遊戯王GX─DDS.デジタル_デュエル_ストーリー.女神転生─ 作:五月アメフラシ
広いドームの内側で、獣の咆哮や戦士の雄叫びが響き渡る。現在、此処海馬ランドの多目的ドームではエリート
『受験番号67番、
「はい!」
会場にアナウンスが流れ、一人の少年が声を上げる。彼がどのような道を歩むのか、それはまだ誰も知らない。
第一話 入学試験、開始
コートでは担当の試験官が焔を待っていた。デュエルディスクを構えながら、試験に関しての説明を始める。
「このデュエルの結果と筆記試験の結果によって合否が決定される。評価に関してだが、勝敗だけでなくデュエル中の様々な行動から総合的に判断される。負けそうになったとしても最後まで諦めない様に。何か質問はあるかね?」
試験官からの問いにしばし目をつむる。──今更聞くことはない。だが胸中には拭い切れぬ不安が渦巻いている。
「いえ、ありません。」
「よろしい。ではこれより試験デュエルを開始する。」
「「デュエル!」」
「先攻は私がもらう。私は手札より《ジェネティック・ワーウルフ》を通常召喚!」
試験官が翳したカードから黒い影が飛び出し、四本腕の白い狼男が現れる。焔を威嚇をしているのか、二度三度と腕を振るっている。
《ジェネティック・ワーウルフ》
星4/地属性/獣戦士族/攻2000/守100
「さらにカードを二枚伏せてターン終了だ。さぁ、君の番だ。」
試験官
LP4000/デッキ35/手札2/墓地0/除外0
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LP4000/デッキ35/手札5/墓地0/除外0
焔
場を整える試験官。下級通常モンスターでは最高の攻撃力を誇るカードを場に出して攻撃を躊躇させ、伏せカードによって相手の動きに対応する。デュエルアカデミア教諭に相応しいお手本の様な布陣だ。
「はい、よろしくお願い致します。僕のターン、ドロー。手札から、速攻魔法《ツインツイスター》を発動。手札を一枚捨て、セットカード二枚を破壊。」
フィールドに二つの竜巻が吹き荒れ、カードが吹き飛ばされていく。
「くっ、《聖なるバリア ‐ミラーフォース‐》と《奈落の落とし穴》が……なるほど、伏せ警戒はしっかりしているようだな!」
「続けていきます。このカードは自分フィールドの全ての効果モンスターのレベルの合計が8以下の時、自分の手札・墓地から「インフェルノイド」モンスター1体を除外した場合のみ手札から特殊召喚できる。墓地の《インフェルノイド・ベルフェゴル》を除外。来て、《インフェルノイド・ルキフグス》。」
甲高い雄叫びとともに黒い真空管を背負った機械仕掛けの悪魔が蒼白い炎の中から飛び出し、焔のフィールドに降り立つ。背後にいる焔を気にしているようだったが、目の前に敵がいることに気が付くと威嚇の唸り声を上げる。
《インフェルノイド・ルキフグス》
星3/炎属性/悪魔族/攻1600/守0
「《ルキフグス》の効果発動。1ターンに一度、フィールドのモンスターを破壊できる。《ジェネティック・ワーウルフ》を破壊。」
《インフェルノイド・ルキフグス》の口から炎が吐き出され、《ジェネティック・ワーウルフ》が燃え盛る。狼の叫び声が収まると、そこには白い灰だけが残されていた。
「破壊効果を使用したこのカードは攻撃が出来ません。僕はカードを3枚伏せてターンを終了します。」
試験官
LP4000/デッキ35/手札2/墓地3/除外0
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LP4000/デッキ34/手札0/墓地0/除外1
焔
「私のターンだ、ドロー!先ずはその伏せカードを消させてもらう。手札から魔法発動!《ハーピィの羽根帚》!」
「チェーンして
デッキを大量の芋虫が這い回りカードを貪っていく。その光景に試験官は悲しそうな顔をして顔を顰め、観客席からは大きな笑い声が起きる。
「あいつカードの効果をわかってないんじゃないか?」
「相手のデッキを削れると勘違いしたんだろ。」
他にもなんで初心者が此処に居るんだとか、地元のカードショップからやり直したほうがいいといった声が聞こえてくる。だが焔は、周囲の陰口よりも試験官の表情を見て目を伏せていた。
「君は……いや、今は何も言うまい。手札から、魔法発動!《トレード・イン》!手札からレベル8モンスター《千年原人》を捨てて2枚ドロー!」
