1974.3.15
満月の夜に1人苦しむリーマスの為に、ジェームズとシリウスはずっと悩んでいた。俺がアニメーガスは?と聞いたら本が見つからないんだと。
閲覧禁止の棚にあることを知らないのか?たしかに、図書館に行ってる2人を見た事ないからなぁ。
教えてやるとニヤリと笑って俺の背中をバシバシと叩いてきた、よくやった!と言いたいのだろうが普通に痛かったので殴り返したらジェームズとシリウスは目を丸くして驚いていた。
俺が反撃した事なんて無かったのだろう。
1974.3.16
ジェームズとシリウスが棚からアニメーガスについて書かれた本をパクってきた。…手の速い事で。透明マントで盗みに入ったんだろう。
アニメーガスへの変身の仕方はまぁ…かなり、めんどくさそうだった。
マンドレイクの葉を1ヶ月も口に含んでおくとか…普通に食べちゃいそう。ってか、ご飯とかと混じって最悪な事になりそう。
しかもなんか細々したルールがあるし…小説を読んだときには複雑な呪文とか使うのかなって思ってたけど…いや、これマジで無理ゲーじゃね?
これを3人はやり遂げたんだよな?…すげー忍耐力。
友達のためにかける熱意が凄い。
…いい奴なんだよな、ジェームズも、シリウスも。…良い子では無いけど。
1974.3.20
今日、ジェームズがたまたま廊下ですれ違ったセブルスの肩をどついてた。
セブルスは倒れ、鞄の中身をぶちまけて顔を赤くして射殺さんばかりに睨んでた。
ジェームズとシリウスの虐め。
リーマスの見ないふり。
いい加減イライラして口出したが、まぁ…結果は良かったのか?
今後、ジェームズとシリウスが少しでも利口になってくれたらいいが。…13.4の子どもには難しいかな。
ーーやれやれだぜ!
ーーーーー
「ーーっ!」
「うーわ、最悪!汚い物に触れちゃったよ、ねぇシリウス!僕の肩汚れてない?」
ジェームズは自分からセブルスに突っ込んで行ったくせにニヤニヤと笑いながら肩の何もない汚れを必死に擦り取ろうとしていた。
どつかれバランスを崩したセブルスは自分の長いローブに躓き思い切り転倒し、その拍子に鞄の中身が雪崩のようにぶちまけられる。
周りにいた生徒はまたいつもの虐めかと遠巻きにしながらも、くすくすと嘲笑っている。…ここに来て思ったんだが、ここにはスクール・カーストが根強く存在する。
シリウスとジェームズはジョックであり、セブルスは間違いなく、ナードであり、ターゲットだ。
まぁ閉鎖された空間、寮生活…どうしても関係に優劣つくのはこの年代の精神的にまだ幼い子どもたちにとっては…仕方のない事なのだろう。
かと言って、それを黙って見れるほど俺はおとなしい性格をしていない。
「自分でぶつかっていってそれは無いんじゃないか?ジェームズ。汚れもついてないし、その眼鏡の度数あってねーよ買い直せ」
「…何?…ピーター…最近…君、おかしいよ」
「そう?一回心臓止まったから。生まれ変わったんだよ」
俺は散らばってる教科書を拾ってセブルスに渡したが、余計な事をするなとばかりに乱暴に奪い取られた。うーん、セブルスの心の壁を突破出来ん。
くるりと後ろを振り返れば、めちゃくちゃ怪訝で嫌そうな顔をするジェームズとシリウス、そしてその後ろで心配そうに様子を伺うリーマスがいた。…リーマスは、ジェームズとシリウスの行いが悪い物だと知っていて止められない。それはなんともまぁ、友達思いな事で。
セブルスはすぐに散らばった教科書や羽根ペンを集めると俯いたまま走り去っていってしまった。ーーよし、逃げたな。
逃げ出したセブルスを見たシリウスがつまらなさそうに舌打ちをこぼし、俺を睨んだ。
「そんな奴助けるなんて…お前…どうしたんだよ?」
「別に、可愛い悪戯なら大歓迎だが、俺は虐めはクソだと思ってる」
「…ピーター、君…本当、人が変わったみたいだ!そんな事、以前は全くーー」
「ジェームズ。俺は…前までの俺は、お前達の子分で調子の良い取り巻き、使いっ走りだったのかもしれない」
きっぱりと言えば、ジェームズはぐっと言葉に詰まった「そんな事…無いよ」と言ったがその表情は明らかに狼狽えている。
間違いなくーー心の深層でピーターを下に見ていたのだろう、まぁ、親しい友人のグループでも…そう思ってしまうほどに、ピーターはジェームズとシリウスの意見に一切反論しない金魚の糞だったのだろう。
それが、ピーター・ペティグリューという男の…強い物に巻かれるという、悲しき処世術だった。虎の威を借る狐、ともいえるかもしれない。光り輝く彼らの後ろで周りからの羨望を集めるのはさぞ、心地よい場所だったんだろうピーター?
