人間に戻る手がかりを掴むまでの話   作:佐川野

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※過度な捏造が含まれております。苦手な方はご注意ください。


63 口伝の歴史なんて

 私たち一族の祖先は、元来この地の、地下の住民でした。

 

 『全ての恵みは鉱石から派生する。故に鉱石を崇めよ』。一族の信仰はその精神の元、地下へ地下へと拠点を移して行きました。

 やがて辿り着いた深い深い地下は暗闇なのにも関わらずモンスターが湧かない、理想郷であったといいます。祖先はその地を聖地とし、神殿を建て、鉱石に感謝し崇め奉っていました。

 鉱石を神とし、神に感謝の意を伝える為に神殿は更に装飾が施され、唄や踊りは華やかになり、目に見えない神と通づる為に巨大なポータルも建てたそうです。そのポータルは動かなかったそうですが。

 

 祈りの成果があり、今に引き継がれる“魔法”を我々一族は授かりました。祖先は誇らしかったことでしょう。真の神とは天の太陽ではなく、地の鉱石であると発見したのですから。太陽がなくとも生きていけたらしいので、それもその思想に拍車をかけることになったのでしょう。

 そうして平穏が暫く続いた後、地下へ移住した一族が滅びを迎える事件が起こりました。

 

 突然、天が震え、壁が軋み、地が揺れた。立っていられないほどの揺れの末、地を割って《ナニカ》が現れた。

 それを祖先は『ついに神が顕現してくれたもうた』と最初こそ感動したそうです。神は天にいるのでも、ネザーのような異世界に居るのでもない。我々よりもっと地下からお恵みをお与えくださっていたのだと。そして懸命に祈りを捧げたからこそ我々にお姿を見せる名誉をお与えくださったのだと、信じて疑わず近づいた者から──虐殺されていきました。

 

 地から湧き出たナニカは魔法で我々を盲目にし、咆哮で耳を潰し、その太い腕で対象を捻りあげ、極めつけには衝撃波を放って遠くに逃げる者すら捉えたといいます。

 そのナニカが恐ろしいのは殺戮を軽々しく行う以上に、足音1つに反応して巨体を揺らして駆け寄ってくることだそうです。そう。そのナニカは、騒音を嫌って我々の祖先を殺戮し、モンスターが蔓延る地上へと追いやったのです。

 

 

 

「私たちは、その血塗られた地下から命からがら逃げ(おお)せた数名の末裔なのです」

「……す、凄まじい歴史を刻まれたのですね」

「フフフッ、きっと初めて聞く情報ばかりでしたよね」

 

 笑って指摘されたその通り、俺は確かに圧倒されていた。知らないことばっかだったから。なんだよ、地下に移住してたって。なんだよ鉱石が神って。なんだよ魔法って。なんだよ、地下から湧いた衝撃波を放つデカブツモンスターって。こ、怖すぎ! 地下を掘るのも程々にしないと!

 一族の歴史を話してくれたフェイツさんは先生モードを止めたのか椅子に腰掛けた。そうしてくれた方が気楽でいいです。

 

「一通り話せましたし、ここからは解説していきましょうか。何から聞きますか?」

「そ、そうですね……。なんだろ、鉱石を信仰対象にしているのも気になるし、わざわざ地下に潜っちゃったのもだし……」

「鉱石は我々の生活に欠かせないものでしょう? 石炭は燃料に、鉄は装備に、銅は日用道具に。レッドストーンはカラクリの動力となり、ラピスラズリは魔法の素材に、エメラルドは交易に用います。アメジストや金、ダイヤもその輝きが魅力的で力が湧いてきますよね? 何より石材は家を建てるのにもかまどを作るのにも欠かせないです。つまり、全ての恵みは鉱石から。そう考えて信仰対象とするのは不思議ではありませんし、好きが高じて常に鉱石に囲まれていたいと考える人間がいても、おかしくないですよね」

「ま、巻き込んじゃいましたか~」

「当時の権力者の命令には逆らえなかったのでしょうね」

「うわ~、大変でしたでしょうね」

 