様々な武具を背負った一つ目の《千年原人》が地面に空いた穴に飛び込み、試験官に二枚のカードを投げ渡す。《千年原人》はそのまま穴の底へ沈んでいった
「まだ終わりではないぞ!このカードは通常召喚出来ない代わりにあいてフィールドのモンスターの攻撃力の合計が自分フィールドのモンスターの攻撃力の合計より高い場合に特殊召喚が出来る!こちらは0!そちらは1600!出でよ!《
稲妻とともに羽の生えた獅子が現れる。雄々しい鬣と複数生えた立派な角はまさに獣王の名に相応しい。
《獣王アルファ》
星8/地属性/獣族/攻3000/守2500
「攻撃力3000!?あの伝説の《
「手札0で伏せカードも無しじゃ何も出来ない。終わったな、あの受験生。」
最上級モンスターを目にし、周りからはモンスターに対する驚きの声やデュエルの終わりを予感した声が上がっている。
「さらに魔法発動、《地割れ》!相手フィールド上の攻撃力が一番低いモンスターを破壊する。《インフェルノイド・ルキフグス》を破壊!」
「チェーンして《ルキフグス》の効果発動!自身を生贄に、墓地のカードを除外する。《ジェネティック・ワーウルフ》を除外!」
地割れに飲み込まれる寸前、炎に姿を変えた《ルキフグス》が試験官の墓地に飛んでいく。炎は墓地から浮かび上がった一枚のカードを焼き払って消えた。
「またカードを……。このターン、君にダメージは与えられない。これでターンエンドだ。」
試験官
LP4000/デッキ32/手札0/墓地5/除外1
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LP4000/デッキ24/手札0/墓地13/除外2
焔
「僕のターン、ドロー。」
ちらりと引いたカードを確認する。──やることは決まった。
「このカードは自分フィールドの全ての効果モンスターのレベルの合計が8以下の時、自分の手札・墓地から「インフェルノイド」モンスター2体を除外した場合のみ手札・墓地から特殊召喚できる。墓地の《インフェルノイド・アスタロス》と《インフェルノイド・シャイターン》を除外して墓地の《インフェルノイド・アシュメダイ》を特殊召喚。同じ条件で《インフェルノイド・ベルゼブル》と二体目の《インフェルノイド・シャイターン》を除外して墓地から二体目の《インフェルノイド・ベルフェゴル》を特殊召喚。」
焔の墓地から蒼白い炎が迸り、二体の機械悪魔が現れる。最初の一体と同じように後ろの焔を気遣う様に視線を向けた後、怒れる獅子と向かい合う。
《インフェルノイド・アシュメダイ》
星5/炎属性/悪魔族/攻2200/守0
《インフェルノイド・ベルフェゴル》
星6/炎属性/悪魔族/攻2400/守0
「あいつ、一気に上級モンスターを並べたぞ!」
今度は焔の召喚したモンスターを見てざわめきが起きる。
「モンスターを並べてきたか。だがその攻撃力では私の《獣王アルファ》は倒せんぞ。」
「はい。なのでこれからです。手札から《インフェルノイド・デカトロン》を通常召喚。」
現れたのは体中に10色の真空管をつけたボロボロの機械悪魔。その体は至る所がひび割れていて痛々しい。
「《インフェルノイド・デカトロン》の効果発動。このカードが召喚・特殊召喚されたとき、デッキから《インフェルノイド・デカトロン》以外の「インフェルノイド」モンスターを一体墓地へ送りそのカードのレベル分自身のレベルを上昇させ、名前と効果を得る。デッキから《インフェルノイド・ルキフグス》を墓地へ。」
《インフェルノイド・デカトロン》が燃え上がると、《インフェルノイド・ルキフグス》とそっくりの姿に形を変える。違いは頭部の形と真空管の数と色くらいだ。これで《デカトロン》は《ルキフグス》として扱われるようになった。
《インフェルノイド・デカトロン》→《インフェルノイド・ルキフグス》
星1→4/炎属性/悪魔族/攻500/守200
「《インフェルノイド・ルキフグス》……まさか!」
「《ルキフグス》の効果発動!1ターンに一度、フィールドのモンスターを破壊できる。《獣王アルファ》を破壊!」
《インフェルノイド・ルキフグス》が一際真空管の光を輝かせると、《獣王アルファ》の全身が炎に包まれる。炎が消えた後には何も残ってはいない。
「私の……《獣王アルファ》が……」
「これで終わりです。《インフェルノイド・アシュメダイ》と《インフェルノイド・ベルフェゴル》でダイレクトアタック!」
焔の号令の下、二体の悪魔が試験官に襲い掛かる。一匹はすり抜けざまに槍で切り抜け、もう一匹は身体に組み付いたのち口から炎を吐き出した。
「うおおおおおお!?」
