RE:(偽)吸血鬼お嬢様のバイオハザード   作:朱と白

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リメイク前の作品をお読みいただいた皆様、本作に目を留めていただきありがとうございます。

詳しくは活動報告に書いてありますが、作品を誤って削除してしまうという失態を犯してしまいました。
復旧の方法なども教えていただきましたが、作者の使用機器の都合上、上手く戻すこともできず、このようにリメイクという形を取らせていただきます。

なんの償いにもならないことは承知の上ですが、これからはこのようなことがないように注意していきます。
本当におこがましい話だとは思いますが、どうか本作もご愛読いただけたらと思いますので、よろしくお願いいたします。

それでは、どうぞ。


(偽)お嬢様、事態に巻き込まれる。

 レミリア・スカーレットという名をご存じだろうか。

 

 弾幕シューティングゲーム、東方projectのキャラクター。

 銀色の髪に赤い瞳が特徴的な、十四か十五歳の見た目の少女。

 その正体は吸血鬼であり、子供のような見た目とは裏腹に思慮深く、また人間を遥かに凌駕した膂力を誇る。

 物語の舞台となる幻想郷でも指折りの実力者であり、大妖怪に位置する種族も相成り畏怖の対象として見られている。

 

 ――そういうわけでどうも、レミリア・スカーレットよ。

 ただ、本家本元かと問われれば少し違う。

 転生者と呼ばれる、前世の記憶がある存在というべきか。

 能力も身体も彼女と瓜二つの、限りなく本物に近い偽物と言い換えてもいいかもしれない。

 

 ふと気が付いたら今世の母親(お母さま)に抱かれていた、というのが思い出せる最初の記憶。

 死んだのは神様の手違いとか転生先を決めたとか、そういうよく聞く流れは一切なかった。第一死んだかどうかも怪しいと思った時は、本当にどうしたものかと頭を抱えたものだ。

 

 とはいえ以前推しだった彼女になれたのは嬉しかったし、ある種歪な子供だった私を今世の両親(お父さまとお母さま)は精一杯愛してくれた。

 そんな二人を裏切るのは気が引けたし、だったら私も応えなくてはいけないと思うのもまた必然だった。

 理由も経緯も関係ない、立派な吸血鬼にならなければならないと思った私は、次期当主となるべく力を磨き上げた。

 

 時にはお父さまと一緒に吸血鬼ハンターを狩り。

 時には魔法の習得に精を出し。

 時には能力の理解へ時間を掛けた。

 最初の二百年は、ただひたすらに強くなれることが楽しかった。

 

 まあ、人生山あり谷ありなんていう言葉があるように、全てが上手く進むなどあり得ないのだ。

 私は吸血鬼だから、人間の言葉が当て嵌まるかと言えば分からないけど。

 

 それはともかく。

 その後の二百年は、かなり荒れていた。

 理由は簡単。

 生きる指針だったお父さまとお母さまが、手練れの吸血鬼ハンターの集団と相打ちになったことだ。

 

 やるべきこともやれることもやる気も起きない、ただ無為に生きていた時期。

 吸血鬼の本能に任せて狩りをしたこともあった。

 誰とも関わらず魔法と能力の研鑽へ精を出したこともあった。

 正体を隠し人間と関わったこともあった。

 

 そのどれもが、どうにも虚しかった。

 ダラダラと生きるのは楽だったが、同時に楽しみを見出すこともできない記憶。少なくとも私には必要な時間だったのだろうが、今となっては黒歴史だ。

 

 そこからさらに七十年、本物の彼女(レミリア・スカーレット)と比較してもそう低くないだろう力量を手に入れた私は、世界を巡ることにした。

 生きる理由を見出そうと始めた放浪はそれなりに楽しかったし、それでようやく色の付いた記憶(感情)を手に入れられた。

 

 様々な景色を見て。

 色々な人間と出会って。

 そうして紆余曲折の果てに手に入れた家族と腰を据えたのが今の街。

 戸籍やら仕事やらは昔のツテを頼りにどうにかした。人の繋がりというのは中々馬鹿にできないものだと実感させられた。

 

 金銭は昔の蓄えを適当に切り崩して用意した。現代とはいかなくとも近代社会は色々と必要なのだ。

 ちなみにそんな私の仕事は害獣駆除。熊だろうがイノシシだろうが問題なく駆除可能なので、ある種ピッタリと言えるだろう。

 

 とはいえ流石に事は平穏に進まない。昔からそうだった。

 幾つか気になることができたのだ。

 

 妹曰く『妙な匂いを感じる』。

 従者曰く『妙な噂を聞いた』。

 私曰く『どこかで見たことがある洋館が近くにできた』。

 

 挙げればキリがないし、気にし過ぎだと言えばその通りなのだろう。

 だが胸のざわつきは消えないし、少し調べてもいいか。

 何事もなければそれでよし。

 異常があれば対処する。

 

