人間に戻る手がかりを掴むまでの話 作:佐川野
ハナハタ村から走って戻ってきたヨシトさんはシターシュさんの所に行くなり、笑顔で矢継ぎ早に見たもの体験したものを語っていた。すっかり興奮しているヨシトさんは早口でまくし立てていて、頭に口が追いついていない喋り方は正直そんなに聞きやすいものじゃない。けれど、聞く相手であるシターシュさんは楽しそうに、愛おしそうに聞き入ってたから、俺が気にするようなことじゃないんだろうな。
ヨシトさんからちょっとぶりのハナハタ村の調子を聞いて、カヌプたちがサボってないことやスタークさんたちが傷だらけになりつつも頑張ってるのを知ってほっこりした夜。国建設予定地から少し離れた、そろそろ領土に取り込まれそうな場所にある横穴拠点で治癒のポーションを作ってたら、ヨシトさんが勝手に入ってきた。いつも通りだからこそ、メチャクチャ慌てた。やっべ~! 昨日までの2日間はヨシトさんが居ないからって徹夜で作業してた。でも帰ってきた今日からはまた日没と共にベッドに横にならないといけなかったのに! やらかした!
「すっ、すっ、すみません! すぐ寝ます!」
「いや、まだいい」
「え? ヨシトさん?」
手をかざして俺を制したヨシトさんは、普段よりも硬い表情を浮かべていた。いつもなら怒鳴ってまで寝かしつけてくる彼が、今日に限っては「まだいい」とは。
「何か、俺に相談が?」
「察しが良いな。……まぁ、雑談みたいなもんだ」
「めっずらし」
シターシュさんを任されるくらいには彼から信頼されてるって自負してるけど、同時にライバルとして警戒されてるとも思ってた。だから、わざわざシターシュさんが居ないここでお喋りしようだなんて、意外だな。
相変わらず1つしかない椅子に遠慮なく腰掛けやがるヨシトさんの表情は曇っていた。
「ルゥパ。……お前は、種族が異なっていても、愛し合うことは可能だと思うか?」
「異なる種族が、愛し合う?」
え? なに? ヨシトさん向こうでミツバチちゃんに恋した? それとも急に文学に目覚めた? らしくないこと言ってんなぁって胡乱げに思ってたけど、俯くヨシトさんの顔はやっぱり固くて、俺に本気で聞いてるんだって気付いた。
考える時間を稼ぐ為に、出来たポーションを粗熱を取る木箱に詰めたり、冷ます為の水流をせき止めてるトラップドアをレバーを下ろして開いたりした。水路を右から左へ流れる水が時の経過を教えてくれていた。
「……動物をそういう目で見た事なんて無いですし、雪玉ちゃんのことは愛してても、それは家族の情であって肉欲は伴いません。なので、俺自身の体験だけで言ったら、『分からない』のが答えっすかね」
「……『ありえない』、ではなくて?」
「旅してても、世界の全てを見てきたわけじゃ当然ないっすからね。どこかには居るんじゃないっすか、他の動物と縁を結ぶことを選んだ人。それで幸せなら外野が言うことは何もないですよ。幸せなら」
「……幸せなら、か」
「あ、お互いっすからね? 一方的な愛とか押し付けるだけの愛は良くないって本で見ました!」
「そうだな。相乗効果を生む愛が理想だな」
一瞬でも考えたことが無かった事だから、ひとまず角が立たないようなことを言った。それでも他人の意見を聞けたことで安心したのか、ヨシトさんはやっと顔を上げた。にしても、急にこんな質問するなんてどうしたんだろ。……あぁ、なるほど。
「確かに、シターシュさんの言葉には人を動かす力がありますもんねぇ。はぁ、シターシュさんって人間じゃなかったのかぁ」
「勝手に勘違いした上に納得すんな」
「えっ、違うんすか? ええ……?」
じゃあ、どんなきっかけがあって、あんな話題を持ってきたんだ? ハナハタ村に行って帰ってくるなりのこの話題……。
「早く寝ろよ」と言い残してヨシトさんが出てったすぐ後で、ある可能性がポンッと頭に浮かんで、衝撃的すぎて目眩した。
