オーグに促されるまま、泣きながら走り去るマリアの跡を追う。
マリアが走り出したあと、少し時間が経過していたため、見失ってしまった。
マリアが去った跡、すぐに追ったものの、大通りにはいなかった。
おそらく、走った方向は路地裏かもしれない。
俺は急いで見つけるため、魔力探知を発動させ、マリアの反応を探った。
「……こっちか」
魔力の反応がシンたちのいる方向を除いて1番強い反応を見つけた。
それほど離れてない。
おそらく裏路地に入った跡、歩き始めたのだろう。
人間何かショックを受けると一人になりたい時がある。
そういう時に人気のない裏路地はもってこいかもしれないが、多少なりとも危険は伴う。
なんせ、裏路地にはタチの悪い連中がいる。
シンが初めてマリアとシシリーにあったのも裏路地であった。
人気がないから普通に犯罪紛いのことをしても平気、そういう認識を持っている人間がいる。
俺はそう考えをまとめると、急いでマリアの元へ向かうのだった。
「……あれ?」
ふと、裏路地に入る寸前、マリアの魔力反応が大きくなった。
もしかして魔法を使ったのか?
……嫌な予感がする。
俺はそう思うと身体強化を発動させ、急いで向かった。
「おい!なんだよこれ!」
「くそ!硬いぞ!」
俺がマリアの元へ辿り着くと、筋肉ムキムキのチンピラ4人に囲まれていた。
だが、俺はその光景をみて、慌てるどころか安心した。
マリアはピンク色の宝石のネックレスに魔力を通して中心に3重の円結界が発動されていたからだ。
それは俺が王立魔法学園入学式でマリアに渡したものだ。
本当に渡しておいてよかったわネックレス。
念には念を入れておいて正解だったな。
「おい、これならいけるんじゃないか?」
「お!ナイス!」
「ぜってぇ、いけるって」
「おもっきりいけよ!」
俺が一人安心していると、チンピラの一人が鉄のパイプを手に持ち発言した。
そんな程度で壊せねーよ。
俺は内心そう思うも、目の前の光景を見ているのも心苦しかったので、撃退することにした。
異空間収納から胡椒の入った袋を取り出し、投擲した。
「ごわ!なんだよ……ハクシュ!」
「ゴホッゴホ」
「目に入った」
「鼻がいて!」
四名がそれぞれ違う反応を見せる。
先程鉄パイプを持っていた一人はそれを手放し腕で目を拭こうとしていた。
マリアは何が起こったのか分からずチンピラたちを見ていた。
「おい、何やってんだよお前ら」
俺は混乱している連中に声をかける。
「…てめぇの仕業か?」
男の一人が俺の方を見ながら青筋を立てながら言ってきた。
その声に反応し、他の3人も俺を見てきた。
俺は奴らを煽るようにして、返答する。
「そうだけど……何か問題ある?脳筋ゴリラさん」
俺の煽りに男4人はイラつきが増していき、顔を真っ赤にした。
「ぶち殺せ!」
「ゼッテー殺す!」
「この!」
チンピラ4人は怒りに任せて俺に同時にかかってきた。
計画通りにことが進んだ。
俺のこのような行動をしたのはわざとだ。
人間頭に血が昇ると思考が低下し、単純になる。
あえてこれを行ったのは俺が戦闘を有利に進めるためだ。
卑怯だとか騎士道精神にかけるだとか言われるかもしれないが、俺は気にしない。
だって、戦闘に置いてそんなこと気にしたって仕方ないからだ。
勝った方が強い。
勝負の世界は非道なのだ。
俺は勢いに任せて突っ込んできた連中に対して、拳で対応する……ことはなく、目の前に長方形の障壁をはり、壁を作る。
「ひ!」「で!」「ぶ!」「ぎぇ!」
チンピラ4人は同時に壁にぶつかり気絶した。
「……きたねーぞてめぇ。魔法使うなんて」
倒れても気絶していなかった一人が俺を見てそう発言していた。
はぁ、こいつは何言ってんだか。
「勝負の世界にきたねぇーもないんだよ。ばーか」
「ち……ちくしょ」
男は最後にそう言い残し気絶した。
俺は完全に気を失っていることを確認したら、未だに魔道具で障壁を張っているマリアの元へと向かった。
「「……」」
なんといえばよいのだろう?
