俺がマリアの自室に行ったあと、一時間ほどしてからマリアのお姉さんが屋敷を出発した。
その時間内は俺は再度、どのように頼むか。なんと話せば良いのかずっと考えていた。
だが、どんなに美辞麗句を並べたところで、それが通じるかどうか。
俺は口先なら巧く回るかもしれない。
それでも、娘をくださいというんだ。
ここは誠心誠意を込める必要があるかもしれない。
……土下座だな。
それが一番いい。
元日本人の奥義。シンもシシリーの婚約の時にそうしていたし、土下座した方が誠意が伝わると思う。
土下座
日本の礼式のひとつで最敬礼に類似するものだ。
深い謝罪や請願の意味を表す場合に使われる。
だから、今その時なのだ。
最上の礼を持って行わなければならない。
マリアの部屋を出た後、俺はマリアのご両親の待つ部屋へと向かった。
動中、どのタイミングですれば良いのか考えた。
考え続けた……続けた結果ある答えに辿り着く。
「ちょ!何やってるのジン!」
俺はマリアのご両親が待つ部屋に着き、目があった瞬間両膝をつけた。
マリアは突然の行動に驚いたのか、立つように促す。
だが、俺はそのマリア意思を無視するように、言葉を話し続ける。
「本日は時間をお時間を作っていただきありがとうございます」
そう前置きした。
この場にいる全員は俺の突然の行動に驚くも、黙っていた。
「……今日は御息女、マリアさんとの交際を許していただくため、ご挨拶させていただきたく参上しました」
俺は原作のシン同様、対面した瞬間、土下座をした。この行動でメッシーナ夫妻がどんな反応を示すのかわからない。
でも、これが最善だと思ったので実行した。
すると、俺に一つの足音が近付いてきてその人物は俺の肩に手を置いてきた。
……殴られるのかな?
「ジン君……だったね。君の誠意はわかった。とりあえず頭を上げてほしい。話ができないのでね」
「……はい」
俺は目の前の男性……茶色の髪に口髭を生やした男性、マリアのお父さんから立つように促され、土下座の大勢から立ち上がる。
「まずは娘の我儘に付き合ってくれてありがとう。話を聞いた時戸惑っとことだろう」
「ちょ、お父様……」
マリア父は微笑みながら話し、マリアは少し恥じらう反応を見せた。
「……まぁ、まさか連れてきた相手が英雄のお孫さんと聞いた時は娘が見栄を張っただけかと思ったが……」
「恋人ができないからってついにマリアが妄想癖に目覚めてしまったのだと思ったわぁ。……まさか本当だったなんて」
「もう!本当に信じてなかったの!」
「「だってねぇ」」
「ひどいくない!」
マリアのご両親って一体自分の娘のことをなんだと思っているのだろう?俺はメッシーナ一家のやりとりを見て呆れるしかなかった。
それから妙な雰囲気が続き、俺は何も言えずにいた。
「おっと、話が逸れてしまったね。それで、娘との交際の件だったね」
ふと、話の脱線に気がついたマリア父がそう前置きをした。
今のやりとりを見る限り交際は許してもらえそうだな。
俺は深呼吸し、マリア父の話を待つ。
「ジン君、娘が決めた相手だ。今更口に出すまい。交際の許可を出そう……と言いたいところなんだがね……」
マリア父は少し考え、どう話を切り出そうかと悩んでいた。
やはりか。
オーグから話を聞いていたので、想定内だ。
ここは自分から切り出すのが妥当だろう。
「……じい…義祖父と義祖母をお呼びした方がいいですか?」
「?!……そうしてくれると助かる」
「どういうこと?」
この場でこの件について理解していないのはマリアだけだろう。
正直俺も事前にオーグから聞いてきたかったら悩んでいたところだった。事前に知っていてからこそ考え、覚悟を決めることができた。
「今お呼びしますね」
俺は一人戸惑うマリアを放っておき、その場でゲートを発動させた。
「な!……なんだこれは!」
「これは一体……」
あ、やべ。
事前に説明するの忘れてた。
メッシーナ夫妻は驚くあまり困惑しており、開いたゲートの中からじいちゃんとばあちゃんが出てくるなり驚くあまり腰を抜かしてしまった。
出てきたばかりのじいちゃんとばあちゃんは何故腰を抜かして座り込んでいるのか分からず戸惑うというカオスな空間と化した。
そして、その後戸惑う俺をばあちゃんが見て全てを察した。
「ジン……あんた事前に説明はしたんだろうね?」
「え……いやぁ……それは」
今のばあちゃんは今までで一番怖かったとだけ言っておこう。
「少しは学習しなぁ、この愚孫!」
「グベッ!」
ばあちゃんにハリセンで叩かれた。
もう、本当にどう収集つけるんだよこのカオス。
ばあちゃんにハリセンで叩かれてから、メッシーナ夫妻が落ち着き、あの場にいたカオス空間が落ち着くまでに一時間ほどかかった。
落ち着きを取り戻してから、じいちゃん、ばあちゃん、俺、そしてメッシーナ親子が向かい合うようにして座る。
そして、お互いに自己紹介をした後、先ほどの件について話を始めようとしたのだが、そこでばあちゃんとじいちゃんが待ったをかけた。
それは前提で言っておかなければいけない話。
俺とじいちゃんは血が繋がっていないという話だ。
……原作ではシンとシシリーの婚約の件で同じような話をされたが、メッシーナ夫妻はどのような反応を示すのだろう?
