人間に戻る手がかりを掴むまでの話   作:佐川野

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75 ジャングル探索は収穫がいっぱい

 ジ・エンド行きのポータルの存在を知らない人が間違って入らないように埋め立てた後で、俺もセンバさんとしばらく過ごした拠点を引き上げた。雪玉ちゃんに予め探索してもらっていたから、次に探索する先は決まってる。とてつもなく高い木が密集して、まだ手に入れたことのない素材のある、ジャングルだ。

 

「せっかくだし、そこまでエリトラで飛んで行こうかな」

 

 人の目が気になるかも、なんてらしいことを言い訳に、陽が落ちてから飛び立つことにした。暗視のポーションがあるからぶつかることもないだろう。近くの岩山のてっぺんから飛んで、新しいバイオームに向かった。道案内よろしくね、雪玉ちゃん達!

 

 センバさんから作り方を教わった花火も使いつつ、一つ村の上を通過し、平原を抜けて、お天道様が空を照らしだした頃。その高い木々は俺の飛ぶ先を塞ぐようにして現れた。仕方がないから手頃な木の上に着地して、ツタを使って地上まで降りた。

 

「なんやこのバイオ~ム~」

 

 たった、高い樹からスルスル降りるだけで、発見がいくつもあった。このジャングルの木の幹にはよく分かんない植物が張り付いてたし、見たこと無いカラフルな鳥がいるし、葉っぱの色が明るめなクセに鬱蒼としてるから結果暗いし、その中に明らかな人工物があるし。思わずセンバさんの口調で驚いちゃったわ。

 

「メチャクチャ探索のしがいがありそうじゃァん?」

 

 まずは、このデッカイ木を1本、まるまる回収しちゃおっか。懲りもせず、このジャングルの木の皮から一つ一つポーションの検証をしてこうぜ。

 

 上から雪玉ちゃん、下から俺が木こりして、太さ2×2の4マス分の巨木を丸々一本回収した。原木も苗木も葉っぱも木の皮も、なんかデッカイ木の実も回収できた。木の実は緑色の小さなもの、黄色味がかったもの、茶色のデカいものの3種類採れて、完熟してるっぽい茶色の木の実からは仄かに甘い香りがした。それぞれ割って中身を見たら、黒い豆が入ってた。その香りもやっぱり完熟のものが良かったし、大きかった。回収するんだとしたらやっぱり完熟なんだろうな。ポーションになったらどんな効果になるんだろ。それに、これでお菓子作れそう。ベス村のスニウに渡したらどんなお菓子に化けるかな。

 でも、考えたり検証したりするのは、まだ先にするか。次は、あの苔むした石の建物の探索だ。

 

 周辺の気配を探ってもカラフルな鳥とかヤマネコとかの動物、クリーパー・エンダーマンとかのモンスターしか感知できない。人里も近くに無いだろうし、ホントに、いったい誰がどんな目的で、こんな見づらくて来づらい場所に立派な石材の建物を建てたのか。家にしては無駄に出っ張ったりして随分変な形だし……。

 いや逆に、逆にじゃないけど考えろ? ここに建てるメリットは? 人間が荒らしにくいからじゃないのか? 人里から離れてればクリーパーも気配探知できなくて爆破しないんじゃないのか? そんなところに建てるなら、何を置く?

 

「宝、じゃねぇの?」

 

 ……ふーん? 遺跡荒らしは趣味じゃないけど、探検しても、元通りにするなら、いい、よな……? 宝の中身盗まなければ、いいよな?

