人間に戻る手がかりを掴むまでの話 作:佐川野
1 この世で一番、ゾンビが嫌い
そろそろお天道様が顔を出すだろうって頃に、2つの死体が起き上がった。
ヴァァア゛ア゛…… ヴァア゛ア゛ア……
爛れた喉の奥から出てる、生気の無い唸り声。
黒い緑色に変色して、触れた先から溶けて剥がれ落ちそうなくらいユルユルのブニブニになった肌。
うっかり捨て忘れた生ゴミが腐ったみたいな、鼻が曲がりそうな激臭。
助けを求めるように伸ばし、宙を掻く両腕。
まっすぐ立てずにフラフラして、おぼつかない足取り。
獲物を、生者を求めて見渡す首は据わってなくて、動きも遅かった。
『父さん! 母さん!』
そのくせ反応だけは良くて、呼んだ俺を素早く振り向いて捉えた両目は、焦点どころか左右の向きさえ合ってなかった。
大好きな父さんと母さんの顔が、生まれた時から見てきた顔が、変色して爛れた酷い有様になってた。見てられない顔になったのが、信じられなくて、辛くて、許せない。
俺に伸ばされた4つの手は届くことなく、2体のゾンビは、父さんと母さんは、太陽に焼かれた。
燃えて、叫んで、苦しんで……あっという間に骨だけになった。
ゾンビは、嫌いだ。
父さんと母さんを苦しめたゾンビが、
父さんと母さんを殺したゾンビが、
父さんと母さんを人じゃなくさせたゾンビが、
俺を、ひとりぼっちにさせた、ゾンビが、
嫌いだ。
「起きなさい、ルゥパ!」
「!」
肩を強く揺さぶられて、大声に驚いて目が覚めた。ぼやけた視界で認識したのは、ランタンを掲げてこっちを心配顔で覗き込む神父さん。なんで? と思った次の瞬間には全身が汗ばんでるのに気付いた。うわっ気持ち悪っ。
「魘されていましたよ。……また、あの夢を?」
「……はい」
「そうですか……」
あの夢は、俺が幼い頃に体験した、実際の記憶。もう何年も経ってるっつーのに、俺は未だにあの日に囚われてる。あーヤダヤダ。
もうさっさと起きようと、ベッドの上で上体を起こす。だけど神父さんはベッドの側にしゃがんで、俺の手を取った。あ、やっべ。久しぶりだから忘れてた!
「それじゃあ、諳んじましょう!」
「し、神父さん、もう俺、子供じゃないって……」
「いいえ! 大人でも心の調子を整えるのは大事なことなんですから!」
うん、まぁ、おっしゃる通りです……。恥ずかしがってる俺がオカシイです、はい……。
声も目の輝きも溌剌とさせる神父さんのおかげで、最悪だった気分もだいぶ上向いてきた。ありがとう、神父さん。
「さぁ、準備はいいですか?」
「はぁい」
「よし! せーのっ!」
「アンデッドは天の光に敵わない存在。未練あるその肉体を陽で焼かれ、浄化され、魂は煙と共に天に迎えられる。そして浄化された肉体は土に還り、次の生の糧となる。そうして、少しだけ大きな道を逸れた存在も、またこの世界を巡るのです」
諳んじ終えると、不思議と胸の中のモヤモヤが晴れていた。そんな俺を見た神父さんは、「うん!」と満足げに頷いて立ち上がった。
「下で朝食を作ってますからね。川で水浴びしてらっしゃい」
「はい」
言いつけに素直に頷いた俺に満足したっぽい神父さんは、軽い足取りで寝室から出て行った。チキンスープの匂いがして、ちょっとだけ食欲が沸いてきた。
……っしゃ、汗流しに行くか!
教会の裏にある墓場で父さんと母さんの墓に手ぇ合わせてから、川に行った。川で水浴びしてたら、お天道様が山から上がってきた。1日の始まりを告げる朝日が、冷えた体と凍えた胸の内をあっためてくれた。
……あれから10年近く経ったってのに。
「未だに、辛いもんだなぁ」
1つ大きく溜め息を吐いてから、胸を張って大きく息を吸った。それから、パンッ! と両手で頬を張って、湿った考えを頭から追い出した。
「ふう!」
気持ち、切り替えてけぇ? いつまでもメソメソしてたら、父さんも母さんも心配止めらんねぇからよ!
