マギクラフトスクール・ポリス・デカレンジャー 作:ベンジャミン・フランクリン
──暗い宇宙空間に揺蕩う1隻のボロ船。
かつては輸送船として使われていたそれは、その役目を終えたというのにスクラップにされず、こうして宇宙空間をさまよっていた。
そんなボロ船に接近する船が1隻、胴体にデカデカと「
警備艇の後部、接舷部分に近い待機スペースには、数名の「宇宙警察官」たちが今か今かと突入の時を待っていた。ベテラン警察官の1人であるネメシス・”ドーベル”・クルーガーも、そのうちの1人であった。
「”地獄の番犬”でも、やはり緊張するんですか?」
目を閉じて精神を統一していた声をかけてきたのは、ドーベルの隣に座っていた同郷の、若い警察官。
「…普段はあまり緊張しないのだがな。今回は、事案が事案だからかもしれん」
「そうなんですか…」
「あぁ。そういう君は、この手の組織犯罪は初めてか?」
「はい、つい先日正式に着任したばかりで…」
「ということは、期待のニューカマーってヤツだな」
「き、期待のニューカマーですか!?それはさすがに荷が重いっていうか…」
「ハハ、なに、冗談だよ。無論、君のような若い戦士には期待しているがな」
「ご、ご期待に応えられるよう頑張ります!」
「頼んだぞ」
そう言って、ドーベルは彼の肩をバシンと叩いて気合を入れる。
(さて…)
会話で彼の緊張が解れたのをなんとなく確認しながら、ドーベルは改めて今回の事件についての情報を整理する。
今回ドーベルが担当している事件は、「地球人の未成年の誘拐及び臓器売買」である。名前から犯人の卑劣さが伝わってくるこの事件が起きていることが発覚したのは、半年ほど前。当然情報を知らされた警察官たちが捜査に乗り出すも10人近い犠牲者が出たことで上層部はこれを
通常の捜査官より優れた能力を持つ特キョウの対策官を15人配置したことからも、上層部の本気度とこの任務の危険性が窺える。
「かぁっ…緊張するぅ」
「俺とお前のバディなら何があっても切り抜けられる、肩の力抜け」
ドーベルの耳に入るのは、バディ同士の会話。
並み居る
『接舷が完了しました。対策官の皆さんは手筈のとおりに。…皆さんの健闘を祈ります』
パイロットからの放送を聞いた対策官たちは頷き合い、一斉に腰に携帯している「SPライセンス」を起動する。
「「「「
音声コードの入力と共に、ライセンス内に粒子化する形で保存されている宇宙形状記憶合金デカメタルが対策官たちの体を包みこみ、パワードスーツを形成してゆく。最後にメットを装着して、彼ら対策官は宇宙警察の制服から「デカレンジャースーツ」と呼ばれる強化服への変身を完了した。
「気合い入れていくぞ!」
「「「オウッ 」」」
銀河に二振りとない名刀・ディーソードベガを携えたドーベル─この姿の時の名は”デカマスター”である─が、対策官たちに喝を入れてボロ船へと突入していく。
「クソっ、寄りにもよっても特キョウかよ!」
ドーベルたちが数メートル廊下を進むと、追い詰められた様子のアリエナイザーたちが、熱線銃をこちらへ向けてきた。
「ここは俺が──」
先程ドーベルと話していた若い対策官が前に1歩踏み出したその時。
ズバァァン!という斬撃音と共に、アリエナイザーの胴が斜めにずり落ちた。引き金が引かれる寸前だった熱線銃も、綺麗に縦に割れている。
「雑魚に構っている暇は無い!最短ルートで行くぞ!」
そう叫んだドーベルは手に握った愛刀を軽やかに振るって進んでいく。
後に続く対策官たちの仕事はまだ息のあるアリエナイザーにトドメを刺すことや、不意打ちを仕掛けてきたヤツを仕留めることぐらいのもの。誘拐された子供たちが居るとされる倉庫までたどり着くのに、大して時間はかからなかった。
「大丈夫か!」