試験官
LP4000 → LP-600
試験官の
「……試験デュエル終了。おめでとう、君の勝利だ。」
「ありがとうございました。」
試験官の宣言に対し、一礼をする。頭を上げて立ち去ろうとする焔に、試験官が声をかけた。
「君は……カードを大事にしていないのか?なぜあんな自らのデッキを破壊するような真似を?」
その言葉を聞いて、焔は試験官を睨みつける。
「あなたも……同じ事を言うのですね……。」
その瞳には、深い悲しみが湛えられていた。
◇ ◇ ◇
「フーム……今のデュエルゥ~を見るに、シニョール焔の合格は問題なさそうなノーネ。多少筆記試験の成績が悪いでスゥ~が、デュエルの腕を加味すれば他の受験生に比べて悪すぎるということも無いーノ。」
審査員席で、実技担当最高責任者のクロノス・デ・メディチが独り言ちる。先ほどのデュエルは基本を守りつつ、破壊されても問題ないトラップを利用した墓地肥やしと防御。更には空になったフィールドのリカバリーに、墓地を利用した一転攻勢。相手が試験用のデッキだったとしても、一度たりとも攻撃を受けなかったのはいいデュエルだったと彼は考える。
「他の受験生の腕にもよりまスゥ~が、デュエル中の態度も真面目そうでしたし……オシリス・レッドに入れてから寮替え……いっその事いきなりラー・イエローでもいいかもしれないノーネ。」
以外にも──彼はかなり贔屓目が強い──クロノスの評価が高い焔だが、どうやら他の試験官はそういった評価をしなかったようだ。
「クロノス教諭。受験番号67番ですが、やはり不合格が妥当では……。」
「え?」
(こいつら何を言ってるノーネ?)
クロノスは信じられないモノを見るように他の試験官を見る。先ほどのデュエルには何ら問題点は見当たらなかったはずだ。
「筆記試験の順位も半分以下ですし、自身のカードを大切にしない事や相手に何もさせない戦術は如何なものかと……」
「シャラ~ッッップ!!今のデュエル~には何も問題なかったノーネ!第一、攻撃力3000の最上級モンスターを倒せるような受験生が他に何人居たというノーネ!ワタクシなら、そんな受験生には合格を通知するーノ!」
なお、彼はすぐ後にこのセリフを後悔することになる。
◇ ◇ ◇
試験官席の騒ぎを他所に自分の席に戻る焔。そこに、白い学ランを着た受験生がやってきて声をかけてくる。
「受験番号67番の神影 焔君だね?受験生の
「あ、はい。神影 焔です。よろしくお願いします。」
「隣、いいかい?」
「あ、ええと、はい。どうぞ。」
三沢と名乗る少年が隣の席に座る。焔としてはいきなり知らない人物に話しかけられて混乱している。
「ええと、何か僕に御用でしょうか。」
「ああ、先ほどのデュエルの事でね。見ていたが、やるじゃないか。まさかノーダメージとはね。」
「まあ、はい。うまくできたと思います、はい。」
どうやらあまり人と話しなれていないようだ。傍から見てもかなり緊張しているのがわかる。さっきまでの試験の方が緊張していなかったように見える。
「うん、デュエルは素晴らしいものだった。だが、勝ったはずなのにうれしそうじゃなかったからね。ちょっと気になったのさ。試験官に最後何を言われたんだい?」
その言葉を聞いて、表情を暗くする。
「……試験官から、カードを大切にしていないと言われたんです。」
「それは……。」
デッキには決闘者の戦略や思想、誇りが込められている。デッキとは決闘者そのものであり、魂そのものと言い換えてもいいだろう。ゆえに、自分や相手のデッキを破壊する戦術をとることはカードを大切にしていない、決闘者の誇りを汚す行為だとして嫌悪する者も多い。事実、デッキとの絆を断ち切り二度とデュエルが出来ないよう完膚なきまでにデッキを破壊する戦法をとるプロ決闘者が居るが、実力はともかく人気はあまり高くはない。
「……三沢君はどう思いますか?デッキを自分から大量に墓地に送るなんてデッキを信頼していない、カードが可哀想だって。……そう思いますか?」
「それは……」
しっかりとした、しかし悲しそうな目で見つめる焔。心なしか、周囲の空気が薄気味の悪い熱を持ったように感じる。
「……結論から言おう。」
ごくり、と焔が喉を鳴らす。彼が想像するのは、三沢もまた同じ言葉を口にするであろう事。だが──
「君の行為は理にかなった事だし、自分のカードを墓地に送ったり除外したりしたからといってカードを嫌いだなんてことは絶対にない。」
そんなことはなかった。はっきりと焔を肯定する三沢。彼の目は真剣そのものだ。
