人間に戻る手がかりを掴むまでの話   作:佐川野

112 / 116
本編で回収しなかった伏線回収をする番外編、スタートです!
数話で終わる予定です。


番外編 本編続き
111 おかえりー!


「ルゥパの兄貴ィイ~~~~~~!!!!!」

「どわぁあーーーっ!?!?」

 

 新たな決意を持って、いい気分で病院の屋上から地上に降りてきた途端。穏やかな朝の空気を吹き飛ばすような大声が、その空からやってきた!

 花火で加速する音が迫り、エリトラが風を切る。音と共に迫ってきたのは、センバさんだ!

 

「おはよ~~~~~~っ!!!!!」

「す、ストーーップ!!」

 

 ダイナミックな挨拶だなぁオイ! お久しぶり! ジ・エンドを攻略して以来だね! 出来ればもっと落ち着いて挨拶したいな!

 そんな気持ちが届いたのか、そうじゃないのか。センバさんは俺の頭上を過ぎて滑らかに着陸すると、勢いそのままに走り出して方向転換して、俺のとこまで真っ直ぐダッシュで来た。ぴょんぴょん跳ねる特徴的なダッシュで迫ってきたセンバさんは溢れ出す涙をそのままに、俺の腰に抱きついてきた。ぐるじい! 体当たりも同然な勢いだって!

 

「る、る、ルゥパの兄貴っ!」

「ぐぅ……おかえりなさい、センバさん。それと、おはよ」

「ズビッ……おはよー!」

 

 あぁもう、泣きすぎて鼻水出てんじゃん。ハンカチでちーんしよ、ね?

 センバさんがエリトラ花火でぶっ飛ばしたり、俺が叫んだりしたせいで、国の皆が起きてきちゃった。ヨシトさんに「うるせぇぞ!」って怒られつつ、積もる話は中でって事で朝食に誘われた。そういや、回復食(魔女だから結局食事要らないけど)を除いたら、まともな食事って本当に久しぶりだ。

 

「楽しみです」

「そうか」

 

 ヨシトさんに素直に言ったら素っ気なく、ただし嬉しさが滲んでる声色で返事された。

 

「照れとるん~?」

「うっせぇ作ってやんねぇぞ」

「遠征してきた僕を労ってぇや!」

「労って欲しけりゃ人を煽んじゃねぇよ」

 

 センバさんに乗っからなくて良かった~。朝ごはん抜きになるトコだった。というかセンバさん、遠征してきてたんだ。だから俺が起きた時も居なかったんだね。その話も聞きたいな。

 センバさんにまるで乙女のように腕に抱きつかれながら、ヨシトさんの後に続いて俺らも宿泊施設兼食堂に向かった。

 

 ヨシトさん直々に作ってくれたメニューは、味噌汁と炊きたてご飯と焼き鮭。あと玉子焼き。どれも発見と苦い記憶のある村で味わったものだ。あぁ、いい香り。そして美味しい。言っちゃああの村の人たちには失礼だけど、ヨシトさんが作った料理の方が美味しいかもしれない。センバさんも俺の隣で幸せそうに唸りながら食べてるし。

 

 食べながらセンバさんに「いつ起きたん? 何がきっかけやったん? これから何したい?」って質問攻めにあって、それに1つ1つ答えてたら、国の長・シターシュさんとハナコさん、ラクさんも食堂に来た。元気なセンバさんが「遅かったな! お寝坊さんら!」って挨拶したら「お前が早すぎるんだ」ってシターシュさんはあくびを噛み殺して言った。ラクさんもハナコさんも笑ってる。

 

「クリーパーに爆破されたんじゃって思ったよ~」

「ははっ、それはスマンかったな!」

「ま、いい目覚まし時計になったわよ」

「誰がニワトリや! コケーッ!」

 

 センバさんの瞬発力のある返しと意外と似てる声真似に、皆が笑った。ニワトリじゃん。やがて席に着いたシターシュさんが口を開いた。

 

「さて、センバ。君の遠征の結果報告を聞きたいが、どうする? もう少しルゥパとの再会を喜びたいか?」

「ん~……いや、先に報告するわ。ハナコも居ることやしな」

「あら、私も関係しているの?」

 

 ヨシトさんに注文して席に着いたハナコさんが頬に手を当てて首を傾げた。セリフの合間に味噌汁を口にしたセンバさんはゴクリと飲み込むと、真っ直ぐハナコさんを見る。

 

「あんさんがお世話になったっていう、トウヤとマイコの忘れ形見を見つけたんや」

 

 ハナコさんの息を呑む音が、かまどで魚を焼く音と混じって聞こえた。

 

「ヨシトが書いたレシピを届けようってトウヤ・マイコ村を訪問したワイに、1人の女の子が話しかけてきたんや。その子の名前はヨネカ。トウヤとマイコの子供やって自己紹介してきよった。クラフターがクラフター同士で産み落とした子供。やからか、ワイのことをクラフターやと見抜きよった。そんで、ヨネカは自分を連れて行けと、自分をクラフターとして強くしてくれって言ってきたんや」

 

「そのヨネカちゃんは?」

「詳しく話を聞く前に、ルゥパの兄貴が目ぇ覚ましたって連絡入ったからな。何も決まらんウチに飛んできてもうたわ」

「そうか。なら彼女の進退は追々だな」

 

 国に住人が増えるならいいけど、子供かぁ。今の親元から離してもいいのかって問題もあるし、じっくり考えた方がいいね。納得して玉子焼きを一切れ口にしたら、厨房でお米を茶碗によそってたラクさんが「その話が本当なら、びっくりだね~」と言った。

 

「外からの異物のクラフターでも、この世界で愛し合って子供が出来るってことでしょ~?」

「え? それの何がびっくりなん?」

「だって、この世界はマインクラフト。ゲームではクラフターに子供は産めなかったでしょ~?」

「あー! そういう事か! 確かにビックリやな!」

「?????」

「安心しろルゥパ。私もよく分からん」

 

 あっ、シターシュさんも分かってないなら焦んなくていいや。

 そういや、そっか。エンド攻略の時にセンバさん言ってたな。センバさんたちクラフターは元々生きていた世界が違う。こちらの世界のことはゲームってので見て知っていたって。そうなのか、なんでも作れる強い人たちでも、子供は作れないんだ。いや、作れたからビックリしてるんだよね? でもなんで作れないって思ってたんだ? アレ? 子供が出来たのに、どうしてトウヤさんとマイコさんは子供を置いて居なくなったんだ?

