人間に戻る手がかりを掴むまでの話   作:佐川野

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43 ソウルサンドは意外と怖い

 あの後、敢えてカッコつけない会話をスタークさんと繰り広げてドゥンさんを揶揄いながらハナハタ村に戻った。教会に戻って色々後始末を終えたら、ダイニングでやっと魔女から受け取ったメモを開いた。今回のおつかいの品の種類は5つ。見慣れたものに混じって意外な名前が並んでいた。

 

・砂  ×30

・石炭 ×10

・火薬 ×10

・砂糖 ×10

レッドストーンダスト ×10

 

 んー? 砂と石炭はガラスを作る為で、火薬はスプラッシュ瓶を作るのに必要。砂糖は俊敏ポの為だって分かるけど、レッドストーンダストは何の為? 俺と違って生まれ落ちた時からポーションの全てを知っているとか言ってたし、無関係ではないだろうけど。それに前々から粉系は素材としては興味あったから、魔女からそのヒントを貰えるのは助かる。

 にしても今回は楽だなー、ちょっと遠征すれば直ぐ揃うじゃん。なんて思わず笑ってたら、キッチンで麦茶を淹れてたヘイリグさんがメモを背後から覗き込んできた。

 

「いやん、えっち」

「えっちって。それよりも、その紙には何が書いてあるんです? 暗号のようですが」

「えっ、あ、暗号?」

 

 何言ってんのヘイリグさん、コレ普通に書いてあるんだけど……ハッ!?

 

「へ、ヘイリグさん、この文字読めないんですか?」

「え、ええ。相手は君が師事している魔女でしょう? 他の人間に秘密を簡単に洩らさない為に暗号にしている、と思っていましたが、その様子だとそうではなさそうですね」

「俺にはコレ普通に読めるんすよね~。あーーーー」

「麦茶、飲みますか?」

「もらいます」

 

 自分がやっぱりモンスターなことに絶望してたら、すかさずヘイリグさんが気遣ってくれた。メンドくさい奴でスンマセン。

 ヘイリグさんがこの文字を読めないのは、人間と魔女で言葉が通じないからそれの延長だろう。って言ったらヘイリグさんに俄然興味持たれた。前のメモをねだられた辺りから本気度が伺えますわ。俺自身が自然に見分けてるせいで、翻訳しようにもちょっと手間取ったけど、「この文字がそれだ」って言ったらなんか、メモに齧り付いて観察してたから、勝手に解析してくれそう。やっぱり聖職者って根底は探求者でもあるんだろうな。知りたがりで、冒険者なんだ、きっと。

 

 さて、これから俺はどうすっかな。一先ず明日はドゥンさんにレッドストーンが採掘できる場所教えてもらうだろ? その後は試したい粉類の素材を試して、いつも通りカヌプとパーデたちの修行の相手して。その次の日はそろそろネザーに潜って素材集めして、その次の日はまた砂漠に遠征して砂と石炭を採取して。あ、砂糖替わりにハチミツいただきたいなぁ……エメラルド払え言われるかなぁ。いや、言われないとおかしいよなぁ。

 

 今はやる気漲る半人前君たちの相手をしてくれているからって、大人たちはエメラルドを免除してくれてるけどさ。これから1年間ずっとそういうわけにはいかなくない? ホテル住まいの時と一緒で、俺が許せねぇ。

 っていうのをドゥンさんに、ドゥンさん家の畑の種まきを手伝いながら相談した。俺はてっきりドゥンさんの親は先生だと思ってたよ。農家だったのねドゥンさん。そうでありながら自警団のNo.2でレッドストーン研究家って、体力すげーな。昨夜は流石にファントム飛んでなかったけど。

 

「はぁ……。村から脱走したカヌプくんとパーデくんを保護し、クリーパーから助けてくれたからホテル暮らしになって、半人前たちのやる気を出してくれたからエメラルド永久免除になったのに。まだ我々の恩を遠慮するんです? それは却って失礼だと思いませんか?」

「え、え? 今俺もしかして怒られてる?」

「ウチができる恩返しがこれ以上無いんだから、あんまり働かれると困るんですよ」

「そんなぁ」

 