川で水浴びて汗流して、神父さんが料理してくれた朝ごはんを食べる。それからいつも通り畑の野菜を手入れして、ポーションの配達に出た。
人が踏み均して草が禿げた土道を行く。歩く度に台車に乗せた木箱の中身がカチャカチャ、ちゃぷちゃぷって色んな音を立てた。
これから納品するポーションは普通の飲むタイプだから、緩衝材替わりのスライムが無くて配達すんのがちょっと怖い。転がり防止とかいくつ入ってるのか見やすくする為にも仕切り作ってるけど、それでも揺れるから取りに来て欲しいんだよなぁ……。あーあ、俺のインベントリの枠がもっとデカけりゃ、気にしなくていい話なのになぁ。
なんか色々ぼやいたけど、納品先の鍛冶屋に着いたし、さっさと置かせてもらお。
「おっちゃーん! 神父んとこのルゥパだけどーっ!」
鍛冶場の扉を軽く叩いてから、取引先の防具鍛冶屋のおっちゃんに大声で名乗った。中から聞こえてくるおっちゃんの野太い「おー」って返事。待っててくれたんだろうな、直ぐにドアを開けてくれた。
「おはようさん! ルゥパ、いつもあんがとな!」
「おはようおっちゃん! こっちこそ毎度ありがと!」
「おう。あ、そういやお前最近、ポーション作り上手くなったな! 味はともかく、効果はもう神父のと変わんねぇぞ!」
「は? 味もイケてるだろ?」
「お前のクセ強いんだよ」
「それがいいんじゃねぇか」
中に入って木箱を所定の壁掛け棚に置きながら、不満点言ってくれるおっちゃんを見る。滑り止めと熱さ対策で革の手袋を着けたおっちゃんは、納品したての1本を早速飲んだ。んで微妙そうな顔した。奥さんの手料理でおっちゃんの舌が肥えてるだけなんじゃねぇのぉ?
「スプラッシュならどうでもいいけどな。オラァ口にするんだから、そこにも拘ってくれや」
「しょうがねぇなぁ……。おっちゃん、甘いの好きだっけ?」
「まぁ、嫌いじゃないわな」
「分かったー」
次から薄めるときは、砂糖も入れるか。甘くて美味いし、活力にもなる。うん、お得! いや、効果がどうなるか分からん。試さねぇと。
新しい要求を聞き入れながら、報酬のエメラルドを受け取って腰袋に入れる。空瓶の数もぴったり揃ってる木箱を台車に乗せたら、防具鍛冶屋のおっちゃんに挨拶して鍛冶場を出た。よっしゃ、教会に一旦戻ってから次の現場だ。
メェメェ言ってるヒツジたちと、その世話のお手伝いをしてる子供達に手を振る。笑顔いっぱいな子供達に元気を分けてもらいながら、さっきよりも木箱を多く積んだ台車を押して進んでいく。
せっかく殆ど1から作ってるポーションが無駄になるのが怖いから、転ばないようにゆっくり進む。そうしてたら、煙突から煙が立ち上る小屋の中から男2人とおばあちゃん1人が出てきた。
「リンニェの兄ちゃんたちー! お届けに来たぜー!」
「知ってるー! そこで待っとけー!」
「あんがとー!」
リンニェの兄ちゃんに言われた通り、階段の前で台車と足を止めた。海士さんたちが潜る海は村より大分下の方にあるから、身体を温める小屋と村までは石の階段で繋がってた。その階段の中腹には物置に使ってる天然の洞穴があって、ポーションは日当たりの悪いそこに置かせてもらってる。保存すんならあまり熱くならないトコがいいからなー。
前に置いてったポーション木箱を洞穴から兄ちゃん2人が持ってきてくれてる間に、ブアおばあちゃんが階段を1段1段上がって来てた。海女歴50年だっていう大ベテランのブアおばあちゃんは貝とか海藻採る時の真剣なかっこいい目つきじゃなく、にっこり優しい笑顔をしてくれてた。階段の途中から迎えに行って手を取ったら「あらあら」って可愛く喜んでくれた。おばぁちゃぁん……。
「いつもありがとうねぇルゥパちゃん。手を貸してくれるのもそうだし、ポーションもそうだしねぇ」
「えぇ? へへっ、ありがとう。ねぇブアおばあちゃん、あのポーション、ブアおばあちゃんはどう思ってる? ちゃんと効いてる?」
「そうだねぇ、今までより息が続いて、若い頃より潜れてるかもしれないねぇ」
「おお!」
階段を上がりきったら、台車とポーション木箱3箱分を繋いで固定してる縄を解く。階段からは2人分の足音と瓶が木枠に擦れてカチャカチャ言ってる音が聞こえてきてた。よし、解けた。と同時に兄ちゃん2人も階段を上がりきってきた。
「まさかねぇ、ちょっと迷惑ものだったフグが、こうしてアタシらの役に立ってくれてるなんて。ありがたい話だねぇ。ありがとうねぇ、ルゥパちゃん」
「あはは……、たまたまだって」
「それでもだよ。すごいねぇルゥパちゃんは」
「えへへ」
ブアおばあちゃんに褒められたらメッチャ嬉しくなるわナニコレ。あ、リンニェ兄ちゃんハフ兄ちゃん、ドン引く暇があんなら、さっさとエメラルド置いて新しいヤツ持ってけ。しっしっ!!
