FAIRY TAIL~悪魔と魔導を歩む者~ 作:bit流れ星
「退屈な毎日だ・・・」
青年、ロウガン・ロックハートは20の歳になった頃から不老の身になった。これはロウガンの父。バレット・ロックハートが禁忌、悪魔契約を行ったためである。親であるバレットは力と引換にその命と魂が食われ永遠に無の世界を廻ることになった。母もやがてこの世界を去り。一人となったロウガンは長い時を生きることになる。その長すぎる時間の中で感覚が鈍り、もう何年生きたのかもわからなくなっていた
次第に親しい者たちが次々にいなくなっていく孤独と変わらぬ毎日に絶望したロウガンは今自殺しようとしている。悪魔契約を行った父。その子は呪いを受け永遠の時を彷徨い自らの意思で死を迎えることはできない。一時は他者に殺してもらうことも考えたがそれも自分の意思とされ許されぬことなのだと忠告を受けた。だが、ロウガンはもうどうでもよくなっていた
「どんなコトが起こるのか・・・ハハッ。今はそっちのほうが興味がある」
乾いた笑いをこぼし片手に持ったナイフを自分の胸に突き立てようとした時、突如足元に魔法陣が現れそれから現れた鎖に体中を縛られ身動きがとれなくなる。
地面から柩が出現した。逆さ十字の施された綺麗な装飾の柩だ。棺の中に鎖が引っ張られロウガンの体が引きずり込まれていく
空中に古代魔法文字があらわれる
【禁忌を犯した者には苦痛の眠りを】
頭の中にイメージが流れる。そう。これは今まで触れ合ってきた人々の顔。そして、その面々が死に行く姿。そう苦痛の眠りとはその者が一番心を痛める過去を繰り返し思い出させては忘れさせる。繰り返し行われる苦痛、覚めぬ悪夢
それが禁忌を犯した者の罪である。ロウガンは薄く笑うと静かに目を閉じた
あれから月日は流れた。少女ミラジェーンが初めてのクエストに出た時にそれはあった。とある廃墟にあった棺。少女は気まぐれでその柩を開ける
見た目とは反して重厚に見えた扉は重さを感じさせないほど簡単に開いた。棺は塵となって消えて代わりに中から青年が出てくる。眠っているのだろうか
目にかかるくらいの黒髪にどことなく神秘的な雰囲気を持つ不思議な力を感じさせる
少女は青年を放っておくこともできずにギルドに連れて帰ることにした
これがロウガンを変えることになる出会いだった
ミラジェーンは少し昔を懐かしみながらロウガンを見る。目覚めたばかりのころは亡者のような顔をしていたが今では綺麗に笑うようになり、ギルドの中でもその人柄から人望も厚く実力も高い。小さな魔導士たちは皆憧れる存在だった
でも、皆に囲まれて笑っていても一瞬。普通なら気がつかないような刹那にロウガンは切ない表情を浮かべることがある。それはきっと彼が不老だということと関係があるのだろうか?あれから数年経った今も彼の姿は変わらぬまま
悪魔魔法という特異な魔法を扱うロウガン。でも、それを見たことは一度も無い
聞いた話では魔銃と呼ばれる魔力で生成される銃を媒介にして発動するらしい。ずっと気になっていたロウガンの魔法が見れるということでミラジェーンは高揚していた。今回はリサーナ、エルフマン、ミラジェーン、エルザ、ロウガンの五人でのクエストになる。クエスト内容は村に住み着いた魔物を討伐するというものだ
ミラジェーン、エルザ、ロウガンは二人の付き添いという形での同行になる。ギルドの仕事にも慣れてきた二人がもう一ランク上の仕事を請け負うことになった。三人はその様子を見守るというものだ
なんでもリサーナはロウガンに成長した所を見てもらいたいらしく、今回は張り切っていた。エルフマンも男を磨くためにと張り切っていた
エルザもロウガンを尊敬している
ロウガンは決まって背伸びをしようとする子供の頭を撫で、時には褒め過ちを犯そうものなら本気で叱り、本当の兄のような感じだ
最も、そう感じていないものもいるようだが
五人は意気揚々と列車に乗る。この後に悲劇が待ち受けているとも知らずに