 俺がエメラルド払わなくってもハナハタ村の人たちは別に嫌な思いにならないってハッキリ言ってくれただけ、安心出来るけど。働かれると困るってなんだそら。

 

「自分を安売りしてると、いつか痛い目を見ますよ」

「んなこと言われたって、エメラルドが要らない買い物に慣れてないんだよ。てか現状買ってねぇし。モノ貰っておいて何も返せてないのは精神衛生上悪いの」

「まったく……。あなたにはやりたい事がいっぱいあるんでしょう? それをやってたらいいじゃないですか。なのにこの村に尽くそうとするから、こうやって私に付け込まれて、畑で野菜の種まきをさせられるんですよ」

「相談に乗ってる正当な報酬として受け取ってください」

「過剰なんだよなぁ」

 

 ずっと屈んでて疲労が溜まった腰を伸ばしながら、ドゥンさんが呆れからくる溜め息を吐いた。見れば見るほど麦わら帽子がよく似合ってる。

 インベントリから取り出したカップで飲み水用の大釜から水を掬う。豪快な動きにそそられて、俺もドゥンさんに倣って飲んだ。しゃがんだら土で汚れるからって厚い革の白コートは脱いでるとはいえ、やっぱり暑いからね。

 さして冷たくはない水を一気飲みしたドゥンさんがこっちを見て、コウモリ色の目を細めた。

 

「……そんなに暇なら、やってほしい事があります」

「あ、改まってなんすか。可能な限り力になりますけど」

「安売りすんなつってんだろ。……貴方にお願いしたいのは──」

 

 ドゥンさんから提案されたお仕事は、俺に邪悪な笑みを浮かべさせる、楽しいものだった。それを正面から見たドゥンさんがあからさまに嫌な顔をしたから、楽しいのは俺だけかもしれねぇけどな!

 

 日程とか場所とか人集めるのは全部ドゥンさんに丸投げして、俺はその間に自分のやりたい実験を試すことにした。

 小麦粉・レッドストーンダスト・塩・砂糖・骨粉・ブレイズパウダー・グロウストーンダスト・各種花の花粉。今思いつく粉を全てかき集めて、奇妙なポーションとかけ合わせて実験すること、3日。失敗せずに出来上がったポーションは既存の俊敏と力のみ。ならばと、その出来た2種のポーションに効果時間延長のグロウストーンダストよろしく小麦粉らをかけあわせた。他の粉がポーションの色を濁らせたり溶けずに残る中、レッドストーンダストの時だけ、変化が現れた。グロウストーンダストの時と同じように、瓶の中で赤いキラキラとして揺蕩っていた。魔女がわざわざ集めるように言っただけある! これは期待できる! って思ったのに、飲んでも効果の増幅は確認できず、なんの作用が有るかは今のところ、よく分からなかった。だけど毒にはならないし、可愛らしいのでOKです!

 

 そんで、こんだけ連日ポーションを作ってたら当然、殆どのポーションの素になるネザーウォートがなくなってくる。だから村の外の小さな洞穴にある、ヘイリグさんが開けたゲートからネザーに単身突っ込んだ。

 緑色が、色んなものが歪んでいるとはいえ自然があることにメチャクチャ驚いた。ネザーにバイオームがあるなんて知らなかったわ。ネザーにもエンダーマンって湧くんだ……。いくつか持って帰ろうと思ったけど、なんか悪い作用したら怖いからハナハタ村に居る間は止めとくことにした。

 ヘイリグさんのシマを荒らさない為に、少し遠くまで向かった。松明を置きながら進む道中でソウルサンドを回収しつつ、見つけた未探索そうな要塞からネザーウォートを採取した。また採取できるように、ちゃんと次のを植えつつね。

 雪玉ちゃんたちにも手伝ってもらいながら、要塞から余すことなくネザーウォートを採取したら、今度は要塞の外でマグマキューブとブレイズを暗殺して、マグマクリームとブレイズロッドの回収。インベントリの1スタック分をそれぞれ集めたら、集める()は全部回収した。

 

「後は、奴らの動きをよく見て覚えねぇとな」

 

 ドゥンさんからの頼み事をしっかりこなす為に、ネザーで俺がよく接敵する、そして素材が取れるモンスターの動きをよく見て覚えておく必要があった。つまりはアレだ。今カヌプ達にやってる鍛錬の、ネザーのモンスター版だ。