ブアおばあちゃんに褒めてもらったコレは、俺が偶然発見したレシピだった。
漁師の兄ちゃんから網に掛かった雑魚貰って適当にポーションの素材にしてたら、たまたま“フグを素材にしたポーションに息を長く止めていられる効果がある”って分かった。他が普通に出汁しか出なかったのに。不思議。飲むと心拍数が下がる気がするし、多分フグ毒らへんが心臓の動き鈍らせてる感じ。分かんないけど。
まぁ、力のポーション初めて作った時に『自分が発見しました!』って顔して恥かいたのがあるから、自慢なんて絶対しないけど。多分誰かがとっくの昔に発明してんだろ。俺らが知らねーだけでさ。
だとしてもなのか、この村で最初に発明したからか、厄介者のフグが有用になったからなのか分かんねぇけど、皆俺の事持ち上げちゃってちょっと困ってんだよな✩
次の納品先の警備隊には、緊急時に使いやすいように投げた衝撃で割れ、破片が消えて無くなる瓶を使ったポーションを持って行く。台車使ってるし、木箱には緩衝材にくっつきにくくしたスライムを使ってるから、俺が持ち運ぶ分には割と安心してる。……そして、この子の笑顔にも、安心する。
「あ、ルゥパ! 毎週ご苦労様!」
「ア……ウン……サータちゃんも、毎日ご苦労様……」
「うん! あ、ポーションいつものところに置きに行こっか!」
「ソ、ソウダネ……!」
長い黒髪を高い位置で括った、お目々パッチリのサータちゃん。可愛い女の子に話しかけられるだけで心と頭がふわふわして、体も口もガチガチ固まる。サータちゃんだけが俺を見てたらいいのに、警備隊の若い野郎共からの嫉妬の視線がブッ刺さりすぎて痛い。テメェら! 俺とサータちゃんの逢瀬をジロジロ見てんじゃねーぞ!
俺が暮らすヘムスタッド村には、早いと月に1度もモンスターどもの襲撃がある。そんな厄介から人命と財産を守るのが、こいつら警備隊。腕っ節と機動力、その他もろもろが大事な野郎どもに届けたのは、“力・俊敏・跳躍・暗視・治癒”の5種類のポーション。そんな野郎共を支える裏方の人たちにも“治癒・耐火”のポーションを納品してる。納品つっても最大30個で、減ってる分だけ追加するってスタイルでやってるんだけど。そしてそのポーションの管理をしてるのが、サータちゃん! ……サータちゃんが俺を好きだからついてきてくれたってワケじゃないんだよなぁ……。
詰所の横の納屋に一緒に行って、数を確認しながら空と中身入りのポーション瓶を入れ替える。今週は1回クリーパーに襲われたから治癒中心に減ってんな。ついでに古くなってそうなやつも入れ替えて、サータちゃんから確認とエメラルド貰ったら終わり。
広げてた木箱を台車の上にまた重ねていく。台車と重ねた木箱を縄で括って固定してたら、背中に声がかかった。
「ねぇルゥパ、ちょっと髪、伸びたんじゃない?」
「エ、ソウ……?」
「うん。襟足のトコとか伸びてきちゃってる」
「わっ!?」
うひゃっ!? 項の辺り触られた!? サータちゃんの細いけど頑張ってる人な手が、指が、俺の項に……!
ビックリしすぎて肩竦めちゃって、サータちゃんに「あっごめん」って謝られた。うわダッサ。俺めっちゃダッサ。
手を引いたサータちゃんは、それでも俺を見てにっこり笑った。あっ、目が焼けた。ぎゃぁああ!
