キャプテンアメリカ~オラリオ・ミィス《神話》~ 作:Rogers
「誰か助けてっ!」
数軒の家が火の海に包まれその外から一人の女性が懇願するかのように助けを求めていた。
その原因というのも何処かの工場がイヴィルスによって大炎上を起こし、その影響は工業区付近の家々までに飛び火してしまったからだ。
「私の
少し離れたところでその様子を見守ってしまう避難してきた者や野次馬たち。彼らは恩恵を持たぬ一般人、助けようにも非力なせいで助けることも叶わない。しかし、消防団員やガネーシャ・ファミリアに応援を頼もうにもそこからだとあまりにも距離があり過ぎる…
しかし、こういうことはもう何年もあったことなのだ。治安の悪化が進んでしまったオラリオでは…
引っ越そうにも夫もしくは妻は出稼ぎに行っていて、なけなしのお金を生活費に工面するだけで精一杯…
市井の人々はそれが理由で残っている者が大半なのだ。
しかし、ただ無力に思って諦観している者たちを押しのけて炎の中に飛び込む男が一人。
彼らには金髪の頭部と茶色いジャケットを羽織った男が見えたという。
数刻後、燃え盛る家々から倒壊しかけた建物の木枠を突き破って男は少年を抱えて出てきたのだ。
「よく頑張ったな、偉いぞ」男は少年に激励を送る。
そして母親は泣きながらも愛する我が子に抱きつき無事を確かめ合ったのだ。一足遅くに消防団員が到着し消火活動を行った。彼らの到着を待っていたら、少年の命は天界に還っていただろう。
しばらくしてお礼を言おうと母親は辺りを見回した。しかし、助けてくれた本人は何処かに消えてしまった。
お金が目当てではなかったのだろうか?そんな無償の善意があったんだと気づくのはだいぶ後になってのことだった。
「ありがとうキャプテン、私たちも最善を尽くしていたが別件で彼らは数十キロ先の消火活動にあたっていた、君がいてくれて助かったよ」
「そんなことはないよフィル、君が迅速に消防団員たちに連絡してくれたおかげでこれ以上の被害は防げたんだ」
彼は少し困った顔で返す。
「君はまだ目覚めて2週間ほどしか経っていなのに…飛び出して人助けとは…」
一種の尊敬を込めた独り言を呟く。
「“エージェント・フィロクテテス”本部で調査報告を確認するようにと」
さり気なく近づいてきた女性がフィルに声を掛けた。
「すまないが、用ができてしまった。キャプテン・ロジャース、またの機会に」
彼はSHIELD本部に戻っていった。
スティーブはしばらく街中を歩いていると、
「あら、ごめんなさい、大丈夫?」不意に籠を持った神物とぶつかってしまった。
「あぁ、こちらこそすまない、僕のほうが不注意だった」
彼女たちはそのまま何事もないままそれぞれの目的地に向かった。
彼は知る由もないが実は、
彼女はこれから、友神である
SHIELD本部 ロケーション:機密事項
「マリア、突然の呼び出しということはイヴィルスの情報が手に入ったということで?」
本部に到着するなりフィルは副官のマリアに尋ねた。
「えぇ、ガネーシャ・ファミリアからの情報が入った…ブラックマーケットでは『大聖樹の枝』の取引、そしてどうやらイヴィルスが工場から盗んだものは『激突装置』だったみたいね。」
「…」
「つまり、魔石灯や魔石製品などにコアに使われるスイッチよ」
「いや、それは分かっているが…あの芝居がかった下手な演技でよく2つのファミリアが我々に情報を提供してくれたと思ってね」
フィルは微笑みながらあの夜のことを持ち出した。
「だって仕方がないでしょ、私たちの存在を認識して完全な信用を得るためには彼らの主神からの言葉が必要だっただけよ…
それにこのご時世、連携なくしてオラリオを守れたためしはないし」
努めて冷静に対応する素振りは見せていたが彼女はわざとらしく演技を下手に見せていたようだ。
そういうことにしておこう…
「冗談はこれくらいにして…彼の調子はどう?」