 

 なぜだか我先にと雪玉ちゃん2人が遺跡の中に入っていったから、彼らの目を借りて中の様子を伺う。中もやっぱり丸石と苔石で作られてて、ツタまで生えてる。中も湿気強そうだし、足元気をつけなきゃ滑って転びそうだな。もうモンスターに襲われないからって、表に皮を張った落下耐性のダイヤのブーツしか防具着けてないから、気をつけなきゃなぁ。

 扉も付けずにおっぴろげに開かれた入口から中に入ると、真ん中に下へ、その両サイドに上へ繋がる階段が見えた。まず上に行ってみたけど、屋根裏部屋みたいで何もなかった。

 

「お宝は下の階に?」

 

 おっと、センバさんが言ってたぞ。トレジャーハンターはただの略奪者だって。俺は仕組みを見たいだけの研究家であれ。

 足元に気を付けて地下へと進む。丁度暗視のポーションの効果が切れたから突き当たりの壁に松明をかけたら、左右に道が分かれてるのが見えた。特に左のものには、二度見した。

 

「えっ、れ、レバー? それも、3つ横並び?」

 

 左手の壁に3連レバーがあるだけで、その通路にはそれ以上奥に何も無い。このレバーを操作して、何が起きるんだ……?

 試しに1番奥のレバーを下げてみたら、模様入り石レンガの奥からガシャンッと何かが動く音がした。ほうほう、レッドストーンで回路作ってるな? でも、何が動いた?

 

「雪玉ちゃん、中の様子見てくれない?」

 

 こういう時、雪玉ちゃんの壁を貫通するボディが役に立つね。周りの壁を壊さなくても中の仕組みが分かるんだか──!?

 

「な、なにこれ!? ブロックにスライムがへばりついてる!? なんか伸びてる!? それに何この形の石版?!」

 

 元々レッドストーン回路に明るいわけじゃないけど、まさかこんなに見たこと無い道具があるなんて思わなかった! ここまで知らないと却って興味沸くわ!

 レバーの付いた壁を壊しても大丈夫そうだと判断したら、壁を壊す。そしたら真ん中のレバーの壁の裏に早速チェストがあった。躊躇ったけど、雪玉ちゃんと『中を見るだけ、持ち出さない』って約束してから、チェストを開けた。……でも、腐った肉とか骨とか、鉄インゴットとかダイヤモンドとか、ちょっと探索すれば手に入るものばかりで、あんまり魅力的じゃなかった。や、前者はともかく後者は確かにお宝だろうけど。エメラルドがたくさんだったら流石に心揺さぶられてたろうけどさぁ。馬鎧も、馬を飼ってない俺には要らないし。

 

 さて、気を取り直して、この隠し部屋の仕組みを観察してこう。なんならこっちがお宝まである。

 宝箱らしいチェストのすぐ右にあるのは、石材とレッドストーントーチが組み合わさったような代物だ。いったいどんな効果があるんだか。すぐさま作業台で見よう見まねで作ってみたら、出来た。出来ちゃった。ダストも足して出来ちゃった。なぁにこれぇ。

 ま、まぁ今はいいや。次はスライムボールがへばりついてるあのブロックを観察しよう。レッドストーン信号が入ると木の面が伸びるらしいこのブロック。見た感じ、丸石と木材と、木面を固定と強化するのに鉄を使ってるな。あと動くからレッドストーンか。それに木の面のスライムボール。こっちも作業台で適当に素材を並べたら出来ちゃった。

 

「でも、こっちは使い方分かるぞ」

 

 ほら、レバーをすぐそばに置いて引けば、木面が伸びた! あ、作業台にくっついちゃった。まあいいや、レバーを回収して~っと、っ!?

 

「ウエッ!? い、移動した!?」

 

 レバーを壊して回収したら、伸びた部分が引っ込んで、伸びてた面に触れてた作業台が一緒にズレた! こ、このブロック、他のブロックをスライドさせるのか! ああ、スライムがくっつけるのか! これなら確かに隠し扉が作れるな! 真正面から壁壊してるけど! ハナハタ村に戻れたら、全部ドゥンに教えよ~!

