俺がオーグ達のところへ着くとまずはマリアの安否を確認し安堵した。
ここまで来れば俺でもわかる。
俺にとってマリアはシンにとってのシシリーのような存在。友達思いで困っていたら寄り添ってくれる。俺が潰れそうな時も寄り添ってくれた。
認めよう。俺はマリアに好意を抱いている。
そう自覚したら今まで感じていた悩みが少し晴れた。
俺は自分の気持ちの整理が終わり周囲を見た。すると、少し落ち込んでいるシンが俺の様子を伺っていた。
どうしたんだよ?
「シン?」
「ジン……ありがとう」
シンは俺に一言感謝を言った。
気にするなよ。…そう励まそうとするも、俺はそれをいうのをやめた。
本来ならばそう言うのが適切かもしれないが、それじゃシンは納得しないだろう。
シュトロームとの対決。俺がいなければ死人が出ていた可能性がある。
まぁ、あんな場面実践経験があるじいちゃんでも対処は無理なのだが、シンは納得しない。ならば、俺がいうべきは。
「シン、何落ち込んだいるか知らないけど、気にしてもしょうがないだろ?流石に守りながら戦うなんてことはできない」
「でも……」
「人間は万能じゃない。欠点だらけだよ。そこは補っていこうよ。双子だろ俺ら」
「ジン……ありがとう」
その負担を分け合うことだろう。
アドバイスと提案。
進むべき方向や前向きになれるように思考を誘導する方が良いだろう。
塩らしいのはシンには似合わないしな。
それにしても結果はうまくいった。
シンの魔法後、爆発が起こったし、シュトロームは無事離脱。それに今回の戦闘で課題も見つかった。
俺自身強くならんといけないな。
帰ってから今後の方針を考えなきゃね!
「おぉ……魔人を、しかも理性ある魔人を討伐してしまうなんて……」
「ジン様とシン様二人協力されて倒されたぞ!」
「うぉぉ!流石は賢者様のお孫様たちだ!」
周囲がめっちゃうるさいんだけど。
……周囲の声聞いて今思うと緊急事態だったからって俺すごい目立っちゃったよ。
英雄はシンだけで十分なんだけどなぁ。
どうしよう?
「シン君!大丈夫ですか!怪我とか……壁にぶつかってましたよね!」
「ちょ、シシリー俺は大丈…夫……」
一体ばあちゃんに何を吹き込まれたのやら……。
シシリー、心配なのはわかるけどベタベタしすぎだよ。シンすごく戸惑っちゃってるよ。
俺はそんな二人に呆れつつ、周囲に視線を向ける。
やっぱりみんな生暖かい目で見守っていた。
「ねぇ、怪我とか平気なの?!」
後ろから俺の制服の裾をつまみながら話しかけてくる人がいた。
雰囲気関係なく心配してくれる人がいるんだな。嬉しくなり、振り返るとそこには……マリアが心配そうな表情でいた。
「?!」
「……どうしたの?」
俺はマリアを見た瞬間少し恥ずかしくなり顔を逸らしてしまった。
先程自覚したばかりだが……俺ってこんなにウブだったっけ?
「いや!大丈夫だから!それよりも怪我してない?」
「うん。私たちは平気よ。ジンが守ってくれたし……その」
「?」
マリアは恥ずかしそうにしながら少し間が開く。
気のせいかか頬を赤く染め何かを言いづらそうにしている。
「……ありがと!」
マリアは笑顔でそう言った。
……マリアまじ天使っす。
だが、この雰囲気はあまり続かった。
「すまないがいちゃつくのはそこまでにしてもらえないだろうか?話が進まないのでな」
「「「「……」」」」
オーグの冷静なツッコミにより、甘い雰囲気が途絶えた。
俺ら四人は恥ずかしさのあまり俯いた。
オーグの発言、今回は感謝しかない。
恥ずかしすぎて思考が回らなかったので、どう話を切り替えればいいのかわからなかったし。
まぁ、いいだろう。俺は思考を切り替え、現状把握のため周囲を確認すると、みんな呆れ顔をしていた。
……いやごめんて。
こんな命のやりとりをした後には似つかない雰囲気になってしまった。どうするんだよこれ。
だが、すぐに場の雰囲気は元に戻った、
二人の男が近づき、オーグに挨拶をした。
「ご無沙汰しております。アウグスト殿下」
「一体なぜこのようなところに?」
オーグに挨拶したのは騎士団総長ドミニク=ガストール、魔法師団ルーパー=オルグランドの二人。
「なに、学校帰りに友人と歩いていただけだ」
「危のうございます……お立場をお考えください」
二人は当たり前のようにオーグの心配をしているが、オーグは特に気にしてきない様子であった。
こいつ将来の国王だよな?
