やる夫は変わるようです 妄想小話集   作:膝に矢うけたった

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 日本での活動の中で、かつて魔剣士スパーダが使った剣、魔剣スパーダの封印された姿であるフォースエッジを手に入れたやる夫達。ガイア教の組織の一つである魔剣教団にその封印を解くヒントを探して訪れた。
 やる夫が教団に視察と称して訪れて注意を引いている間に、アベンジャーズの面々と酒場で雇った面々で町の中を調査する。

酒場組メンバーリスト 名前(原作)
アイズ・ヴァレンシュタイン(ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)
シノン(ソードアートオンライン)
ザップ・レンフロ(血界戦線)
レオナルド・ウォッチ(血界戦線)
足利茶々丸(装甲悪鬼 村正)


妄想小話
妄想小話 雑誌記者


 魔剣教団の都市にカズマ達が滞在を初めて二日目、初調査を終えた面々は集合して報告と食事を終えた後、宿に向かっていた。この時期のフォルトゥナの日の入りは20時前後と遅く、空にはまだ太陽が見えていた。

 そのこともあって、未だ街中を歩く人や悪魔は多い。日本で暮らしていたカズマ達にとっては体内時計で狂うので厄介でもあるが、夜道に気を付けなくていいのは僥倖だったと言える。

 

「そこのあなた達そこでストップです!」

 

 そんな彼らを呼び止める声が聞こえた。目的を隠し、ルサルカの入国検査を偽装したこともあり、全員が戦闘態勢をとろうとする。キラとアティ以外のアベンジャーズは経験が浅いため警戒しているのを隠せていないが、酒場組のメンバーは経験豊富なこともあって相手に気付かれないように装うことができた。

 ザップが声の主に振り返り、いつもの軽薄な態度で口を開く。

 

「あー、なんだ? 俺らに何か用か? 出来れば手短にお願いしたいんだが」

 

 こういう時この男は適任と言える。できれば不用意に関わりたくない今、ガラが悪いと取られかねない態度が逆に人避けになるのだ。本人もそれを理解しているのか、僅かにだが普段より語気を強めている。

 

「すいません。私、フォルトゥナマガジンの記者でして、少し時間もらえませんかね?」

 

 だが、今回は相手が悪かったようだ。記者というのは時にとんでもない行動力を持つ者がいる。この帽子に瓶底眼鏡といった出で立ちの女性はその類だったようだ。ザップの態度にも臆することなく取材を申し込んでくる。

 

「ふふぅ~ん、いいですね、いいですねぇ。後ろの学生さんかな? 彼らはまだまだ青いようですが、あなた達五人は画になりそうですね」

 

 返事を聞く前にすでに酒場組の面々に視線を向けて、両手でカメラに収めるようなジェスチャーをしている。シノンは呆れた表情だが、アイズとレオは突然のことにどうしたらいいかわからない様子だった。

 

「あてらも昼の観光で疲れてるんだけど、遠慮してくれると助かるんだけどなー」

 

 それを茶々丸が視界に割り込んでやんわりと腕で退ける。だが、目の前の記者は諦めるどころか、逆に目を爛々と輝かせる。

 

「そこをなんとか、少しのインタビューと写真を数枚撮らせてもらうだけですからぁっ!」

 

「てか、何で俺達なんだよ。他行けよ、他によ……」

 

 ザップがめんどくさそうに対応する。後ろにいるアベンジャーズが空気になっているが、ルサルカは自分が無視されてることが不満なようだが、他の面々はあえて空気に徹するつもりのようだ。

 

「みなさん外の人ですよね? 後ろの学生さんと保護者の観光旅行とその護衛と見ました」

 

 保護者と言うのは恐らくアティのことを指しているのだろう。傍から見るとそう見えるのは狙い通りともいえ、カズマ達にとっては都合のいいことではある。あとはこの記者をどう対処するかなのだが。

 

「私の担当コーナーが町で見かけた強そうな人のインタビューでして、写真付きで人気のコーナーなんですよ。これ、かなり前のやつなんですがどうぞ」

 

 そう言って茶々丸に一冊の雑誌を開いて渡す。そのページには金髪の女性騎士の写真が『期待の新星・新しき上位騎士』という見出しとともに掲載されていた。内容も当たり障りない内容でありながら、しっかりと読者の興味を引くものだった。

 余談だが、この号の女性騎士、アリスは町の警邏中に押しに負けてインタビューを受けたのだが、後日イーディスが数十冊買いこんで恥ずかしい思いをしたらしい。

 

「この町は魔剣士スパーダを信仰してるので、こういった強い人の特集は受けがいいんですよ。お願いできませんかねぇ」

 

 諦めると言うことを知らないのか、しつこく食い下がる。ただ語気も弱くなってきているので、もう一押しで諦めてくれそうではあった。下手に騒動になって騎士が出てくれば向こうにもおいしくないのだろう。

 

(これは使えるか?)