ばあちゃんとじいちゃん、俺の3人は様子を伺う。
「それが何か?」
マリア父……ブラウンさんはばあちゃんとじいちゃんの話が終わったあと、開口一番に出た言葉がそれであった。
そして、
「マリアからジン君についての話を聞き、今日直接会って会話を重ねることで彼の誠実さをどれだけ娘を想っているのかを知りました」
「ジン君はマリアが見定め生涯を共にしたいと思い決めた相手です。私たち夫婦は二人の関係に口出しする気はありません。メリダ殿やマーリン殿が気にされているのは些細な問題です」
ブラウンさんは断言するようにそう言った。
マリアはブラウンさんの言葉に感動しており、ばあちゃんとじいちゃんも謝罪をしていた。
全てが丸く収まっ……てはいなかった。
まだ、根本的な問題が片付いたいなかった。
それを指摘したのは冷静にこのやりとりを見ていたもの。マリアの母……アリシアさんだった。
「あなた……一番重要なことを話してないわよ」
「……あ」
そう、一番重要な問題だ。
これを解決しないと本当の意味でマリアとの交際を許してもらえていないことになる。
「そういえば、あたしらが話を遮ってしまったんだったね。それで、その要件というのは?」
ばあちゃんが気を遣ってか、話を戻すように質問する。
「単刀直入に言いましょう。まだ確定ではありませんが、将来、ジン君にはメッシーナの姓を名乗っていただく可能性があり、それをご了承いただきたいのです」
そう。これが以前オーグから聞いてきた内容だ。
メッシーナ伯爵家には男児がいない。
そのため、将来的に婿養子を取らなければいけない。
まだ、マリアの姉のシェリアさんがいるが、いつできるかわからない恋人を待つことはできない。
伯爵を継承させるためにする手段の一つとしてブラウンさんは考えているだろう。
俺自身オーグからこの話を聞いた時少しだけ戸惑った。
それでも、将来マリアと結ばれるためには覚悟を決めなければいけなかった。
「なるほど、相続の問題だね」
「はい」
少しばあちゃんはブラウンさんの言った内容を察して要約する。
勝手に俺個人で覚悟決めちゃったけど、どう思ってんだろう。
「ジン、お前さんはこの件についてどう思ってるんだい?」
「俺はその覚悟はあるよ。以前オーグ……アウグスト殿下から詳しく聞いていたし、しっかり考えて決めたから」
「そうかい」
ばあちゃんは俺に確認するように真剣な表情で質問してきた。
俺はそれに対して思っていたこと、覚悟を伝えた。
「なら、あたしらは何も言わないよ。ただ、自分で決めたことだ。最後までやり抜くんだよ」
「え?いいの?」
「いいも何も、ジンの人生じゃ。わしらは否定せんよ」
「じいちゃん…ばあちゃん」
本当に俺は恵まれている。
二人に救われて、出会えて本当に良かったと思った。
その後は俺の婿養子についての話をした。
条件ってほどじゃないけど、学院卒業までにシェリアさんに恋人ができなかった場合、仮にできたとしてもシェリアさんが嫁いだ場合に婿入りが確定することになった。
婿入り後、俺はブラウンさんの元へ訪れ領を継ぐための勉強を開始する流れとなった。
高等経法学院に編入する案も出たが、それはマリアが俺の離れたくないという我儘で却下になった。
そのため、ある程度独学になるが将来のための勉強が大変そうだ。
オーグとの特訓、原作開始の対策、そして勉強。
やることが多くて大変そうだな。
それでもマリアとの幸せのため、努力し続けよう。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
メッシーナ親子の名前は適当に決めました。
原作には多分出てこなかったと思うんですよね。
父 ブラウン
母 アリシア
姉 シェリア