人間に戻る手がかりを掴むまでの話   作:佐川野

74 / 116
戦場を生きる場所にしようとしていた男視点


74 それぞれ個性があったらしい

 『ルゥパにろくに協力できなかったことが心残りだが、過ぎたことだから、俺らは俺らで出来ることをする』と言ったヨシトがワイに手渡したのは、でっかいトンカツサンドやった!

 

 まぁるいバンズにトンカツと生トマトと焼き玉ねぎと、とろぉりチーズ。その組み合わせでできたカツバーガーは、人生で1番美味い食いもんやわ! ジャンクフードっぽいんに全然ガツンとせんけど、これは素材の味ってやつやな!

 

「んぐっ、な、なぁ! このパン、マイクラで見たことないけど、もしかして作ったん!?」

「作業台じゃ長細くしか出来ないからな。焼きたてが食べたかったのもあったから、窯から作ったくらいだ」

「開発者やー!」

「そこはクラフターって言うところじゃないの?」

 

 すごいなぁ、世界に無いなら自分で作ってまえって精神、ワイは思いつかんかったわ。マイクラはマイクラやろって、そこで止まっとった!

 

「あっ、もしかして、ヨシトの『出来ることをする』って……」

「あぁ。今の俺がルゥパの為に出来ることは、料理の開発・再現だ。いつアイツが戻ってきても良いように、旨いもんのレパートリーをたくさん作っときたいんだ」

 

 スゴイええこと言ったヨシトは優しくキメ顔をしたかと思ったら、すぐさま「ま、まぁ、お嬢の目標を果たすことが最重要項目なんだかな」って、いかにも照れ隠しな事言って誤魔化しとった。照れんなよ~!

 

「開発で大変なことってある~?」

「ははっ、大変なことばっかりだ。今あるものでどうにかこうにか開発しているんだが、やっぱり足りない材料があったりで出来ないものの方が多いんだ。さしすせその“す”と“そ”がまったく出来てない」

「調味料がか~。アレ? せって醤油やんな? 醤油はいけてるん? 大豆あったん?」

「いや、小麦で白醤油を今、キノコや発酵したクモの目なんかの菌を応用して実験しているところだ。本来は大豆も入れるんだが、無いなら無いなりに、な」

「……クラフターやなぁ」

「ヨシトって発想自由だよね~。まさかチーズまで作っちゃうなんてさ」

「羊の胃袋でチーズができた、なんて話を思い出して、どうにかな。流石にまさかこの世界でも適応されるとは思わなくて、俺も驚いたわ」

「動物の胃袋で水筒を作らないといけない程なんて、インベントリが無い世界は生きづらそうだな」

「まったくもってその通りです」

「嘘つけ」

「車が無い方が大変だよ」

 

 さっき照れ隠しで言ってたやつ、嘘やないどころかマジ中のマジなんやろなぁ。急に敬語って。シターシュ姐さんのこと敬っとんのぉ。

 会話の合間にバーガーを1口。あぁ、素材の味系ハンバーガーやけど、コーラが欲しいなぁ!

 とか呑気に考えとった頭に、ピンッと軽い衝撃が走った。ヒラメキの音は、ワイの背中に冷や汗を流させた。

 

「……もしかしてなんやけどさ、ラクもなんか、やってるん?」

「うん、微力ながらね。エンチャントのやり方をここにも、近隣の村にも広めてってるよ。一番近くても海を隔ててて移動が大変だから、まだ全然だけどさ」

「……それでも、すごいわ」

 

 エンチャントって、エンチャントテーブルと本棚、経験値とラピスラズリが無いと成り立たへんよな。あ、でもハナハタ村にはポーション作れる聖職者が居るってルゥパの兄貴が言うてたし、ネザー行けるくらい強いんなら扱えるか~。……。

 

「……い、一応、なんやけどさ。なんでエンチャントを教えて回っとるん?」

「そりゃあ、生存確率を上げる為だよ。聞いてると思うけど、ルゥパさんってハナハタ村に1年暮らしてたんだって。思い入れがたくさんありそうな村が帰ってきたら滅んでた、なんて絶対嫌でしょ? それが簡単にありえる世界だしさ」

「……そう、やんなぁ」

 

 ここの王様のシターシュ姐さんも村無くしとるし、ルゥパの兄貴もゾンビに村を滅ぼされた。やから兄貴は村人復活術を探しとるワケやし。……いくらエリトラを教えたからって、恩返しはそれで足りとるんか? ワイに出来ることって、ないんか? すぐには思いつかんくって、また1口かぶりついた。

 

「センバ、別にお前も俺たちに追随しなくてもいいからな? これは俺達の自己満足だから」

「エリトラのことを教えたのが1番スゴイよ~。僕はエンドに怖くて行けないし」

 