大丈夫かよ。一応、釘刺しておくか?
「オーグさぁ、二人の言った通り、少しは立場を自覚した方がいいと思うけど」
「む?……別に良いではないか?私だって自由にしたい時くらいある。それに今更ではないか?」
「そうだけど……」
「「はぁ……」」
だめだ。これは何を言っても効かないパターンだ。ユリウスとトールなんて声揃えてため息ついてるし。
まぁ、とりあえずこれだけは言っておくか。
「何言っても効かないだろうし、これだけは言っておくけど、出歩くときはなるべく俺かシンがいる時にお願いね。国内なのに今回のようなことが起きたんだから」
「心得ておこう」
まぁ、今はいいかな。
護衛の二人もため息ついてるし、放っておこう。
「まぁまぁ、そんなに気にするこたぁねぇと思うぞ。魔人を討伐しちまうほどの実力者が二人もいれば大丈夫だろ?」
「討伐……」
「シン」
ルーパーさんが俺の忠告を聞くも、軽くいなすように話しかけてきて、シンが呟き考え始めた。
確かに違和感を持つのもしょうがない。
シンの光線魔法は普通は爆発しないのだから。
俺はシンの名前を呼ぶも、なんと声を掛ければ納得してもらえるか分からず、考え始めるが、俺とシンの反応を勘違いしてか、ルーパーさんが話しかけてくる。
「なんだぁ?つかない顔してよ。魔人とはいえ人に手をかけるのは気が滅入るか?胸を張りな!君たちがいなければ確実に死人が出ていた。改めて礼を言うぜ。シン君…ジン君」
ルーパーさんは俺とシンを交互に見ながら礼を言ってきた。
俺とシンは嬉しくて少し照れるも、ひとつだけ言っておきたいことがある。
「「あの……逆です」」
「……あれ?」
ルーパーさんは疑問符をあげ、首を傾げた。
「あれ?髪が長い方が……シン君では?」
「ルーパー。髪が長い方がジン君だ」
「そうだそうだ。いやぁ、すまなかったな!」
……俺たち髪だけしか判断基準ないのだろうか?
ドミニクさんが、ルーパーさんを指摘し納得した。
「……ああ、自己紹介が遅れたな。私はドミニク=ガストール。ミッシェル様の後任の騎士団総長でね…将来楽しみな双子がいるとよく聞いていたんだよ」
「そうだったんですか」
「俺はルーパー=オルグラン。魔法師団総長だ。俺もジークフリートから話を聞いていたんだがな。……常識はずれな魔法を使う双子だとな」
ジークフリート?
……あぁ、ジークにいちゃんのことか。
そういえばそんな感じの名前だったような気が……。
てか、今ルーパーさんなんて言った?
常識はずれ?一つ誤解を解いておかないと。
「ルーパーさん、一つ誤解をしていますよ」
「誤解?」
「はい。常識はずれはこいつだけです」
「は?お前も同じだろ!」
俺のどこが常識はずれだよ!
しょうがない。口論だ!自分の非常識さを理解させてやる!
