入学筆記試験が終了した。
結果は上々で、約8割は取れたはずだ。
狙えば10割は取れたが、わざと俺はいくつか問題を空欄にした。
本当だよ?
「今から私の指示に従って順番に魔法を放ってください」
俺は現在筆記試験が終わったため、実技会場にいる。
五人一組でそれぞれ実議の教官指示のもと、魔法を放つらしい。
……あれ、一人足りなくない?
遅刻かな?
初めて見る普通の同い年の魔法、一体どのくらいだろうか?
俺はワクワクしながら同世代の魔法を見学した。
だが、その興奮は長く続かなかった。何故かって?レベルの低さにだ。
一人目、「はぁーー!轟かせろ雷鳴、駆け抜けろ雷速、全てを射抜く雷鳥を!ライトニングアロー」
……いや、鳥は?
気合いのわりに威力は弱く、結果は的に少しずつ傷が残った。
二人目
「雪精よ、我が問いに答え、顕現せよ!全てを凍てつく、刃とかせ!アイスニードル!」
二人目の男子生徒は何故かすごかった……演出だけ。
この場にいる受験生の歓声が響く。
だが、出てきたのは一本の氷柱、しかもそこまで大きくない。
結果は魔法はまとに当たらず、床に刺さった。
「…………次!」
試験官のおじさんもコメントしずらそうにしている
これ、俺もやらないといけないのだろうか?
見てる限りあの的は硬そうだ。
俺じゃー壊せん。何より、詠唱、やる流れになるかなー?
もしかして加点項目だったりして。
そんなことを思っていると、3人目が終了し、俺の番となった。
「うん?あなたは!」
「あ、あの〜なにか?」
試験官は俺の名前を確認した瞬間、驚きの表示前をした。
俺は思わず聞き返してしまった。
「いえ、あなたの事情は陛下から聞いています。今打てる最善の魔法を放ってください」
最善?全力を出せということなのだろうか?俺の全力なんざたかが知れてるだろうに。
「どうしたのですか?」
「なんでもないです」
詠唱はやめよう。恥を晒してまでやることはない。
ディスおじさんが何か言ったってことはある程度考慮があるのかな?
いや、考えても仕方ないな。
俺は少し考え事をするもすぐに切り替えて魔法の準備をする。
俺は的の前に移動し、魔法を発動。
選んだのは土魔法
俺の魔法は攻撃力が思った以上に低い。
でもそれは、即座に放つ魔法に限る。ならば強い魔法をするなら簡単、ためてから放てばいい。
しかしこれも例外が多すぎる。
炎魔法は溜めても威力が上がらない。水魔法は水体積が増えるだけ、風魔法は溜めても意味がない。雷は変わらない。
しかし、使えるものもあった。
それは氷と土である。
理由はこれらは時間をかけて貯めれば体積、強度を上げることができ、実戦では絶対に使えない代物だが、試験では使える。
ちなみに土魔法を選んだのは2番目の人と被るからだ。俺は土魔法で、長さ1メートル、太さは直径10センチくらいの棒をつくる。形はライフルの弾丸。
強度、そして形の生成。これにかかった時間は約15秒。
本当に実践では使えないなー。
そんなことを考えていると、周囲がざわついたが、俺は気にせず魔法を放った。
っとここで、ふと思う。
ごうには郷に従え……技名くらいは叫ぼうかな?
「バリスタ!」
そう叫びながら的に発射した。
結果は少しちがった。思っていた以上に威力があった。
俺のはなった魔法は的を貫通していたのだ。
合格は確定かな?
五人目はまだ来てないけど、まー前3人と変わりはないかな。
そう思い部屋を退出しようとした……が、
「遅れて申し訳ないで御座る」
ピンク髪、高身長そして武士口調、すごい特徴を持った青年が入ってきた。
「事情は聞いています。試験を実施しますので準備してください」
試験官にそう促されピンク髪青年は準備を始めた。
……可哀想に。俺の後だと霞んで見えてしまうな。
この時の俺は少々天狗になっていた。
同世代の魔法を見たが、良くて的に傷をつける程度。
それに比べて俺は見た目は地味だが、的を貫通するほどの魔法を使用。
俺はこのピンク髪の青年がどんな魔法を使うか分からないけど、どうせ大したことないなと思った。思ってしまった。
さてさて、お手並み拝見としようかな?
「行くでござる」
ピンク髪の青年はそう宣言し……え?
何故か上着を脱ぎ、上半身になる。
え?露出狂かな?それにしてもすげー筋肉!
ピンク髪の青年は身体能力を発動させそのまま的に向かう。
「ふんっ!」
ドカーン!パンチで的を粉砕した。
ピンク髪の青年の行動、パフォーマンス、これらは今回の五人の中で最も華やかで、素晴らしかった。
これはまさに鳥であった。
ジンを含めた4人は前座でしかなかったのだ。
ジンは今まで知り合いの中では攻撃魔法は最も劣っていた。
だからこそ今回の実技試験、前3人のレベルの低さから、ジンはずば抜けて優れていると錯覚してしまった。そして、天狗になってしまった。
その結果、出鼻を挫かれてしまった。ジンは規格外の力を持っている。
一分野だけなら、かつて魔法を極め「賢者」と呼ばれた老人、将来「魔王」と呼ばれるほどの圧倒的な魔法力を有する新たな英雄。そんな彼らすらも寄せ付けない圧倒的な力を持っている。
そんなジンでも今回ピンク髪の青年のスター性からしたら霞んでしまう、まさにモブキャラの1人でしたなかったとさ。
ピンク髪、高身長、武士言葉、上裸で的の破壊。
このキーワードからジンはある答えを導き出した。
こいつユリウスか!!
原作キャラであったことを思い出し、彼のスター性に1人納得し、自己完結した。
全ての試験が終わった魔法学院に教師達が集まっていた。
「それで、どうだったんだ賢者の孫たちは?」
「兄のシン君は凄いなんてモノではありませんでした。相当抑えて、本人は軽く撃ったつもりの魔法で練習場が壊れるかと思いました」
「弟のジン君ですが、なんというか平凡でしたね。別に優れていないというわけではないのですが、シン君と比べるとやはり劣ってしまいますな。無詠唱というところは同じですが、魔法発動から発射までに時間がかかっていました」
「そうか。でも、陛下からジン君は障壁魔法に特化しすぎていると聞いたが」
「判断に困りますな?」
「はい。筆記はどうなのですか?」
「シン君はほぼ満点、ジン君は……7割前後ですね」
「ここまで差が出てしまうと、何というか」
「はい」
「陛下からは何か他に聞いていないのかの?」
「はい。特には」
「手を抜いてる可能性は?」
「いえ、何とも言えません」
「「「はー」」」
教員たちは全員揃ってため息を吐いた。
「とりあえずシン君は首席確定。ジン君は、Sクラスに入れて様子を見ますか?」
「いいかもしれんが、私情を挟みジン君だけ特別扱いするのは学院としてまずいと思うがのう?」
「しかし、ジン君は賢者の孫です。本来の成績であるBクラスにおいてしまっては学院としての世間体が」
「うーん。そうじゃのう?」
学院長の老人は少し悩み、しばらく時間が経ち、答えを出した。
「ジン君は実技において的を貫通させたと聞いていたし、Aクラスに置いて、様子をみるとしよう」
「それが妥当でしょうね」
教員たちは悩んだ末、ジンはAクラスに決まった。
しかし、この決定が後日、のちに最良の選択となる。
教員たちは賢者の孫たちの結果を決めたあと、残りの受験生たちの処理にあたった。