遊戯王GX─DDS.デジタル_デュエル_ストーリー.女神転生─ 作:五月アメフラシ
エリート決闘者を育成するための学園、デュエルアカデミア。湖、森林地帯、活火山等を擁するその学園は、外界と隔絶された太平洋上の孤島に存在する。学園では日夜プロ決闘者を目指し様々な訓練が行われているらしい。
学園の敷地内にあるヘリポートに、今年の新入生を乗せた大型ヘリが着陸する。どうやら焔たちの便が最後だったようだ。
「それでは皆さん、手渡された制服に着替えてから案内のあった教室に集合してください。」
更衣室に案内され、制服に着替える。制服には赤、黄、青の三色があり、部屋で着替えているのは皆赤か黄の制服だ。
「この色なんか意味あんのか?」
「さぁ?」
周りの生徒も色を疑問視する声が出ている。
「僕の制服は赤か。」
焔が着替えを終え、鏡を見ながら呟く。他は三沢が黄、十代、翔が赤だ。全員が着替えを終えて指示された教室へ向かう。教室内には数名の教師がおり、中央壁面にあるモニターの前に整列するよう指示される。全員が並び終わると、モニターに校長の鮫島の顔が現れる。
「ようこそ、デュエルエリートの諸君。諸君は狭き門を実力で開いてやって来てくれました。未来の
校長の挨拶の後もいろいろな説明や担当教員の挨拶が行われたが。十代は興味が無いのか立ったまま舟を漕いでいる。一応最後まで注意されることはなかったが。その後、教員から校則や各授業の情報、相互連絡に使用する学生用のPDAが手渡された。
「各人、PDAに登録された内容をきちんと読んでおくように。では解散。」
第三話 三幻神の寮
入学式を終え、生徒達も思い思いの行動をとり始める。PDAを読み耽るもの、友人と会話するもの、指定された寮へ向かうものと様々だ。焔もPDAで確認した自寮へと向かおうとして、見知った顔を見つけた。
「よう、焔。お前の寮は?俺はオシリス・レッドだ。」
「僕も同じ、レッド寮。」
デュエルアカデミアにある寮のそれぞれの名前は、かつて決闘王の扱ったとされる神のカード達──通称を《三幻神》と言う──の名を冠している。それぞれ、オベリスク・ブルー、ラー・イエロー、オシリス・レッドの三つ。十代と翔はどうやら同じ寮に配属されたようだ。
「うん、僕もオシリス・レッドだよ。これからもよろしくね。」
「あぁ!こっちこそよろしくな。……お?」
談笑していると、そこに三沢が歩いてくる。どうやら彼も寮に向かう途中らしい。
「やあ二番。お前もレッドか?」
十代が尋ねると、三沢は自身の制服を示す。
「いや、僕はこの制服でわかるだろう?ラー・イエローだ。」
「あ、制服の色ってそういうことだったのか。」
確かに、この場にいるレッド寮の生徒は全員赤い制服を着ている。
「どうして君がレッドなのか不思議だよ。焔、君もだ。」
三沢が残念そうに口にする。
「む?なんだか引っかかる言い方だな。」
だが十代はそれに反発する。どうやら馬鹿にされたように感じたようだ。
「ま、気にしない事だ。失敬するよ、一番君。翔君、それに焔も。」
「ははは、まぁお前こそ落ち込まずに頑張れよ!」
別れようと数歩歩いて、立ち止まる三沢。こちらに振り向くと、親指で後方を指さす。