 

○○○○

 

 

 そうと決まれば動くとしよう。

 行動は早い方が良い。

 

「咲夜。いるかしら?」

「ここに。どういたしましたか?」

 

 従者の名を呼びながら私が向かうのは、屋敷の入り口。

 刹那背後に感じた従者へ目を向けながら、月の輝く空を見上げた。

 

 雨も降っていない、最高の天気だ。

 景色もよく見える。

 

「食事はあとどれ程でできる?」

「十五分を予定しています」

「完璧ね」

 

 振り返り、整った顔立ちと銀色の髪が特徴的な従者へ目を向ける。

 

 彼女の名前は十六夜咲夜。

 ()()()()で出会った正真正銘のそっくりさん(別人)であり、放浪の最中に拾った人間だ。もう十五年の付き合いになる彼女の名付け親は、実は私だったりするのだが、これは割愛しよう。

 咲夜には当屋敷の家事を一任しているわけで、ともすれば食事の前に勝手に出ていくのも問題があるのだ。

 

「私の分の用意を遅らせてもらえるかしら。長ければ一時間以上かかりそうなの」

「かしこまりました。なにかご予定が?」

「ええ、そうね」

 

 外を一瞥して、一言。

 咲夜に迷惑をかけるのは少々心苦しいが、大体の察しはついた。

 だからある程度の時間が欲しい。

 

()()()()()()()()()()()()()()。――良いでしょう?」

 

 念には念を入れる。

 

 今の私は、どんな表情を浮かべているのだろうか。

 凄惨な笑みか。穏やかな笑みか。

 どちらでもいい。

 どうでもいい。

 

 違和感の正体が掴めた以上、最早止まる道理はどこにもない。

 どの道私の家族に危険が及ぶというのなら、最初から手心を加える理由もない。

 可能性は根底から潰す。それだけだ。

 

「お嬢様のお心のままに」

「ん。それじゃあ行ってくるわ」

 

 そうして再度外へ視線を向け直し、歩き出そうとして――。

 

「お姉様、出かけちゃうの?」

 

 さらに後ろ――咲夜の背中から届いた()の声に、歩を止めざるを得なかった。

 

「ええ、ちょっとした用事よ。貴女が言っていた妙な匂いの正体が分かったことだし、その対応にね」

 

 努めて表情を表に出さないまま、もう一度振り返る。

 そこにいたのは、()()()()()()()()()()()()愛しい妹。

 

 咲夜とは真逆の金色の髪をサイドテールに纏めた、宝石のぶら下がった奇妙な羽の少女。

 

「時間はかかるかもしれないけど、なるべく早く戻ってくるから」

 

 フランドール・スカーレット。

 身内の贔屓目もあるかもしれないが、とても可愛い目に入れても痛くない、私の自慢の妹。

 

 とてとてと走りながら駆け寄る姿は非常に可愛らしく、不安を映し揺れる瞳は美しく、私に向ける表情は非常に愛らしい。

 ああ、今日も私の妹は可愛いわね......。

 

「だから待っててもらえないかしら。お願いよ、フラン」

「......や。お姉様と一緒がいい」

 

 この子は天使?

 きっと今日ほどフランを吸血鬼にしたことを恨んだ日はないだろう。

 というか膨れっ面も可愛いわね。

 

 クソッ、何故私の手にはカメラがないんだ......!

 

「食事は一緒にできないけど、一緒の布団で寝るから。寝ていいから。だから、ね?」

「むー......!」

 

 いよいよ私の服を掴み、宝石のような赤い瞳に涙を浮かべ始めるフラン。

 

 まずい、この流れは非常にまずい......!

 なにがまずいかと問われれば、色々とまずい。

 私の我慢とかフランのご機嫌とか。今すぐに抱きしめて頭を撫でてやりたいが、そんなことをしたらせっかくの説得の機会が水の泡だ。

 

「うー......」

 

 困った。

 本当に困った。

 

 フランともそれなりの付き合いになるが、昔からこの子に勝てたことはない。

 泣かれると弱いのは、曲がりなりにも私がフランの姉を名乗るからか。それとも別の理由か。

 ......しかたない。

 

「咲夜」

「はい。食事の用意に戻ります」

「話が早くて助かるわ。毎度のことながら、迷惑をかけるわね」

「いいえ。全てはお嬢様のお心のままに」

 

 流石は私のメイドだ、話が早い。

 暖かな視線を向け沈黙を貫いていた咲夜が、早々にキッチンへ消えていった。......どうせなら止めて欲しかったが、まあいい。

 

「お姉様......?」

 

 それとフラン、涙目の上目遣いはやめてくれないかしら。

 私が色々と辛いから。

 

「貴女の勝ちよ、フラン。心配は残るけど、それは後に考えましょう」

 