 

 左の通路にはこれ以上何も無いらしい。突き当たりに置いた松明の所まで戻って反対側を観察する。漂う空気から奥が深そうで、右側はもう少し探索のしがいがありそうだ。

 進んで角を右に曲がると、また突き当たりを右折する通路だった。苔は壁や地面をますます覆い、ツタも生い茂ってる。丸石が所々無くなってて壁がボロボロなのもみすぼらしさに拍車を掛けていた。てかまた曲がらされんの? まさか、このままグルグル回らされるんじゃないの? そんな不安に駆られていたから、肝心な事に気付かなかった。

 

「ぐあっ!?」

 

 足首に何か引っかかった、と気付いたが後の祭り。正面の壁から鋭く矢が放たれて、俺の右肩を貫いた! くっそ、罠だ! 人間の気配がしなかったから、うっかりしちまった!

 

「ふ、不届き者への逆襲、ってワケな」

 

 だー、クッソ。白のコート洗ったりツギハギ足したりしなくちゃ。革だから完全には元に戻んねぇんだぞ? ……こっから先は、コート脱いで防具固めるか。あ、治癒のポーションありがとね、雪玉ちゃん。いただきます。

 全身鎧に着替えたら、俺が引っかかった罠の装置を観察する。糸の両端の壁を見たら、その糸がくくりつけられた見たことのない道具があった。あれが糸に引っ張られて動くと罠が作動して、俺を襲ったってワケだ。

 先陣を切ってる雪玉ちゃん達が気が付かないのも無理はない。この糸は人型の脛の高さに仕掛けられてるから。飛んでる雪玉ちゃんに効かないのは当然だったし、怪我したのが俺で良かった。

 未だにピンッと張った状態の糸をハサミで切って、罠を解除する。糸がくくりつけられたフックも一旦回収したけれど、見覚えがあるヤツだった。

 

「へ~、釣りしてたらたまに釣れるコレが、トラップに使えるんだ」

 

 ゴミとしか思ってなかったこれが、ねぇ。……なんでそんなもんが海にあるんだ? え、世界は俺が思ってるより殺伐としてる? これが落ちてるって、罠壊されてるよね? 戦いがあったってことだよね? ……よくよく考えたら、普通か。クリーパーに壊されるよな。

 もう持ってるヤツだったから、フックは元の場所に置いた。糸は帰る時に張り直そう。さて、次は俺に矢を撃ってきた壁の装置を観察してやろう。

 

「ウワァッ!? ひ、人の顔かと思った……」

 

 上から生い茂ってるツタを払ったら、人の顔に見えなくもない何かが現れた。どうやら口の部分から矢が放たれたらしい。一旦ツルハシで壊して回収したら、充填されてた矢が落ちた。結構入ってんな。

 

「丸石と、レッドストーンと……発射するから、弓でも使ってんのかな。あ、出来たの? 雪玉ちゃん仕事早いね~!」

 

 予想した構成素材を口にしただけで、クラフト好きな雪玉ちゃんがさっさと作り上げちゃった。楽しかった~? 良かった~!

 発射装置を元の場所に戻して、先へ進む。するとすぐ先に同じ装置が仕掛けられていた。しかも今度はレッドストーン回路が剥き出しだ。いやコレ、繋がってる? だいぶ手前にない? まあいいや。

 

「同じ手に引っかかるかよ」

 

 石の感圧板が無いことを確認してから、トラップの先のチェストまで、雪玉ちゃんにテレポートしてやった。卑しくも直ぐに中身を確認するけれど、やっぱりこの撃退トラップ以上に目ぼしいものは……ん?

 

「何これ、サトウキビかと思ったけど、違う。うわっ、中空洞じゃん!? なにこの植物!?」

 

 中スッカスカでよく育つな!? 青々としてるから別に中だけなくなった、みたいなのじゃなさそうだし……。これはいったい何なんだ?