「そうそう、君たちの寮は向こうだよ。」
指さされた方角は、島の外縁部を示していた。
◇ ◇ ◇
辿り着いたオシリス・レッドの寮は、古びた木造アパートの様な外見──おそらく中身も同じだろう。──をしていた。道中に見かけた他の寮とは雲泥の差がある。特にオベリスク・ブルーの寮などは城と表現する者も出てきそうな建物だった。翔が思わず「オシリス・レッドだけ酷い」と愚痴をこぼすが、十代と焔は特に気にしていないようだ。
「ここは眺めもいいし、風情もあるぞ。」
「海辺だし、魚も取れそうだよね。先生に許可貰えないかな?」
焔が呟くと、十代と翔が驚いたように顔を向ける。
「お前って釣り出来るのか?」
「釣りというか……まぁ、魚は捕れるよ。」
「へぇ~、ちょっと意外。」
「何なら許可が取れたら御馳走するよ。食べられる魚が近海に居ればだけど。」
「お!いいな!食堂借りて皆で食おうぜ!」
一頻り何が食べたいかで盛り上がった後、自分たちの部屋へ向かう。
「ここが俺たちの部屋だ。」
「一緒の部屋だね。」
十代と翔が同じ部屋に入っていくどうやら同質の様だ。
「僕は二つ隣だね。」
「あれ、焔は一緒の奴はいないのか?」
「うん、人数の関係で僕は一人部屋みたい。何かあったらこっちにも遊びに来てよ。」
「おう!」
十代達と別れ、荷物を置いて窓を開ける焔。窓の向こうには晴々とした空と紺碧の海が広がり、これからの新生活を祝福しているかの様だった。そのままベッドに飛び込み、しばし目を閉じる。暖かな空気にウトウトとしていると──
「「うわぁぁ!《デスコアラ》!」」
突如二つ隣の部屋から十代達の叫び声が聞こえる。すぐさま起き上がり、デュエルディスクを装着して部屋に向かう。
「二人とも大丈夫!?」
勢いよく扉を開ける焔。その右手にはいつの間にかウォーピックが握られている。
「お、おう。俺達は大丈夫。」
突然飛び込んできた焔に、十代と翔が唖然とした顔を向ける。
「襲われなかった?怪我はない?《デスコアラ》は何処?」
「お、落ち着いてよ焔君。」
捲し立てる様に質問する焔を宥める翔。そこに上から声がかかる。
「こいつらに怪我はないぞ。人の事勝手にコアラと勘違いしただけなんだな。」
のっそりとベッドから顔を出しているのは同じレッド寮の制服を着た生徒。なるほど、確かに全体的にコアラに似ている印象を受ける。
「俺は
「あ、僕は神影 焔です。」
「焔だな。わかったら、その物騒な物をさっさと仕舞うんだな。」
言われて三人に見えない様、慌ててウォーピックを背中に隠す焔。
「なんだ。良かったよ何事も無くて。」
「てゆうか、あんなもの何処から持ってきたんだ?」
「そうだよ。危ないなぁ。」
ジト目を向けられ、恥ずかし気に頭を掻く焔。手にした時と同じように、いつの間にかウォーピックは姿を消している。
「あ、あはははは……いやぁ、暴漢が出たのかと思ってつい。」
「お前って、結構おっちょこちょいだな。」
部屋に笑い声が響くが、隼人は鬱陶しそうに背を向けて寝始める。
「随分とお気楽なんだな。お前達、オシリス・レッドの赤の意味を知ってるのか?
