進撃の迷宮譚 作:でけぇ害虫
でもすまない、欲望を抑え切れなかった。
小学生が考えたような全盛り最強巨人を好きな作品に投入したいという欲望を抑えられなかったんだ。
でもダンまち×進撃は公式が既にやってるし……ギリセーフやろ。
主人公はエレンでも何でもない、中学生が考えたような最強系オリ主やが……まあセーフやろ。
Prologue
創世記に曰く、天地創造の始まりに神は「光あれ」と唱えたらしい。すると世界に光が生まれ、地上は光輝で満たされたという。
しかし俺の前に現れた神は、「進撃の巨人って面白いよね。神作だよ神作」などとほざいた。すると俺は「進撃の巨人」になった。端的に言って意味が分からない。
これは俺の頭がおかしくなったとかそういうことではない。この独白が誰に届くとも思えないが、一応経緯を説明しておくとする。
まず、俺は死んだ。死んだ瞬間の記憶は曖昧だが、交通事故か何かだったように思う。甲高いブレーキ音と人々の悲鳴が耳にこびりついている。
そして目を覚ますと、俺は何もない真っ白な空間で漫画本を片手に佇む「自称“神”」と出会ったのだ。
──お前は死んだ。
──諸事情により別の世界に転生させる必要がある。
──来世での幸福を祈っておく。
自称“神”の発言をまとめると大体こんな感じである。問い質したいことは山ほどあったが、残念なことに俺はこのとき口が利けなかった。恐らく魂だけの状態とか、そんな感じだったのではないかと思う。
神は一方的にそんなことを告げると、ちらりと手元の本に目を落とし、そして先の発言を口にしたのである。
──進撃の巨人って面白いよね。神作だよ神作。
──
……神様も漫画を読むんだなとか、何が「だから」なのかとかツッコミどころは多々あったが、さりとて俺に何ができるということもなく。以上の経緯を以て転生し、そして俺は「進撃の巨人」になった。
さて、冗長かもしれないが「進撃の巨人」とは何なのかについても少し語っておこう。神が漫画本を持っていたことからも分かるように、これはとある漫画作品のタイトルである。
舞台は人を食らう巨人に追われ、壁の中で生きることを余儀なくされてしまった人類が住まう世界。巨人に母を殺された主人公、エレン・イェーガーが復讐を誓い、巨人を倒すため調査兵団へ入団し巨人と戦っていく姿を描くダークファンタジー漫画。それが「進撃の巨人」である。
では進撃の巨人が漫画のタイトルであるなら、進撃の巨人に
詳細は長くなってしまうので省くが、この作品にはある特別な巨人が登場する。基本的に巨人とは知性もなく、ただ本能的に人間を捕食するだけの化け物なのだが、例外的に知性を有する巨人が物語の中盤に差し掛かるあたりで現れるのだ。
それこそが主人公エレン・イェーガーが変身した巨人。即ち進撃の巨人である。
始祖たる巨人より別たれた知性ある巨人。その数は九つ。通称「九つの巨人」。
「始祖」の巨人。
「超大型」巨人。
「鎧」の巨人。
「女型」の巨人。
「獣」の巨人。
「顎」の巨人。
「車力」の巨人。
「戦槌」の巨人。
そして主人公が変身する「進撃」の巨人。物語にはこれら特別な能力を持った知性ある巨人が登場し、その出現を皮切りに次々と謎に満ちた世界の真実が明るみになっていく──それが進撃の巨人という漫画作品の概要である。
要するに進撃の巨人になったとは、俺が主人公と同じ存在、即ち「進撃」の名を冠する知性巨人への変身能力を得たということだ。神は祝福と言っていたが、つまりは転生特典とかいうやつなのだろう。その辺の知識はWEB小説等で予習済みである。
──そう思っていた時期が、俺にもありました。
それは転生してから数年が経った頃。良くて18世紀前後のヨーロッパ程度の文明レベルと思われる世界の小さな町で生まれ育った俺は、バケツをひっくり返したような大雨が降る日の夜に家を抜け出し、ついに巨人化能力の実験に乗り出した。
巨人化の力はその性質上、あまり軽率に行使することができない。特にその力を周囲に隠しておきたいなら尚のことだ。変身に際して自傷行為を要し、しかも巨大な雷鳴と爆発を伴うからである。
