人間に戻る手がかりを掴むまでの話   作:佐川野

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※戦闘狂な青年視点


99 さすが集合知

 ルゥパの兄貴を無惨に、2度も殺したカツヤっちゅークラフターをぶっ殺す為に、ワイはハナコと一緒に中央教会に向かって飛んどった。ハナコ自慢の自動飛行装置、はちみつブロックちゃん号やなく、ワイが持っとるもんを貸して、2人してエリトラで。アレ起動したら後は放置でラクやけど、真っ直ぐしか進めへんしうるさいしな。

 透明化のポーションを飲んで浴びて、ひたすら道案内で前を飛んどるハナコの花火の煙の後を追う。その道中は風圧もあって会話は無い。なんか食べる時ならちょっとくらい、と思うやろ? でもな、中央教会ってハナハタ村から相当離れとるらしいから、急ぐんやったら飛びながらパンを齧るんが効率的や。

 推進力となる花火はハナハタ村と国に居る雪玉ちゃんたちが作って、こっちの雪玉ちゃんが受け取って、ワイらにくれるから、ホンマに止まらんで昼夜問わず飛ばしまくれた。

 

 どっちもクラフターやから出来る強行旅と、雪玉ちゃんが貸してくれるインベントリのおかげで、たった2日で目標まで後1割ってトコまで来れた。やろうと思えば疲れも無視できる身体って、やっぱスゴイわ。生きてられんのが20年なんもしゃーない性能やな。

 んで、3日起きとったらファントムが来るから皮膜集めしようって、初めて仮拠点を構えてベッドで休憩、というかリスポーン設定しとった。そしたら雪玉ちゃんが姿を現してくれよった。正体がルゥパの兄貴の故郷の村人さんたちやって知っとっても、カワエエから関係なく癒されるわぁ。

 やけど雪玉ちゃんたちの目的は羽を伸ばす事やなく、ワイらに何かを伝える為やったらしい。自身も地図を持って、ハナコにそれを出すようにお願いしとった。若干デレデレしとるハナコが出した地図を額縁と一緒に壁に貼り付けると、砂漠の辺りを指差して『ここに行って!』って言ってきよった。……村があるっぽいから、そこで休めって? それともそこは、ルゥパの兄貴が通ったとこなんか?

 

「どないする? 行くのは確定として」

「透明化するか、ってことね。雪玉ちゃんたちがわざわざ指定してるから、姿は現してたいわね。それにここは、あと2つ山を越えてしまえば中央教会に着く位置。情報収集するにしても、この近さなら信ぴょう性もきっと高いわ」

「そんじゃ、そこ行こか」

 

 あっという間に決めたら、陽の暮れた外に出る。気の早いやつっちゅーんはどこにでもいるもんで、数匹のファントムがもうワイらの豆腐仮拠点の上を飛んどった。

 

「帰りの分の皮膜、デリバリーごくろーさん!」

「中二病め」

「ンフフフフー!」

 

 中2! ワイ、そこまで向こうで生きとらんから、ちょっと嬉しいわ! アホやって言われとるんは分かっとるけどな。

 ワイもそうやけど、ハナコも戦闘力が高い。おまけにラクから貰ったダイヤ装備は色々有能エンチャント付きやから、他のモンスターも居る中、一度もベッドの世話にならずに夜明けを迎えられた。皮膜は勿論、花火の材料も集まったし、骨は雪玉ちゃん経由で向こうに持ってってもらお。

 身体と着てるもんの汚れを川の水で綺麗に流したら、基本見えへんくなった雪玉ちゃんが向かえ言う場所、砂漠の村に飛び立った。朝日が眩しくてあったかくて気持ちええわ~!