「俺は…ピーター・ペティグリューは…お前達の友人じゃないのか?記憶を失った俺に、ちゃんと説明してくれよ」
「…友人だよ」
「当たり前だろ?何言ってんだよピーター!」
ジェームズは、俺の目を見て答えた。
だがその目はすぐに逸らされる。…ジェームズは聡い、俺の言葉に隠された意味に、ちゃんと気付いたのだろう。ーーピーター・ペティグリューは
シリウスは俺の肩に腕を回すと明るい笑顔を見せた。うん、こいつはなんかちょっとバカだな。優秀で賢い、だがーー馬鹿だ、全然言葉の真意を読み取らん。
そもそもこの二人は生まれついてのジョックなのだ。裕福で賢く運動神経もーーこの世界で言う飛行術も悪く無い。人の上に立つ、見下してしまう悪い癖が染み付いているのかもしれない。
それに気付いているのは、一般的な家庭で育ったリーマスだけなのだろう。…だが、彼は友人の悪行を止める事は出来ない。
「そうだよな?良かった、安心したよジェームズ、シリウス」
にっこり、と笑えばシリウスはちょっと不思議そうな顔をしたがすぐに屈託のない笑顔を浮かべ、ジェームズは強張った顔で、何やら考え込んでいた。
ーーーーー
1974.3.22
リーマスにジェームズとシリウスの虐めについて聞いてみた。
本心では、やっぱり悪い事だとわかっているようで…うん、そりゃそうだよな。だって…リーマスは人狼だ、一歩間違えれば…その事がバレて仕舞えばいくらジェームズとシリウスの友人だといえ虐めの対象…差別の対象となる。
それの恐怖や辛さを知ってるリーマスが、セブルスの状況を良しとしているわけがない。
止められないのはやはり、初めて出来た友人だかららしい。
…なんかそれも納得いかない。友人なら、大切な友人が誤った事をしているのを正すべきでは無いのだろうか?それをすれば嫌われ見捨てられると思っているのだろう。
まぁ、この年齢の子どもにとってみれば…友人関係は、世界のすべてのような物だからなぁ…。
俺が何とかするしかないか。
…大人だしな、うん。
1974.4.2
最近、ジェームズの後ろにちょこちょこくっついて回る下級生がいる事に気付いた。
あれ誰?とリーマスに聞けば、呆れたような口調で「湖で君を助けてくれた子だよ!」と言ってた。
どうやら、ジェームズ達が巨大イカを追っ払い、あの少年が俺を引き上げてくれたらしい。そう言う事は早く言って欲しかった。
直ぐにお礼とすぐに言えなかった謝罪をしたが、少年ーーフィニアンは首をちぎれそうなくらい振ってた。
俺を助けた一件から、ジェームズの後ろをついて回るようになったようだ。俺が気が付かなかったのは放課後に図書館に籠ったりやランニングしていたからだろう。
1974.4.8
意識してみると。
フィニアンはいつも視界の端に居た。
ストーカーかよ…。
シリウスは「あいつ、ジェームズのファンなんだよ」と言ってた。当然のように言うあたり、この2人はそう言う熱烈な視線に慣れているのだろう。うーん、流石スクール・カースト上位は違う。
1974.4.13
喜べピーター。
お前可愛い女の子に告白されたぞ!ごめんな、初告白だったかな?
残念ながら断ったが。
だって…12歳って…犯罪だろ…。俺の中身は30歳だぞ…。
ピーター、お前早く戻ってこないと、童貞のまま卒業する事になるぞ…。
いや、でもなぁ…卒業まで一度も女を抱かないなんて、耐えられるかなぁ俺…。
1974.4.14
アニメーガスにはまだなれていないことを記しておく。
ちなみにシリウスとジェームズもまだ成功していない。
「条件がシビアすぎる!」と嘆いていた。…間違いない。すでにジェームズはマンドレイクの葉を2回飲み込んでいた。シリウスは寝てるときに無意識で吐き出してしまっていたらしい。
明日からまたやり直しだ。
ちなみに俺も3回うっかり料理と一緒に食べてしまった。めちゃくちゃ苦くてまずい。
1974.5.2
俺がピーター・ペティグリューになって、もう半年が過ぎた。
長すぎる夢だな。
いい加減冷めてほしい。
アニメーガスにはまだなれていない、思うようにいかずシリウスとジェームズのフラストレーションが溜まってきているのがわかる。
リーマスは心配していたが…アニメーガスになれるまでリーマスには秘密にして、驚かせようという計画の為何も言えなかった。
…そのストレスをセブルスにぶつける事のない事を祈る。
最近ジェームズとシリウスがセブルスを虐めないのは、反省したからではない。
口の中にマンドレイクの葉を入れている。
セブルスを侮辱したくとも、何かを話せば葉が飛び出してしまいそうになるから、今の2人はセブルスを虐めないだけだ。
1974.6.4
口の中にマンドレイクの葉を入れ続けるのにも慣れてきた、ようやく1か月!待ち望んだ満月の日!
だが天候は俺たちの味方じゃなかったようだ。
残念ながら今回の満月は曇天だった。つまり、やり直しだ!
シリウスはイライラして部屋の椅子を強く蹴っていたし、ジェームズも髪をぐちゃぐちゃにして唸ってた。
気持ちはわかる。
そんなイライラしないで一発女でも抱いてこいよって2人に言ったら目を丸くして顔を真っ赤にして怒った。
ーーこいつら童貞だな。