 信仰の度合いくらい、自由にさせてやればいいのにね。

 それにしても。話を聞いていて、確かにと思うところがあった。鉱石が無かったら俺たちの生活は成り立たない。命を守れない。命を育む太陽より守ってくれる鉱石の方がありがたいと思っても、おかしくはないのかもしれない。俺だって牛信仰だしね。

 さて、モンスターが湧かない地下についてはどうでもいいとして。

 

「先ほど、その神殿を建てた地下はこの地のものだとおっしゃっていましたが、離れたりしないのですか? ……音を頼りに追跡してくるモンスター、失礼、ナニカが駆け寄ってくるかもしれないと、恐ろしくはないのですか?」

 

 地下のナニカをモンスターって言ったら、深緑色の瞳を持つ目を不快げに細められた。フェイツさんたちはソレをモンスターとは思ってないってことか。もしかしてソレも信仰対象? わっかんねぇな。自分たちの祖先を殺して追いやった奴だぞ。

 細められた目はそのまま閉じられ、フェイツさんは息を吐いた。

 

「確かに、恐ろしいです。ですが、そこは我らの祖先が眠る場所なのです。更に言えば、最も信仰が栄えた時代でもあるのです。去る者は追いませんが、この地に残る我々は、いつの日かあの地へ、いつでも戻れるようにしたいのです」

「住むわけじゃないにしても、近くでその機会を狙っているって事ですか」

「そのとおりです」

 

 去る者は追わないって事は、一族の全ての人間がその選択をするワケじゃないってことか。だから食糧事情も屋敷内で賄えるってことかな。

 

「ですがお話を聞く限り、地下のナニカをどうこうするつもりは無いですよね。どうやって祈りを捧げに行くつもりなんですか?」

 

 この人たちにとってナニカは崇める対象でもありつつ、恐怖の具現化みたいなものだろう。純粋に気になって尋ねたら、待ってましたとばかりにフェイツさんはニヤリと口角を上げた。

 

「無論、我々もただ手をこまねいてばかりではありません。先ほどお話した通り、ナニカは音を頼りに攻撃対象を探知しています。なので、足音を立てない努力を行いました。吸音効果を期待してカーペットを敷いたり、忍び足で駆けられるよう訓練を行ったり、スニーク速度上昇のエンチャントを開発したりと、我々も涙ぐましい努力をしました」

 

 エンチャント……確か職人魂の別の言い方だっけ。職人技じゃなくても、道具に力を込められる魔法の技術。専用のテーブルが必要で、付与される効果が割とランダムだからちょっと使い辛いものの、運が良ければいくつも力が込められることもあるという、ギャンブル性のある技術。でも開発って言ってるし、スニーク速度上昇はエンチャントテーブルで付与できるものじゃなくて自分たちで込める魂なのかな。少なくとも、俺じゃ付与できなさそう。

 フェイツさんは更にしたり顔の笑みを深めた。

 

「太陽信仰者ほどではないですがポーションも研究していますし、常にモンスターの驚異を感じることで警戒心を持ち鍛錬を怠りません。何より、“金のリンゴ”の発見は我々の悲願に希望の光をもたらしてくれました」

「き、金のリンゴ!?」

 

 金のリンゴっていやぁ、ハナハタ村にいた頃に作ろうと試してダメだったやつじゃん! 作れたのか!

 

「い、いったいどうやって!?」

「発見は偶然だったそうです。採掘中にたまたま金鉱脈を見つけた1人の作業員が、金をくすねたのです。悪巧みをした作業員はブロックにした金を土に埋め、目印にオークの木の苗を植えました。目印のオークの木はすくすくと育ち、収穫したリンゴは、金色に輝いていました」

「き、金ブロックと、オークの木……!」

「作業台で作るなら中央にリンゴを、周りに金の()()()()()を並べれば同じものが作れますよ」

「インゴット! コスト高いですね!」

「それはそうなのですが、その分の効果は凄まじいものですよ」

 

 凄まじいだって? 期待値が高まるじゃねぇか! てかそれはポーションの材料なのか? 何のポーションになるか言ってないけど、まさか、そのまま食べるのか? 咀嚼必要?