「また切ってあげよっか!」
「エ……デモ、サータチャンモ タイヘン ジャ……」
「遠慮しないで! 練習台になってくれてるの、助かってるからさ!」
「ソ、ソレナラ、ウン……」
「ありがと!」
こんな挙動不審な俺にも優しいとか、サータちゃん女神かな??? あ、女神だったわ。神父さん、俺はこの女神さまと、いつも通り牛を信仰します。
散髪の時間を明日の夜に約束して、サータちゃんとは別れた。あーあ、あんなふたりっきりの空間と時間があんだから、もうちょっと上手くお喋り出来てりゃ、今頃さぁ……!
今日の配達を終えて、養鶏場にちょっと寄り道してニワトリを愛でてから教会に帰ったら、神父さんがお昼ご飯作って待っててくれた。匂いからして水煮魚かな。アサリもあるやつ。明らか魚メインなのに意地でも神父さんが「スープ料理です!」って言い張るやつ。
「ただいま、神父さん! 今日の配達終わりました!」
「お帰りなさい、ルゥパ。もうすぐで出来ますから、手を洗って待っていてください」
「はい」
何年もこの人と一緒に暮らしてるのに、神父さんと喋ってると、自然と背筋がしゃんとする。ちゃんとしてるけどお茶目でお喋りしやすい人なのに、こっちまで敬語で話さなきゃいけない気になっちゃう。口に蓄えた白ヒゲが似合う、かっちょいいおじさんだから? それとも血が繋がってねぇから?
神父さんは俺が生まれる前から村に居る余所者だったらしい。
なんか外のでっかい宗教団体から各地に教えを布教する為に旅立ったけど、船が難破してココに流れ着いて、帰れなくなってそのまま居着いたんだってさ。
師匠の神父さんは宗教団体の中で聖職者っていう立場に昇れるくらい(宗教も階級の事もよく分からんけど)には立派な思想を持ってて、でも神父さんの信仰する神様のことを信じるかどうかは自由にしてくれた。
「ここにはここの信じる心がありますから。それを否定して『ワタシノ崇メル神ヲ信ジナサーイ』なんて言っても、受け入れるわけありませんしね」って。今じゃその神父さんも牛を信仰してるけど。牛はいいぞぉ。労力にも装備にも俺らの体にもなって、牛乳なんて万病への特効薬だからな!
鱈の水煮的なやつをトマトとアサリが取り囲む昼ごはんを食べながら、午前に配達した3ヶ所について報告する。それを静かに聞いてた神父さんは静かに頷いた。
「午後は前に言った通りサトウキビ農家さんたちを手伝って、砂糖をお裾分けしてもらいましょうね」
「はい!」
あのサトウキビ汁、大鍋でかき混ぜながら煮詰めんの、スゲー熱くて大変なんだけどな。明日朝からネザー行って素材集めてくるし、耐火のポーション余ってる分、飲んでもいいよな。てかさ、奇妙なポーションと砂糖で《俊敏のポーション》出来るってスゲーよなぁ。やっぱ甘いもんって食べたあと身体動かしたくなるからなのかなぁ。だとしてもネザーウォート、お前どうやって砂糖の力を最大限引き出してんだ……。
他の村がどうだか知らないけど、ウチの、ヘムスタッド村には“ポーション職人”なんて職業の人は居ない。ただ、聖職者の神父さんがポーションにもメチャクチャ精通してるから、俺がそこに弟子入りさせて貰ってるってだけ。多分いつか俺が初めてその職名を名乗るんだろうな。
村の皆の命を守る大事なポーション。そんなポーションに関わる全ての素材を、神父さんは俺に自給自足することを求めた。
だからモンスターから素材集める為に腕っ節はメチャクチャ鍛えたし、育てる植物から土の知識まで頭に叩き込んだし、ネザーにだって必要なものがあるなら飛び込んでく。ポーションの瓶すら自分で作らされて、その素材の砂も燃料の木炭石炭も作ったり自分の足で探して採ってこないといけない。めっちゃ過酷。初めて醸造台を作れた時は飛び上がるくらい嬉しかったなぁ。
一度だけ、「頼れるとこは頼っちゃダメなんすか?」って弱音吐いたら、神父さんは優しい目で「確かに」って言って説教を始めた。
「人は助け合って、支えあって生きていく生き物です。愛し愛され、時に衝突し、妥協しあい、そして尊重し尊重される。しかし何が起こるか分からないのが世の常。1人で生きていけるように、必要なことは全て己に叩き込むべきです」
実際に災難に遭って、この村を見つけるまで1人で生き延びた神父さんに言われると、説得力ありすぎて素直に自分を鍛え上げることしか出来なかったよね、うん。言外に「鍛えなきゃ死ぬぞ」って言われたようなもんだったしアレ。
まぁ、あくまで知っとけ・覚えとけって話で、神父さんが知ってるポーションの作り方と効能を完全に理解して、ネザーに単身突っ込んで無事に帰ってこられるようになった頃には他人に頼るのも許可された。修行期間はマジで大変だったわ……。
まぁだから、今はポーションの素材集めに村人皆から協力してもらってる。炭鉱夫さん達とか、各種農家さん達とか、漁師さん達とか。サトウキビ農家さんには、もしかしたら一番頼ってるかもしんねぇ。俊敏って大事。
サトウキビ汁を煮詰めて砂糖を作る手伝いは特に問題なく終わって、砂糖も必要分貰った。ダラダラかいた汗を川の水で流して夕飯(先に戻った神父さん特製ウサギシチュー)食べて、寝る前に墓に今日の報告をした、その時だった。
カンカンッ!! カンカンッ!! カンカンッ!!
