スターヴ・ヴェノムがドラゴンメイドになってしまってから数日が経過した。
運営へのお問い合わせしてみたけど未だ返信は無し、まあ数億人のプレイヤー達が世界中から集まるのだから対応が遅くなっても仕方がないとは思うけど……。
問題はスターヴがデュエルに出たくないと言い出したことだ。今週はもうデュエルの予定がないとはいえ来週までこれが続くと大会の予選に支障が出てしまう。
さてどうしたものか……。
「決闘者よ」
思案していると、向こうの方から話しかけて来た。自分の体から可愛い声が出ているのが恥ずかしいとか言って全然喋らなくなってたのに珍しい。
あっでも顔がちょっと赤いし俯き気味だ、正直めちゃくちゃ可愛いなこいつ。
「少し冷静になった、そして思いついたぞ。我が元の姿に戻る方法を……だから、なんだ。自分から言っておいて悪いのだが……」
一呼吸置き、俯いていた顔を上げこちらを真っすぐ見つめてくるその瞳に、吸い込まれそうになる。
「デュエルをしてくれ、そして我を召喚しろ」
▽
「俺は手札からオッドアイズ・フュージョンを発動! 相手の場にモンスターが二体存在し、自分フィールドにモンスターが存在しないためEXデッキのオッドアイズモンスターを素材にすることができる!」
スターヴ・ヴェノムが提案してきた内容は、要はデュエルでシュトラールをコピーしたから女の子の姿になったのだから、デュエル中にもう一度自分を召喚すれば元の姿のまま出てこられるのではないか? という内容だった。
確かにあれ以降一度もデュエルをしていなかったし、可能性はある。でもそんな上手くいくかな。
何にせよイチかバチか、ここまで来たらやってみるしかない。
「現れろ! 覇王眷竜スターヴ・ヴェノム!」
「貴様ー!!! 女の姿のままではないか!」
バチだった、それはもう見事な美少女メイドのスターヴ・ヴェノムが降臨してしまった。
当の本人はめちゃくちゃ不服そうな顔、というよりは怒っているのだろうか。誰に……俺か、それとも軽はずみな提案でデュエルに出て来た自分自身か。
だが一度始まったデュエルは最早止めることはできない。
「俺はスターヴ・ヴェノムの効果を発動! 墓地のシュトラールの効果をコピーする!」
「またこの流れか貴様ー!」
「仕方ないだろ相手の効果が怖いんだよ!」
凄い抗議の目を向けられているがこればかりは仕方がない、モンスター効果も伏せカードもどっちも怖いんだから。
「バトルに移行! スターヴ・ヴェノムでグレイドル・アリゲーターを撃破だ!」
「くっ……でも破壊されたことによってグレイドル・アリゲーターの効果を発動させてもらうのよさ」
「コントロール奪取はマズいな……コピーしたシュトラールの効果を発動してその効果は無効だ」
前回ハスキーと交代したのが原因であの姿になったからか、スターヴ・ヴェノムがものすごく嫌そうな顔でこっちを見ているが関係ない。この局面でコントロール奪われたら負け確定だっての。
「なら罠カード、砂塵の大嵐を発動するの。厄介なドラゴンメイド・リラクゼーションとアークペンデュラム・ドラゴンを破壊するのよさ!」
相手の発動した罠のエフェクトにより、フィールドには二つに嵐が吹き荒れている。プレイヤーに届くことは無いとはいえ、迫力が凄い。
「きゃあっ!」
突如、フィールド内には悲鳴が響き渡った。誰の?
そんな事はわかり切っていた、フィールド内に女の子は一人しか居ない。それにしたってモンスターに効果が及ばないのに何故? というか今の悲鳴が可愛過ぎる、お前あんな声も出るの……反則。
スターヴ・ヴェノムの方を見ると、白い何かがふわりと揺れていた。
あれはなんだ? そう、ハスキーさんと同じ白いエプロンだ。それが嵐によって舞うということは、必然的にメイド服のスカートも風で……。つまり、その下にあるものも、見えてしまうわけで。
──紫だった。イメージカラーと同じで、とても似合ってる。
「~~~~~~!?!? 貴様!」
「見てない! 見てない!」
ホントは見たけど、正直に言っても相手を傷つけるだけだろうし。後が怖いので嘘をつくことにした。
少しだけ、心が痛んだ。
▽
あの後、抗議の目に耐え続けながらもデュエルに勝利したがスターヴ・ヴェノムはついに部屋から出てこなくなってしまった。
他のドラゴンメイドとの顔見せ……というか、同じデッキの仲間たちを紹介しようかと思っていたのにこうなったのは誤算だ。
「もう無理だ……我は人前には出れぬ、あのような辱めを……」
相当落ち込んでいるらしい、どうにかして元気付けてあげたいが……。
もう少し後に提案するつもりだったし、正直この状況で提案することじゃないと思うけどやれることは全部やっておきたい。スターヴ・ヴェノム自身が戻りたいって言ってるんだし。
「そのままでいいから聞いてくれ、色々考えたんだけどいい案が浮かんだんだよ。きっと元に戻るのに一歩近づくと思うしさ」
「我が恥ずかしいようなものはもう嫌だぞ……」
「そんな恥ずかしいことじゃないって、ただ……明日にでも一緒に市街地エリアに出かけてほしいというか。要はデートしてほしい」
「人の話を聞いていたのか貴様は!?」
名案だと思ったのにめちゃくちゃ怒られてしまった!