シュトロームの一件から数日が経過した。
今日は以前予定がキャンセルしてしまったビーン工房へと向かっている。
メンバーは俺、シン、オーグ、ユリウス、トール、マリア、シシリーの7人。
トニーも来たがってはいたのだが、用事(女の子とのデート)が急遽入ってしまったらしく、来ていない。
本人は来たがってはいたらしいのだが、なら予定入れるなよと突っ込みたいが、それは本人の自由だ。
どうせ、今日はシンの新しい剣を作る依頼をするだけなので、本人は完成した日に来ると言っていた。
そして、残念ながら剣の先だけが取り外し可能なアイデアはすでにトニーが言ってしまったらしく、将来の収入源が消えてしまった。
どうにかして安定した収入を得る方法考えないとな〜。
「難しい顔してどうしたの?何か考え事?」
「ん?いや、別になんでもないよ」
考え込みすぎたか?俺の隣を歩くマリアから指摘されてしまった。
「嘘、眉間に皺寄ってるわよ。さっきからため息ついてるし。その……何か悩みあるなら相談乗るけど」
マリアは少し恥じらいながら提案してきてくれた。
それにしてもマリアよく俺のこと見てるなー。でも、お金儲けのための話なんてしたらお金の亡者みたいに思われたくないし、とりあえず誤魔化すかな。
「悩みというのはシュトロームの件か?」
「え?シュトローム?……どういうことですか、殿下」
どう誤魔化そうか考えていると後ろからオーグが真剣な表情で話しかけてきた。
近くにいたシンも腕を組み考え事をしていた。
タイミングいいし、それについても悩んでたことにしよ。
「先程シンから言われたのだが、シュトロームが生きている可能性がある。ジンも考え事をしていたしそのことかと思ったんだが」
「本当なんですか?でも、あの時シンの熱光線?……の魔法で倒してましたよね?」
「ああ、それなんだが、シン曰く、本来なら爆発はしないらしく、地面に窪みができるだけらしい。あの爆風が意図的にされていたとしたら……」
「シュトロームが生きている可能性があるってことなんですね」
オーグの説明にマリアは納得していた。
まぁ、完全に原作通りに進んでいるから生きてはいると思うけど。
とりあえず、ここまで話が進んで違いましたよとってなったら、雰囲気が悪くなる。
ここは流れに合わせよう。
「まぁ、概ねあってるよ。シンからシュトローム生存説を聞かされてたからね。今後俺もどう立ち振る舞いをすればいいか考えてたんだよ」
「やはりそうか」
俺の説明にオーグは納得した表情を見せる。
まぁ、これからシンの訓練が始まるし、みんなの強化はシンに任せればいいかな。
俺は自分に足りない面を補う訓練しなきゃな。
「「「「?!」」」」
ふと、何故かみんな急に寒気がしたのか、ビクッとしていた。
……もしかして。
俺は後ろを振り返り先ほどから黙っているシンを見ると、にやけながらみんなを見ていた。
あ、こいつ絶対何か考えてるな。
そう判断するのだった。
それから歩くこと、10分ほどで目的地であるビーン工房に到着をした。
到着すると、マークとオリビアが一緒にいた。
その二人から何か、察知したのかマリアとシシリーはオリビアを連れてお話をしに行った。
残りのメンバーは新しい剣の製作現場に立ち会った。
俺は親方さんに武器の製作の件のお礼をいい、この場に賢者の孫が二人、王子のオーグがいたことで一瞬腰を抜かしてしまうも、剣作りは順調にいき、また今度完成したら再度ビーン工房へ集合することになった。
そして、時が流れ、全ての用事が済んだ後、俺はみんなの目を盗みビーン工房の3階にあるアクセサリー売り場へと向かった。
行く途中、オーグからにやけながら見られたが、あいつには俺の心のうちを話しているので、気にせずに向かった。
オーグ曰く、貴族の女性に交際を申し込むには指輪を用意しておくのが効果的らしい。
ばあちゃんからのお小遣いもあるし、それ用の指輪買っておかないと。
「いらっしゃいませ」
3階に着くと、店員さんが出迎えてくれた。
「何をお探しですか?」
こういうのは自分で選んだ方が良いと聞くが、手っ取り早いか。
あまり時間かけると他の連中に何言われるかわからないし。
「女性へのプレゼントように指輪が欲しいのですが」
俺がそう言うと、指輪売り場に案内された。
一通り、見るも……何が良いのか全くわからない。
正直、どう選べばよいのだろうか?
誕生石でもいいのかな?
マリアの誕生日は確か……12月だったな。
俺はそう言った知識がないため、とりあえず専門の人に聞くことにする。
「あの、プレゼントってどう決めれば良いのでしょう?