マリアはスティーブ・ロジャースのことについて尋ねる。
「彼か―驚いたよ…彼から見て世界が大きく変わったはずなのに、おそらく知り合いも全員いなくなったっていうのに、この時代に驚くほど順応している、それに、このオラリオの現状の複雑さにも気づいているだろうね…マリア、キャプテンにこの調査の協力を打診すべきだと思うんだが」
「長官の許可がいるでしょ」
「確かにそうだが…長官は今どこに?」
祈禱の祭壇 ロケーション:ギルド地下
ギルドより繋がる地下の先は石造りの広間、古代の祭壇には大きな石の玉座に腰掛けている大神ウラノスとその壇上の下に眼帯を付けた男、SHIELDのフューリー長官がいた。
「ようやく、完成か…」ウラノスがため息をつきながら呟く。
「あぁ、再構築に8年の歳月を費やした」
ゼウスとヘラの崩壊は想定外だった
―まさか、三大クエスト2つを踏破した彼らが黒龍に負けるなどと誰もが当時驚愕したものだ。
「私は、ほとほと呆れている ウラノス、あなたたち神々の享楽と傲慢さに」
同時に自分たち人にも。いつの時代も利益、利権と争いごとにはどんな形であれ戦争という手段が付きまとう。
競争相手を創ることは決して悪いことではない。それによって同じ志をもった者たちは向上心を引き上げるメリットをもっている。しかし、傲岸不遜な神々は自分たちのやりたい放題、
「わかっている、君たちが予見していた事態を招いてしまったことを
「争いはあなたが造ったわけではない、ウラノス」
だからこそ、人類の希望たるプロジェクト・リバースの成功がせめてもの救いだ。
ウラノスやフューリーも声には出さなかったが内心安堵を覚えた。
「私は本部に戻る」フューリーは祭壇から去ろうとしたとき
「待ってくれ」暗闇から黒衣の者が彼を呼び止めた。
「どうかしたのか?フェルズ」
「これをかの英雄に返してほしい、この盾の仕組みの解明に時間がかかってしまった。」その手には丸くて茶色い革のケースが抱えられていた。
その後彼は無言でそれを受け取った後、祈禱の祭壇から姿を消した。
「遅れてすまない!俺がガネーシャだ!!」その入れ替わりで神ガネーシャが訪れてテンションのギャップが起こるのはご愛嬌ということで…
ロキファミリアの拠点『黄昏の館』 ロケーション:オラリオ北部
「―プロジェクト・リバース、ね」金髪の小人が呟く。
「どうかしたか?フィン」体躯のいいドワーフが尋ねる。
「いや、ヘルメス・ファミリアが提供した暗号文でこの単語が頻繫に使われているんだ。向こうは情報の優位性を保つために先ず伏せておく事柄、それを分かっているはず…それでも送ってくるということは神ヘルメスもまだ全容をつかめていないだろうと思ってね」
「まぁ道理じゃろうて」ガレスはフィンに同意する。
「その調査書類は先に話していたイヴィルスと関係があるのか?」
「それは、僕にもわからないよ、リヴェリア でもこの文はギルド宛に送られているらしいんだ。そこが引っかかってね」
「フィン、わかっとると思うけど秩序側としてギルドにおるかもわからん鼠ばっかりに目向けとると足元すくわれるで」
「わかっているよロキ、今内部で連携が崩れると大変だってことは でも一応気を配っておかないと思ってね、まぁ、相手もその内ボロが出てくるだろうから、イヴィルスのことに注視するつもりだよ」
「わかっとるんやったらええ…」
フィンはヘルメス・ファミリアが探っている組織的な集団はギルドにもイヴィルスにも属さない第3勢力ではないかと推察している。
だが、今優先すべきはやはりイヴィルスの動向だ。
今夜は嫌な風が吹いてる、それに親指の疼きが昨日より増している。珍しくとても静かな夜だった。
これが嵐の前の静けさだとでも言うのか…
大変長らくお待たせいたしました。ようやく、アストレア・レコードWhat Ifを進めることができました。
次回、シリアルキラー VS キャプテン アメリカ