モンスターの襲撃を知らせる鐘の音が村中に鳴り響いた。この音が鳴ったら、戦う力の無い村人は皆家に避難して、警備隊含め戦える村人はそれぞれの武器を持って村の為に力を振るう。それがヘムスタッド村のしきたりだ。
俺は当然後者で、愛用のダイヤ装備を着けて、ポーションと弓矢を持って駆け出した。疲れ? 休み? そんなの命に代えられっか。
見張り台のはしごを上った先には、既に戦ってる警備隊員が数人居た。丁度次の矢を構えようとしていた隊員、おでこに巻いた布がトレードマークのクイッテの横に立つ。
「暗視のポーション飲んでる?」
「全員スプラッシュで受けてる。てか今日はこっちなんだな、お前」
「うん。遠目からファントムが見えたから」
「そっか」
俺が弓矢を構えてる間に、クイッテが矢を放った。風を切って飛んでいく矢は見事スケルトンの左掌の骨を砕いて、弓を持てなくさせた。ありゃ、あいつは逃げ帰ることしかできねぇな。
「やるじゃん」
「だろ?」
絶対自慢げな顔してるクイッテの方は見ないで、自分の獲物に矢を放つ。──よしっ! クリーパーの動き鈍らせた! あと1発!
「いただきっ!」
「はっ!?」
お前っ! トドメ奪いやがって! ……まぁ、爆発するよりはいいけど。クイッテが射った先を見れば、クリーパーは力尽きた証拠に火薬と砂の山になっていた。
次の獲物に狙いを定めてたら、隣からまた声がかかった。
「ルゥパ、勝負しようぜ」
「はぁ?」
「どっちが多く、モンスター殺れるか、さ!」
調子のいい口調と一緒に飛んでいった矢は、ゾンビの足を貫いて転ばせた。隙だらけになったそのゾンビは斧を持った隊員に首を撥ねられて、動かなくなった。
「……嫌だ」
「なんでぇ? 俺には勝てねぇって怖気づいてんの?」
「そうじゃねぇよ。お前さ、俺が誰と一緒に住んでるか分かって言ってる?」
「あっ」
ギリギリって弓の弦を引き絞って、月が眩しい夜空に狙いを定めて矢を飛ばす。見えてないと、捉えられないでも思ったか、ファントム。生憎俺は弓矢が得意でな。
羽に穴を開けられたファントムは滑空が出来なくなって、見張り台より高いところから地面に激突した。
「“たとえ彼らが我々の脅威だとしても、命は命です。モンスターの殲滅は村人の為に行うべきですが、面白がって行うことは命への冒涜です。”……もし遊んでバレたら、俺が神父さんから大目玉喰らうからさ、やるなら別のヤツとやっといて」
「……そんなん言われてさ、お前、遊べるワケねーじゃん」
「そっか」
会話はそれ以上弾まず(それでいいんだけど)、クイッテも他の奴らも黙って、弓の弦をギリギリまで引き絞ってビュンビュン矢を飛ばしてモンスターの体力削って、近接部隊の補助してた。
……今日はやたらと、ゾンビが多いな。
ゾンビは、嫌いだ。
本作をお読みいただき、ありがとうございます!
お好きな表現があれば“ここすき”投票をしていただけますと、作者がニヤニヤ楽しみます! よろしくお願いします!