「そうですね……誕生日やプレゼントされる方の特徴、性格を考え、願いを込めて渡す方が多いですよ。……よろしければプレゼントされる相手の方について教えいただけますか?良いものを提供できるやもしれません」
「わかりました」
店員さんに話しかけ、おすすめを聞いた。
特徴を言えば適切なものを提供してくれるか……。
マリアの特徴か。
「誕生日は12月です。…友達思いでとても優しい人で……怒るとすぐカッとなってしまう部分もありますかね」
「そうですか……」
店員さんは少し考えると、展示されていた中から一つ取り出して見せてくる。
「こちらなんていかがですか?」
「これは……」
店員さんが出してきたのは美しい青紫色が特徴の宝石が付いている指輪であった。
……これいいかも。
マリアにも似合いそうだし。
「これはタンザナイトという宝石です。気持ちを落ち着かせて、冷静な判断ができる力を与えてくれるといわれています」
「これにします」
俺は即答した。
これ、ピッタリかもしれないし。
その後は急いで包んでもらい購入した。
最後に店員さんから「婚約指輪ですか」と聞かれたのだが、好きな女性に告白するときの指輪ですと答えると、キョトンとしていた。
俺は気になり友人から貴族相手に交際を申し込む時には指輪が必要と聞いたことを言うと、「そんな決まりありませんよ!」と笑われた。
オーグのやろう、騙しやがったな。
ぜってーぶっ殺す。
俺はそう決意すると買った指輪を異空間収納にしまい、みんなの元へ向かった。
アクセサリー売り場を後にし、ビーン工房の入り口付近に向かうとみんなはすでに集まっていた。
……なんか、シンとシシリーの雰囲気が甘酸っぱくなっていた。
俺がいない数分に何があったんだよ。
とりあえず、簡潔に説明してくれそうなやつに聞くか。
「オーグ、あの二人に一体何があったんだよ」
「お、戻ったか、随分と長い用事であったな」
このやろう。
笑いながら揶揄うつもりか。
このやろうの策略に乗ってたまるか!
「なかなか出なかったんだからしょうがないだろ」
「そうか、なかなか決まらなかったのか」
……こいつ絶対わざとだ。
「そんなに睨むな。冗談だ」
「……まぁ、いい。で、何があったんだ?」
「それはだな」
オーグを睨み続けたら降参したのか、状況説明をしてくれた。
簡潔に言うとシンが紛らわしい表現でシシリーを悲しませたらしい。そして、そのお詫びにアクセサリーを買ってあげるんだとか。
「シンもバカだよな。あれだけわかりやすい反応すれば誰だって気がつくのに」
「ジン、お前……いや、なんでもない」
俺はシンとシシリーが上に向かうのを見ながらそう言うと、オーグが何かいいかけたが、気にすることじゃないな。
シンとシシリーはそれから30分ほどたち戻ってきた。
シシリーの右手の中指に指輪がはめられていた。
二人はお互いに顔を真っ赤にしていた。
なんで付き合っていないのか疑問に思うのだが、この場にいる全員それに触れることはなかった。
シシリーの周りにはオリビアとマリアが羨ましそうに見ていた。
「それにしても、あっさり指輪を買うとか……さすがだな」
「普通恋人でもないのに指輪贈るか普通……」
「お前らな……」
オーグ、俺と順にシンへ茶々を入れる。
普通ありえないわな。
と、ここでシンが何かを思い出したかのように俺にこの場にいる全員に聞こえる声で話しかけてきた。
「そういうジンこそ、上にいた店員さんから聞いたぞ!恋人に送るための指輪買ってたらしいじゃないか!お前だって人のこと言えなーー」
「おいバカ!」
俺は慌ててシンの口を塞いだ。
そして、周囲を確認するも……手遅れであった。
シンの発言はこの場にいる皆に聞こえてしまったらしい。
この場にいるもののみんなの視線が俺に向き、静寂が支配した。
そんな中、「え?…」と一人の女性の声がした。
俺は気になり声のした方向へと視線を向けると。
マリアが俺を見て、涙を流していた。
視線が合うと下に俯き右手で涙を拭いながらその場から逃げるように走り出した。
「マリア!」
シシリーはその場から走り出した親友を心配で名前を呼ぶも、マリアは止まることはなかった。
俺はどうすればよいのだろう。
答えを導き出せない。
「ジン!メッシーナを追いかけろ!」
「……え?」
頭が真っ白になってしまった俺にオーグは肩を強く叩きながら指示をしてくる。そして。
「今のメッシーナの反応をよく考えるんだ。とりあえずこの場で行くべきなのはお前だ!さっさといけ」
俺はオーグに促されるままにマリアの後を追った。
マリアの反応を考えろってなんだよ。
俺は考えがまとまらないまま、その場を後にした。
「あの……俺また何かやっちゃいました?」
「……今回のお前の言動は褒められたものじゃないが……まぁ、今回は褒めておいてやろう。よくやった」
「えぇ………」
オーグはシンの空気を読まない行動がきっかけでジンとマリアの関係が大きく変わることを予感した。
(何かきっかけがないかとジンに対して嘘の情報を教えていたが、まさかこんなことになるとは)
シンを褒めるべきか責めるべきか。
それはまぁ、後で決めればよいと結論づけた。
今は親友のジンがどのように行動するのか。
よい方向へ物事が進むことを願うのであった。
そして、元凶のシンは自分がやってしまったことを理解したのはジンとマリアがいなくなって少したとになるのであった。