尋ねられ、三人とも首を振る。
「いや?」
「何か意味が有るんですか?」
尋ねる十代と翔に、隼人がちらりとこちらを向いて答える。
「"赤"は"レッドゾーン"。危険な奴らって意味なんだぞ。」
思わず焔の事を見る十代と翔、目を逸らす焔。武器を持って隣室に飛び込んでくるのは確かに危険な奴だ。
「そういう意味の危険じゃないんだな。いいか、デュエルアカデミアでは成績によってオベリスク・ブルー、ラー・イエロー、オシリス・レッドの三つの寮に分けられるんだ。オベリスク・ブルーは中等部からの成績優秀組で占められる。人数が少ない女子もここに配属されるんだな。高等部の試験を受けて入った新入生の中で成績優秀なものはまず、ラー・イエローに配属されるんだ。」
隼人の口からは新入生がどの寮に配属されるかの理由が語られる。
「じゃ、オシリス・レッドは?」
「成績ダメダメの、ドロップアウト組の吹き溜まりさ。」
「えぇ……。」
天空竜の名を冠する割には評価はダメダメなようだ。
「わかったか?ここに送られて来たもんには、最初から未来なんて無いんだぞ。」
言い終わると今度こそこちらに興味を無くした様に壁を向いて眠り始める隼人。
「睡眠の邪魔をしちゃ悪いし、外に出ようか。」
「そうだな。」
「またね、隼人君。」
部屋を出て当てもなく歩いていると、翔が肩を落とし溜息をつく。
「どうしたの、翔君。」
「だってあんな事言われたら……。」
先ほど隼人から言われた事を思い出し、さらに気落ちする翔。
「でも、俺は赤が大好きだぜ!燃える炎、熱い血潮。熱血の俺にはお似合いだぜ!」
握りこぶしを作りオシリス・レッドでよかったと言う十代。それに続いて焔も翔に励ましの言葉をかける。
「十代君らしいね。それにこう考えてみてよ。後は上がるだけだって。」
「そうそう!大体まだ何も始まっちゃいない。今からじゃないか!」
その言葉に元気付けられたのか、翔がやる気を燃え上がらせる。
「そ、そうだよね、今から落ち込んでどうするんだ!がんばれ!僕!ファイト!」
しかし、「気張るんだ!」と自身を鼓舞する翔を他所にいきなり十代が駆けだして行く。向かう先は校舎の方だ。
「始まる前から落ち込むなんてだらしなかったよ。兄貴──」
「十代君なら向こうに走って行っちゃったよ?」
「え!?」
既に遠くに行ってしまった十代を指さす焔。翔は慌てて走り出し、焔もそれに付いて行く。
「ところで翔君、なんで十代君の事を兄貴って呼ぶの?」
「えっと、入試の時も話しかけてくれて、同室にもなるなんてなんか縁が有るなって。それにデュエルかっこよかったから、心の兄貴になってくれないかなって。」
「なるほどね。なんなら寮に戻ったら捧げもの用意して盃でも交わす?」
「そこまで本格的なのはちょっと……。」
話をしている間に十代に追いつく二人。きょろきょろと周囲を見回す十代に、翔が疑問を投げかける。
「ねぇ兄貴、どうしていきなり走り出したのさ。」
「この辺りにデュエルしてる奴がいるんだよ。」
そう言いながらどんどん先に進んでいく。
「……そんな音聞こえた?」
「音は聞こえなかったけど、たしかに気配ならしたかな。」
「えぇ……。」
答える焔にあきれる翔。交互に二人を見つめる翔の目は、何か変なものを見るような目だ。
「臭うぞ!こっちからデュエルの臭いがする!」
「いや、デュエルの臭いはしないでしょ。」
「気配とか臭いとか、二人の言ってることがよくわかんなくなってきたよ……。」
探すこと少し、三人が足を踏み入れたのは中央にステージのあるドーム状の施設だった。
「ここだ!うぉ~、すげー。」
「ちょっと、勝手に入っちゃっていいの?」
「立ち入り禁止の表示もなかったし、入るだけなら問題はないんじゃないかな。」
周囲を見回して感嘆の声を上げる十代。翔が心配をしているが、焔は気楽にしている。
「デュエルの練習場……かな?」
「たぶんそうだと思う。これ、最新設備のデュエルフィールドだよ。音響設備も体感システムもニューヴァージョン!デュエルしてみたいなー。」
「俺達だってここの生徒なんだし問題ないって!二人ともデュエルしようぜ!」
「いや、ちゃんと設備利用の申請出さないといけないんじゃ──」
「申請を出す出さないとか、そういう問題じゃないんだな、これが。」
