叙勲式から数日が経過した。
マリアの怒りを買ってしまった。
どうすれば女性の機嫌は治るのだろう。
何度も誠心誠意謝罪したとしても全く相手にされず、話すきっかけになるかもと話しかけてもダメであった。
これは叙勲式から次の日、一緒に登校するため、迎えに行った時のこと。
「おはようマリア!今日もいい天気だね」
「……」
「いやぁ、実は今日の朝屋敷の門見たら国民の人たちが押し寄せててさ!もしかしたらゲートで行くかもしれないんだ!」
「……よかったわね。モテモテで」
マリアは不機嫌になりつつもそう言った。
昨日あったことをよっぽど根に持っているらしく、話を聞こうともせず
まじでどうしよう。
これはシンがシュトローム率いる魔人に備えみんなを強化するため、究極魔法研究会の活動で魔力制御を教えようとした時、皆の魔法の認識を変えさせ、シンが教室内の魔力制御を行い、みんなが驚愕している時のこと。俺はシンのフォローに向かった時のことだ。
「みんなも戸惑うのは無理ないけど、努力次第で絶対上達するから」
俺は気にしているかわからないけど、念のためフォローした。
そして。
「大丈夫?」
「……」
「本当にあの時はごめんて。俺自身も困ってたことで……意図的なことは一切ないんだよ。それにマリアと話せないのはその……寂しいし」
「……ジン」
数日間の謝罪と誠意が実ったのか、ついに反応してくれた。
ああ、よかった。
これで一歩前進だな。少し時間が必要だが、マリアの機嫌も治りそうだ。
が、その安心も束の間であった。
「まじかよ。学院にも来てるのか」
「ん?どうした?」
それはシンが窓から外を見ている時、俺も気になり、外を見た時のことであった。
学院の門には朝同様、国民が押し寄せていた。
……しょうがないか。原作と同じ流れにする目的もあるし、提案だけしてみようかな。
「とりあえず、このままじゃみんな出れないだろうし、うち来る?多分じいちゃんとばあちゃんいるかもだけど」
これがいけなかった。
もう少し冷静になっていたらこんなことにはならなかった。
俺にとってじいちゃんとばあちゃんの存在は身近すぎた。そして、研究会のみんなには憧れの存在ということを失念していた。
「本当にいいの〜!」
「え、うん」
「うれしぃ!まさか導師様に会えるなんてぇ。ありがとうジン君!」
導師の熱狂的なファン、後に「導師の後継者」と言われるユーリに両手を握られ、そういった。
……うわ、距離近すぎじゃね?それに結構な質量……は!
気がついた時には遅かった。
マリアからものすごい殺気を感じた。
「ふん!」
「う……なんでぇ」
「知らない!」
マリアに腹パンされた。
本来なら魔道具が発動されているため、効かないのだが、何故かマリアの一撃は魔道具を貫通していた。
本当になんでこうなるんだよ。
機嫌がさらに悪化した。
これは帝国との戦争で学生が駆り出される考えが浮上していた時、みんなの雰囲気が暗くなっている時、俺はシンの言葉に続けて皆を励ました時のことだ。
「シンの言う通り、仮に戦争になったとしても戦争を始める元凶の国を俺は個人的に攻め込むと思う。……世界から恐怖の象徴になろうが、みんなを危険に晒すくらいなら喜んで受け入れるよ」
「……」
「だから、安心してよ。そんなに不安がることはない。ここにいるかけがえのない出会いの友人……そして、恋人は必ず守るから」
「……」
「だから……マリアも安心していいよ。不安がることはないから」
「……」
ダメであった。
一切話してくれずマリアは完全に無視された。「あっそ」の一言もなしだった。
そんな俺たちを見てか、みんなは先ほどに比べて雰囲気は良くなり、約一名笑いを堪えていた。
……げせん。
そして、マリアと仲直りするためご機嫌取りをし続ける毎日を過ごし、距離が縮むことなく時は流れた。
マリアとの関係改善できないまま、騎士養成士官学院との合同演習の日にまで続いてしまうのだった。
最後まで読んでくださりありがとうございました。