 

「金色に輝くリンゴを食べればあら不思議! 衝撃吸収の効果と再生の効果が得られます! 再生の効果はポーションだとガストの涙が必要ですから、それを金のリンゴで賄えるなんて素晴らしいですよね!」

「す、すげぇ!」

 

 素材1つで2つの効果ってのもビックリだし、ガストのドロップ品からもちゃんとポーション作れるって分かったのも収穫だわ! 作り方も教わったし、雪玉ちゃん1人ハナハタ村に行ってもらって、教えてあげよう!

 

「じ、実物を見せていただくことは……?」

「いいですよ。こちらが、そうです」

「おおおお!」

 

 フェイツさんが恭しくインベントリから取り出し、テーブルの上に乗せたのは、まさに黄金色に輝く美しいリンゴだった。ランタンの明かりを反射して輝くさまは眩く、間抜けに驚く俺の顔を余すことなく反射してみせた。こ、コレ、食べれるの!? 硬いんじゃないの!? 芸術品にしか見えないよ?

 

「こ、これが、金のリンゴ……!」

「差し上げますよ。歴史の授業を楽しく聞いてくださったお礼に」

「ゥエッ!? そ、そんな、こんな貴重なもの、申し訳ないですよ!」

 

 ポーションの素材になる金のニンジンやきらめくスイカみたいな金塊を使ったものじゃなく、その金塊を9個合わせて出来るインゴットでやっと出来上がるんだぞ。9×8で金塊72個分!? 改めて計算するとやっぱり気軽に手が出せねぇ!

 

「構いませんよ。……それに、我々は更に素晴らしい身体増強素材を開発、実用化していますからね!」

「そ、それは……!?」

「こちらの、金のリンゴです」

「!?」

 

 やっぱり金のリンゴなの!? ってまず驚いて、テーブルに置かれたもう1つの金のリンゴの輝きにまた驚かされた。に、虹色!? まさか職人魂こもってる?! どうやって込めた!?

 

「この金のリンゴには、エンチャントを、魔法をかけてあります。故に効果はただ金インゴットとかけあわせただけのものよりも数倍強化されています! 更に強力な衝撃吸収と再生効果、加えて火炎耐性に全てに衝撃に対する耐性が付与されるんです!」

「す、全ての衝撃に……?」

「窒息死することも無い、ということですよ」

「かえって恐ろしい!」

 

 何かに挟まれてもってことか! いや、命あるなら治癒のポーションで治るし、そもそも再生の効果で治るのか。すげぇ! ナニカの咆哮で耳がやられることも無くなるのか!

 魔法をかけた金のリンゴ1つでポーションにも無い効果を肉体に付与できるなんて、そんな素敵な話があるなんて!

 

「でも、そんな凄いもの、俺に見せて良かったんですか?」

「ふふふ、いいんですよ。どうぞこのエンチャントされた金のリンゴの話を広めてください? ……作れるものなら、ね」

「あぁ、そこが秘伝なんですね」

 

 自信満々にふんぞり返って笑うフェイツさんを見て、なんか安心したわ。なるほど、この色白一族さん以外には作れない、魔法っていうアドバンテージがあるから、見せびらかしてきたワケね。てか俺って一応魔女って括りなのに、魔法使えないの名前負けしてるよな。

 エンチャントされた金のリンゴを見た後じゃ、ただの金のリンゴがただのコスト高いポーションに思えてならないわ。でも、有用なのは変わらない。

 

「それじゃあ、お言葉に甘えて魔法がかかっていない方をいただきます。えっと、つまり、この金のリンゴがあるから、万が一地下のナニカに見つかっても逃げられる可能性が高くなる、という理解でいいんですか?」

「ええ」

 

 「取り戻せるといいですね。応援してます」って祝福したら「ありがとうございます」と素直に返された。祈るだけじゃなく行動してんだ。この人たちの目標、果たせるといいな。

 

「それじゃあ、これが最後の質問ですかね。……魔法って、具体的にはなんなんですか?」

「……それを知ったが最後、返してあげられませんが宜しいですか?」

「じゃあ聞きたくないです」

「潔いですね」

 