 変わらず服を掴む愛しい妹の頭を撫でながら、苦笑気味に言った。

 

「最低限の問題だけ解決して、すぐに戻るわ。食事には間に合わせるから安心しなさい」

「......! お姉様大好き!」

「ええ、私も大好きよ、フラン」

 

 一転して花開くような笑顔を浮かべて抱き着いて来るフランを抱き止めて、今度こそ全力で抱きしめる。

 妹の柔らかな体の感触に、思わず口元が緩む。

 こんな風に全身で喜びを表現してくれれば、私も予定を切り上げる甲斐もあったというものだ。

 

 そう。

 たとえ背骨がミシミシとまずい音を立てていようと、力が強すぎて息苦しい抱擁だろうと、目の前のフランの笑顔の為だと思えば安い報酬だ。

 どうせ夜だしすぐ治る。

 今はそんなものを気にするよりも、目の前の可愛らしく愛らしく美しく狂おしい妹の笑顔を目に焼き付ける方が大切だ。

 

 

○○○○

 

 

 などと(私的には)心温まる一幕もあったが、いざ仕事となれば意識を変えなければならない。

 私は公私を気にかけるタイプなのだ。

 

 さて、ここで情報を整理しよう。

 

 まず最初に言った、長い旅の末に居を構え腰を据え始めた街。

 厳密にはその外れの山に近い土地を買ったのだが、それは今関係ないだろう。

 付近の街の名はラクーンシティ。――そう、()()ラクーンシティだ。

 

 ここにフランと咲夜から聞いた情報と、私の感じた違和感を照らし合わせれば、自ずと答えは導き出される。

 元より新聞の情報に加え、見たことのある洋館が建てられたときた。ある程度あった予測が確信に変わったに過ぎない。

 

サバイバルホラーゲーム(こんな世界)にも、昔は魔法があったというのだから驚きよね。そう思わない?」

 

 深い森の中。

 

 一寸先も見えない闇の中、しかし爛々と輝く瞳が映る。

 空から地面へ降りた私を歓迎したのは、漂う腐臭と唸り声。

 体の所々が腐り落ちたドーベルマン――正式名称ケルベロスが、私を見据えていた。

 

 歯を剥いた口元から流れる唾液は、はたしてこれから私を貪らんとする合図か。

 

「通じないのは承知の上だけど、無視されるのも悲しいものね」

 

 勿論そんなことはない。

 前世では何度も相手をした上に何度も驚かされたが、今は恐怖など微塵も感じない。

 

「だが、どの道お前達は望まれざる存在だ。私の妹と従者(愛する家族)に害を成すというのなら、ここで散れ」

 

 能力を使い、ケルベロスの次の行動を予測。

 『運命を操る程度の能力』――この体になってから手に入れた力の一つ。ちょっとした未来予測にも使える、強大な能力だ。

 

 一斉に飛びかかる数体のケルベロスから逃れるように空へ浮かび上がり、滞空。

 

 右手を広げる。

 溢れ出た紅い光が因り合い、光の柱の如く伸びていく。

 否、最早それだけには留まらず、最終的には私の身の丈を越える一本の巨大な槍を形作る。

 

「神槍」

 

 ()にさえ届く()――故の神槍(しんそう)

 一度放てば因果を越えて対象を貫く必中の武具。

 それを再現した、私の力の一端。

 

「スピア・ザ・グングニル」

 

 握り締めた真紅の槍を、振り抜くように投擲。

 残光で軌跡を描いた必殺が、音を置き去りに地面へ突き刺さるように繰り出された。

 

 一瞬の空白の後、轟音と紅光が闇を切り裂いた。

 

 ――ちなみに、周囲を揺らす巨大な振動と爆発から二悶着ほど起きたのは完全な余談だ。




『簡単なキャラクター紹介』

●『リメイク版』レミリア・スカーレット(偽)
 バイオハザードの世界に転生した、御年五百歳の吸血鬼。
 設定はリメイク前から大幅に変わり、五百年前の魔法が存在する時代に転生した。
 能力も弾幕も使用可能になり、犬嫌いも克服。
 ある程度のカリスマも手に入れたが、代わりに重度のシスコンを患っている模様。
 『妹と従者は嫁には出さん』とは本人談。

●フランドール・スカーレット/十六夜咲夜
 正真正銘のそっくりさん。前者はレミリアの手により吸血鬼化、後者は人間。
 原作とは設定が異なる部分があるが、その辺りは追々。

如何でしたでしょうか。
前書きにも書きましたが、今回の一件は本当に申し訳ありませんでした。
以降このようなことがないようにより一層注意していきますので、どうかよろしくお願いいたします。

もしよろしければ感想や評価をいただければ幸いです。
また話を練る都合もあり、更新が不安定な作品ではありますが、どうか次回もお付き合いください。
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