何より単純な問題として、巨人はその名の通り大きな体躯を有する。その大きさは種類によって様々だが、例えば主人公のエレンは15メートルもの巨体へと変身した。現代日本ならば15メートル程度の建造物など珍しくもないが、中世ヨーロッパレベルの文明しかないこの世界では王都にでも行かない限りお目に掛かれないだろう。迂闊に変身しようものなら、たとえ町の外で行おうが直ちに露見してしまう。
そのため、巨人への変身には細心の注意を払う必要があった。変身時に発する雷と爆発の音を誤魔化せて、且つその巨体を目撃されにくい環境。その条件を満たすのが大雨の降る真夜中だったというわけだ。
家を抜け出し郊外に広がる森へ走った俺は、僅かな恐怖と、それ以上の好奇心あるいは高揚感の中で掌に刃を走らせた。
巨人化のトリガーは自傷行為。その傷を通して「道」と繋がり、継承者は巨人の肉体を身に纏う──その筈だった。
刹那、俺の脳内──精神──あるいは魂か──に流れ込むあり得ざる知識の洪水。
その瞬間、俺は理解した。俺に与えられたのは「進撃」の力などではないことに。
神は俺に「進撃の巨人」の力を与えた。
分かりやすく言おう。
神が祝福と称して俺に与えたのは──「進撃の巨人」という物語、その全てである。
即ち俺は「九つの巨人」であり、「始祖ユミル」であり、「エレン・イェーガー」であり、「エルディア人」であり、「アッカーマン」であり──つまりあの神は、そういった「進撃の巨人」という物語を構成する主だった要素を一緒くたに纏め、乱雑に、曖昧に、大雑把に詰め込んでくれやがったのだ。
微妙なニュアンスの違いだが、その意味するところは全く違う。
“「進撃」の巨人”ではなく“「進撃の巨人」”──それこそが俺の身に宿った特典の正体。そう理解したのと同時、我に返った俺の目の前に広がる景色は一変していた。
豪雨が降り注ぐ暗い夜の森はそこにはなく、視界に飛び込んできたのは無限に続く
この景色には見覚えがあった。これこそは始まりの巨人、始祖ユミルが辿り着いた全ての「道」が交わる「座標」──「死さえ存在しない世界」に違いない。
俺はこの時、感動に打ち震えていた。勿論まさかの特典の正体に驚愕していたし混乱もしていたが、何より一人の進撃の巨人ファンとして、物語の核心とも言うべき場所に自分がいるという事実に歓喜していたのだ。
凄い、本物だ!
まさしくここで、
──などと。呑気に内心で喝采を上げていた俺は、そこでようやく重大な事実に気が付き我に返った。
そう、始祖ユミルはこの「死さえ存在しない世界」──長ったらしいので以後は「座標」で統一する──で巨人を作っていた。砂と水を捏ねて巨人の身体を作り、「道」を通して現実の世界に送り出す。そんな途方もない作業を、時間という概念から隔離されたこの空間で延々と行っていたのだ。
そして俺は「俺」だが、同時に「始祖ユミル」自身でもある。我ながら意味が分からないが、そういう特典なのだから仕方がない。
それが何を意味しているのかというと……まあ、要するにあれだ。俺のためにせっせと巨人の身体を作ってくれる女の子なんてどこにもいなくて、俺自身がユミルなのだから欲しけりゃ自分で作れと……つまりはそういうことなのだろう。事実として目の前にあるのは環境と材料だけであり、案の定というべきか「座標」には俺以外誰もいやしないのだから。
「助けてライナー……」
当然ながら都合良く頼れるナイスガイが現れてくれるなんてことはなく、俺の呟きは虚しく座標に溶けて消えていった。
「……さて、いい加減現実と向き合おうかな」
たっぷり一時間ほど──座標には時間の概念など存在しないが──放心していた俺は、頬を叩いて立ち上がる。
確かに砂を捏ねて巨人の身体を作るなど、かかる労力を思えば気の遠くなる話だが、実はそう悪いことばかりでもない。
自分の手で巨人を作るということは、当然その造形は自分の思うがままだ。進撃の巨人ファンならば(多分)誰もが考えたことがあるであろう、「ぼくのかんがえたさいきょうの巨人」……それを現実にできるというファン垂涎の状況に自分はいるのだ。
「幸い、この砂はある程度融通が利くみたいだし」
足元の白砂を手で掬い上げる。指の間からからサラサラと流れ落ちるそれは、始祖の意思に応じて形を変える不思議物質だ。巨人の身体の材料となるのは勿論、原作でユミルがやっていたように欠損した継承者の肉体の修復に使えたり、何ならジークやエレンを拘束した手枷のように金属への変質すらやってのける。