「ま、まさか……! 魔女の言葉をマスターしたヘイリグさんが、先パイと仲良くして、そういう仲に発展してたりすんの……!? スヤァ……」
あまりに酷い目眩だったからベッドへ横になってたら、いつの間にか寝てた。まさか、この不思議現象に救われる日が来るとは……。
翌日は朝から雨が降っていた。それが丁度いいと、ヨシトさんが彼らの木造拠点に俺を案内してくれて、何かを作り出した。見て覚えて旅先で広めてくれ、とのこと。
「報酬は、トンカツだ」
「やっとだよ」
最初に名前が出てから4日経ったんじゃない? 待たせすぎ。
調理テーブルの上に置かれていたのは、大量の豚肉の脂身。既にカット作業に入っていたシターシュさんに倣って俺も細かく切ってる横では、いつの間にか床も壁も丸石にアップグレードしてるキッチンでヨシトさんがジャガイモを少し太めにカットしたり、ニンジンを千切りにしたりと別の下ごしらえしてた。
一頭分あるんじゃないかっていう豚の脂身を、スペースが許す限り雪玉ちゃんにも協力してもらいつつ無心で細かく切り続けた。自分の分をやっとの思いで切り終えて顔を上げると、シターシュさんもヨシトさんも雪玉ちゃんたちも、それぞれの食材をひたむきに切り刻み続けていた。皆が食材に向き合ってる姿が、食堂の調理場みたいだなーって微笑ましくなっちゃったわ。
細かく切られた脂身はヨシトさんお手製の銅鍋の底に敷き詰めて、焚き火台の火にかけた。量が量だからあと2つ同じように火にかけた。3人それぞれお世話する鍋ができたって感じ。
「これ、どのくらいでその、ラードってやつになるんですか?」
「さぁ……。俺も初めて作るからな。あっという間に出来てくれればいいんだが」
「え? 作ったことなかったんですか? じゃあ、やり方を見たとかは?」
「いや、本で読んだだけだ」
「……ヨシトさんって、いつから料理に興味を持ったんですか?」
料理もそうだけど、国っていう概念のこともそうだ。俺と同じように旅人だって話だけど、そんな本、少なくとも俺はまだ巡り合ってない。一体どんな旅路を? そこでゾンビから人間に戻る方法があると聞きかじったのか。そもそも、元々はどんなところで暮らしていたんだ?
俺から見て右上を見て小首を傾げていたヨシトさんは、軽い調子で口を開いた。
「割と、ここ最近なんだ。昔はむしろ興味が無くて、焼いた肉とパンがあれば良いとすら思って過ごしてたくらいだ」
「それはまた、極端な……」
「ははっ、返す言葉もない。……で、しばらくして、ふと料理がしたくなってな、まだ村で暮らしてた頃に読んでいた料理本の内容を思い出して、今、少しずつ再現していってるって感じだ」
「お告げみたいな呟きは、その時読んだ内容を思い出してる……と?」
「あぁ。うるさくてスマンな」
「本当っすよ」
なんか、躱された感じはするけど、俺の質問には答えてくれたからいいや。いや? 最近ってだけか。
「どのくらい最近なんです?」
「え? あー……、お嬢の村にたどり着く少し前、だったな。料理の再現って言っても今までロクに料理したことがなかったから、まずは他人の作った料理を、と思って、滞在することにしたんだ」
「へー」
「確かに、最初は大人しかったな。だんだん独り言が増えて本性表して、私に目をつけられたわけだ」
「この悪癖がお嬢と俺を繋いでくれたと思えば、直す気にはなれませんね!」
「あれ? 惚気けられた? 当てつけられた? このやろう」
……めんどくっせーことに首突っ込んじまったのかな。偶然か故意か分からないけど、シターシュさんが間に入って話を逸らした。……そろそろ、だなぁ。時期的にも、順当だ。
そうこう話している間にも火にかけてる銅鍋の中の脂身から、澄んだ油が染み出してきた。こ、これがラード! 木べらでかき混ぜて油が出やすいようにしたら、あっという間に溢れ出てきて、鍋いっぱいに油が出来た! それを半円状の金網で漉したら、アッツアツのラードの完成! うおおおお! いい香りー!