 サトウキビに形が良く似た植物を持って考え込んでたら、雪玉ちゃんに肩を叩かれた。見たら何処か遠くを指し示していた。

 

「ん? これが生えてる場所見つけたの?」

 

 言いたそうなことを言語化したら、当たってたみたいで雪玉ちゃんはその場で縦にクルクル回った。せっかく雪玉ちゃんが探索してくれたんだ。

 

「それなら、早速向かわなきゃね!」

 

 

 

「お邪魔しました~」

 

 トラップを元の形に直してから遺跡を後にする。結局何を目的として建てられたのか分からなかったな。宝物を隠すにしてもチェストに入ってる戦利品はショボかったし。トラップ研究所だとしたらなんでこんな人が居ないところに。果たしてこの建物を造った人は生きているんだろうか。まぁ、気にしたってしょうがないか。

 

 雪玉ちゃんの案内によると、あの植物が生えてるのはここから北にあるらしい。ジャングルにはメッチャ高い木もあれば、地を這うように低い木もある。後者の木を踏みつけ、垂れているツタを払いながら雪玉ちゃんについて行くと、明るい場所が見えてきた。

 いや、鬱蒼としているのは変わらない。でも、生えているのが太くてデカい木なのか、高くともサトウキビ位の太さなのかで日光の入り方は違うだろう。ちょっと開けた場所もあるし、ここはまだ歩きやすそうだな。

 

「これがさっき見つけた植物……。って、こんな近くにあるやつをチェストに入れとくとか、どんなセンスしてんだ」

 

 あのチェスト絶対囮だったろ。不届き者に痛い目を見せた上に何もあげないって、いい趣味してんねぇ?

 天高く聳えるサトウキビ似の植物はダイヤの斧で根元を破壊すると、一気にバラバラになって降り注いできた。いったぁい。ここらへんもサトウキビに似てんのか。

 雪玉ちゃんに唆されて剣で切りつけたら、たった一太刀で植物が刈り取れた! わー! コレたのしー! 自分が強くなった気分ー!

 

 知らないから使い道が分からないと気付いて、背の高い植物を剣で切りつけるのを止めた。せめて燃料になると良いんだけど。無駄にするのは流石に気が咎める。

 散った中が空洞の植物を歩いて回収してたら、不意に白黒が視界に写った。

 

「? なんだ?」

 

 顔を上げて辺りを見渡して、すぐに見つけた。白と黒の毛に覆われた、巨大な動物を。

 

「……」

「……」

 

 ずんぐりむっくりしてるソイツは、目の部分が黒い毛で覆われていて、その模様がどことなく垂れ目に見えるからか可愛らしく見えた。舌をんべって出してんのも、可愛らしい印象を強めている気がする。そして、その初対面の動物は、俺よりも俺の手元を、植物を見てた。

 

「……欲しいの?」

 

 渡すように植物を掲げたら、でかい白黒動物はキュピンッ! なんて音がしそうなくらい目を輝かせて、こっちまでゴロゴロ前転してきた!

 

「ヒャァアアッ!? きゅ、急に動かないでよっ!」

 

 俺の近くまで転がってやって来た白黒獣は俺のそんな抗議なんか気にもせず、その場でぴょんぴょん飛び跳ねた。……なんだ、でっかいだけの雪玉ちゃんか。可愛い。

 俺から植物を受け取った白黒獣は、その硬さをものともせず、バリバリ噛み砕いて食べた。やっぱり獣だわ、怖い。でもモッシャモッシャしてんの、可愛いわ。

 

 この子が食べてる姿が可愛くて植物を与え続けてたら、満足したみたいで帰ってっちゃった。気まぐれに振り回されたわ~。あー可愛かった。

 

「アダッ!? い、痛いよ雪玉ちゃ、どわあーーーーっ!」

 

 顔をゆっるゆるにさせてたら、雪玉ちゃんたちに体当たりでボッコボコにされた。ハナハタ村でミツバチちゃんにデレデレした時と同じ展開じゃねーか!

 う、浮気じゃ無いから許してよー!

 

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