マリアと恋人になった次の日。
俺はメッシーナ伯爵邸にむかった。
理由は言わずもかな、マリアのご両親の挨拶だ。
貴族の恋愛は平民とは全くの別物だ。
例えば平民同士ならば付き合う、別れるを繰り返しできる。
また、親の許可なしに交際も可能だ。
だが、貴族は違う。
貴族の恋愛は平民のそれとは真逆だ。
それに、付き合うことは結婚を視野に入れなければいけない。
なので、そう言った挨拶は早めにするべきだと思い、昨日の今日で挨拶へと向かった。
「ふぅー」
メッシーナ伯爵家の玄関前に着くと、深呼吸をする。
……結構緊張する。
今から娘さんをくださいと言いに行くのだ。
事前に内容はマリアからご両親に伝えてもらっている。
まぁ、紹介したい人がいるという内容だけだが、雰囲気から察しているであろう。
とりあえず、玄関に着く約束の時間ぴったりだ。
俺は覚悟を決め、家のベルを鳴らそうとして……
「おはよう」
ガチャとすぐにマリアがドアを開けた。
早くね?
もしかして。
「……おはようマリア……ドアの前で待機してた?」
楽しみすぎて眠れなかったのか?それとも緊張からか?
だっただろ?
「もしかして、緊張しちゃったかな?あはは!なんか意外だわ」
「意外ってなによ!ジンは私のことどういう風に思ってるわけ?」
どういうって……。
「緊張とは無縁の人かなぁ。なんか本番に強いタイプというか」
「はぁ……」
俺の発言にため息をするマリア。
だが、そのため息と一緒に何かを吐き出したような印象も受ける。
「もう、せっかくの緊張無くなっちゃったじゃない」
「……なんかごめん」
「なんかは余計よ……でもいいわ。お陰で落ち着けたし」
結果的によかったのかな?
緊張がほぐれたみたいだ。ちなみに俺も。
てか、ならなんで玄関で待機していたんだろう?
「とりあえず入って。私の部屋に移動するから」
俺はマリアに促されるまま、移動した。
いや、促されたとしても黙って入るのは気がひけるんだけど……。
が、そのことを聞こうとするも
「屋敷の人にはお姉様以外には今日のこと話してあるから安心して」
俺のことを察したのか、そう話してきた。
……何かいけないことでもあるのかな?
部屋に移動したあと、お茶が茶菓子が用意されいて、マリアは着くなり、お茶を自然のような流れで入れ始めた。
「……なによ?」
じっと見つめてしまっていたからか、マリアは目を細めて聞いてきた。
「いや、なんか洗練されてるなって思って。なんか意外で」
「意外って何よ」
失言だったな。
でも、こういうのは使用人がやるものだと思ってた。俺の家でもそうだし。
「私だって貴族の娘よ。嗜みくらいあるわ!」
「……そうなんだ」
残念ながらこういった貴族の常識は俺にはない。
マリアは俺の反応に小さくため息をして紅茶の入ったカップを置いてきた。
「どうぞ、お口に合えばいいのですが」
「ごめんて。知らなかったんだから」
「どうせ私は貴族らしくありませんよーだ。ふんだ」
どうやらマリアは結構根に持つタイプらしい。
マリアはそっぽを向いてしまった。
……どうやって説得したものか。
とりあえず、こういう場合は褒めればいいのか?
誤解を解けばいいものなのか?
「そんなに怒らないでよ。ちょっとした勘違いだったんだって。俺貴族についての常識ないし、紅茶を淹れるのっていつも家では使用人の人たちがやってくれてたから、自分でやってたのが意外で……」
「ふーん……」
めんどくせぇ。
マリアは俺の言い分を紅茶を飲みながら答えた。
……誤解を解くのは無理らしい。
なら次やるべきことは……。
俺はマリアが入れてくれた紅茶の入ったカップを手に取り、飲み始める。
「……美味しい」
素直にそう思った。
自分の家で飲む紅茶も美味しいが、これは何か特別な……今までとは何か違うような。
「そ……よかった」
……マリアは俺の反応を見てか、そう発言した。
先ほどまでとは拗ねている様子はなく、照れていた。
……もしかして、あの反応わざとだな。
少しかまってちゃんみたいな部分があるのかもしれない。まぁ、この場で指摘するほどではないので、わざわざ口には出さないが。
とりあえず、マリアの機嫌も治ったし、話を戻そうかな。
「なんで急にマリアの自室なんだ?普通なら直行で行くべきだと思うんだけど」
「それなんだけど……」
マリアは俺が本題を持ち出すと、前置きをして、説明をする。
「実は今日お姉様がまだいてね。話がややこしくなりそうだからまだジンのことお姉様には話していないのよ」
「え……お姉様に話してないの?重要なことだし、言っておかなきゃいけないんじゃ?」
マリアはため息し、話始める。
「今回の件を円滑に進めるためには仕方なかったのよ。まぁ、今日のジンについての話は大丈夫だと思うけど、少しでも不安要素をなくしておきたくてね」
「……君のお義姉さんは障害な何かなのか?」
流石にひどくない。
妹にここまで言われると可哀想になってくるわ。
マリアは俺の反応に呆れた様子を見せた。
「いや、何言ってんだこいつみたいな表情してるけど、わからないよ。説明してよ」
マリアは数秒考え、発言した。
「お姉様は未だに独身なのよ。もしも、ジンのことを知ったら嫉妬狂って邪魔をしてくるに違いないわ」
「……姉のことをなんだと思ってんだよ」
マリアは右手を握り確信を持つようにそう発言した。
流石にかわいそすぎるよ。
もしかして教えないつもりなの?
「……もしかしてずっと教えないつもりなの?」
「流石にそんなことないわよ。今回の件が全て丸く収まったら、報告するわ!……お姉様なんて思うかしら?自分の妹に先を越されたと分かったら……」
なんか笑いながらそう言ってるけどマリア君……原作だと行き遅れ寸前だったはずだよ。シシリーとオリビアを羨ましがっていた立場なんだなぁ。
まぁ、最終的に原作と違って一番最初に婚約したわけだが……。
もう、何も触れない方がいいかもしれない。
とりあえず今は挨拶のことだけに集中しなきゃな!