 

 カズマとキラの視線が合う。二人が考えていることは同じだったらしい。一瞬あくどい笑みを浮かべた二人は一歩前に出る。

 

「依頼者権限、五人とも取材を受けてくんね? もうすぐ暗くなるし長くなるのは勘弁だけどな」

 

「そうそう、雇った護衛がフォルトゥナで顔が売れてるってなれば、雇った僕達にも箔が付くしね」

 

 相手の認識を利用して何かを考えているらしい。二人の言葉に酒場組は驚いた表情で顔を向けた。記者は思わぬところからの援護をうけて嬉しそうな様子で二人に詰め寄った。

 

「ただし、条件がある。俺達も昨日この町についたばっかでな。外向けの情報しかこの町のことを知らねーんだわ。中の人からみたおすすめスポットとか、明日の礼拝が良く見えるポイントとかそういうの教えてくれる人がいると助かるんだけどなぁ」

 

 この町のおすすめスポットと言えば全部が全部ではないが、スパーダに関するものが多く、その情報が目的の情報に繋がる可能性がある。礼拝についても、よく見えない位置で眺めても無駄足以外のなにものにもならない。

 と、なれば詳しい人間から情報を引き出すしかない。記者であればそういった情報にも詳しいだろうと考え、酒場組を生贄に差し出すことを選んだのだ。

 

「そうね、依頼主の希望なら受けるしかないわね。追加の報酬は要求させてもらうけど、この都市で顔が売れること自体はマイナスじゃないし」

 

 意図を理解したのか、シノンが二人の言葉に同調する。雑誌の内容を見る限りは知られて困るのは顔くらいのもので、言いたくないことは言わなければいい。悪魔と共存しているということもあって、この都市の情報は外向けには制限されている。精々、同業者が小耳に挟んで、多少箔が付く程度だろう。

 

「なるほど、情報と交換ですか。学生さんも悪ですねぇ。もちろん交渉成立ですとも!」

 

 こうして取材を受けることになった酒場組は写真を数枚撮ったあと、質問に答えることになった。どこから来たのか、今まで一番苦戦した戦いは何かなど本当に当たり障りないものばかりだった。

 日本から来たことを聞いて、日本でもフォルトゥナが知られていることを誇らしそうにしたり、上位騎士にも日本に関わりのある人がいるなどといった話をしたり。アイズが大天使の巫女と戦ったことを言っていいのか迷って頭を悩ませたりもした。

 

 そんなこんなで日が大分隠れた頃、取材を終え、約束の情報を聞いた後カズマ達は再び宿に向けて歩き始めた。記者も反対方向へと歩き始め携帯電話を取り出してアドレス帳から一つの連絡先をコールする。

 

「あ、はい、今取材が終わったところです。ええ、中々の粒ぞろいでしたよ」

 

 電話相手と話しながら人通りのない道を通って出版社に向けて歩く。瓶底眼鏡を外しながら、相手へ今回の取材で得た情報を話していく。

 

「学生っぽい五人と保護者はなり立ての一般人ですね。才能もそれほどではないかと」

 

 人の目がなくなった途端、声の色が変わる。そしてその内容も本来知るはずのない物へと変わっていく。

 

「護衛の五人はいいですね。一人は何か特殊な五感ですかね、一人は悪魔とのハーフのようですし、ハーフは入国検査の情報で知ってましたが……。もう一人のハーフですか? そっちは例の学生なので期待薄です」

 

 不穏な会話、電話の先にいるのは出版社の人間ではない。質問で得た以上の情報を伝えていく。それは酒場組の情報ばかりで、アベンジャーズについてのものはない。それもそのはずで、彼女は知らないことだがアベンジャーズは能力を偽装する腕輪を装備している。それが原因で彼女は彼らを取材対象から外していたのだ。

 

「ええ、もちろん、はい。あの五人なら実験にも材料にも、騎士でも使えると思いますよ。あはは、学生さんは記憶を弄って解放でいいんじゃないですかね。捕まえるなら計画後に実験いきですね」

 

 もはや何も隠すことなく、当然のように悪だくみを口にする。その内容は人を人も思わないもので、先ほどまで元気に取材していた人物と同じとは思えないものだった。

 

「はい、それでは。計画成功を祈っています。藍染様」

 

 電話を切って、出版社への道を急ぐ。翌日、彼女が表向きの記事とは別に作った報告書が藍染の下に届くのだが、それが活かされる前に都市の信仰する魔剣士の怒りが彼に降り注ぐことになる。

 そして最後の足掻きを打ち砕いたのは報告するまでもないとされた、アベンジャーズの面々だった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

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