別の深めの大きい鍋に移された油はやっぱり透明で、食欲を掻き立てるいい香りがする。なんか、これで野菜を炒めても美味しそう! 最近よくしちゃう食の妄想に浸ってたら、調理テーブルの上を片付けたヨシトさんがチェストから次のものを乗せた。水気を取ったくし切りのジャガイモと、小麦粉?
「トンカツって、ジャガイモから出来るんです?」
「いや、まずは小手調べにジャガイモを揚げて、フライドポテトにする」
「あげる?」
「このたっぷりの熱い油の中に泳がせるように調理するのが、揚げるっていう調理法だ」
「……えっ!? 贅沢~!」
今作ったこの油を全部使った料理だって?! 聞いたこと無いし勿体無い! ……けど、この匂いがついた食べ物は、きっと美味しいだろうなぁ。だって豚肉がそもそも美味いもん。生唾飲んじまうよ。
くし切りのジャガイモに小麦粉がまぶされて、全てにまぶしたら入る分だけジャガイモを熱いラードの海に入れた。最初は静かだったけれど、だんだん素材から泡が出てきて、ブクブクと、パチパチと軽快な音を鳴らしだした。
「なんか、雨が屋根とか壁に打ち付ける音みたい」
「聞き覚えがあると思ったら、それだ!」
「あ~、確かにそうだな」
ちくしょう、渾身の例えだったのに。シターシュさんからは賞賛を頂いたが、焦げないようにジャガイモの世話をしてるヨシトさんには流された。つまんね。
数分揚げられ、生からベイクドポテト色になったそれは銅の網と組み合わさった銅トレーに移された。余計な油を落とすものらしい。ヨシトさんは揚がったジャガイモに塩を振り掛けると、一本ジャガイモを咥えてから俺とシターシュさんの前に差し出した。
「味見をどうぞ。熱いから気をつけてな」
「ありがとう」
「い、いただきます」
ヨシトさんからトレーを受け取ってフォークで刺して、火傷に気をつけてふーふーしてから揚げたジャガイモを口にした。
「!!!」
「こ、これは……!」
フォークで刺した時から分かってたけど、表面はカリカリで、中はホクホク。ベイクドポテトとはまた違う食感で、塩がジャガイモの旨みと甘味を引き立ててる! 油の、ラードの旨みも足されて、うわっ、うっま! ヤバいコレ止まんない!
「美味しい!」
「これが、フライドポテトか!」
「使う油や切り方によってきっと風味も食感も変わるだろうから、これからも楽しみだ。玉ねぎを揚げても旨いし、ニンジンでもカボチャでも、もしかしたらビートルートでも揚げればいけるかもな。なんならリンゴでも……2人とも、あんまり食べてると、トンカツ腹に入んなくなるぞ」
はじめましての美味し過ぎるフライドポテトにシターシュさんと一緒に夢中になりすぎて、途中からヨシトさんの話は頭に入んなくなってた。うわ~、離れがて~! 今さっき『そろそろ、別れの時期だな(キリッ)』とかやってたのに、胃袋ガッチリ掴まれてやんの~!