 

 疑問が疑問を呼んで混乱してたら、合点がいったらしいハナコさんが簡単に説明してくれた。

・ここで言うクラフターとは、別世界から迷い込んできた、村人ではない人間

・クラフターは基本的に死んでもベッドからリスポーンするが、例外がある

・例外1 難易度がハードコアである場合、1度死ぬとリスポーン出来ない

・例外2 20年の寿命を迎えること

・ハードコア以外は20年の寿命を乗り越えることは叶わない

・寿命を迎えるとクラフターは1度だけ願いを叶える力を手にする

・ゲームのシステムでクラフターから子供が生まれる事は有り得ない

 

「そーなるとぉー? えっと、もしかしてラクさんの恋人のシンさんは、難易度ハードコアだったー? んで、もしかしたらトウヤさんとマイコさんは、別のクラフターが望んでくれたおかげで、マイカちゃんを授かってぇー? でも寿命には太刀打ち出来なくて、置いていく形になっちゃったってことぉー?」

「溶けてる脳にしては確実に要点を理解してるわね。大体はそんな感じのことを彼らは言いたかったのよ」

 

 俺の理解力すごくね? ほぼ寝起きで情報もたった今足されたばっかなのに。長く寝すぎて頭の容量増えた?

 

「はー。願いの力ねー。寿命20年ねー。あれ? じゃあもしかしてハナコさんって、そろそろ……」

「ええ、だから骨を埋めにハナハタ村に戻ってきたのよ」

「チクショー、俺も同じだったのに、なんで結果こんなに違うんだよ」

「環境が違いすぎたんでしょ。というか、まだ生きてたいって考え直したんじゃなかった?」

「まぁ、そうですけど。そもそも雷で魔女になった人間の寿命ってどのくらいなんすか?」

「知らないわ。ゲームには寿命の概念は無かったから」

「え、俺ってもしかして、死なない?」

 

 やだっ、早く人間に戻りたーい!

 

「あ、話脱線させまくってスミマセン」

「私は理解が進んで助かったが、そうだな。今はクラフターの話だから」

「話終わったようなものだから、別に良いんだけどね~」

 

 ラクさんが許してくれながらハナコさんの分の朝定食を持って席に戻ってきた。お盆をハナコさんの前に置いたところで、完食したセンバさんが分かりやすく肩を落とした。

 

「終わってへんって。確かに決めるんは先の話になるやろうけどさ。この国にヨネカを連れてきたとて、ワイらはあの子を強くできるんかどうか……」

「あぁそうか。彼女はクラフターの間から生まれたが、私やルゥパと同じ現地民。クラフターの特徴を持っているかは不明だな」

「なあ、その辺りのこと、誰か知っとらん?」

「クラフター同士で子供が授かれる事も今知ったばかりなのに、知ってるわけ無いでしょ」

「そうやんなぁ……」

 

 今この場に居るクラフターの中で一番の情報通が、ハナコさんなのかな。そろそろ寿命を迎えそうなくらいこの世界に居るらしいし。その彼女が知らないなら、前例が無い、ってことなのかもしれない。

 空気が若干重くなったところで、雪玉ちゃんが1枚の紙をテーブルに置いた。これが噂の! あの小さな手で本当に文字を書くんだ! って喜んで紙を覗き込んだ。

 

『知ってるよ』

 

「えっ、なにっ、雪玉ちゃんたち何か知ってるの?」

「ワイらクラフターが知らん事を?」

「まぁ待て。彼らの中には我々よりもずっと長生きしている者たちが多い。知っていてもおかしな話ではない。先人よ、ぜひ話をお聞かせ願いたい」

 

 シターシュさんが彼女らしく仰々しい言葉遣いで願えば、紙を落とした雪玉ちゃんは『承った』とばかりにゆっくり頷いて、俺の頭に体当たりしてきた。なんで? って軽く仰け反ったら、雪玉ちゃんが俺の額から中に入ってった。

 わー、身体が勝手に動く気がするー。なんだこの、俺の体が乗っ取られたようなこの感覚ぅー。

 

「いいよ。ヘムスタッド村の皆を代表して、私が色々答えてあげる!」

 

 待って!??!???! 俺、喋ってないんだけど!? なのに勝手に口動いてんだけど!? コレもしかして本当に乗っ取られてる!? 心が病んでた時より悪化してない!??!

 

「お、君はサータか」

「お久しぶりだね~」

「魂から叫んだ時以来やんな!」

「今度は長くお喋りしたいわね」

 

 ちょっと待って、俺だけっ!? なんで俺だけがパニクってんの!? なに!? 俺の身体があからさまに乗っ取られてるのに、なんで皆の方が慣れてんの!? 魂から叫んだ!??! そもそもなんで皆、雪玉ちゃんがヘムスタッド村の皆って知ってんの!? 俺が寝てる間に、何があったの!?!?!??!

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。