その予想通り、少し念じてみれば白砂は立ち所に形を変えた。手の中に現れた無骨なスコップを握り締め、思わず安堵のため息をつく。
これである程度可能性は見えてきた。とはいえ、ここまでスムーズな変化はあくまでスコップが単純な構造で出来ているからだろう。念じるだけで全て片が付くのならば、ユミルがああも苦労してまで手作業で巨人体を作る必要などないのだから。
スコップと違って柔軟に稼働する肉体を作るためには、やはりしっかりとした造形である必要があるだろう。多くの無垢の巨人のようにアンバランスな身体ではアンバランスな動きしかできない。目指すは作中屈指のイケメン巨人、エレン巨人体のようなバランスの良い身体である。
「やっぱり丁寧に手作業でやっていくのが一番効率がいいんだろうなぁ……」
ため息一つ。先ほど生み出したスコップを手に、俺は砂を積み上げ山を作っていく。
重機など望むべくもない以上、パーツごとに作って最後に合体させるなどというやり方は不可能だ。足元から順繰りに、地道に積み上げていく他ない。
15メートル級の巨人ともなれば、足一つとっても尋常でない大きさだ。すぐに俺の背丈では手もスコップも届かなくなり、足場の作成と並行しての作業となっていく。
砂を積み、水を掛けて固め、また砂を積むの繰り返し。そしてようやく
「重労働が過ぎる……!」
冷静になって考えてみれば、俺はまだ転生してからそんなに時間が経っていない。十歳かそこらのガキに過ぎないのだ。中身はこんなんだが身体はまだまだ子供で、当然ながら体力も相応のものしか持ち合わせていない。
「ユミルはよくこんな重労働を二千年も続けたもんだよ……」
フリッツ王への愛が為せる技か、それともただ奴隷根性逞しかっただけか。いずれにせよ、エレンと座標で出会うまでの二千年間、休みなく巨人を作り続けた始祖ユミルには頭が下がるばかりだ。はっきり言って正気の沙汰とは思えない。
まあ自分だけの巨人体は欲しいので作業そのものは続けるが、正直どこまでこのモチベーションが維持できるかは疑問である。時の流れが存在しない座標ではそれこそ無限に時間を使えるが、俺の精神力には限りがあるのだ。納得のいく巨人体が作れず、云十年も座標から出られないなど御免被る。
「……ん?」
だが、息抜きがてら足先の造形を詰め始めたあたりで俺は違和感に気付いた。
腕が妙に軽い。先ほどまでちんたら砂を積み上げていた時とは打って変わり、スコップはまるで手足の延長のように縦横無尽に動き砂の山に輪郭を与えていく。
いや、違う。砂だ。スコップや腕の動きに反応し、まるで俺の想像する足の姿を反映するかのように砂そのものが形を変えているのだ。
確かに念じるだけで巨人体が完成してしまうような万能なものではなかったが、それでも始祖の意思に応じ形を変える性質そのものは変わらない。俺が触れることで砂はその意思を汲み取り、独りでに流動していく。腕が軽いと錯覚したのはそのためだったのだろう。
「おお……」
出来上がった巨人の足を見て俺は感嘆の声を上げる。碌に芸術に触れたことのない人間が作ったとは思えない、見事なまでの巨大な人の足がそこにあった。
これが俺自身の才能だとは考えにくい。あの神がサービスしてくれた能力か、あるいは始祖ユミルにも同じことができた可能性もある。元々ただの村娘だった彼女が芸術に触れる機会があったとは思えないし、何より科学や医学が未発達なあの時代で人体構造に造詣が深かったはずもない。だがこの不思議な砂の性質による補助があったと考えれば、幼い少女が精巧な巨人を何体も作ったという事実に説得力が生まれるのではないか。
そして、ここで俺の内に一つのアイデアが生まれる。
律儀に足元から造形を組み上げていくのではなく、まず一つの巨大な砂の柱を形成し、そこから彫刻よろしく巨人体を削り出していくという方法である。砂の柱を作る作業は大変だが、それさえ作ってしまえば後は比較的容易い。それに普通の彫刻と違い削り過ぎてしまっても修正は簡単だ。
「よし、それで行こう」
そうと決まれば話は早い。俺は早速とばかりに砂を積み上げる作業を再開する。
