マリアへの告白を成功に終わり、心配をかけてしまったみんなの元へ向かっていた。
恋人繋ぎで。
そんなマリアの左手の薬指には先ほど俺が渡した指輪がはめられていた。
現在、俺とマリアの雰囲気は初々しいカップルのようにギスギスしている……ことはなかった。
むしろ関係はいつも通り……いや、それ以上に遠慮が一切なくなっている。
マリアに告白成功した後は俺は言われるがままだった。
指輪をはめてほしいと言われはめたり、ネックレスをつけてほしいと言ってきたり、手を繋いでほしいだの。
……これはどう考えても甘えられてるな、うん。
でも、悪い気はしていない。
むしろ嬉しい。
今後、どんな関係を築いていくかは不明だが、良好な関係を築きたいな!
「あ、そういえば私ジンに言いたいことあったんだ」
「どうしたんだよ唐突に」
マリアからそう話を振られる。
「さっきのなに?あのチンピラの倒し方。かっこ悪すぎ。道具とか魔法に頼るとか卑怯すぎでしょ」
「うぐ……」
適切な指摘。
勝つために最善を尽くした結果なのだが、マリアに指摘されると後悔が残る。
あの程度の人なら魔法使わずに倒すのは簡単だった。
「助けるならシンみたいにカッコよく助けて欲しかったな〜。私の理想とは程遠かったな〜」
こんなことになるならカッコつければよかった。
「悪かったなシンみたいにじゃなくて」
「……ぶ!あははは!ジン拗ねてるの?」
マリアは俺の返答を聞くなり、笑い始めた。
そして、小悪魔みたいに、にやけながら質問してくる。
俺はそんなマリアを無視してソッポを向いた。
「冗談だから!拗ねないの。別に助けられる過程なんてどうでもいいもん」
「ならなんで言ったし」
マリアの反応に少しイラっときた俺はそう返した。
マリアは「それはね」と少し前置きをしながら話し始める。
「どんなジンでも大好きなことには変わりないって言いたかっただけだから!」
「……」
笑顔でそう言ったマリアに対して俺はどんな顔をしているだろう?
胸の内が熱くなるのを感じる。
「あ、顔真っ赤じゃん!ジンってわかりやすいんだね!」
付き合ってまだ数分。
マリアは完全に遠慮というものがなくなった。
いや、別に気を配らなくていい分、だいぶ楽なのだが、友達から恋人にシフトしただけで普通ここまで変わるのだろうか。
俺はその疑問が脳裏によぎるも、とりあえずそんなマリアに対して、「ばーか」と一言返したのだった。
「えっと……付き合うことになりました」
ビーン工房に待たせていたみんなに合流し、結果報告をした。
みんなの反応はというと……。
「「「「「はぁ」」」」」
「いや!なんだよその反応!もっというべきことあるだろ!」
やっとかよ。そうと言わんばかりにため息をされた。
しかも全員から。
その後マリアはその場にいたシシリー、オリビアに囲まれていた。
俺はというと。
「まぁ、細かいところは何も言わないさジン。今日はおめでとうと言っておこう」
「おめでとうございますジン君!」
オーグ、マークにそう言われた。ユリウスとトールは無言で頷いているだけだ。
そして、シンはというと。
「ジン、悪かったな。余計なことしちゃって……でも、大事にならなくてよかった。おめでとう」
今回の元凶は謝罪とお祝いの言葉をくれた。まぁ、結果はどうあれ結果はうまく運んだ。こいつが常識ないのは当たり前だししょうがない。
「大丈夫だよ。…でも、少しくらいは反省しろよ」
「ごめん、気をつけるよ」
シンは苦笑いしながらも返答する。
これで第一段階は終わった。
後は親御さんへの挨拶のみ。
これで無事に今日の用事は終了したのだった。
ただ、一つ俺はある決意をした。
それはシンに謝罪をされた後のこと。
「それにしても、ジンはマリアのこと好きだったんね。気がつかなかったわ」
それを聞いて男子勢は呆れてため息をした。
同時に俺はこう思った。