 まず1番の脅威はガストとブレイズか。どっちも浮遊して、コチラを見つけると降りてきて火球を飛ばしてくる。遠距離攻撃はなんでも恐ろしいから、対策するならまずはコイツ等だろう。

 しかし火球は火球でも、ガストのは打ち返すことは出来ても、ブレイズのは打ち返せない。まず3連弾だから打ち返すより避けた方がいい。だけどこちらは盾で衝撃も火も抑える事が出来るし、距離もブレイズは短い。それよりも長い距離をとって本体を弓矢で狙撃してやればいい。

 あ、そういえばガストの火の玉って直線的な軌道じゃなかった? 俺そんな風にモノ投げられないよ? うーん、ま、いっか。

 

「にしても、狙われないって楽ね」

 

 さっきから、俺が割と至近距離から見上げるガストは俺の存在を気にせずマグマの滝を浴びている。燃えてるけど、全く気にしてなさそう。そりゃそうか、溶岩浴しても何の問題もないんだもんな。

 

 最後にネザーラックの上に居たガストに喧嘩売って、火の玉打ち返して殺してから元の世界に戻った。せっかく殺したガストからは火薬しか出てこなかった。あんなでっかい図体してんのにひと握りとか、ケチってんじゃねぇぞ。

 

 

 ネザーから帰ってハナハタ村に戻ったら、カヌプとパーデに迎え入れられて、泣きながら抱きつかれた。入ったことはなくても、話で聞いてネザーがどれだけ危ない場所か知っているらしい。

 

「け、怪我がなくって、良かった~!」

「帰ってきてくれて、ありがとう~!!」

 

 俺の胸に縋って泣いて帰りを喜んでくれる姿が、サータちゃんに重なって、気付いたら泣いてた。「最近泣くこと多いな」ってカヌプに笑われたけど、俺は元々泣き虫なんだよ! 誇れることじゃないけど!

 

 そんなやり取りがあったおかげか、俺のやる気が潜在的に上がっていたらしい。

 ヘイリグさんに過去にやっていた対ネザーの訓練について話を聞き出したり、一緒に訓練の内容を考えてもらったり。いつか俺が神父さんから習ったやり方とかも思い出していく。

 日程と場所が整ったとドゥンさんから報告を受けると、丸石を砕くピッケルを持つ手に力が入った。ジャガイモサイズの小石とかぼちゃ1/4サイズの石をそれぞれ1スタック分準備して、必要になるだろうポーションを用意して、ドゥンさんが手配してくれた日を楽しみに待った。

 

 魔女からのお遣いの品を全部用意できた頃、その日はやってきた。不意打ちがしたくて、自警団の訓練場へ使ってない時間帯に忍び込んで地面の土をソウルサンドに入れ替えた。流石にスタークさんにも許可は貰ってからね。

 敷き詰め終わったらその場から離れて、近くの木の裏で鍛錬志望者が集合するのを待つ。志望者達は皆一様に土からすり替わったソウルサンドに驚き戦いていた。足で触れて感触に悲鳴を上げたり、見た目が気持ち悪いと不満を漏らしたり。「誰だよ、こんな汚い砂置いた奴!」なんて声も聞こえる。失礼だな。そいつは俺らポーションに関わるものにとって、そしてこれからお前らにとっても大事で、知らなきゃいけないブロックなんだぜ?

 志望者全員が集まったと知らせる合図は、ドゥンさんが時計を持って左手首を右手でトントントンと、3回叩く動作。それをきっちり見届けたら、跳躍ポと低速落下ポの2つを飲んで木の裏から飛び出し飛んだ!

 

「キュゥウウア”ッ!!」

「な、なんだっ!?」

「向こうだ!」

「えっ、ルゥパ!?」

 

 奇声をあげて上空高くに飛び出した俺の登場に、志望者の大半が俺を目で追って驚くだけ。ねードゥンさーん、俺警戒しとくよう伝えましたよねぇ? 「時間が来たら、訓練場はネザーになったと思え」って!

