マスターデュエルでランクマ潜ったりしていました。この小説を書くきっかけになったオッドアイズとドラゴンメイドの混合デッキでプラチナ5までは到達できましたがプラチナ帯の層、とても厚いですね……
スターヴ・ヴェノムのパンチラ事件から一日後、デートの提案に対しては色々言われたけどなんとか了承してもらった。
現在はマイルームでハスキーさんに「女の子のお出かけには準備が必要ですからね」と言われて半ば強制的におめかしされているらしいスターヴ・ヴェノムを待っている。
それにしても昨日思いつきで計画したことなのにそこまでやってくれるなんて流石できるメイド長……デュエルだけじゃなくてこんな時に頼りになるなんて足向けて寝れないな。
「お待たせいたしました、ご主人様」
ハスキーさんが奥の部屋からスターヴ・ヴェノムを連れてやってくる……が、恥ずかしがりやの子供のように後ろに隠れてしまっているらしい。
しかしそんな抵抗も虚しくハスキーさんに前に出るように促され、渋々と言った様子で一歩、二歩、前に出てきた。
「き、今日はよろしく頼むぞ。決闘者よ」
少し頬を赤くしてこちらを見つめてくるスターヴ・ヴェノム。服装はいつもと変わらないメイド服だけど。いつもよりも少し大きく見える目、艶のある唇。そして薄い香水の匂いがした。
メイクなんか……って、こういう言い方は良くない、ハスキーさんがやってくれたんだし。
でも、メイクでここまで。元から可愛いとは思っていたけどこんなに魅力的になるなんて。
危ない、これがスターヴ・ヴェノムで、元の姿に戻りたいと思っている一人のドラゴンだって知らなかったら。
……一目惚れ、していたかもしれない。
「何を呆けている、貴様が言い出した事だろう、今日は徹底的にエスコートしてもらうからな」
「お、おう……任せてよ、楽しいデートに、それに、元に戻る為の糸口も見つけるからさ」
いけないいけない、今日のデートは俺から言い出したんだし。しっかりしないとな。
「それではお二人とも、いってらっしゃいませ」
「うむ、行ってくる」
「行ってきます、ハスキーさん」
▽
スターヴ・ヴェノムと二人並んで人通りの多い市街地エリアを歩く。手は繋いでいない、というか会話に難儀しない程度の距離ではあるが、少しだけ離れていた。
「それで、貴様の言う考えとは本当に効果があるのか? いささか消極的……というか情けない策のような気がするが」
「いやまあ、それはそうなんだけど。なにもデュエルだけが注目される手段じゃないしさ」
俺の考えた作戦はこうだ。
運営にメールを送っても対応してもらえないのなら、目立って目立って認知してもらおうという手だ。
ドラゴンメイドになったスターヴ・ヴェノム。当然ながらそんなモンスターは本来存在しないし、とびきり可愛いと来ているのだから人に見える場所に出していけば必ず話題になる、ならないはずがない。
そうなればデュエルのリプレイや誰かが撮った写真なんかがSNSでバズり運営の目に留まる、間違いない。
「しかしな、我を扱う決闘者なのだからデュエルで名を挙げてお前を元に戻してやる。などと宣う甲斐性くらいはあっても良いのではないか?」
「勿論デュエルで負ける気もないさ、近いうちにデカい大会もあることだしそこで優勝すれば運営も動いてくれるって」
それに最悪、その大会に流れている噂が確かならばどちらにせよスターヴ・ヴェノムは元に戻れるはずだ。
「それにデュエルの腕前だけが有名になる近道でもないんだぜ? この前戦ったレイセンさんはよく閃刀姫の二人とデートしてる画像がバズってるし、それにほら、あそこ見てみてよ」
スターヴ・ヴェノムの視線を促した先はカフェの一角。そこの机には大量のスイーツと、マドルチェモンスター、そしてレビューをしながらもそれを食べ続ける身なりの良い少女が一人。
「彼女、バーチャルドカ食いデュエリストで有名な人なんだけど。実力は中堅でも知名度はトップ層に劣ってない。その理由はもちろんあの活動のおかげなんだよ」