 なにそれ~。どんな魔法かどうか聞くだけでこの屋敷に囚われちゃうなんて、聞いてない~。それなら聞かない方がずっといい~。

 

 もう聞きたいこともなかったし、あんまり長居するのも(思ってたより早めに撤収出来るみたいだけど)皆さん落ち着かないだろうからって報酬の取引をしたらお暇することにした。解説の中でポーションの研究をしてるって言ってたし俺の知らないポーションも知ってたから、説明は結構省いて遣り取りしてんだけど、結局取り扱ってるポーション全種を5つづつ、つまりフルで貰われてった。まぁこちらも金のリンゴの情報だったり地下に行きすぎない方が良いって分かったから、悪い取引じゃないと思う。良かった、飲む方の、スプラッシュよりは薄めてあるやつもちゃんと作っておいて。

 テーブルのそばに置かれたチェストに12×5=60個の瓶を置いていってたら、雪玉ちゃんが肩から俺の背中に移動してった。なんか気まずそうにしてたから、フェイツさんが見てるのかなって思って振り向いたら、ニコッと微笑まれた。親しみやすいのに、何故か油断ならない、自己紹介の時のあの笑顔だ。

 

「どうしました? 雪玉ちゃんが気になります?」

「ええ、まぁ。初めて見る生き物ですので、人並みに好奇心は擽られます」

「そ、そうですよね」

「はい。なので、こちらからも色々とお尋ねしても宜しいですか?」

「あ、はい」

 

 聞かれたのは雪玉ちゃんってなんなのか、どこで出会ったのか、って大まかなこと。出会いは旅してたらいきなり俺から湧き出たとしか言いようがなかったし、なんなのかって聞かれても、なんでも持ってくれる可愛い子としか言えない。テレポートと俺と感覚共有出来ることはさすがに隠した。だから内容薄かったろうに、フェイツさんの興味は尽きないらしい。

 

「名前の由来はその見た目からでしょうか。とても可愛らしいですね」

「……絶対に、あげませんからね」

「おや、思惑がバレてしまいましたか」

「もしかして、俺をあっさり屋敷に上げたのは、この子が狙いでした?」

「いえ、そういうわけではありませんよ。単純に我々の歴史に興味を持って下さるのが嬉しかったもので、是非関係を持ちたいと思った次第です」

 

 嘘だ。よく嘘を吐く俺はこの空気を知ってるぞ。この人は今、本当のことに嘘を混ぜて喋ってる。優先順位、逆だ。この人は雪玉ちゃんを狙ってる。雪玉ちゃんが怖がってるのが何よりもの証拠だ。

 さっさと出よう。

 

「そうでしたか。……長居するのもアレですし、そろそろ行きますね」

「そんな、この屋敷の設備についてご興味は?」

「ありますが、住民の皆さんのストレスにはなりたくないので。普段は来客など滅多に無いのなら、片付いてないかもしれませんし? ポーションも詰め終わりましたし、お暇させて頂きます」

「……少々、残念です」

 

 俺と雪玉ちゃんに逃げられたフェイツさんは、肩を竦めて落ち込んでみせた。

 

 

 木の上を歩いてやって来たルゥパがわざわざ木の下から旅立って行くのを見送った後、警備の男、アックスは神官の若い男のフェイツに語りかけた。

 

「逃がして宜しかったのですか。見張りの者に聞きましたが、あの白い玉をフェイツ様はご所望だったのでは」

「そうでしたが、悟られて逃げられてしまいました。私の落ち度ですので、今回は潔く諦めます」

「今からでも追いかけて、強奪してきましょうか」

「いいえ、放っておきなさい。それが神のお導きなのでしょう」

 

 フェイツはそう言うと胸の前で手を組み、目を閉じて感謝の祈りを捧げた。警備のアックスも同じように続けた。

 

