人間に戻る手がかりを掴むまでの話   作:佐川野

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70 お揃いなれちゃうの~✩!?

 説明と言いながら俺の理解の範疇を超えた話を延々繰り出すセンバさんは、どうやら本当に人間じゃないらしい。一先ず、俺が分かる話だけでも纏めると。

 

 元々は別次元に生きていて、死んだらこの世界にいた。その特典(?????)かなんなのか、死んでも死なない身体になっていた。

 

 とのこと。もう、わっけ分かんない! 頭が痛みを訴えてくるわ!

 

「い、今この話をしたその意図は……?」

「ワイにはルゥパの兄貴みたいなテレポートの能力は無いから死ぬ時はしっかり死ぬやろうけど、気にせんでええからってことを言いたかったんや」

「……なる程ね」

 

 遊び感覚でモンスターを殺すセンバさんだから、たまにうっかり死んじゃうんだろう。知らないと俺が不必要にハラハラするだろうから、前もって言っとこうってことだったんだな。俺たちが再突入しようとしているのは、足を踏み外せば奈落に落ちる死地だから。

 

「最悪、生身特攻でも割と平気やからさ! もし、ワイの為にめっちゃポーション作っとるんなら、気遣い不要やからな!」

「えらく自信満々じゃん。そんだけ死んで生き返るのを繰り返したってことか~」

「そういうことやで!」

 

 俺一人分のスプラッシュポーションなら、もう十分作れてる。なら、次の準備を始めよう。

 

「それじゃあそろそろ。花火を作るついでに、ジ・エンドの次の世界の話、聞かせてくださいよ」

「おん! まずな~!」

 

 

 

 利用できるものは利用してけ。協力できるなら尚良し。という訳で、俺の抱えてる疑問や知りたいことをセンバさんから聞き出した。だから貴重品のドラゴンブレスを無駄にせずに済んだし、ジ・エンドの次の世界のことも予習できた。

 

 固有のモンスターのシュルカーは、追尾する遠距離攻撃で対象をふわふわ浮かび上がらせるらしい。そのシュルカーの殻で作る強化版チェストは、入れ物を壊しても中身が飛び出さないらしい。

 生で食べるとランダムテレポートするらしいコーラスフルーツが生る木も、どんだけグネグネ育つのか直接見てみたい。それを焼いて作業台で作れる建材ブロックは、綺麗な紫色をしているらしい。

 エンドシティだとか、エンドシップだとか、いつか人が居たのかと想像を膨らまさせる構造物があるらしいとか、シップの方にセンバさんの言う大空を滑空して移動出来る装備、“エリトラ”があるらしいとか。

 そんなエンドの次の世界に行くには、エンドゲートウェイポータルっていう、ただでさえ浮いてる癖に岩盤で囲まれて1マスくらいしか無いポータルを通らないといけないらしい。

 

 あー! 早く探検して~! でも、センバさんから聞いた話はあくまで、センバさんが別の次元からこの世界を模した“げーむ”を見て聞いた話。確実にこの世界のことを言ってるワケじゃないから、やっぱり警戒はしてかないとな。……スプラッシュポーションの中身とドラゴンブレスを掛け合わせたら、アイツが吐いた息みたいにポーションの煙が残留して効果が現れたから、大まかなところは相違わないんだろうけど。「醸造台の形がげーむと違う」って言ってたから、やっぱり100%一緒ってワケじゃない。うん。だから気をつけなきゃな。

 

 消耗した装備は金床で手入れした。センバさん用の食料も大量に準備した。足場にするブロックはブランチマイニングのついでにゲットした。センバさんはカボチャマスクをちゃんと被ったし、必要らしいエンダーパールは現地で取るって彼が言ってたから、もう、準備は済んだ!

 

「んじゃあ、また飛び込みますか!」

「エンド攻略、おかわり編やな!」

 

 開いた時と変わらない輝きを放つポータル。その前で気合を入れ直して、2人揃って飛び込んでやった! シュルカーの殻! コーラスフルーツ・プラント・フラワー! そして、“エリトラ”! 未知の素材に、ワクワクが収まんねぇ!

 

 一瞬の浮遊感の後、俺とセンバさんは再び黒曜石の足場の上に立っていた。この間と違うのは、島の端に奈落に落ちない為の壁が俺たちを囲っていることと、エンダードラゴンは居なくて、ゲートは開いたままだったこと。退路は保証されているみたい。ふぅ、安心した。

 

「……ん? ゲートの右奥に、なんか変なのありません?」

「お! あの岩盤で出来た浮いた柱がエンドゲートウェイやな! あれに挟まれとるのがポータルやで! 行こ!」

「……なんか、ちっちゃくないっすか?」

 

 カボチャマスクを着こなすセンバさんについて行ってゲートウェイとやらに向かう。上下が岩盤で挟まれているポータル。ゲートというには、なんだか小さく見える。そんな不安は近づけば近づく程募って、杞憂、とはならなかった。

