マスターデュエル
それは時代が生んだ新たなる闘争の形、
▽
(大ピンチだ……)
相手のライフは残り3000、そして場にはモンスターが一体。
対するこちらは伏せもなく、ライフは1000ポイント、風前の灯火だ。
「某はサレンダーをオススメします、君がこのまま殴られて負ける姿を見るのはあまりにも忍びない」
対面に立つ軍服姿の決闘者、ランカー常連の閃刀姫使い「レイセン」が軍帽を伏せ目元を隠しながら告げる。
「言ってろ……逆転の手段が俺にはある!」
こっちには潤沢な手札が残ってるんだ、ここから返す事は……可能だ!
「まずは手札のオッドアイズ・ペルソナ・ドラゴンとオッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴンでペンデュラムスケールをセッティング!」
デュエルディスクのペンデュラムゾーンにカードをセットすると、
「揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け光のアーク! ペンデュラム召喚! EXデッキより現れろオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン! そして手札よりオッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン!」
「ペンデュラムによる展開……しかし某のカガリの攻撃力は現在君のオッドアイズと同じ2500。相打ち狙いであろうとも削り切れんぞ!」
「それだけじゃないさ、なんたって俺の新しい切り札がご登場するんだからな!」
そう、今まさにEXデッキの中で「ニンゲンが我を扱うか、面白い」とか言ってやがるこのカード。そいつで逆転を決める!
「俺は場のペンデュラム・ドラゴンとペルソナ・ドラゴンをリリースし、EXデッキから特殊召喚を行う! 現れろ! 覇王眷竜スターヴ・ヴェノム!」
二体の虹彩竜を踏みつぶし、フィールドに毒の名を冠した紫竜が降臨する。その圧倒的な存在感に、使っている俺自身も押しつぶされそうだ。
(さあ、我の力を使ってみろ!)
「わかってるさ! 俺はスターヴ・ヴェノムの効果を発動する。1ターンに一度、自分または相手の墓地のモンスターの効果をコピーすることができる!」
この状況を打開できるモンスターはあいつしか居ない、墓地に置いたままで悪いけど力を使わせてもらうぜ!
「効果をコピーするモンスターは……俺の墓地のドラゴンメイド・シュトラールだ!」
(……え?)
何やらスターヴ・ヴェノムは困惑しているが何かおかしいだろうか。いやそんなことは関係ない、これが勝利に向かう最適解だからな。
「そしてバトルフェイズに以降! 俺はシュトラールをコピーしたスターヴ・ヴェノムでカガリを攻撃! 撃破だ!」
シュトラールをコピーして心なしかその太い脚や腕が艶めいたスターヴ・ヴェノムが相手モンスターを薙ぎ払い破壊する。
「くっ……カガリが破壊されたことにより、某は墓地からレイの効果を発動し蘇生する!」
「無駄だ! コピーしたシュトラールの能力を発動! 1ターン一度モンスターの効果を無効にする!」
「なんだと!
「そしてその効果の後、スターヴ・ヴェノムはEXデッキに戻りハスキーとなる! 現れろドラゴンメイド・ハスキー! そのままダイレクトアタックだ!」
愛用のシュトラールとハスキーの効果が決まり。フィールドには切り札であるドラゴンメイド・ハスキーが降り立った。美しい黒髪に太い尻尾、そして一つの乱れもないメイド服。俺の勝利の女神だ。
このままいけば勝利は確実。しかしなんだかハスキーの様子がおかしいような気がするが不具合でもあったのだろうか? このデュエルが終わった後に聞いてみることにしよう。
(な、なんだこの体は!? わ、我はなぜこのような女の……クソ、自由が効かぬ!)
ハスキーの咆哮がプレイヤーへ直撃し、ライフカウンターは0を指し示す。そして観客席の巨大電光掲示板に勝者、遊坂と表示された。
俺の……勝ちだ!
「バカな……某が負けるとは、どうやら修行不足だったらしい。いいデュエルだった」
「こっちこそ、いいデュエルだったぜ! またやろうな!」
俺はレイセンと熱い握手と約束を交わした後、マイルームへ戻ることにした。
▽
「貴様~~~!!! これは一体どういうことだ!」
マイルームに戻った俺を待っていたのは、美少女からの怒声だった。そんな怒られるようなデュエルしてないと思うけどなぁ。
ちなみにマスターデュエル内でのプレイヤーマイルームではデッキのモンスター達と交流したり、内装をカスタマイズしたりできる機能がある。
ある……のだが、目の前の少女はデッキに見覚えがない。
まず目につくのは艶のある紫色の髪、そして先端が硬質になっており赤い球が付いている尻尾に淡く輝く角。ドラゴンメイド達の制服であるメイド服に包まれたその体は出るところは出て引っ込むところは引っ込んでおり、美しいプロポーションを描いていた。
こんなドラゴンメイドは見たことも使ったこともないし、リストにも載っていない、だとすればここを訪ねた誰かのアバターだろうか、もしかしてファン?
「ええと、どちらさまでしょうか?」
「どちらさま、だと? 貴様! こともあろうに我を使い、あまつさえこんな姿にしておいてどちらさまと宣うか!」
我……? それにさっきまでって、もしかして。
「もしかしてお前、スターヴ・ヴェノムなのか!?」
「そうだとも!
こうして俺と覇王眷竜の奇妙な生活は、始まったのだった。