厚い超合金のドアを一撃で切り裂き、ドーベルたち対策官は倉庫内へと雪崩込む。そこには、ボロボロの服を着た地球人の子供たちが数十名居り、そのほとんどが痩せ細っていた。年齢はまちまちだが7歳程度で、中には赤ん坊も居た。
「これはヒドイな…」
誰かがそうもらす。ドーベルもその言葉に頷き、ディーソードベガを腰に差す。子供たちに、自分たちは味方だという事を示すための行為だ。
「もう大丈夫だぞ、私たちはS.P.Dの警察官だ。君たちを誘拐したアリエナイザーたちは、全員倒したぞ」
目線を怯える子供たちに合わせて、ドーベルは優しい声色でそう告げる。すると、緊張の糸がほどけたのか何人もの子供たちが一斉に泣き始める。
対策官たちはそうした子供を抱き上げ、ライセンスに搭載された健康チェック機能を起動させる。誰かが自力で歩くことが可能で、誰かがこの場で緊急の処置が必要かを判断するためだ。
すると、トゲトゲした髪型が特徴的な1人の少年が「あっち」と奥の方の子供たちを指さした。
「あの子たち、ケガして歩くのもたいへんだから先につれてってあげて。おれの周りにいるのは、自分で歩けるヤツらだから」
「あ、でも、この子はびょうき持ってるから一緒に連れてってあげて!」
「バンのいってることはホントです!」
「あそこで寝てる子たちもよわってます!」
「はやく連れてってあげてください!」
四人の少年少女は、自身も今にも倒れそうだと言うのに周りの子たちを優先するようドーベルに懇願した。彼は「だそうだ。早く!」と病気やケガをしている子供たちから優先的に運び出させる。
「…君たちは、とても勇敢だな。名前を聞いてもいいかい?」
彼がそう質問したのは、何か「天のお告げ」ような感覚があったからだ。この子たちは、きっといつか「正義」を貫き通す戦いで、大きな役目を担う──
そんな直感が、ドーベルの中にあった。
「オレはあかざわばんじ!皆からはバンって呼ばれてるぜ!」
「ほうだじろうです。皆からはホージーって呼ばれてました」
「えなり せんとといいます!バンたちからはセンちゃんって呼ばれてます!」
「いたくら まりこです。ジャスミンって呼んでください」
「ばいどう あきこです!バンくんたちからはウメコって呼ばれてます!オジサンは?」
全員の瞳に、こんな状況下でも正義の炎と弱い者を労る優しさの炎がメラメラと燃え上がっているのを、ドーベルは感じ取った。
(この子たちなら、もしかしたらなれるのかもしれないな)
変身を解き、つけていたサングラスを外し、ドーベルは目の前の小さな勇者たちに自分の名を名乗る。
「ネメシス・ドーベル・クルーガーだ。ボスと呼んでくれ」
「ボスってカッケェー!」と年相応な反応を見せるバン。一方でセンちゃんは、?と首を傾げる。
「どーしてボスって呼ぶんですか?」
ボスというのは自分の上司や先生に使うもの、とセンちゃんは思っていた。それは間違いないではないし、ドーベルが「ボスと呼んでくれ」と言ったのにも、理由があった。
簡易的な栄養補給剤を5人に食べさせながら、彼は5人にある提案をする。
「君たちがよければなんだが───」
──七年後・日本
「出会いの春」などと言われるように、春は入学式や卒業式と人との出会い別れに関連したイベントが多い。
朗らかな春の陽気に当たりながら、真新しい制服に身を包んだ学生たちは高校や大学の入学式への道のりをゆく。街は平和そのもので、犯罪なんて無く、S.P.Dの車両が道を爆走するなんてことは…あった。
「うぉぉぉ!入学式に遅れるぅぅぅ!」
『何してるこのバカモンが!任務のせいで遅れそうだからと言ってパトストライカーを使うヤツがどこにいる!』
「いやだってぇ!」
『だってもクソもあるかぁぁぁぁ!』
バンこと
お初にお目にかかります、ベンジャミン・フランクリンというものです。
デカレンジャー×魔法科なんて異色も異色なクロスオーバー作品を読んでいただいたことにまずは感謝を。
そして、次回以降も読んでくださると幸いです。