 

 

 平原から砂漠に差し掛かったところでエリトラを外し、代わりに日よけのローブを羽織って走って村へ向かう。途中でいくつか井戸とオアシスを見かけて、やっぱり水が無いと大変なんやなって当たり前の事を考える。そんなオアシスの1つで試しに休憩しとった。なんか聞かれた時に言えるもんな。アリバイ作りみたいなもんや。

 

「他にどんな人らが使っとるんやろな。このオアシスとか、あの井戸とか」

「さぁね。……砂漠と言ったら、キャラバンかしら。ゲームでは行商人は1人にラマが2匹の組み合わせだけど、ここでは普通に複数人の行商人と護衛がラマの数を増やして移動してるから。ラマに水を飲ませやすくしたり浴びやすくする為に、自分たちで作って使ってるのかもね」

「行商人、かぁ」

 

 ゲームやとロクなもん売ってへんくて、見かけても無視しとったアレかぁ。まぁ、ゲームはゲームで、ここでは普通にトラックみたいな流通手段なんやろな。あれやろ、シルクロードってやつで……後は知らん。

 

「そういや、情報収集する言うてたけど、ワイらの関係どないするん? なんの目的で旅しとるんか、ここに寄ったんか聞かれるんちゃうん?」

「単に探し物を見つける旅って言えばいいんじゃない? 関係性は単に向かう場所が一緒だったってだけが、深いこと聞かれなくて丁度いいわ。変に恋人だとか夫婦だとか嘘をつくと、下品な質問されかねないしね」

「おっけ、旅は道連れな」

 

 ハナコが新種の花を探す旅なら、ワイは……絶景・秘境ハンターとか? うーん、しっくりこぉへんなぁ。ま、走りながら考えればエエやろ!

 

 

 ハスクを無視して走り抜けとったら、建物が見えてきた。ハナコが手元の地図を見て、「あそこね」って言った。砂漠特有の砂岩で建てられた建物が目立つ、結構デカイ村やった。

 エルハル村って、なんか緑豊かっぽい名前のクセしてガッツリ砂漠なその村は、ウサギとが至る所で飛び跳ねてる、不毛やけどカワエエ村やった。

 んで、雪玉ちゃんが日除けのコートの下からワイの背中を押してくる。なんでや???

 

「は、ハナコ……」

「ええ、案内されてるみたいね」

 

 た、ただ押されとるんやなく、案内か。そっか、この村に連れてきたんは雪玉ちゃん。そして雪玉ちゃんは分裂して、ポーションが無くとも透明化して、1人が知れば皆が情報共有する。きっと案内してくれるこの先に、雪玉ちゃんがワイらに合わせたい人らか、見せたいものがあるんやろう。んふふっ、そんなら変な設定とか考えんでも良かったやん!

 

 雪玉ちゃんに押されてやってきたんは、砂岩で出来た2階建ての建物。大胆に開かれたカウンターの上の布張りの屋根がオシャレな、一軒の店やった。カウンターで店番しとるんはこの地域では普通らしい、黒髪黒目で浅黒い肌のお兄さんやった。

 

「ここが……?」

「そうみたいね」

「いらっしゃいませ、何をご入り用で?」

「あ、えっと……」

「聞きたいことがあってここに来たの。貴方、ルゥパくんを知ってる?」

「ちょ、んな正面から!?」

「何よ。コソコソしてる方が怪しいわよ」

「そ、そうかもしれへんけど……!」

「……あなた方も、ですか」

 

 誰かに聞かれる心配を一切せんハナコの度胸にこっちがビックリしとったら、なんか悟った店員のお兄さんに店の奥へ案内された。まぁ、ハナコの言うことも分からんではない。普通に考えて、向こうも雪玉ちゃんを通じてワイらが来るんを知っとるんやから。さっき、『あなた方も』言うてたし。それってつまり、お兄さんも雪玉ちゃんを、ルゥパの兄貴を知っとるってことやろ?

 その認識が違っとると分かったんは、通された奥に聖職者が居るのを見たから。

 

「──ッ!!」

「あら、物騒なご挨拶」

 

 反射的にダイヤ剣を抜いたんに、席に座って茶をしばいとる野郎は呑気にそう言うだけやった。て、敵対しない奴に手は。なんてこっちが狼狽えとったら、横からハナコに頭しばかれた。

 

「ッだぁ!?」

「緊張してるのは分かるけど、落ち着きなさい。雪玉ちゃんが私たちを罠に嵌めると思う?」

「お、思わへんけど……」

「でしょう? それに大丈夫よ。彼女たちは私の知り合いだもの」

「え?」

 

 し、知り合い?