「ジャガイモの用意を少なめにしておいて良かった」なんて言ってるヨシトさんはジャガイモを揚げ終えると、キッチン横のチェストからまた材料を取り出し、調理テーブルに乗せた。銅のトレーにそれぞれ入っているのは豚肉数枚に小麦粉、生卵に……? なにこのモサモサしてるの。
「ヨシトさん、これは?」
「これはパン粉。これを付けて揚げればサクサクの衣になるぞ」
「パン粉……、まさか、パンを粉々にした?」
「その通り。食感も良くなるし、多分油の風味も吸ってくれるから更に旨くなるぞ」
「……早く揚げてください」
「すっかり虜だな」
ヨダレを垂らして懇願したら、笑われた。嬉しそうだから許してやろう。だから早く揚げてください。モタモタしてると噛むぞ。シターシュさんが。
ステーキサイズにカットされた豚肉を小麦粉・溶き卵・パン粉の順にくぐらせていく。フライドポテトより工程が多いな。1人1枚、3枚用意出来たら、いよいよラードの海に1枚ずつ入れてった。ポテトの時より少し重めなパチパチ音が鳴って、ジャガイモよりは長い時間をかけて周りのパン粉は白色からこんがりキツネ色になっていく。どんな美味しいものなんだろうって顔を近づけてたら油がバチンッて思ったよりも跳ねてビビった。笑ってるけどなぁヨシトさん。シターシュさんもおんなじ感じだったから険しい顔お前に向けてるぞ。
パチパチの泡の勢いが大人しくなると、取り上げてポテトと一緒のトレーに立てかけるようにして置いてった。
「牛カツ! チキンカツ!! ポテトコロッケぇ!!!」
「うわぁあっ、こわいよぉ」
「火を扱ってるんだから叫ぶな」
「余熱で火を通してる間に付け合わせのニンジンサラダ作りますね」
「ほんとヨシトさんの情緒ってどうなってんの」
サラダは簡単に、ヒマワリの種を絞って取れたオイルに塩を足したものを千切りにしたニンジンにかけて出来上がり。こっちも油だ。でも淡い黄色だけど殆ど無味無臭だから、ニンジンの味の邪魔をしなくていい感じだ。
「キャベツがあれば……」
「ないものねだりしてもしょうがないさ。さぁ、早く!」
「早く食べましょ!!」
「待ち遠しくしてくれるのは嬉しいんだけどな」
俺が並べた木の器にヨシトさんから奪ったサラダボウルからシターシュさんがニンジンのサラダを盛り付けたりってやってたら、彼は仕方がないなぁって感じで笑って、トンカツを切った。
木の器にはサラダと切られたトンカツと、少しの塩が盛り付けられた。フライドポテトは食い尽くした後だった。その器をダイニングテーブルに持ってって、さっそくいただいた。世界の全ての恵みに感謝を告げてから、フォークでカツを刺す。フライドポテトの時とは違うサクサク感が俺の胸を高鳴らせた。そのまま口にすれば、食感から香りから、味からもう俺を楽しませてくれる! パイとは違うサクサク感に、豚肉らしい歯切れの良い肉の食感、噛めば噛むほど中から熱くて旨い肉汁がブシャッと溢れて、あぁもう旨い! 何切れも食べちゃう!
「数作ってねぇんだから、大事に食べろよルゥパ」
「はい!」
「元気な返事だなぁ」
言われたから大事に、3切れ目はそばについてる塩を付けて、パクリ。ん~! 塩が脂の甘さを引き立ててて、おいし~!
「ルゥパ、ニンジンのサラダも美味いぞ!」
「そうなんすか? じゃあ早速……。っあー! ニンジン嫌いが悲鳴を上げる美味しさだー!」
「それ、褒めてんのか?」
「褒めてますって!」
ニンジンの味がそのまま食べるより強いってことっすから!