 空中で思い切り振りかぶって、1/4カボチャサイズの石をブン投げてやる。流石に、武装してない人に当てるのは心苦しいから、誰もいないソウルサンドの上に。デカイ石の衝撃を受けたソウルサンドはグチャッと粘着質な音を立てて、ちょっとだけ砂を飛び散らせて石を受け止めた。その一連の動きをゆっくり見届けられたのは、上空からゆっくり降下しているから。

 

「なっ、何すんだお前!」

「てか、なんでそんなゆっくり降りてきて……?!」

「こわっ!」

「……ドゥンさん、スタークさん。今回俺がやりたい事、伝えてないんすか?」

「伝えたんだが、つもりになっていたみたいだ」

「もっと危機感を煽る言い方にすれば良かったですね」

 

 全身鉄装備に鉄の剣に、盾。警戒が実体を持ったらこうなるんじゃないの? って格好の2人が謝ってくるのはなんだか気が抜けちゃうな。どこにも金の防具が無いところがまた間抜けポイント高い。やっぱり忘れてんだな、ヘイリグさんの指導。

 やっと着地したら、ゆっくり歩いて志望者のもとに行く。流石にあんな会話があったもんだから、志望者たちも防具を装備したり武器を構えだしてはいる。警戒が一歩出遅れたな。でも、その一歩がお前の命を危険に晒すんだ。

 

「こんにちは。ドゥンさんからの依頼で講師をすることになりました、ルゥパです。自警団の皆さんにネザーのモンスターの特徴を話し、その脅威の1部でもお伝えすることが私の役目です。ですので、不意打ちをしたのは謝りません」

 

 腕を体の横に垂らしたままの不遜な態度で、でも大真面目に謝罪を拒否する。すれば俺より年下(見た目は俺と同じくらいだけど)な自警団員は反抗的な目で俺を見る。青いなぁ。

 

「それだけ、ネザーは常に緊張し警戒しなければならない危険な世界なんです。あなた方が心の準備をしていようがそうでなかろうが、ネザーとは、水が存在し得ない程酷く熱いマグマ溜りの中のような環境で、敵しかいない上にいきなり巨大な火の玉が飛んでくる、死と隣り合わせの世界なんです」

 

 「怖気づいたのなら、去ってくれても構いませんよ」と左腕を払って言ったけど、誰も動くことは無かった。ま、今動くのはちょっと勇気いるよね。多分次から来なくなるかな。

 さて、どうしたものか。ヘイリグさんからネザーのモンスターの特徴は勉強しているもんだと思っていたけど、足りてなかったのかな。

 

「今回はネザーでもとびきり巨大なモンスター、ガストについて色々お伝えしたいと思っているのですが、皆さんどこまで知っていますか? 代表として……そちらの青い上着を着ている方、お答えください」

「えっ、あ、えーっと……。白くて、とにかくデカくて、こっちを見つけると火の玉を飛ばしている、ネザーの空を浮いてるモンスター、ってことくらい?」

 

 俺に指名を受けた青年は狼狽えつつもしっかり答えた。うーん、70点。でも実際に敵対したことないなら上出来じゃない?

 

「悪くない知識量ですね。付け加えると、ガストはたまに、子供のような猫のような高い声で呻き鳴いています。巨大で、頭の比率が大きすぎるイカのような見た目をしていて、いつもは閉じている目はコチラを認識すると開き、不気味な赤い目でコチラを捉えてきます。先ほど私がしたような大きな金切り声を上げながら飛ばしてくる火の玉は人の体ほどの大きさをしており、避けたとしても衝撃で地形を変え、ネザーラックを燃やします。燃える地面で戦うのは、辛いですよ」

 

 言えば言うほど、若い団員さんたちの顔色が悪くなっていく。あなた方が行きたい世界とは、こんな危険があるんだよ。だから、俺は自分が体験した事実しか言わないぞ。

 

「とはいえ、撃退法が無いわけではありません。地形が変わる程の爆撃力と言いましたが、丸石はそれに数回耐えるのでいざとなったら積み上げて盾にするといいでしょう。実際ネザーポータルは丸石で囲んでいます。それに直線的な軌道で飛んでくる火の玉は打ち返すことができ、それが当たれば返り討ちにできます。打ち返す方法は矢でも剣でも、勇気があるなら拳でもいいでしょうね。意外と吹っ飛びます」

 