焔の言葉を遮って二人の男子がステージから降りてくる。身に着けている青い制服を見るにオベリスク・ブルーの生徒の様だ。
「ここはお前達オシリス・レッドのドロップアウト組が使えるような場所じゃないんだ。入り口を見てみろ。」
指さされた先に目を向ければ、入り口の上に《オベリスクの巨神兵》の頭部を模した紋章が付けられている。
「ここはオベリスク・ブルー専用のデュエル場だ。わかったらあっちへ行け。」
「ごめん、知らなかったんだ。ほら兄貴、行こう?」
翔に退出を促されるが、十代は何か納得がいかない様子だ。
「そうだ。じゃあお前、俺とデュエルしようぜ。それなら問題ないだろ。」
勝負を挑んだ十代の顔をまじまじと見つめるブルー生。やがて何かを思い出し声を上げる。
「ん~……あ!万丈目さん!」
「こいつ、クロノス教諭を倒した110番ですよ!」
声をかけられ、観客席にいた少年がこちらに歩み出てくる。
「あー……俺、遊城 十代。よろしく。」
「丸藤 翔です。」
「神影 焔。よろしくね。」
三人がそれぞれ自己紹介を行い、
「で、あいつ誰なんだ?」
十代がブルー生に尋ねる。するとブルー生は心底馬鹿にした様な顔をして先ほどの生徒の説明を始めた。
「中等部からの生え抜き、超エリートコースをひた走る実力ナンバーワンの万丈目さんを知らないのか!?」
「未来の決闘王との呼び声も高い
それを聞き、首を捻る十代。
「おかしいな……。」
「何が!」
「だって決闘王ってのは一番強い奴だろ?この学園で一番は俺だからさ!」
自信満々に最強を宣言する十代。その場にいる全員が一瞬あっけにとられ、ハッとした後ブルー生の二人が笑いだす。
「お前の様なドロップアウトボーイが決闘王になれるわけないだろ!」
「バカも休み休み──」
「ビークワイエット。諸君、燥ぐな。」
大声を出して十代の発言を否定しようとした取り巻きのブルー生を万丈目が止める。
「受験生相手に手抜きしたとは言え、一応、あのクロノス教諭を破った男だ。お前達じゃ勝てん。」
上から目線だが、十代の実力を評価する万丈目。取り巻き二人は悔しそうに十代を睨みつけるが、そのまま何も言わずに引き下がる。
「あれは実力さ。」
「ふっ……その実力、此処で見せてほしいものだな。」
「いいぜ。」
売り言葉に買い言葉、二人の間に一触即発の空気が漂うが──
「あなた達、此処で何してるの。」
突如現れた少女がそこに割って入る。
「わぁ~、奇麗な人。」
「いやまぁ、奇麗な人だけど今気にするところはそこじゃぁ──」
「天上院君。」
万丈目が天上院と呼ばれた少女に声をかける。その姿は何処か格好をつけているようだ。
「なぁに、余りにも世間知らずな新入りにちょっと学園の厳しさを教えて差し上げようと思ってね。」
「……そろそろ寮で歓迎会が始まる時間よ。帰った方がいいんじゃない?」
「……チッ。お前達、引き上げるぞ。」
「あ、待ってくださいよ万丈目さん!」
万丈目が取り巻きを引き連れて去っていくと、少女が三人に声をかけてくる。
「あなた達、万丈目君達の挑発に乗らない事ね。あいつら、ろくでもない連中なんだから。」
立ち去って行った万丈目達を睨みつけながら忠告する少女。その言葉に十代が感心したような声を上げる。
「態々俺たちにそんな事を教えるなんて、お前、俺に一目惚れか~!?」
笑いながら訪ねる十代に、他三人が呆れたような笑いをこぼす。
「十代君……初対面の女性に対してあんまりそういうことを言うのは……。」
「え~、なんでだよ。」
「はっきり言えば紳士的じゃないからかな。」
「……ふふっ。レッド寮でも歓迎会があるから、あなた達も戻った方がいいんじゃない?」
「いっけね!行くぞ!翔!焔!」
慌てて駆け出す十代を追いかける翔と焔。入り口まで到着すると、十代が急に振り返る。
「そうだ!、お前、何て名前なんだ?」
十代の問いに少女が微笑みながら答える。
「
「俺、遊城 十代。よろしくなー!」
「まったく、調子いいんだから。あ、僕、丸藤 翔です。」
「神影 焔です。よろしくお願いします、天上院さん。」
「あ、待ってよ、兄貴ー!」
走り去って行く十代達を見つめながら明日香が十代の名を呟く。彼女はそのまま十代達が見えなくなるまで、興味深げにその背を見つめていた。