 ダイヤ剣を持ったまままた正面を見たら、ケツアゴおかま聖職者と護衛の女の人が微笑んでハナコに向かって手ェ振ってた。知り合い、やったん。警戒して損したわ。剣しまお。

 

「い、いきなり剣向けて、スマンかった」

「あら! ふふ、許してあげる!」

「ありがとな」

 

 悪い人やなさそうやな。そうか、お兄さんが言うとった『あなた方も』は、この2人の先客が居る事を示しとったんやな。

 騒いどったから、店のそのまた奥から人が出てきた。その人も店員の男の人と同じ、黒髪黒目で浅黒い肌色で、カヌプとパーデくらいの年の女の子やった。

 

「だ、大丈夫、ですか?」

「ええ、私のツレが騒いじゃってごめんなさい。誤解は解けてるからもう問題ないわ」

「よ、良かったです」

 

 ホッとした女の子は笑顔で一旦裏に戻って、お茶セットを乗せたお盆を持って帰ってきた。席も案内されたから、そこにおとなしく座って、茶ぁしばいた。……ハナハタ村んヤツの方が旨いわ。絶対言わへんけど。

 

「それにしても久しぶりね、ハナコ! 最後に会ったのは2年くらい前よね?」

「そうね。ますます可愛くなったじゃない、クツサリ。コルマも逞しくなって、頼りがいあるわ」

「常に鍛えてるからね。いつだってクツサリをこの腕に抱けるように、ね」

「いやぁんコルマ好き~!」

 

 知り合い同士が近況だとか軽く喋っとって、なんか色ボケした話題に移って肩身が狭い思いした。なんか男女逆転しとらん? 愛にはいろんな形があるって聞いとるけど、ホンマなんやなぁ……。

 落ち着いた所を見計らって、テーブルの上に1人の雪玉ちゃんが現れた。話し合えってことかな。

 

「それじゃ、ひとまず自己紹介しておきましょうか。私はハナコ。今はハナハタ村っていうここからとても遠い場所を拠点にしてるわ。ルゥパくんの事は風の噂と、彼が仲良くしていた村人たちからの証言くらいでしか人となりを知らないけれど、カツヤの所業は許せない。だから報復しようと今動いてるところよ」

「ほ、ホンマ、明け透けやな……。あ、ワイも同じとこからすっ飛んできた、センバいいますぅ。ルゥパの兄貴とはジ・エンドっちゅー別世界を一緒に命懸けで攻略した仲や。聖職者のあんたには悪いけど、カツヤってやつ、殺すつもりやから」

「あんたも大概じゃないの」

 

 うっさいわ。ワイが取り繕ったところで、ハナコが全部無駄にするやん。

 フードで覆ってる下から抗議で睨んどったら、オカマ聖職者が「仲がいいんだか悪いんだか」って笑って言いよった。

 

「アタシはクツサリ。こっちは護衛でアタシの恋人のコルマ。ルゥパちゃんとはお茶をした仲ね。で、アタシ自身は知ってのとおり、聖職者。でも、ルゥパちゃんの事は応援してたわよ。くっだらないことでプライド傷つけられたって被害者ぶる中央も、自分勝手すぎるカツヤ最高聖職者長も嫌いだからね。だから、殺すっていうのはちょっと抵抗あるけど、報復してくれるんなら出来る事なら協力するわ」

「コルマです。右に同じく、出来ることが有ればお申し付けください」

「わ、私はアエデ。7・8年前に家族みんながハスクに襲われた時、ルゥパお兄ちゃんに助けてもらったの。……そ、そのくらい、だけど、私も何か出来ることあったら、頑張るよ!」

「ありがとう、3人とも」

 

 関わり自体はさほどかもしれんけど、それでもワイらに協力しようと思うほど、ルゥパの兄貴は好かれとるんやな。人徳が成せる技やなぁ。技? まぁええわ。

 

「それじゃあ早速だけど、聞かせて欲しいわ。一般人、聖職者とその関係者からそれぞれ見た、今の中央教会の事を」

「あと、ルゥパの兄貴、不本意やけど“白い魔女”についてもどう聞いとるか、教えて欲しい」

 

 テーブルの中央でフワフワ浮かんどる雪玉ちゃんがウンウンと頷いとった。その為に集めたんやでって感じらしいな。……雪玉ちゃん、なりふり構ってられへんくなったからって、誘導しまくっとるやん。未来でも見えとるんか? ってくらい好き勝手やっとるやん。

 

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