明確な展望が見えたからか、先ほどまでより身体は軽かった。砂を積み、水を掛けて固め、また砂を積んでの繰り返し。だが作業そのものは同じでも、行動に明確な意思が伴っているためか作業効率に雲泥の差があった。まるで座標そのものが俺の意思に応えてくれているかのような錯覚すら覚える。
思えば、作中における巨人化の条件は「自傷行為による道との接続」と「明確な目的と強い意思を持つ」ことだった。道の先にいる始祖ユミルまで継承者の意思を届かせるために強力な目的意識が必要だったわけだが、ユミルと座標との間にも同じことが言えるのかもしれない。如何なる理由であれ二千年間も巨人を作り続けた彼女の意思が弱いはずもなく、その意思に座標が応えてくれていたのだとしたら、今の俺の状況にも説得力ができる。
俺は眼前に聳え立つ砂の柱を見上げた。その高さはゆうに20メートル以上はあるだろう。
驚くなかれ、俺がこれを作るのに掛けた時間は──あくまで体感でだが──二週間程度に満たない。俺の身体が年端もいかない子供のものであることを考えれば、半年……いや一年以上かかったとしても不思議ではなかっただろう。それを考えれば、やはり座標自体からある程度の援護があったのではないかという俺の仮説はそう的外れなものでもないのではないか。
しかし凄いものだ。砂を積み上げただけの単純なものとはいえ、ちょっとしたビルほどの大きさの建造物をこの手で作ったとは、自分自身でも未だに信じ難い思いだ。
無心で作業している間は、なんというか、ちょっとしたトランス状態にあったように思う。より座標に近付いたというか、恐らく今も俺の脊髄に寄生しているであろう「根源」と更に強固に繋がったというか……端的に言って無敵だった。あるいは始祖ユミルも同じような精神状態にあったのかもしれない。今の俺なら巨人の二体や三体ぐらい余裕で作れ悪い、やっぱ辛えわ。
そりゃそうでしょ。二週間だぜ二週間。いくら死ぬことも衰弱することもないとはいえ、何の娯楽もない中で延々と力仕事を続けるのは精神的に辛いものがある。
というかそもそもこの状況がおかしい。確かに作中に登場する巨人は全て始祖ユミルの手作りだが、ではユミル本人が初めて巨人化した時はどうだったのか。ユミル巨人体の全長は100メートル以上あったそうだが、よもやそんな規格外の巨体すらもユミル自身の手によるものだったとでも言うのか。
いや、そんなはずはあるまい。原作知識という事前情報があった俺ですら面食らってるのに、何も知らない奴隷の少女がいきなり「砂が沢山あるからこれを捏ねて巨人を作ろう! とりあえず100メートルな!」となるわけがない。ましてや顔面髑髏で肋骨剥き出しとかいう前衛的なデザインなど、普通の感性ではとても思いつけるものではないだろう。いくら衝動的に家畜の豚を逃がすという暴挙を犯す彼女と言えど、そこまで精神的に破綻しているとは思い難い。
だから作中の描写と併せて見るに、恐らく始祖ユミルが初めて座標を訪れたのは死んだ後だ。それ以前は
だからこの状況は多分、神か俺、あるいはその両方の思い込みによる影響が大きいのではないだろうか。
進撃の巨人という漫画を読んだ神や俺にとって、巨人とは「始祖ユミルによって作られるもの」という認識──先入観と言ってもいい──が少なからずある。少なくとも作中に登場する巨人はユミル巨人体を除いて全てそうだったのだから、そう的外れな認識でもないだろう。そしてそんな認識でいる神によって与えられたために、俺の巨人化はこのように変な仕様になってしまっている可能性が高い……という予想である。酷い話もあったものだ。
……だが、まあいい。いや良くはないが、とりあえず今はいい。長々と語ったが全ては俺の予想に過ぎず、結局それが当たっていようがいまいが俺がやるべきことに変わりはないのだから。
俺は俺だけの巨人が、それも最強の巨人が欲しい。そして欲しけりゃ作れと神がそう言うのなら、少々遺憾だが是非もない。元々この状況が既に望外のものなのだから、あまり贅沢言うのもどうかと思うし。
なに、別に以後永遠にここで巨人を作れとかいうわけではないのだ。たった一回、今回だけ苦労すればそれで済む話だ。それに巨人サイズの砂を集めて固めるという最大の難所は既に終了しているのだから、あとは楽しい楽しい彫刻の時間である。仏師が木から仏を彫るが如く、俺は砂から巨人を削り出すのだ。