「先ほどのデュエルからして、君の戦術は必要なカードを素早く墓地に送り、モンスターを召喚するもの。一枚のカードをドローするよりも五枚のカードを墓地に送るほうが効率がいい。《針虫の巣窟》は一見するとデメリットカードにしか見えないが、君のデッキにはぴったりだし、事実それで勝てている。俺もアンデッドデッキを組んだ時にはよく墓地を利用していたし、やはり手札だけでなく墓地も利用できると戦略に幅が──」
予想とは違う言葉をかけられ、ぽかんと呆ける焔を他所に熱く戦術を語る三沢。いつの間にやら周りを覆っていた重苦しい空気も霧散している。
「……ぷっ。」
「……ん?」
三沢が笑い声のほうを向くと、焔がくすくすと笑っている。
「なにか、変なことを言ったかな。」
「……ううん、全然。地元だと、皆否定的だったから。ちょっと安心しちゃって。良かったら続き、聞かせて貰ってもいいかな?」
「ああ、構わないよ。……と言いたかったが、どうやら時間みたいだ。」
『受験番号1番、三沢 大地君。』
ドームにアナウンスが流れる。筆記試験の結果で決まる受験番号はなんと一番だ。つまり、それだけ
「一番……三沢君成績いいんだ。」
「筆記だけが決闘者の力じゃなけどな。じゃぁ、行ってくるよ。」
「いってらっしゃい。応援してるよ。」
◇ ◇ ◇
「罠カード、《破壊輪》発動。この罠カードはフィールド上の表側表示のモンスターを一体破壊し、お互いにその攻撃力分のダメージ時を受ける。」
三沢のフィールドの《ブラッド・ヴォルス》の首に大量の手榴弾が付いた首輪がはめられる。直後首輪が大爆発を起こし、辺りに破片が飛び散る。
「ぐぅ!」
試験官
LP1900 → LP0
三沢
LP3200 → LP1300
効果ダメージがトドメとなり、試験官のLPが尽きる。《破壊輪》は強力なカードだが、LP4000ではリスクも大きい。それを難なく使いこなすのだから受験番号1番というのは伊達ではないのだろう。
「お疲れ様、三沢君。」
「ああ。自信はあったが、思ったよりもすんなりいったよ。」
デュエルディスクを外し、一息つく三沢。其処に後ろから声がかけられる。
「すっげー、強いなお前。」
後ろを振り向くと眼鏡をかけた少年ともう一人、こちらに向かって身を乗り出した少年がいた。
「ああ。」
成績優秀者ということもあり、褒められ慣れているのだろう。素っ気なく返事をした後に、焔に話しかけようとして──
「今年の受験生の中じゃ、二番目くらいに強いかもな。」
いきなり二番目だと告げられた。直後、アナウンスがかかる。
『受験番号110番、
「お、よぉし。俺の番だ!」
勇んでコートに向かおうとする十代を三沢が呼び止める
「君。何故、僕が二番なんだい?」
「一番は、俺だからさ。」
自信満々に宣言し、その場を立ち去る十代。三沢と焔はぽかんとした顔のままお互いに顔を見合わす。
「……一番?」
「だ、そうだ。」
思わず十代を指さしながら確認する焔。三沢は二番だと言われたにも関わらずさほど気にしていなさそうだ。
「俺が二番なら、彼はさしずめ一番君か。さて、いったいどんなデュエルを見せてくれるのか。」
前言撤回、めちゃくちゃ気にしていた。決闘者の性だろうか、目を見ればふつふつと闘志が燃えている。
「……あれ、なんか僕たちと試験官の人違わない?」
「む?本当だ。いったい何者なんだ?」
コートに目を向けると、服と一体化したデュエルディスクを纏った男性が十代を待ち受けている。
「シニョ~ル十代。ワタクシはクロノス・デ・メディチ。学園では実技担当最高責任者をやってル~ノです。」
聞こえるはずのない言葉が聞こえた気がする。学園の教師陣は強い者ならプロでもやっていける実力を持っていると言われている。そして実技担当最高責任者ということは、すなわち学園教師陣の中で一番デュエルに強いということだ。明らかに受験生にぶつけていい相手ではない。
「十代君ってそんなに強いのかな。あれってかなり期待されてるってことでしょ?」
「若しくは何らかの理由で落とそうとしているか……だな。これは面白くなってきたぞ。」
最後の受験生遊城 十代とデュエルアカデミア実技担当最高責任者クロノス・デ・メディチによる試験デュエル最終試合がついに始まろうとしていた。
はい、文章を書きなれていないので読みにくかったのならご容赦ください。
マスターデュエルが開始されてルールやカードの確認が楽になったので今更ながらGXモノです。
舞台が舞台なので今のところシンクロ、エクシーズ、リンク召喚の予定はありません。