 

「オイオイオイ……。ちいせぇじゃん、あんなところ、どう通るんだよ」

 

 ゲートウェイは浮いてるわ、ポータルは1ブロック分しか見えてないわで、幅がすっげぇケチんぼだ。こんなに小さくちゃ、前回見逃すのも納得だわ。

 

「ルゥパの兄貴なら雪玉ちゃんに先に言ってもらって、それからテレポートしたら良さげやけどな」

「あ、そうかぁ」

 

 俺の手のひらサイズだもんな、雪玉ちゃん。センバさんの話だと地上からジ・エンドに行く感じじゃなく、同じ世界の中でとんでもなく遠くに飛ばされる感じらしいから、雪玉ちゃんに行ってもらって安全確認してもらうのが俺はベストだろう。

 

「でも、センバさんはどうするんですか?」

「んー、ふっつーにしゃがんで突入してもええんやけど、あんま無粋なこと、せんでもええやろ! こんなにエンダーマンがおるんやからさ!」

 

 元気に何か言ったセンバさんは、なんの脈略もなくボートをいきなり置いた。こ、この辺りに、水辺ってあった? 声も出せずに驚いてたら、彼はボートに乗り込んで、近くの黒曜石の柱に向かってった。あっ、動くんだ……。俺が歩くよりは遅いけど、結構ムイムイ動いてる……。うわ、メッチャ笑ってる、スッゲー遊び感覚だなこの人。

 柱についたら、センバさんはボートから降りて、柱の下から3マス目、自分の背丈より少し高い位置にそこらの石を使って簡易的な屋根を作った。エンダーマンはしゃがめないから、その屋根の下から叩くのね、うん。で、ボートの意味は?

 

「っしゃ! 目標は行き帰りの4つ! エンダーマン狩り開始や!」

 

 威勢良く宣言したセンバさんはカボチャマスクを脱ぎ捨てると、辺りのエンダーマンを挑発するように睨みつけた。今回は力のポーション要らないのかな。敵対されないからって、のんきにセンバさんのやってることを眺めてた。どうせ足を切りつけて殺すだけだろうって当たりをつけてた。

 だから、エンダーマンがボートに乗り込んだのを見て、衝撃を受けた。

 

「は?」

 

 大きく口を開けて全身を震わせ、センバさんに怒りを顕にしているエンダーマン。だけどボートに吸い込まれるように入っちゃったソイツは、なぜか出られずにいるらしい。

 

「つーかまーえたぁ」

 

 ねっとりとした、センバさんの甚振る気満々の声。それを向けられたエンダーマンはより威嚇の為に不気味な唸り声をもはや叫んでいたが、センバさんは余裕そうな笑顔を崩さない。手出しされないと分かっているから。

 剣をふるい、抵抗できないエンダーマンを屠る。体力を削り、煙にして、パールが出なければまた近くのエンダーマンを挑発する。怒りこちらへテレポートした獲物はボートへ吸い込まれ、抗議むなしくセンバさんの剣で煙になる。

 

「やっぱ簡単に素材集めんならコレやわ~! って、あれっ、ルゥパの兄貴?」

「……」

「な、なんですの、その怖い目……! え、何、ワイ、悪いことしとる? や、やめてぇやその目! 緑色の目が黒く見えるんやけど!? ど、瞳孔開きまくっとるんか!? 止めて! そんな目でアタシを見ないで!」

「……勉強になったわ」

「その目で軽蔑の言葉が出てこないの、ホンマに怖いんやけど!?」

 

 まぁ、こういう罠も作れますよと。まー、モンスターに尊厳なんて無いし。弱化のポーションぶっかけて殺してる俺も似たようなもんでしょ。それに、無意味に殺してるワケじゃないし。エンダーマンがさっさとパールを落とせば被害は少なくなるんだから、誰か自己犠牲しちゃえよ、エンダーマン。

 こんな思考に至るんだから、大概俺も性悪だよな~。にしても、叫び声うっせぇな。2体もエンダーマンがボートに捕まって切られてるから当たり前なんだろうけど。

 

「センバさん! 屋根の下から攻撃できるのに、なんでわざわざボートで捕まえてんすかー?!」

「んー!? あー、エンダーマンって殴るとテレポートするやーん?! それがメンドイから、ボートに監禁しとるー!」

「あー! なるほどー!」

 

 コイツ、さっき俺に変な目で見んなよって言ってたくせに、この状態を普通に『監禁』って表現したぞ。遊び感覚の不死野郎は感覚ズレてんな。

 エンダーマンをボートに捕まえて切りつけて煙にする作業は、エンダーパールが4つ集まるまで続いた。俺の分まで狩ってくれたらしい。予備で持ってなかったわけじゃないけど、ありがたく受け取っといた。

 ワクワクしてるセンバさんはボートも屋根も捨て置いて、エンダーパールを握り締めてエンドゲートウェイに向かってった。

 