俺のマリアはお互い無言になってしまう。
「マリア……その……大丈夫?……怪我とか」
「……」
とりあえずまず俺が初めに口にしなければいけないのはこれだろう。
だが、次は何を話せ場いいのだろう?残念ながら障壁のせいか、マリアの表情がわからない。
俺は言葉に詰まり、また無言の状態が続く。
それから数秒時間が経ち、マリアはネックレスの魔力供給を経った。
そして、大事そうに持っていたネックレスを首から取り、俺に渡してきた。
「……これ、返すね」
「……え?」
「私には必要ないものだから」
俺は戸惑った。
それはマリアにネックレスを返されたからではなく、マリアの顔を見たからだ。
彼女の目は少し赤くなっており、目元が少し腫れていた。
そして、ネックレスを返そうとする彼女は何かに区切りをつけるためにしている。
そう思ってならなかった。
それはシンの発言を聞いた直後のマリアの反応から。
勘違いでなければマリアは俺に好意を持ってくれている。そう考えれば今までの彼女の気になっていた言動が一致する。
よく俺の表情の差異を見抜いたり、常に隣を歩いていたり、俺の周囲についての女性の話が出たら敏感に反応したり。
考えすぎだと言われればそうかもしれない。俺がマリアに好意を持っているから自分の都合のいいように解釈しているだけかもしれない。
まぁ、色々と考えがあるが、一先ず今のマリアの行動に返答したいと。
「これはマリアにあげたものだし。別に返さなくてもいいよ。今みたいに襲われるかもしれないから持っていた方がーー」
「優しくしないでよ」
マリアは俺の言葉を遮るようにそう言い、話始める。
「せっかく気持ちの整理できそうだったのに。……これはもう必要ないから。お願いだから受け取って」
そう言ってマリアは俺の胸にネックレスを持って手を押し付ける。
俺は反射的に彼女の手を押さえる。
俺はそんな彼女が無理やり拒絶しようとしている行動に胸が苦しくなる。
マリアは俺の手に無理やりネックレスを持たせ、手を引こうとした。
が、俺はその手を離そうとせず、力を少しだけ込める。
「……なんで?」
マリアは振り絞るように声を出す。
俺はそんな彼女をこれ以上見たくなかった。いや、悲しそうにしている彼女を見たくないのだ。
好きな人には常に笑っていてほしいからだ。
まずは誤解を解かなきゃ。
「マリアさ……一つ誤解してるよ」
「……」
俺は泣きそうな彼女の手を握ったまま、異空間収納から先程買った指輪をとりだす。
異空間収納から出した指輪の箱をみてマリアは泣きそうな顔になったが俺は気にせずに話を進める。
「最初に言っておくけど、これプレゼント用で買ったものだけど、渡す相手恋人じゃないよ。てか、もともと恋人居ないし」
「……え?」
そう話を切り出すと、マリアは戸惑いの表情をみせる。
そして、過程を話す。
「これ、さっきオーグに騙されて買ったんだよ。その嘘に気づいた時にはもう会計だったから今さら取り消すのも店側に悪かったから買ったんだ」
「……殿下に?」
「そう、あいつひどいんだよ。なんて言ったと思う?」
俺はマリアの表情が少しだけ明るくなったのを確認しつつ、話を続ける。
「貴族の息女に交際を申し込むのに指輪が効果的って言われたんだよ」
「それってどういう……」
なんとなく意味を察しているのかは不明だが、マリアは俺の目を見つめていた。
そして、ここまで前置きをして俺は彼女に一番伝えなければいけない言葉を話し始める。
俺はマリア手を果たして深呼吸をする。
「これ、マリアに送るつもりで買ったんだ」
「うそ………」
マリアは両手で口元に耐えながら泣いていた。
そして、最後に気持ちを伝える。
俺は左手膝をついて、指輪の箱を開き中身を見せながらこう言った。
「好きです。俺と付き合ってください」
すると、マリアは両手を俺の手に置き、こう返した。
「はい」
俺は返事を聞いた瞬間、嬉しくなり彼女の顔を見た。
彼女は先ほどまでとは違い、満面の笑み泣いていたのだった。
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