 あからさまにしょんぼりしてもうたから、2人に心配されたった。でも……、ルゥパの兄貴、ヨシトの料理を全く忘れてへんし、ラクが教えたエンチャントの付いた装備メッチャ気に入っとったし。……兄貴、もうエンドに行くことないやろし、素材集めしながらの旅やからエリトラ使われへんやろ? そもそも長距離の移動なら雪玉ちゃんのテレポート使うかもやし。あれ? やったらワイは、何か役に立っとった? ワイが居らんでも、兄貴自身は自覚してへんけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()から、エンド攻略は出来たはずや。

 

 ますますしょんぼりしてもうたのがオモロかったんか知らんけど、シターシュ姉さんに笑われた。

 

「君は、天真爛漫なようで不安症なんだな。自分もルゥパの為に自分にしか出来ない何かをしたい。だが皆目見当もつかない。簡単に言えば君の悩みはこんな感じだろうか」

「……うん」

「ふふっ、そうか。ならば、私が提案しようじゃないか」

 

 ちっさい顔の顎に白い手を当てて、シターシュ姐さんが目を細めてワイを狙ってくる。正直、レッドストーンみたいに真っ赤でキラキラな目に見つめられるんは怖いけど、き、聞くだけなら……。

 

「ワイに出来ることって?」

「私が君に提案するのは、世界一周だ」

「せ、世界一周?」

 

 姐さんから提案と一緒に差し出されたんは、白紙の地図やった。

 

「えっ!? ちょ、マジで言うとるん!? し、知らんの? 世界って広いんやで?」

「そうなのか。見たことが無いから知らんなぁ」

「絶対とぼけとる!」

 

 ドヤ顔をひけらかして笑っとるシターシュ姐さんが、なんか悪魔に見えてきよった。いくら自分で考えられんからって、こんな無茶を言うとかどうなっとんねん!?

 そんなシターシュ姐さんの隣に座っとるヨシトが軽く首を傾げた。

 

「お嬢、センバに何故そんな要求を?」

「決まっている。あのエリトラとかいう装備は機動力に優れているからさ。あれだけ機動力があれば、お前らでさえ知らない素材も見つけやすくなるだろう?」

「確かにそうかもしれませんね。トマトや玉ねぎ以外にも食材が発見できれば、料理のレパートリーの幅が広がりますし」

「そうだな! センバ、もし私の提案を引き受けてくれるなら、特に食物に関するもののを探してほしい。その種を栽培できれば、我々の食生活がまた一つ豊かになるだろう。それは、ルゥパの為にもなるだろう?」

「!」

 

 なるん? ワイが世界の地図埋めをしたら、ルゥパの兄貴の為になるん?

 あぁでも、そうか。これは、ワイが旅する理由になるんか。今までロクな目的もなく、ただ要素を確かめて回っとったんと違って。それに、よくよく考えたらワイ別にここに長く留まるつもりやなかった。また旅の中で兄貴に会うつもりなんやから、ついでに地図埋めするって考えれば、悪い話やないんやない?

 

「それに、旅してたらルゥパさんの目標を、村人をゾンビから戻す方法を知ってるクラフターを見つけられるかもしれないしね~。もしかしたら、あのハナコって人がそうかもね」

「なくもない話だな。自然過激派っぽいが、村を守りたいタイプのプレイスタイルだ。養蜂の仕方を知ってるくらいだから、村人の蘇生方法も知ってそうだ」

「そうか。ならばセンバには同時進行で『クラフター・ハナコの捜索』も提案しよう。どうだ? 受けてくれるか?」

「もはやクエストやな。でも、ええで。引き受けたるわ! やからお弁当いっぱい頂戴!」

 

 依頼を受ける流れでヨシトにおねだりしたら、3人みんなに笑われた。んふふっ、やっぱあったかい食卓って、ええもんよな! 出会って30分経ってへんけど!

 軽く深呼吸したラクが、「そうと決まれば、いっぱいエンチャントしないとね~!」って切り出した。

 

「エンドラ倒したなら、経験値いっぱい持ってるはずだしね。ハンバーガー食べたら、僕の拠点に行こうね!」

「おん! ネザー経由して移動距離短縮したいから、火炎耐性とダメージ軽減が欲しいなぁ」

「え、危ないよ! 止めときなよネザーなんて。マグマダイブしちゃったら全ロストしちゃうし」

「え!?」

 

 え、ちょぉ待って? もしかして、やっぱりワイってチートやった!?

 

「えっ、てなんだ。常識だろ」

「あ、ってことは、ヨシトも、ラクも、()()()()()()()()()()O()N()になっとるワケやないんか!?」

「「……はぁああああっ!??!」」

 

 ワイからの質問にヨシトも、穏やかそうなラクも椅子から勢いよく立ち上がって叫びよった。きゃー!! 大きい声出さないでー!! 怖い!!