「エンダーパールってさ、投げて着地した先にテレポートするやん? やから、あの1マスポータルに投げ込んだら、その先の地面にテレポートするって寸法なんよ! ただし狙いが1マスしかあらへんから岩盤に身体打ち付けんよう、気ィ付けてな?」

「了解」

「そんじゃ、ワイがお手本見したるからな~!」

 

 いよいよはしゃぎだしたセンバさんは、石を投げるみたいに大きく足を上げて振りかぶって、ポータルに向かってパールを投げつけた! 綺麗な投球フォームで繰り出されたエンダーパールは見事、小さいポータルの中に吸い込まれ──一瞬の間の後、センバさんが消えた。

 周りに居ないのを見てから、左目を瞑った。

 

「おっ、無事に向こうに着いたみたいだな、ヒギュンッ!?」

 

 一足先に向こうに行ってもらってた雪玉ちゃんの目を借りて、センバさんの無事を確かめる。見た途端にセンバさんが勢いよく振り向いて雪玉ちゃん越しに俺を見てきてビビったけど。た、偶々だよな。さ、さぁて、気を取り直して、俺もやってみますか!

 センバさんみたいに振りかぶるようなことはしない。ただ下からポーンっと軽く、上手投げでポータルに向かって投げ込んだ。消えるようにポータルを潜ったエンダーパール。それは無事向こうへ着いたらしい。引っ張られるような感覚の後、俺の体は別の場所へテレポートされていた。またカボチャマスクを着けてるセンバさんと雪玉ちゃんたちに出迎えられた。

 

「お、上手に来れたな!」

「まぁ、近くで投げればね」

「そっか。にしても、ルゥパの兄貴! かなり運がええで!」

 

 運? そうなの? 不思議に思いつつセンバさんの指さす先を見たら、不思議な形で紫色したデカめの建物と、その建物より高い位置でなぜか浮いてる船と、グネッグネした植物が、となりの浮島に見えた。陸続きじゃないのかぁ。別に道作ればいいけどね? 辺りに地面を大きく削る程の力を持ったモンスターの気配は無いし。

 

「あれが、……なんでしたっけ?」

「エンドシティとエンドシップと、コーラスの木! いやぁ、ポータル潜って直ぐ近くにあってくれて助かるわぁ! どうせ2人分のエリトラと予備で後2つくらい欲しいから、探索するんやけど」

「えぇ……。そんな壊れやすいんすか?」

「割とな」

 

 説明は移動しながら、とばかりにセンバさんは今立ってる浮島からブロックを削りだした。それで目当ての浮島までの橋を架けようとしてるんだな。了解。

 

「一応、エリトラは金床でファントムの皮膜を使えば修復出来るんやけど、花火使って飛んだらすーぐ消耗してまうから。耐久とか修繕とか色々エンチャント付ければ延命は出来るけど、何があるか分からんのやから、人手と情報がある内に余裕持って回収しとこうや!」

「……俺の為に、ありがとう」

「なーに言うてんのー? ワイの為やでー」

 

 そんなこと言って。情報って言ってたじゃん。それって、センバさんが持ってる外から持ち込んだ知識のことでしょう? で、旅人の俺はあの拠点から離れることは確定だから、探索出来る内にって言ってくれたんでしょ? ほらやっぱり俺の為じゃん!

 クスクス笑う俺に振り向いたセンバさんの表情は、何の感情も篭ってなかった。

 

「やって、ルゥパの兄貴、雪玉ちゃんと目ェ共有出来るんやろ?」

「!!?」

 

 な、なんでその事を!? まさか、さっき見られてたの、勘違いじゃなかったってのか!?

 

「その反応。間違いなさそうやな」

「……まぁ、センバさん相手だから、隠さないけど。なんで分かったの?」

「多分なんやけどな? 兄貴と目を共有しとる雪玉ちゃん、兄貴が見とる時に目の色が兄貴の色に変わっとるわ」

「えぇ!? 雪玉ちゃんの目が、俺色に染まっちゃったのぉ!?」

「なんか、期待したんとちゃう反応やな……」

 

 何ものにも染まらない真っ白なボディに曇りなき黒い眼の雪玉ちゃん✩ そのつぶらな黒い瞳が、俺の目のエメラルド色とお揃いになるだってぇ~~~~っ!?

 ……センバさんが顔を引き攣らせてるから、真面目になろうか。

 

「スミマセン。ふざけなきゃ、ちょっと耐えられなさそうだったんで」

「あ、現実逃避やったんか。……まぁ、そういうことやから、人がぎょーさん居る所で雪玉ちゃんを通して世界を見るんやないで? ワイみたいに見破る奴も居らん訳や無いやろうからな」

「そうだね。教えてくれたのがセンバさんでホントに良かった……」

「ここなら誰も居らへんし、タイミングも最高やったな!」

「ホントそれ」

 

 うっかり誰かに聞き耳立てられるってことも、この最後の世界でならありえないからね。乱用してなくって良かった~!

 

 

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