 そこかしこから「いやいやいや……」って声が聞こえてきたけど、こないだ拳を試したから間違いないぞ。こちとらネザーに行くなら火炎耐性ついてんですわ。拳砕けるかと思ったけど、そこはほら、治癒のポーションあるし。

 

「そもそも敵対したくないのなら、目が合わないようにブロックを積んで隠れながら移動するのがいいのかもしれません。が、目的地が決まっていないなら現実的ではないですね。なので、接敵しても逃げられるように、このソウルサンドの上で繰り返しダッシュしましょう」

「こ、この気持ち悪い砂の上で!?」

「いちいち文句言わない! ほら4人ずつこっちから並んで、反対側に走る!」

 

 やる気があるのか文句が言いたいのか。ヘイリグさんはソウルサンドの上で走らせては無かったって言ってたから、初回はこれ1本で終わりかな。

 20人近くいる志望者が皆ダッシュを5周したところで、2人が列から離れて俺のとこに来た。粘着質な地面に足を取られて上手く走れて無かった2人だ。さっき俺を睨んでた青い若者ともいう。

 

「どうしました? 質問なら喜んで受けますよ」

「あ、はい……。そもそもなんすけど、あの砂ってなんですか? 足が沈むから走りにくいし、奇妙な模様してるし……」

「あれを避けて逃げるのって出来ないの?」

 

 一旦拍子抜けしたような顔をした彼らだったけど、それでもしっかり質問してきた。不満をぶつけにきたわけじゃないのね、良かった。

 

「あの砂はソウルサンド。私たちが使っているポーションの基礎素材になるネザーウォートが育つ唯一の砂で、粘着質な砂です。変な模様に見えるのは、名前から想像できるのでは?」

「……うそ、じゃん」

「やばぁ……」

 

 変な模様に見えるのは、人間の魂の形だろうと先人たちは結論づけている。そこが地獄と、悪さをして落ちた魂の終着点と聖職者たちは考えているから、人の顔の形に見えるそれを“ソウルサンド”と名付けたのだと。魂を含んでる砂なんて、気持ち悪いよな。俺もなるべく踏まないようにしてるし。

 

「そんなに驚かなくても。人も動物も植物も、腐り落ちたら土になる。天に昇れなかった魂がそのまま砂に含まれたと思えば、そんなに怖くないですよ」

「何言ってんのお前」

「いや怖いだろ。それなら沈むのって、引きずり込まれそうになってるってことじゃないの?」

「あー、想像力豊かですねー。それなら、あなた方はあまりまじまじとアレを見てはいけないですね」

 

 そこで言葉を切れば、彼らの顔がさらに強ばっていく。言っとかないと悲しむ人が居る。楽しいっていう感情に必死で蓋して、若干脅すように彼らを見据える。

 

「感受性が高いなら、きっと奴らはあなたたちに救いを求めてしまう。奴らの言葉に耳を傾けてしまえば、あっという間に引きずり込まれてしまうでしょう。だから、意識して見てはダメですよ」

 

 俺の言葉を聞いた彼らはしっかり意味を受け止めて、顔を青くさせた。しっかり肝を冷やさせたところで、笑顔を作って姿勢も崩してやる。

 

「そういうわけだから、ネザーに潜っても存在を無視できるように、それとモンスターから逃げる時に問題なく走れるように、今のうちにメチャクチャ走って練習してきてください!」

「お、おう」

「い、行ってきます」

 

 夜ふかしする子供のように俺に脅かされた青年2人は、素直に志望者の列に戻っていった。ソウルサンドの話はあの2人から広まっていくだろうな。いずれ触ることになるから、警戒するべきだと知っておいて損はないでしょ。

 にしても、思っていたよりネザーを知らなかったな、ここの人ら。ヘイリグさん優しすぎて、無理やり習わせられなかったんかな。いや、あんまり厳しくしてると嫌われて、住めなくなるって思ったのかもしれないか。なら、1年後には必ず居なくなる俺が思いっきり扱いて、嫌われ役を買った方がいいな! よし! ある程度走らせて疲れてきたところで、ガストの火の玉代わりに石投げつけてやろう! 休憩挟んで万全の状態で避けさせろ? ハッ! ネザーは常に熱くて体力消耗すんだから、関係ねぇっつーの!

 

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