔ごしに心を落ち着かせてくれる。
「ふぁ……ぅ、ん……んんー……」
つまるところ、ロナルドは眠たかった。それでもあくびを噛み殺しながら自分と彼の間に手をさまよわせたのは、まだやるべきことがあったからだ。
「……あっ」
不意に指先で触れた温度に、たまらず身震いした。
吸血鬼という生き物は血液を栄養源として吸収する生態から血圧と体温が人間のそれと比べて低い傾向にある上に、ノースディンの場合は生来の能力も影響しているのだとーーわかっていても慣れることができないくらいに冷たいのだ。ノースディンという男の手は。
「……」
種族としての隔たりのみならず、そもそもからして自分と彼は違う存在であることを思い出させる温度。そんな現実が少し寂しくて、どこか不思議で、たまらなく愛おしい。
「……おや」
暗闇の中で、ノースディンの手が翻る。そこらの男よりも大きいと自負していたはずの手が、すっぽりと覆われてしまう。
「ひゃっ……」
貴族らしく滑らかな肌を纏った長い指が蠢くたびに、手の隅々まで彼の温度が行き渡っていく。侵食、されていく。
擦り付けるように手のひらを合わせて来たかと思えは、逃げ場を失った指を絡め取られる。手の甲でさえ、いまや彼の領地だ。
けれど、それはこちらも同じ。
「……」
ほんの僅かに空いていた隙間を埋めんばかりに握り返せば、ノースディンが喉の奥で笑った。
「相変わらず、不思議だ」
「うん?」
「君と出会うまで、こうも暖かい月の光があるのだと思いもよらなかった。教えてくれてありがとう、愛しい私の女神」
耳たぶを食むように囁かれる甘ったるい口説き文句は、彼の腕を枕にしていた頭の中に揺蕩う脳にまでじんじんと響く。おまけに、ちょうど頭のてっぺんを優しい手付きで撫でられたものだからたまらない。
「っ」
愛されているのだと素直に認めるのはまだまだこそばゆいし、さっそく心臓がぎくしゃくし始めたのだけれど、これが今の自分にできる精一杯の愛し方であることも自覚していた。
どんどん高くなっていく体温を分かち合いたくて、もう片方の手も添える。両手で包んだ手は、もう冷たくはなかった。
「……なぁ、ノースディン」
夜目が効く彼には全てお見通しだろうから、潔く。緊張でこわばった筋肉を無理やりほぐすようにはにかんでみせる。
「あんたの手は冷たいけど……こうやってると、だんだん……その……俺と、同じになっていくのが……すっ、好き……だぜ」
もともと違う存在だった自分たちが一つになっていくのがわかる温度が心地よくて、他の何にも代え難いくらい嬉しかった。
「私もだよ」
「! へへっ、そっか……」
額に、頬に、瞼に、次々と口付けられる感触がくすぐったくて、ロナルドは声を転がすように笑いながら目を閉じる。
そこから先はもう、意識さえ溶け合うまで唇を重ねるだけだった。