砂の柱の周囲を覆うように作ったジャングルジム状の足場をよじ登り、柱の頂上付近に陣取る。巨人の頭部となる予定の場所を前にし、俺は自分でもどうかと思うような笑みを浮かべた。擬音を付けるならニヤリとかニチャリとかいう感じの気持ち悪いタイプの笑みだ。
「目指すは“最強の巨人”! 作るからには徹底的にだ」
基本的な造形はエレン巨人体に倣う。顔は悪魔のような鋭い凶悪さを秘めた表情で、当然豚の耳は外せない。はあ^~エレンゲリオンマジイケメン。
おっと、巨人は顔が全てじゃない。当然首から下のデザインも重要だ。基本的に九つの巨人はどれも格好いいが、一部の巨人はその能力を活かすために極端な体格をしている場合がある。けれど、俺はやっぱり「進撃」や「鎧」、「女型」のようなシンプルな人型が好きだ。基本は「進撃」のデザインを踏襲しつつ、よりマッシヴに……
他にも「顎」や「獣」の特徴も盛り込んで……あー! 楽しい! 巨人のデザイン考えるのマジで楽しい! 砂の柱作ってる時とはモチベーションがダンチだわ。もう手が止まらねぇ! 座標の砂も俺のテンションを反映してか気持ち悪いぐらいのスピードで動いてくれてるし、これは一日と経たずに完成してしまいそうだなぁわはは────
その日、町の人間は思い出した。本物のモンスターの強大さと、その恐怖を。
『ウォォオオオオオオ■■■■■■■──────!!』
町を囲う防護柵、そして定期的に周辺のモンスターを駆除する警備隊や狩人達の日々の努力によって、町の人々はモンスターの脅威を殆ど知らずに生きてきた。その警備隊の者達でさえ、相手にするのはせいぜいがゴブリンやコボルトといった小型モンスターぐらいだ。
だがその日、天を裂く雷鳴と共に現れた
天を衝く巨体。人に似たシルエットは黄金の外殻に覆われ、20メドルを超える巨体を更に一回り大きく見せている。腰から伸びる長大な尾が大地を叩き、その振動は地震となって町を揺らした。
「なん、だ……あれは……」
夜の
小さな町だ。大きな建物などなく、遠くに屹立する巨体は誰の目にもよく見えた。
ゴブリンなどとはあまりにも規模が違い過ぎる。音に聞く
『オォ……オオ、ォォオオオオオ────!!』
巨人はまるで自らの巨体を誇るように見下ろし、狂ったように咆哮を上げている。森と町の間にはそれなりの距離が横たわっているにもかかわらず、その雄叫びは風圧すら伴って人々の肌を叩いた。
「モンスター……いや、巨人だ! 巨人が現れたぞ!」
「町のすぐ外だ! こっちに来るんじゃないのか!?」
「あんなデカいのどうしろってんだよ!?」
恐慌の波は燎原の火のように町中に広がっていく。
巨人出現時の落雷と爆発によって雨雲は吹き飛び、その巨躯は誰の目にも明瞭に映っていた。
雨もない。雲もない。夜闇を照らす月明かりによって人々と巨人とを隔てるものはもはや無く──
──緑色に光る巨人の
そうと認識した瞬間、人々の恐怖心は決壊し溢れ出した。
「逃げろ!」
誰かが叫んだ。
その一言を皮切りに、町の住民は雪崩を打って逃げ出した。ただ、少しでもあの巨大な化け物から遠ざかりたい。その一心で人々は無秩序な逃走を開始する。
たちまち町は人々の悲鳴で溢れ返った。赤子の泣き声、老人の呻き声、焦りに苛立つ男の怒号、はぐれた我が子を呼ぶ母の叫び。一瞬で地獄絵図と化した町の様子を睥睨し、悪魔の如き凶相の巨人は再び口を開いた。
『
口腔から覗く凶悪なまでに鋭利な乱杭歯。まるで地獄の入り口を思わせる恐ろしげな
そんな恐ろしい光景を目の当たりにした町の住民がますますパニックに陥る様子を眼下に、巨人は傲然と、本人的には呆然とその場に佇んでいた。
デバッグ不足甚だしいバグだらけのゲームみてぇな特典を貰った主人公ですが、これはあえてガバガバな設定にすることで最強系のチート設定を盛りやすくするという巧妙な作戦です。勝ったながはは。
あと主人公が座標で砂を捏ねて巨人を作ったシーンですが、あれはジャンプ系漫画で言うところの修行パートに当たります。もう終わりました。
苦労すりゃ偉いのか!? 長ったらしい修行パートなんざ今日日流行らねぇんだよ!(暴論)
等々、当小説は上記のクソみてぇな要素を多々含みます。しつこいようですが、苦手な方はご注意下さい。
導入はこれで終了いたしまして、次回からようやくオラリオに入ります。主人公の名前等の