まあ本人がガチのお嬢様だとか、レビューの正確性だとかそういう要素はあるにせよ。決闘だけで認知度や知名度は決まらない、という事だ。
「まあそういう事なんだけど……聞いてる?」
「む、あ、ああ、聞いておったぞ。それでスイーツがなんだったか?」
あっこれスイーツ見てから先は聞いてないな。でも甘いもの好きなのか、可愛い。
「俺達も何か食べてく? せっかくデートなんだし」
「う、うむ、貴様が食べたいと言うなら食べるぞ」
……
「これがクレープか、ハスキーから聞いてはいたが。これは……思ったよりずっしりとしているな」
スターヴ・ヴェノムが注文したのはこの店自慢のフルーツがたっぷりと入ったクレープだった。そういえばハスキーさんも好きだって言ってたし、事前に聞いてたのか。
「中のアイス溶けちゃうし早く食べちゃいなよ、手が汚れると大変だし」
「う、うむ……では」
恐る恐る、と言った様子で一口齧るスターヴ・ヴェノム。お口ちっちゃくて可愛いな……。
「うむ、うむ! 美味いな!」
「ならよかった」
それを見届けてから俺も自分の目の前にあるケーキ……スイートミルクアップルパイ~とろけるハニー添え~を一口食べる。
ミルクのコク、リンゴの甘さ、そして蜂蜜の甘さ。種類の違う三つの濃さが舌の上で融合召喚、そしてそれをベリーの酸味が引き立てている。
流石甘党デュエリスト御用達のケーキとは聞いてたけどここまで凄いとは……ちょっとハマるかもしれない。
味の余韻に浸った後、スターヴ・ヴェノムの方に視線を向ける。
初めてのクレープがよほど美味しかったのか、目を輝かせながら急いで食べている。こういうとこ見てると普通の女の子にしか見えないよなぁ。
あ、ほっぺたにクリームついてる。
「スターヴ・ヴェノム。クリームついてるよ」
「む、すまぬ」
指でクリームを拭ったけど、どうしよう。自分で食べたらなんか、関節キスみたいにならないかな……今の美少女姿のスターヴ・ヴェノムと関節キス。
やばい、意識したらなんか凄い恥ずかしくなってきた。というか今のこの行動も結構恥ずかしくないか?
「はむっ」
などと考えながら、行き場を失った指を硬直させてると何やら湿り気と温かさが。
この感触は……一体……。
「ん……チュパ……レロ……」
スターヴ・ヴェノムが。俺の指を、舐めて。
えっ何故というか口の中やわらか……あったかい……じゃなくて、えっいやこれはダメだろ、いけない。これはいけない。
だんだんと顔が熱くなっているのを感じる、というか目立てばいいとは言ったけどこんな事で目立つのは非常にまずい気がする、本当に。
でも不思議と指を引き抜こうという気にはなれなくて。も、もう少しくらいなら……。
「ふぅ」
「あっ……」
ゆっくりと指から口が話される、自分の口からなんだか名残惜しそうな声が出てしまった。いや名残惜しいとか全く全然思ってないが。そんな、スターヴ・ヴェノムにも悪いぞこんな事を思うなんて。
「うむ、実に美味かった」
とかなんとか満足げな顔で言ってるし、当たり前だけど向こうは何も意識していないらしい。というか食い気が凄いだけみたいだ。
「どうした? 決闘者よ」
きょとんとした顔でこちらを見つめてくるスターヴ・ヴェノム。
……ダメだ、どうしてもさっきの事を意識してしまう。さっきまであの口で
「い、いやなんでもななない、次どこ行こうか。映画とかゲーセンとか……デュエルでもいいけど」
「む、ならば我は映画とやらが気になるぞ」
見ることになった映画は、最近話題の人間の住む世界とモンスターが住む世界を行き来できる少年の冒険デュエル活劇だ。評判がいいしいつか見ようと思っていた作品だ。しかし──キャラメルポップコーンを食べるスターヴ・ヴェノムの唇ばかりに目が行ってしまい、それどころじゃなかった。
デート終わってから、というか明日以降もデュエル中も、俺はどういう目で彼女を見ればいいのか。自分でもわからなくなっていた。