シンとシシリーがくっつくまでこいつの嫉妬心煽りまくってやろうと。
シンのKYの言動がきっかけだったことだし、あいつらくっつくまでやり返してやろうと。
そして、用事がすみ次第、今日は解散した。
ただ、こういう報告は親にはちゃんとしなければいけないな。
ということで、マリアに声をかけることにした。
「マリア、申し訳ないんだけど、今日少しウチ来れる?」
「別にいいけど……なんで?」
「なんでって……その……ばあちゃんとじいちゃんに報告したくて」
「……わかった」
マリアは顔を赤くして返事をした。
俺とマリアはみんなと別れた後、帰るとすぐにじいちゃんとばあちゃんに報告したいことがあると言って時間を作ってもらった。
もちろんシンがいない場所で。
現在、客間に俺、マリアそしてその向かいにじいちゃんとばあちゃんが並ぶように座っている。
俺は少し緊張するも、深呼吸をしてから話を切り出す。
「ごめんね、夕食前に時間作ってもらって」
「まぁ、いいさね。……それで、大事な話というのはなんだい?」
俺が前置きし、話し始めるとばあちゃんが代表して反応した。
そして、まぁ話は雰囲気的に察していると思われる。
ばあちゃんは真面目な顔をしているが、じいちゃんはにやけていた。
「その……俺たち付き合うことになった」
「そうかい」
ばあちゃんは真剣な顔を崩さなかった。
おめでとうとすぐに言ってくれるとばかり思っていたため、この真面目な雰囲気に少し驚いてしまった。
すると、ばあちゃんが話し始める。
「ジン、確認したいことがあるさね」
「確認?」
今更何を確認するんだろう?
「貴族の息女の交際する……その意味はわかっているのかい?……この子を幸せにする覚悟はあんたにあるかい?」
「もちろん。……何があっても俺はマリアを幸せにするよ。……俺はマリアを」
俺はばあちゃんの問いに即答した。
その後、俺が最もいうべき言葉を口にする。
正直恥ずかしい。
でも、これだけは言わなければいけない。
「愛しているから。今も……これからもずっと」
少し臭いセリフかもしれない。
まだあって数ヶ月、付き合い始めてまだ1日も経っていない。
関係もまだまだ浅く、お互い知らないことは多いと思う。
それでも、俺はマリアを誰にも渡したくないと思うほど彼女に惚れてしまった。
「……覚悟はできているようだね。……わかったよ」
俺の意思表示を聞くなりばあちゃんはため息をした。
そして、先ほどの真剣の表情とは打って変わって和むような暖かい表情をした。
「マリア」
「ひゃあ!」
ばあちゃんの表情が変わり、マリアを呼ぶと瞬間的に面白い返事をした。
俺は隣に座るマリアを見ると……何故か湯気が出るほど真っ赤であった。
そのわかりやすい彼女に自然と笑みが溢れる。
「……この愚孫をよろしく頼むよ。お前さん以外任せられないからね。今後、苦労することも多いだろうが、支えてやってほしい」
「?!メリダ様!頭を上げてください!」
ばあちゃんはマリアに向かって頭を下げた。マリアは慌てる。
そして、ばあちゃんが頭を上げることを確認後、マリアは姿勢を正し、真剣な顔でこう言った。
「メリダ様……ジンのことは任せてください!」
「頼もしいねぇ」
マリアのセリフ俺がいうのが正しいのかもしれないけど、何も言わなかった。
「ジン…マリア…おめでとう」
ばあちゃんは最後に祝杯の言葉をくれたのだった。
「やっぱりワシ……存在感ないのかのう……」
なお、あの場にいたにも関わらず、ばあちゃんに主導権を全て握られていたじいちゃんはマリアを家に送ったあと、悩んでいた。
もちろん真剣な話が終わった後、「おめでとう」言ってくれたものの、話に入れなかったのを気にしていた。
「「じいちゃん……がんば!」」
俺とシンはそんなじいちゃんに応援の言葉を言った。
明日はマリアのご両親に挨拶に向かう。
どうやら今王都にいるらしい。
気合を入れないとな!