「念の為に情報を制限していたのが功を奏したのでしょう。我々も無理にかの青年を引き止める事態にならなくて良かった」

「金のリンゴについては?」

「我々の祖先も偶然発見したのです。彼が旅をするなら、どこかで偶然見つけていたことでしょう。それが早いか遅いかの違いです。しかし結局我々にしか、いえ、エヴォーカーにしかエンチャントされた金のリンゴは作れないのですから、ただの金のリンゴなど、明け渡して良い情報です。……第一、口伝の歴史なんて、いくらでも捏造できますから」

 

 祈りの格好を解いたフェイツの顔は、邪悪な笑みを浮かべていた。

 暗い森の奥に白い背中が消えていったのを確認した後、彼らは屋敷の中へと戻る。すぐそばにクリーパーが居たが、彼らは討伐することもなく、ただその横を通り過ぎる。クリーパーもまた、彼らに反応を示さなかった。

 

「そういえば、我々が力を貸した人間たちは今どうしています? アレイが納品されていないようですが」

「はっ。派遣されていた神官様からその報告を先ほど受けまして……。どうやら、復讐相手に殲滅されたようです」

「はぁ、返り討ちに遭いましたか。使えない」

 

 フェイツの吐き捨てるように告げる態度は、先程までルゥパに見せていた丁寧な態度とはかけ離れていた。

 彼らはそのまま目的のある足取りで階段を上がり、3階へと向かっていく。

 

「せっかくラヴェジャーとヴェックスまで提供してやったというのに。無駄にしてくれやがりましたか。……相手の村は」

「壊滅状態であったそうですので、同士討ちかと。しかし金目のものは(ことごと)く無くなっていたようですので、生き残った村人が新天地に向かったものと。そちらはどうしますか」

「いつもの通り、こちらに干渉しないのならば放っておきなさい。私たちが求めるのはエメラルドではなく、アレイなのですから」

 

 彼らの足は丸石で作られた部屋の前で止まった。頑丈な鉄扉をレバーを下げて開けて入れば、丸石で作られた窮屈な部屋が4つお目見えした。1マス填められた鉄格子から中の様子が伺え、その中には大釜1つと、青い体に薄い羽が生えた浮遊する生物が1匹、怯えるように縮こまっていた。

 

「今日はこの個体を私のヴェックスに加工する予定でしたが、期待していた供給源が絶たれてしまいましたからね。延期としましょう」

「アレイも安くないのに、痛い出費でしたね」

「ルゥパさんからのポーションの臨時収入が無ければ、やってられませんでした。これも我らが神のお導きでしょう」

 

 フェイツは再び祈りの形を取る。口元に浮かぶ笑みは柔らかであり、今にも呪詛を放ちそうでもあった。

 

 

「もう、やめて、雪玉ちゃん」

 

 雪玉ちゃんに左目を閉じさせられ、無理やり感覚共有されて見せつけられた、フェイツさんたちの裏の顔。俺としては捕まらず逃げられて良かったとしか思えなかったけど、別の雪玉ちゃんは俺の背中を引っ張って連れ戻そうとしている。

 フェイツさんたちがアレイと呼ぶあの青い生き物を救い出せって? 冗談じゃない。藪をつついてクリーパーが出る。あの人たちは追いかけようと思えばきっとどこまでも追いかけてくる。そんな奴らを敵に回す? 平穏な旅の終わりだ。

 それに、今いるあの子達を救い出したところで、また別のところから集めてくるでしょう? 魔法が何かも分からないし。攻撃的だったらどうするの?

 

「あの人たちも、目的の為なら手段は選んでいられないんだよ。俺だって、手当たり次第に素材をポーションにしまくってるだろ、クモを殺しまくってるだろ。何も、変わらない」

 

 でも、あの人たちはきっと、シターシュさんの村を滅ぼしたならず者に力を貸した。

 

「違うかもしれないんだから、滅多なことは考えない方がいいな」

 

 ひとまず、ここを早く離れよう。ここに居て良いことは、きっともう無い。

 俺を引き戻そうとコートを引っ張っていた雪玉ちゃんは1人ずつ俺の頭をしばくと、大人しく俺の中に戻ってくれた。……ゴメンね。でも、俺は、“人”を救う旅をしてるんだよ。

 




 人気作だったら炎上してた回。無名で助かったぜ。
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