「いや、俺はごくごく普通の障壁魔法しか使えねぇよ!」
「何が普通だよ。絶対防御だろうが!」
「それ言うならお前の魔法なんか」
「……メリダ殿に報告」
「「……」」
オーグのやろう、こんな程度でチクろうとするなよ。
「オーグ、別に俺は喧嘩しているわけじゃない」
「そうだ!ただ、ルーパーさんが変な勘違いをしているから訂正しようとしているだけだ!」
「ふむ……」
俺、シンの順でオーグに文句を言い、何故かオーグは考え始める。
「ならばお前たち、先程使った魔法を説明してみろ」
「は?なんだよ急に」
「シンはともかく俺が言えることはないと思うんだけど。使ったのって魔力障壁だし」
「ならば、ジンは障壁魔法の感覚を言ってみるんだ」
いや、魔法の感覚って言われてもな〜。
なんて言えばいいんだよ。なんて答えよう。
「俺の魔法は太陽光を収束させて熱線にしたものを打ち込んだだけですが」
「太陽光?それで、あんな威力になるのか?」
ルーパーさんがシンの説明を聞いて、戸惑いう。
「太陽の光って一種類だけじゃないんですよ。いろんな種類の光の内熱を感じる光をイメージしたんです」
「「……」」
シンは当たり前のように説明した。
あはは。誰一人として理解してねーわ。
……そして、何故か俺に視線が向く。
いや、俺の話を待ってるのは分かるけど、どういえばいいんだよ。
「いや、感覚と言われても……。ただ、少し魔力を込めて障壁2枚貼っただけで、何も特別なことはしてないんだけど」
「「……」」
いや、そんな何言ってんのこいつらみたいな視線を向けないでほしいんだけど。
「オルグラン、ガストール。この双子が異常だと思ってくれて構わない。聞けば賢者殿にも理解できないことが多々あると言っていた。こいつらはおかしんだ」
「それは流石にひどくね!?」
「ほかに言い方ねーのかよ!」
オーグの補足説明に俺もシンも文句を言うも、周りを見るとこの場にいるみんなは納得していた。
ひどくね?
もう、この反応気にしてもキリがないと俺もシンも諦めため息をしたのだった。
その後はシンの叙勲についての話になり、勲章授与に箔がつくので、シンを少しからかってやったのだが。
「お前も叙勲式に出るんだぞ?魔人討伐に貢献したんだ。勲章授与されるのは当たり前だろ?」
オーグにそう言われて絶望した。
もう、考えてもしょうがない。
とりあえず、叙勲は受け入れよう。
ただの叙勲ではつまらないだろう。
まだ、俺からシンにお祝いをしていなかったな。
俺からシンに二つ名をプレゼントしようかな。
たしか、シンの二つ名「魔王」だっけか?
魔法使いの王様という意味。後でそれとなくオーグに提案しておこう。
それにカートとシュトロームの一件が終わった後、沈んでいた。何もできなかった自分に落ち込んでいたし。原作でも埋まらないシンとの差を気にしている描写もあった。
気休めにしかならないかもだが、同じ境遇に置かれた仲間として多少のアドバイスはしておこう。
「オーグ」
「なんだジン?」
「今日の夜少し時間作れる?」
「……何をしようとしてるんだ?」
「いや、そんなに警戒すんなよ!少し聞きたいことあるだけ」
「今ここではダメなのか?」
「まぁ、この場だとな」
俺はマリアを見ながらオーグにそういう。
そして、その意図を察してか、オーグは頷きため息をしてから話し始める。
「なるほど。やっと自覚を持ったのか。自覚するのに後1年はかかると思っていたんだがな」
「……鈍感で悪かったな。で、どうなんだ。時間作れるのか?」
「いいだろう、友人の頼みだ。……9時以降なら大丈夫だ」
「オーケー。その時間にゲートで向かうから」
「承知した」
話の目的としてはマリアのことじゃないんだが、今この場で思いつく言い訳はこれしかなかった。
とりあえず、約束を取り付けられた。
オーグはあまり周りに自分の弱みを見せたくないだろうし、二人で話せることになってよかったかもしれないな。
「はぁ…はぁ…はぁ。やはり厄介な存在ですねぇ。よもはここまで深手を負わされるとは……まぁ、お陰で良いデータが取れました」
シュトロームは一人、人気がない裏路地にいた。
咄嗟の判断により、命拾いしたシュトロームは呼吸を整え、今回の戦闘を振り返っていた。
「私の計画を指を加えて待っていると良いでしょう」
シュトロームはそう呟き、飛行魔法を発動させ、ブルースフォア帝国へ移動を開始したのだった。