 パニックに陥っとったら、シターシュ姐さんが左手を突き出した。バーガーを持つ右手はそのままやった。

 

「落ち着け。私には何の話だかよく分からないが、一先ず、お前らクラフターには個体差があるってことか?」

「そ、そのようです」

「そうか。ゲームでも個体差は変えられたのか?」

「コマンドを打てば変えられたはずですが……。ラク、知ってるか?」

「クリエイティブからサバイバルとか、難易度をハードからイージーとか変えられるのは知ってるけど、僕もコマンドは詳しくないよ」

 

 期待するみたいに皆の視線がワイに向いたけど、知らんから首を横に振った。

 

「ワイも変えられるのは知っとるけど、この世界にスポーンしてからコマンドなんて打ったこと無いわ。まず、チャット欄が無いんやから」

「そうだよな……。じゃあなんでお前は死んでもアイテムドロップしないんだ?」

「ワイは最初っからチートONになっとったよ。ボーナスチェストもあったし」

「ずるーい!! ……あれ?」

 

 ボーナスチェストの事を言って不平を叫んだんは、ラクだけやった。今度は1人って、アレ?

 ラクが目をしわくちゃに細めて、何も言わんかったヨシトを睨みつけた。蛇に睨まれたカエルみたいになったヨシトは目を懸命に逸らしとったけど、なんの効果もあらへんかった。

 

「もしかして、ヨシトもあったの? ボーナスチェスト」

「…………あった」

「あーもーずるーい!!」

 

 最初で苦労したんがこの中で1人だけやって分かって、ラクが泣いてもうた。そう泣かれても、どうしようも無いやん……。

 

「あ、あれじゃないか? マルチで来たか、ぼっちで来たかでボーナスの有無が決まるんじゃないか?」

「……じゃあ、キープインベントリは?」

「さ、さぁ……?」

 

 結局話し合いで負けたヨシトは、不満ですよって顔のラクに睨まれて顔を伏せてもうた。その隣で悠々とバーガー食べ続けとるシターシュ姐さん、肝据わってて笑うわ。

 ……あれ、もしかして、アレもちゃうんか?

 

「もうこの際ついでやし、ハッキリさせようや。ワイ難易度イージーやけど、お2人さんはどうなんや?」

 

 軽い調子になるよう気を使って聞いたけど、やっぱりダメやったかな。言い合ってた2人の首がギギギッて、オイル切れの機械みたいに詰まりながらゆっくりとこっちに振り向いた。うわっ、ラクの首斜めっとるし、目ぇガン開きなんやけど。ほ、ホラーゲームかな?

 口の端っこをヒクヒクさせとるヨシトから喋った。

 

「……ギリギリ餓死はしない、ノーマルだ」

 

 ラクは首を斜めらせとるまま、無感情な顔で口を開けた。

 

「当然、ハードですけど?」

 

 う、うわぁ……。メッチャ怖いやん、ラクの兄やん……。生まれついてのものなんやから、そんな恨みがましく見ないでやぁ。

 カッ開いてた目を閉じたラクが、椅子にまた座った。つられてヨシトも座っとった。

 

「まさか、難易度に違いがあるなんてね……。集まらなかったら分からなかったよ」

「難易度が違うと、何が違ってくるんだ?」

「モンスターから受けるダメージ量や、餓死するかどうかの違いくらいでしょうか。大まかな違い、ですが」

「そうなると、クリエイティブとかピースフルとか、ハードコアとかも居るんかな?」

「どうだろうね……ん?」

 

 多少冷めてもうたバーガーに齧りついたラクが、また何かに気付いて目を見開いた。口の中のもん飲み込んだら、ワイの方を見てきた。

 

「ねえ、センバくん。ハードコアって、一度きりの命、だったよね」

「せやな」

「だけど、死んじゃった後も、スペクテイターになるんだよね?」

「あー、確かにそうやったなー!」

 

 昔1回やったわ~。ダメージ痛くてすぐやられてもうて、スペクテイターで復活したんやったよね~! ハードコアって、サバイバルホラーよなー!

 

「それが、どうしたん?」

 

 その疑問に答えてくれると思ったラクは、なんでか、泣いてた。ホントには泣いてへん。でも、辛そうに俯いとって、すぐに、『あぁ、一緒に来た誰かさんが、そうやったんか』って思い至った。やってさっき、ヨシトがマルチがどうとか、言ってたもん。

 

 そっか。ラク、友達をこっちの世界で亡くしとるんか。

 でもそっか。スペクテイターで見てくれとるんなら、ワイらからは見えんでも、向こうからは見守ってくれとるんか。ふふ、そう思ったら、確かにちょっと泣けてくるかもなぁ。

 

 湿っぽい空気で食べるんも辛いから、話、切り替えよっか。

 

「なぁシターシュ姐さん。どっか見てきてほしいところとかあるん?」

「ん? そうだなぁ、砂糖やベリーとは違う甘いものに心当たりがあるなら、それが欲しいかな」

「ほーん……」

「ズッ、それなら、カカオとかじゃない? ほら、クッキー作れるじゃん」

「だとしたら、ジャングルか。まだ俺も発見してないな」

「僕も~」

「そうなん? やったら、とりあえず目標はジャングルやな!」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。