俺の名前はピーター・ペティグリュー。   作:八重歯

10 / 10
10 俺たちは作った。

 

1976.02.01

 

 

地図が完成した。

ジェームズがホムンクルスの術、という高度な魔法を使った。

術が及ぶ範囲はホグワーツ城に限定している。ジェームズはもう少し広範囲を設定したかったけれど、『城』という器が無いとうまく魔法がかからないらしい。

城の中にいる個別認識名がある生物を、ホムンクルスの術により地図に反映させている──まぁホムンクルスの術だけじゃなくて色々ややこしい魔法をかけた。

 

本当にジェームズは天才だと思う。

 

 

ーーー

 

 

 

「──完成だ!」

 

 

グリフィンドールの自室で、地図に向かって魔法をかけたジェームズが顔を輝かせる。

机の上に置かれた大きな羊皮紙は何も書かれていないただの羊皮紙に見えるが、ジェームズは自信ありげに地図を見下ろす。

 

 

「今回は成功してるといいな」

「うっ……今回こそは完璧だ!」

 

 

俺の言葉にすぐにジェームズが何度も書き直した理論が書かれてあるくたびれた羊皮紙を掴み何度も目を走らせる。

 

 

「このやりとりも5回目だ」

「まあまあ…。今回は、間違いもないはずだよ。考えられる全ての間違いを訂正したし…」

 

 

シリウスがため息をつけば、リーマスは苦笑しジェームズから理論が書かれた羊皮紙を取ると顎をさすりながら端の端まで確認し、「うん、大丈夫だ」と大きく頷いた。

 

 

「名前の範囲をどこまでにするかが難しかったね」

「うん。本当の名前、なら、ダンブルドアなんかめちゃくちゃ長いし。地図が真っ黒になったからなあ」

「個別認識名がある生物限定にするのも、難しかったな全ての生き物対象にしたら、ネズミ、ネズミ、ネズミ、蜘蛛、蝿、蜘蛛──地図が全く読めなかったな」

 

 

シリウスが当時を思い出すようにしみじみと呟く。

一度全ての生き物を対象にしたら、地図が沢山の小さな生き物の名前で埋め尽くされた。時々ざわりと動く文字の大群に、流石の俺たちも青い顔をして「きもい…」と呟いてしまったほどだ。

 

 

「早速試運転といこうじゃないか!──合言葉は決めてきたかい?ピーター?」

「ああ、勿論」

 

 

俺は杖を出し、杖先を羊皮紙に軽くつけた。隣でリーマスが合言葉を設定するための魔法を唱え、俺に目配せをする。

 

 

「──我、ここに誓う。我、よからぬことを企む者なり」

 

 

俺の杖先から白い光が出て、地図の上に広がった。その後、黒い小さな点が現れじわじわと広がり──文字で作られた地図が現れる。

 

 

「中々良い合言葉だね!よし、ここまでは順調だ!」

「だろ?最近ずっと考えていたからな……。さて、グリフィンドール寮は──ここか」

 

 

 

この合言葉は知っていた──が、ちょっと思い出すのにかなり時間がかかった。10年以上前の記憶だったが…なんとか思い出せてよかった。

 

グリフィンドール寮が書かれている塔の辺りを見れば、数多くの個室が小さく区切られている中、一つの個室に四つの点があり、それぞれジェームズ・ポッター、シリウス・ブラック、リーマス・ルーピン、ピーター・ペティグリューという文字があった。

 

試しにシリウスが扉の入り口まで移動すれば、それに合わせて地図の小さな黒い点と名前が動く。

 

ジェームズがベッドの下から透明マントを取り出しすっぽりと被り、完全に姿を消してみたが、それでも地図の名前は消えずに残り、ジェームズが部屋中をうろうろとしているのも確認出来る。

 

 

「地図上ではばっちり見えてるよプロングス?」

 

 

リーマスは地図を見ながらジェームズがいる場所に手を伸ばし、何もない空間を掴めば楽しげに笑うジェームズが現れる。

 

 

「よし!完璧だ!ミセス・ノリスは──ここか、地図が完璧かどうか、確認といこうじゃないか」

 

 

ジェームズは透明マントを広げ、俺たちはその中に入りこっそりと部屋を抜け出し夜の静かな廊下を歩いた。

 

ゴーストを地図上で見つければ、しっかりと目の前にも──ゴーストに俺たちの姿は見えないだろうが──ゴーストがいる。ジェームズは小声で「よしっ!」と呟き嬉しそうに拳を握り、俺たちも過去の失敗作と比べてかなり理想に近い地図に、満足げに頷く。

 

ミセス・ノリスが目の前に居ても、彼女はするりと近くを通り抜け、何人かの先生達も気づかない。地図と現実に差がなかった事がわかり、意気揚々と自室に戻った俺たちは完璧な地図を囲みハイタッチをした。

 

 

「やった!これで完成!今のところ改善点も無し!」

「これがあれば悪戯の幅が広がるな!」

「本当、これ凄いよ!」

「こんな地図、世界中を探しても無いんじゃないか?」

 

 

見回りの教師やゴーストが地図上でうろうろしている中、俺たちは口々に喜びの声を上げた。

 

 

「後は地図を閉じる呪文だね」

 

 

にっこりと笑いながらリーマスが言い、ジェームズとシリウスも満足げな笑み浮かべ視線で俺を促す。

 

 

「ああ、ちゃんと決めてきたよ、これしかないってやつをな──悪戯完了!」

 

 

リーマスの呪文後、杖先で地図を指しながら言えば、地図に載っていた黒い点や名前、全てがスッと消え──そこにあるのはただの羊皮紙だけになった。

 

 

 

ーーー

 

 

1976.02.05

 

 

忍びの地図はやっぱり凄い!

作ってから何回も使っているが、今のところ改善点は見つからないな。

 

 

俺たちのあだ名であるムーニー、プロングス、パットフッド、キンケッドテイル御用達と書かれた文字の周りを、小さなネズミがぴょこぴょこ歩くのは…見るたびに複雑な気持ちになる。

魔法をかけ、作ったのは俺たちだがジェームズは協力者の証を入れたいといい、フェニアンの姿を残した。

まぁ、見る人が見なきゃこれがフェニアンを意味することは分からないだろう。

 

もし、フェニアンが本来のワームテールのポジションなら、彼が秘密の守人になる。…だが、フェニアンはジェームズを盲信しているが、かと言ってめちゃくちゃ仲良しなわけではない。

ジェームズはフェニアンに対して中に入り込めないように一線を守ってるし、フェニアンはフェニアンで…ジェームズをなんだかヒーローのように思ってる、んだろう……多分。

 

 

 

ーーー

 

1976.03.13

 

後数ヶ月でOWL試験が行われる。俺たち五年生に関わりのある、将来の仕事を決めるにあたって重要な試験だ。

毎日のように勉強がうまくいかずノイローゼになった生徒が、まだ正気を保っている友達に医務室に引きずられていく。

 

ジェームズとシリウスは天才ゆえに余裕の表情だが…。俺は合格点を取れそうとはいえ、頑張らないと優なんて不可能だ。

毎晩彼らや教師達にわからないところを聞きに行く日々。

 

こんなに勉強したのはセンター試験以来だ。

ノイローゼにならない程度に頑張ろう。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。