皿の上のモノが全部美味しくて、あっという間に平らげちゃったわ。雪玉ちゃんたちは香りで満足してる子、羨ましそうに見てる子、逆にウェップってなってる子と個性が出てた。なんか、ゴメンね? しかし、満足した。
「1口目は『いくらでもいける!』って思ってたのにな……」
「思ったよりも入りませんでしたね。この量で丁度良かったです」
「揚げ物なんかの油ものは満足度が高いからな。トンカツの前にフライドポテトも1人1.5個分くらい食べてたし」
「「そういえばそうだった」」
「お嬢とハモってんじゃねぇよお前」
「偶然じゃん許してよー……」
ヨシトさんは性格ブレるくせにブレないのなんなの。ご機嫌取りに皿洗いしよっと。
大釜の水の中に皿とカトラリーを突っ込んで、先に浸けてあった銅鍋とかトレーとかとも一緒に布で擦ってたら、後ろでヨシトさんがまたなんかブツブツ言い出した。
「残った肉かす……うどん……小麦粉・塩・水……昆布出汁……やっぱり醤油が……!」
時々俺にも分かる単語が混じってるのが気になってしょうがない。未だに降ってる雨の音でも聞いて気を紛らわせようとしたら、シターシュさんがこっちを手伝いに来た。ヨシトさんに睨まれるから止めてくれよ。彼女は俺が洗った皿を乾拭きして、壁に設置されてるチェストに入れてった。ありがとうございます。
「ルゥパ、旅の再開はいつごろを考えているんだ?」
「え? あー、雨が止めば、明日にでも」
「随分と急だな」
「そっちの質問こそ」
シターシュさんは溜め息を吐いて、「私の周りはどうしてこうも生き急ぐ連中が多いのか」なんて言った。別に急いでねぇよ。俺にとってはここは、よく言えば採掘場、悪く言えば通過地点でしかないもん。……それに、早めに出てった方が、そちらも安心できるんじゃないっすか?
「確かにこの辺りは未探索エリアっすけど、1年滞在したハナハタ村からさほど離れてないし、生えているものも見たことがあるものばっかりですし。未知を探しに行きたいです」
「ヨシトの料理は未知でも魅力的でもないと?」
「魅力的だからこそ、今のうちに離れときたいんですよ。あぁそうだ。雪玉ちゃんにお願いして鉱山を2つほど掘り当ててくれたので、どうぞご活用を」
「なんだって!? ……はぁ。私の周りはどうしてこうも私を驚かせる連中が多いのか。全く愉快な事だ!」
「管理が大変でしょうから、1つは湧き潰しして入口塞いどきますね。看板立てときます」
「助かる」
よし、でっかい置き土産の話もちゃんと出来たことだし、これならもう無理に引き止められることもないだろ!
「発酵したクモの目!!! 白醤油!!! 小麦ぃぃ!!!」
「うわぁあ! こわいい!」
「まだ考え事してたのか」
「ルゥパ! 発酵したクモの目の、あの、なんというか、時間のかかる作り方って、分かるか……?」
「え?」
いきなり叫び散らかして立ち上がったかと思えば、ヨシトさんは力が入っていた肩を竦ませながら、俺に尋ねてきた。ふーむ、やけに不思議なことを聞いてくるじゃん。人間なら普通、楽を取るだろうに。時間のかかる作り方に、意味があるのか?
注意事項を交えながら口頭で説明してから、「足りなかったり、もっと説明を詳しく聞きたかったら、ハナハタ村の聖職者、ヘイリグさんに尋ねてくれ」と案内した。そしたら不思議そうな顔された。
「なんでだ? お前に聞くだけじゃ事足りないのか?」
「嘘じゃん、聞いてなかったの?」
「ヨシト、ルゥパは雨が止めば明日にでも旅立つそうだ」
「はっ!? なんでそんな急に!?」
「いや、滞在してるのがおかしいくらいだから」
「労働力として雪玉ちゃんを何人か置いて行ってくれ! 報酬はなんか甘いものあげるから!」
「ヤダ! 俺は家族を売らねぇ!!」
「グッ!? うぅ……」
強めの言葉で雪玉ちゃんの取引を拒絶したら、ヨシトさんが罪悪感に苛まれた顔になっちゃった。あわわわ……。
「す、すみません、言いすぎました……」
「いや、謝るなルゥパ。今ヨシトが言ったのは、貴方が拒絶して当然の事だ」
「その通りだ……。スマン、ルゥパ。俺はお前の家族を道具のように扱おうとしていた。申し訳ない」
「も、もう、大丈夫です。謝罪は受け取りました、顔を上げてください」
「すまなかった……。それと、ありがとう」
深々と頭を下げていたヨシトさんだったけど、許して上がった顔は、少しスッキリしてた。よかったぁ、喧嘩別れじゃなくって! いい思い出だけで終わりたいもんな!
雨は結局、夜まで降り続いた。明日までには晴れるといいんだけどなぁ。スヤァ。